衛宮士郎であり、衛宮士郎ではない   作:夢幻パンチ

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だいぶ迷ったし、ちょっと想像と妄想が入り混じってますが、ご了承を…

リクエストにあったバーサーカーの謳歌人生を書きました。そしてもう一つ、バーサーカーオルタは難しい。書いているのですが、こいつ自体の性根がオルタだから、想像が難しい。まぁ前向きにちょこちょこ書いてます


父と娘は……

私が小さい頃……、私は冬木に住んでいた。小さかったのであんまり覚えていないけど、家がだいぶ広かったのを覚えている

 

父と母は毎日のように喧嘩をし、毎日のように仲直りして、毎日のように働けと言い、言われ、毎日のように父は母に追いかけ回されていた。一番記憶にあるのは、いつものように母が父を追いかけて、肩で息をする母と、虫の息の父を見たことだろう…

 

こう見えて私は、お母さん子で、将来の夢は母のお嫁さんになることだった。街で母を知らないものはいないほどに、母は人を気遣い、助けようとする。そんな母が大好きだった

 

私が小学校に入ったあたりだ。父が突然働き出した。なんでも工事現場で働き出したらしい。今思えば、あの時、父は焦っていたのかもしれない……、小さい私も、なんとなくわかっていたのか、母がいなくなる寸前は毎日甘えていた。次の日に、一緒に寝たはずの母が居なかった。父に聞いたら、「愛想つかされた…」と、泣くのを我慢したように言っていた。不思議と私も「そっか…」としか言えなかった。あの母が、この父に愛想をつく訳がないと思っていたし、思いたかった

 

母が居なくなって、冬木を出た。私も中学生になり、広くて大きかった家を売り、狭くて小さいアパートに住み出した。父とはいっぱい喧嘩して、いっぱい迷惑をかけた。その度に、夜になったら月を見ながら仲直りをした。私が生まれる前から、父と母はこうやって月を見ていたらしい、私が産まれてからは三人で、そして今は二人で…、私の右側は少し寒かった

 

中学生卒業間近だった。父が私を寮に入れると言ってきた。私はそれを聞いてこれまでに無いくらい怒った。父は謙虚なんかでは生ぬるいくらい卑屈だ。どうせ自分と居ると私に迷惑とかなんとか言って、私を遠ざけようとしているのだろう。お金なんかいらないし、学歴なんかもいらない。母が居なくなって、父までが側にいなくなるなんて考えると、怖くて仕方がなかった

 

父は勝手に手続きをしていて、明日には寮に行かなければならない。喧嘩して、いや、私の一方的な怒りを父に行って家を出た。夜になるにつれて、私も落ち着いてきた。父は私の為にやったことだ。だったら私も父の優しさを受け止めなければ行けない。家に帰って父に謝ろう。また月を見ながら仲直りして、たまに父の顔見に来ればいい話だ、と、思っていた。帰ったら、父が胸を押さえて倒れていた

 

急いで病院に行った。けど、お医者さんは症状がわからないって言ってた。どこも悪いところはないって、でも父は苦しそうに顔を歪めていた。私は………、無力だ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えーっと、ああ!貴女ですね。藤丸立香さんで合ってますよね?」

 

「…………は、はい。あの、貴女は」

 

「申し遅れました。私こう言う者でして……」

 

藤丸士郎。旧姓衛宮。今回私はこいつの治療で病院に来た。機器ではわからないからこそ、私が呼ばれたんだろう

 

「蒼崎橙子、さん?」

 

「はい。蒼崎橙子です。大丈夫ですよ。私は貴女のお母様と知り合いでして「お母さんの?」ええ」

 

藤丸立香、か……、魔術回路の本数はそうでもない。が、魔力の質と魔術回路の質は、そこら辺の魔術師よりはマシか…

 

「あ、あの!お父さん。お父さんは大丈夫ですよね⁈」

 

「それは、見て見なければ分かりません。ですが、立香さん。覚悟はしておいた方が、よろしいかと」

 

「ッ!………………は、はい」

 

なんて震えた声。よほど父親に依存している節がある。それは母に依存していたのが、父に移行した感じか…、ふむ。弱いな、良くも悪くも人間だな彼女は……。とりあえず部屋に入って本人に会って見ないことには、始まらないな

 

「藤丸士郎さん。体調はどうですか?」

 

「……………眼鏡外せば?そっちの方がアンタらしいよ」

 

ほー、やはりか。あの万華鏡ジィさんの言う通りか

 

「では、お言葉に甘えて、……………私のことどこまで知っている?藤丸士郎」

 

「さぁな?知っていることしか知らないよ俺は……。たく、こんな風になる前に、あんな爺さんに会わなきゃよかった」

 

「はっ、私はその爺さんに頼まれたんだよ。だいぶ気に入られているみたいじゃないか?」

 

「だろうよ。今を見る千里眼ならまだしも、過去未来、並行世界には、俺は居ないからな。珍しいんだろ」

 

「違いない。タバコ吸っても?」

 

「病院なんだが…、まぁいいよ」

 

