衛宮士郎であり、衛宮士郎ではない   作:夢幻パンチ

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エミヤ・アサシンは……

「それでね、マシュがランスロットに、って聞いてる?バーサーカー」

 

「ん?ああ、トリスタンの新曲の白鳥のイゾルデの話だっけ?」

 

「違いますぅ!どうしたの?」

 

「視線を感じるんだよなぁ、たく!違うって言ってんのに……」

 

「……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジジィ!なに寝てんだ」

 

「ん?ごめんごめん」

 

あれはいつだったか……、確か、あの子達の結婚式だったか……

 

「士郎こそ、彼女の側に居なくていいのかい?」

 

「あいつの周りには藤村組のおっさんと藤姉が居るからな、ジジィこそ、そのロールケーキ食えよ。俺が今日の為に作った最新作なんだぞ」

 

「ああ、士郎はお菓子作りは得意だったもんな。ん、うん。美味しいよ」

 

「………藤村組でいっぱいだな」

 

「それは士郎が呼ぶ人いないからだろ?」

 

「………レティシアは来れないもんな」

 

「そうだね。彼女は、そうだなちょっと忙しいからね」

 

「そっか」

 

確か、この日は近くの教会で式開いたんだ。士郎と離れた所から、大河ちゃんに泣きながら抱きつかれている新婦さんを視界に入る。士郎と二人で雲一つない空を黙って眺めた

 

「…………なあ」

 

「なんだい?」

 

「……んー、ほら。ジジィがさぁ、俺の事を引き取ってくれてさ……、一度も言った事がなかったじゃん」

 

「?。なに「ありがとうな。親父」……ふ、ハハハ!らしくないね〜!士郎からそんなこと言うなんて」

 

「ち、茶化すなよ。こっちだって恥ずかしいんだからな!もうぜってー言ってやんね」

 

そうだった。この子を拾ってから、この子は身内には強気な癖に、友達は一人もいないコミュ症だった。そして突然拾って来た女の子が友達と思えば、いつの間にか結婚だ

 

本当に長い人生だな

 

「士郎は夢とかあったかい?」

 

「ジジィは?」

 

「聞いてるのはこっちなんだけど、そうだね。僕は正義の味方になりたかったんだ。おかしいかい?」

 

「おかしいかねぇけど、なりたかったって過去系なんだな」

 

「そりゃそうさ。今更、正義の味方にはなれないよ。僕もいい歳だからね」

 

「俺は、俺はジジィの事、ずっと正義の味方と思ってるけど」

 

「………ああ、………そうか、……僕は正義の味方に成れていたのか」

 

「ああ、だから、もういいぞ。俺はジジィに守られて生きて来た。だけど、今度は俺が、守る側に居なくちゃいけない」

 

あんな小さかった士郎が、コミュ症でイジメられてばかりだった子が、僕がずっと守らなくっちゃって思ってたんだけどな。もう僕の後ろには士郎は居ないんだな

 

「…………安心した」

 

目閉じ、もう僕は悔いはなかった。……………………………イタッ!

 

「な、なにするの⁈」

 

「え?なんか安珍してるから、生き返らそうかと……」

 

この子いきなり拳骨して来た!こんな子に育てた覚えはないよ!

 

「俺の味方はしなくて良いって言ったの、ジジィにはまだ会わなくちゃいけない子が居るんじゃないのか?」

 

なんなんだ?そん、の、……………………居る。そうだ。居るじゃないか

 

「行ってこいよヒーロー。死ぬならちゃんと安珍しろよ!」

 

はは、全く。敵わないな

 

「ああ、逝って安珍してくるよ。サヨナラ士郎。僕は幸せ者だ」

 

士郎を背に僕は走った。場所はわかっている。ただ僕が勇気がなかっただけだ。ああなんだろ、今ならなんだって出来そうだ

 

「………幸せ者は、こっちだよ親父」

 

第5次聖杯戦争の後、彼女は勝利者の家で暮らしているはず、僕は覚悟を決め、インターホンを押す。数分後中から声が聞こえる

 

「なによ!私だってちゃんとお客様対応出来るんだから!リンは下がってて」

 

「あんたね!私が居ない間に留守を任せたらゴミ屋敷じゃない!うー!優雅たれ優雅たれ、落ち着け私!」

 

「あー、そういえばリンの工房の大っきい宝石。売っちゃったから」

 

「ふっざけんなー!あれは聖杯戦争ですら使わなかった高級物なのにぃ!」

 

「そんな事より、お客を待たせていいの?私出ちゃうから」

 

「待ちなさいよ!」

 

重い扉は開かれて、中から人が出てくる。

 

「はーい。どちら………切嗣」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「迎えに来たよ。…………………イリヤ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へーやるじゃない、バーサーカー」

 

「ふ、まぁなお菓子作りは俺得意科目だからな」

 

「はん!んー美味しい!クロも食べた方がいいよ!私こんなの食べた事ない」

 

「はいはい、ホッペにクリームが付いてるわよイリヤ」

 

「クロのあるからな」

 

「ありがと。ジャンヌとかにはあげないの?」

 

「絶対にやらん」

 

「バーサーカー。私も欲しいなー」

 

「マスター。さっきあげただろ?太るぞ?」

 

「余計なお世話!」

 

なんだろ……、やはりだ。あのバーサーカーを見ていると、どうも放って置けない。最近見たあの夢がどうも頭から離れない

 

「切嗣」

 

「アイリスフィール…、何の用だ?」

 

「行かないの?バーサーカー君は多分、あなたの為に作ったと思うの、だから行って食べてあげて」

 

「なにを根拠に言ってる?僕とあいつはなんの関係のない。ああ、関係ないね」

 

「その割には、召喚されてからよく目で追っているように見えるが?」

 

赤い弓兵。こいつもあいつも僕と同じ抑止の守護者だ。こいつもこいつだ。こいつもあいつ同様な感じがする。だがこいつ、なぜか大丈夫な気がする

 

「こんにちはアチャ男君」

 

なんだその名前?

 

「なんだその名前は?」

 

「あら?違ったからしら、ネロさんや玉藻さんがそう呼んでたから、てっきりエミヤアチャ男って名前なのかと」

 

「まぁアチャ男で結構だ。そんな事より、アサ男」

 

「アサ男だと?」

 

「当たり前だ。同じエミヤ、私がアチャ男なら、お前はアサ男だ」

 

「……まぁそれでもいい」

 

「あのアホのロールケーキを食べたことがあるか?無いなら食べるといい。アイリスフィールが言った通り、あれはお前の為に作った物だ」

 

「………………」

 

なんなんだ。どうもカルデアに来てからというもの、どいつもこいつも僕を放って置いてくれない

 

「あ、パ、じゃなくてアサシンさん!アサシンさんもバーサーカーさんのロールケーキ食べて見てください。絶対に美味しいですから」

 

「イリヤ。別にパパでいいんじゃない?いちいち言い直さなくてもママだっているわけだし」

 

「え、でも違うって言ってるし………」

 

この少女達もだ。僕をどこの誰かと勘違いしている様だが、調子が狂う

 

「切嗣さん。バーサーカーのロールケーキ美味しいよ?」

 

「マスターの命令なら……」

 

「じゃ命令で♪」

 

たく

 

「食べても?」

 

「おお食え食え」

 

イリヤ、クロ、アイリ、あのエミヤ、立香、そして

 

「……相変わらずだな」

 

「黙って食えよ。ジジィ」

 

甘すぎて、守ってやらないといけないな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふ、ありがとうね。シロウ君。彼素直じゃないから」

 

「その名前で呼ばないでもらえるか?アイリさん」

 

「そうねエミヤ君。さぁ!私達も行きましょう。切嗣が全部食べてしまう前に」

 

「いや、俺は……」

 

「さぁさぁ!」

 

「ママにエミヤさん!」

 

「なにしてんのよ?どうせ私は相応しくないとか言ってたんでしょ?」

 

「余計なお世話だ」

 

「エミヤァ!貴様が唯一越えることができなかった菓子を食べて涙しろ!」

 

「え?エミヤ勝てなかったの?」

 

「………意外だな」

 

「く、マスターに、お前まで反応するのかアサシン」

 

「ん?なんかサーヴァントの皆んなが匂いにつられて食堂に入って来た」

 

「う、マリー・アントワネットが居る。エミヤ助けて……」

 

「はぁ仕方ない。全員分作るぞ!」

 

「う、女達が居るが、貴様との共闘。それも一興!」

 

「大丈夫?二人とも?結構居るよ。令呪使っとこうか?」

 

「フ、心配するな」

 

「ああ俺を、いや………」

 

「「俺たちを誰だと思ってやがる!」」

 

 

 

 

 

 

 

 




衛宮切嗣
イリヤと再会後、安珍する。死んでも士郎がなんだかんだ心配で、その世界の英霊エミヤを肩代わりする。これで衛宮士郎はエミヤになることはなかったが……

遠坂凛
無事にセイバー召喚し、黒幕にも気づき、聖杯粉砕。こちらも無事に聖杯戦争優勝。冬木のセカンドオーナーとしてイリヤを保護し、魔術師世界で名を轟かせる。現在独身

イリヤスフィール・フォン・アインツベルン(マスター)
切嗣との再会後、冬木の新セカンドオーナーとして遠坂家に切嗣と一週間ほど生活。余生は冬木で過ごす。士郎とは一度も会わなかった

アイリスフィール・フォン・アインツベルン
知ってか知らぬか、バーサーカーを見て優しく微笑む
ちなみにバーサーカーはちゃんと喋れるから、心の中でヤバイ女認定をされて居るのは知らない

イリヤ(キャスター)
バーサーカーの事を親戚のお兄さんの様に思って居る。バーサーカーを巻き込んだルビーのセクハラに困っている。ちなみにバーサーカーは喋れるから以下省略

クロ
バーサーカーの事を世話のかかる弟と思っている。幼女体型ながらバーサーカーを誘惑しようとしているのをマスターに止められるのは日常茶飯事。ちなみにバーサーカーは喋れるから以下省略

マリー・アントワネット
バーサーカーと仲良くなりたい人。恐ろしいコミュ力にバーサーカーは恐怖する

エミヤ
次回も出るから見逃すな!

バーサーカー
衛宮切嗣が肩代わりして、衛宮士郎として抑止の守護者にならずに済んだ為、前の姿で職につく。イケメンじゃないから、内心ジジィを恨んでいる。余計なことしやがってと

藤丸立香
太った

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