ルーンで警報を鳴らないようにして、タバコを吸う。なるほどこいつは面白いが、…………そうか

 

「本題に入るが、お前の経歴を調べさせてもらった。ついでに居なくなる前に、奥さんから多少は聞いていたからな」

 

「白野に?……面識あんの?」

 

「あるよ。と言っても、初対面は酷かったぞ?」

 

「遠慮がないんだろ?いきなり助けて下さいとか言って来たんだろ?」

 

「よくわかったな?まぁ自分自身じゃなくて、お前のことをだ」

 

「………………」

 

岸波が私の所に来た時、ただならない雰囲気だった。強い弱いとかじゃなく。異常、この世界のイレギュラーと言った方が分かりやすい。なぜ私のことを知っていたのかはわからない。だが、開口一発。助けて下さいだ。しかも自分ではなく、他人をだ

 

「第四次聖杯戦争。あの儀式で、冬木大半が聖杯の泥で焼けた。多数の被害と、多数の人が死んだ。被害を受けた者はもれなく死んだ。お前を除いてな。あれだけの被害を受けて生きていたんだ。何かしら身体に影響はあるだろう。まだ、まだその心臓にある鞘がまともに起動していたら、お前は普通に老いて死ねただろう。魔術の才能が無さすぎたんだよ。その鞘に魔力を送る方法を身体が知らなかったんだ」

 

「………………そうか、やっぱり俺は衛宮士郎になれなかったか」

 

「今まで、義理の父や突然来た聖処女、黄金の英霊、そして岸波白野。魔力を使う者が近くにいる事で、無意識に魔力を使っていた。完全じゃなくて、送らせていただけだ。………………岸波白野に、他人に魔力を出させる方法を聞かれたよ。でも、お前も岸波も、魔術師として未熟すぎた。結果変わらずだ」

 

「………鞘は?」

 

「まだある。もうその鞘は、お前仕様になっている。ふ、サーヴァントになったら使えるんじゃないか?」

 

「無理だよ。もともとこれは俺のじゃない。それに俺はサーヴァントには、衛宮士郎にはなれなかった男だ」

 

この男は、多分未来を知っている。故に世界から切り離されている。いやそれだけじゃないだろうが…。だからこそ、衛宮士郎と言う役にハマるかハマらないかを考えて、今に至るのか

 

「ありがとう。わかった。新しい身体はいらない。爺さんにも謝っといてくれ、ちなみに吸血鬼になる気もないからな」

 

「知っていたか……。わかった。もう少し早く会いたかったよ。お前は、かなり面白い。さようなら。衛宮士郎さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

立香と喧嘩して、改めて頭が冷えた。白野が月に帰ってから、身体の調子が悪い。自分の身体がもうやばいところまで来ているのは、なんとなくわかっていたし、成長した立香を見て思った。あれー?なんか見たことあるぞ?ああ、FGOの主人公やんけ。……………あかん。人類死んじゃうと思った

 

もし、もしもだ!このまま俺と居て、原作通りにならなかったらと思うと、立香を早いとこ自立させた方がいいのではないのかと、最悪原作じゃなくても、長くない俺と居るよりはマシかと思い。高校は寮に入れようと思った。まぁ怒られたんだけどな

 

「はぁ、駄目だな。やっぱり俺はまだ父親としては、まだまだだな」

 

現在。公園のベンチで頭冷やして居る訳だが…、何がいけなかったのか?金はあるし、いい学校だったのに…

 

「もし、隣よろしいかな?」

 

「え?あ、どうぞ」

 

「………………」

 

「………………」

 

ん?なんだろう。なんか見たことなるような…、この爺さん。……NP80%。凸って100%……、あ。

 

「貴様。何者だ?」

 

万華鏡(カレイド・スコープ)………!」

 

「ほう、私のことを知っているのか」

 

しまった!つい圧倒されて、口が緩んだ。なんで日本にこんなバケモンが居るんだよ⁈え?距離近くない?下手したらここでスクラップやで

 

「して、質問に答えて貰おうか?イレギュラー」

 

「い、いや。答えるも何も、知らんないんですが…」

 

「ふむ、しらを切っているわけではなさそうだ。貴様は、どの並行世界にも居た。衛宮士郎として居た。が、それは貴様ではない。詳しく言えば魂が違う」

 

「スゲェーな爺さん。まぁ爺さんの言う通りだよ。俺は衛宮士郎であって、衛宮士郎じゃないんだよ」

 

「お?やはりか、その口振りからして自分以外の衛宮士郎を知っているか。面白いなお前さん」

 

「面白くねぇよ。俺からしてみれば爺さんの方が面白いっての。気に入らないからって、朱い月にケンカ売るなよ」

 

「ハハハハハ!言うな言うな、昔の話だ。お前さんだって、あの英雄王と遊ぶとか、あり得ぬからな?」

 

「爺さん。威厳て言うか、口調が粉砕してきてる…、まぁいっか」

 

そっからだいぶ話た。こうやって話したのは久しぶりだった。楽しかった。………そうか、話して見てわかった。やっぱり俺はわがままだ。立香の為って言って、俺は今、すごい寂し

 

「………爺さん。なんかありがとうな」

 

「ん?何がだ」

 

「久しぶりなんだよ。娘以外とこんなに馬鹿話したの、残り少ない人生で、あんたみたいな大物に会えて、俺楽しいよ」

 

「なんかわからないが、よかったよ。そろそろ夜だ。私も失礼するよ。さようなら衛宮士郎。楽しかった」

 

「藤丸士郎だ。爺さん」

 

帰って、謝ろう。立香に一緒に暮そうと言おう。そう思って帰って、俺は倒れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………お父さん」

 

蒼崎橙子が出て行った後、酷く震えた声の立香が入ってきた

 

「………おいで、立香」

 

立香を手招き、ベットに座らせた。出来るだけ優しく、優しく頭を撫でた。彼女が少しでも落ち着くように

 

「お父さんな、もう駄目みたいなんだ」

 

「…………………」

 

俺が倒れた時点で、彼女なりに覚悟を決めたのだろう、あまり驚かなかった。今日は満月だ。あいつも見てる

 

「立香。ごめんな。俺は立香の為と思った事が、ちょっと違ったみたいだ。だからごめん」

 

「………………私も、ごめん。怒って」

 

「うん」

 

こうして、いつもの様に謝り合う。そう、いつもの様に…、そしてちょっと黙る

 

「私、どうしたらいいの?お母さんもお父さんも居なくなって、わからないよ」

 

「…………立香」

 

「お母さんがいなくなる前だって、私が我儘言った次の日だった。お父さんだって…!」

 

「違う。それは違うよ立香。俺もお母さんも、立香を産む前から、こうなる運命だったんだ」

 

そう、運命だった。衛宮士郎の人生を歩まなかった時点で、俺は別の人生を歩んでいた。…………どこで間違えたんだろうな。いやまてよ。イレギュラーって、……………あのクソジャンヌか!あいつきた時点で、こうなる運命かよ。………はぁ、なら悪くなかったかもな

 

「死ぬ運命だったとしても、白野に出会えて、立香に会えてって、何泣いてるんだよ?」

 

「だって!おとうさんがないてるから……!」

 

俺が?本当だ。なんだよ。二回目だったけど、意外と悔いがあるじゃねぇか俺

 

「いいか立香。今から言う事は大事な事だからな?」

 

「うん」

 

「お父さん頑張ったよ。立香が大人になるまで、苦労しないように、したくない仕事頑張ったよ。だから、好きに生きなさい。これからは君が一人で歩む人生だ。でも一つだけ約束。生きる事を諦めないこと。これから立香は、いっぱい辛いことを経験する。悲しいことも、痛いことも、悔しいことも、いっぱいあると思う。でも、常に立ちなさい。常に自分の足で歩きなさい。お父さんはダメ人間だから、偉そうなことは言えないけど、胸を張って生きなさい」

 

「…………うん、…………うん!」

 

言いたいことは言った。立香を強く抱きしめて、立香は泣いた。小さい頃からあまり泣かない子だった。白野が居なくなった時も泣かなかったこの子が、俺の為に、泣いてくれた。ああ、ジジィ。あんたもこんな気持ちでお父さんやってたんだな

 

一応。立香が困らないように足掻いたんだが、やっぱり駄目だった

 

大丈夫だよ立香。お父さんもお母さんも、ずっと君を守っているから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで?貴様は人生を謳歌したのか?」

 

「ああ、謳歌したさ。衛宮士郎じゃなかったけど、俺は満足だ」

 

「フン。まぁいいさ。貴様がいいならそれで、私も、俺も何も言うまい。藤丸■■」

 

「生前の名前を言わないでもらえます?その名は捨てたの、俺は衛宮士郎であって、衛宮士郎じゃない者なんだから、俺は俺だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




藤丸立香
父と別れた後に家で、カルデアに応募しようとしていたのであろう、父の履歴書を見つける。父のお金は使いたくなかったので、自分で稼ぐべくカルデアに応募

キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ
音に聞いた万華鏡おじさん。変人藤丸さんを気に入り、余命が僅かだから人形か、吸血鬼にしようとしたが、断られた

蒼崎橙子
直す予定だったが、思いのほか病状が酷かった。岸波白野に簡単な回復魔術を教える。変人藤丸さんを気に入るが、生かせず。だが未来か並行世界で違う形で再開

岸波白野
ギルギルマンに士郎の身体の事を聞かされる。ギルギルマンは干渉しようとせず、観賞しているのでアテにならない。知っている魔術と思って、蒼崎橙子を訪ねる。場所だけはギルギルマンが教えてくれた

変人藤丸士郎
白野と結婚後、士郎になる前の苗字に変える。自分の身体もヤバイし、白野も居なくなるので、やっと働く。ほぼ工事現場で一人で作業してるせいか、開拓の才能を得る。ちなみに立香が産まれる前、結婚する前から、ギルギルマンが名付けている。士郎は波動丸と名付けようてしたが白野に変な顔された

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