闇を照らす光   作:れいたん

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第四話

彼に出会った時点で俺達は彼の手の中で動かされていたんだ―――――。

 

 

 

 

  ▼  ▼  ▼  ▼  ▼

 

 

 

 

日差しが強い中、そんなことを気にしなくてもよいコナン達がいたのは、中原中也がたまに使うと言うセーフティハウスの一つだった。

「おい・・・俺は確かに話はすると云った。でも・・・・・ピッキングして無理矢理家に上がれとは一言も云ってねぇだろうが此の糞太宰!!!!」

「酷いなー。外で待つのが面倒だったから暇潰しに鍵を開けただけじゃないか。」

中原に罵られているのは、昔仕事で相棒だったという人間、太宰治だった。

・・・・・ここではあえてピッキングとかいう言葉は流すことにする。

「俺以外の奴にしてたら立派な犯罪行為だからな!!?」

「大丈夫。中也以外の人にはしないから。」

「手前・・・!!!」

さっきかららずっとこんな感じである。

「お兄さん達、そろそろ本題に入ろうよ。」

コナンの一声で太宰と中原は口論をやめた。

「そうだね。そろそろ下らない喧嘩は止めて本題に入ろう。」

「何時か手前を死なす。」

「楽しみにしてるよ。」

コナンから見た太宰治の印象は“普通じゃない人”。

笑っている彼を見てはその顔は作り笑いじゃないのかってつい口からこぼれそうになる。

「じゃあ早速だけど・・・・今、武装探偵社ではある男性を保護している。」

「えッ。」

「其れは本当なのか!?」

「うん。本当だよ。」

そう言ってまた彼は微笑んだ。

「その人の名前って分かる太宰さん?」

コナンは身を乗り出して太宰に近づく。

「・・・公安警察官、降谷零。最近は安室透と名乗って喫茶店ポアロで働いているらしいんだよね。」

「!!!」

太宰はコナンの“反応”を見過ごさなかった。

「何?コナン君って降谷君と知り合いなのかい?」

「えっ?」

「だって、降谷零って訊いて驚いていたじゃないか。」

「えっと・・・それは・・・・。」

しどろもどろになっているコナンを見た太宰は“何か”を確信したのか、微笑みながらコナンを見つめる。

「此の場ではお互い隠しごとはなしにしようじゃないか、“工藤新一”君。」

「っっ!!?」

コナンは驚いて次に発しようとした言葉を忘れてしまった。

それに気づいた中原は一人ため息をついた。

「相変わらず手前は其の情報を何処から仕入れてんだよ・・・。」

「ふふふっ・・・秘密。でも、私にかかれば此のくらい朝飯前だ。」

「・・・・。」

コナンは色々探られないようにしていたのに、それをあっさりと見破られたのをきっかけにさらにコナンの中で太宰が“普通じゃない人”になった。

「安室さんは確かに僕の知り合いだよ。でも・・・昨日から連絡がとれないってポアロで働く人に聞いたからすごく心配だったんだ。」

「ふ~ん。じゃあ爆発が起こったのは一昨日の晩ぐらいかな・・・?」

「ばっ爆発?何のことを云ってんだ?」

「嗚呼、実はね或る地下施設で爆発事件が起きたのだよ。其の場に居た者はほぼ死んだ。・・・・たった一人を除いてね。」

「もしかして、それが安室さんなの・・・?」

「大正解!」

コナン君の云う通りだよ!、と親指を立てながらウィンクをしてきた。

「其の地下施設に手前ら探偵社が行ったのは判った。だが、何で其の地下施設で爆発事件が起こったんだ?」

中原の言葉を聞いたコナンも同意するように太宰を見ながら首を縦に振る。

当の太宰は少しだけ真面目な顔で二人を見る。

「其の地下施設にある『butterfly』ってお店で違法取引が頻繁にされているから現場の差し押さえをしてほしいと軍警から依頼がきたから私と敦君と国木田君で行ったのだよ。・・・そしたら、中は酷い有様でね、軍警の調べで後から爆弾の部品が見つかったのだよ。・・・・まぁ肝心の爆発された理由は私には解らないけどね。」

「・・・安室さんはまだ目を覚ましてないの?」

「嗚呼。武装探偵社の専属医が治療を施したから一命は取り留めたけど・・・。」

「そうなんだ・・・。」

 

 

 

しばらくその場に沈黙が流れる―――。

 

 

 

 

 

ピルルルルルルッ

 

 

 

 

 

「あっ僕のだ。」

 

 

 

 

 

 

 

その場の沈黙を破ったのはコナンのスマホの着信音だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コナンは恐る恐るスマホを手に取り、電話にでる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もしもし・・・・・・・はっ服部!?」

 

 

 

 

 

  ▼  ▼  ▼  ▼  ▼

 

 

 

 

 

 

 

米花町を一人駆け抜ける少女、灰原哀は肩で息をしながら辺りを見渡していた。

 

 

 

 

 

「やっぱりもう遅かったのかしら・・・。」

 

 

 

 

 

江戸川コナン――――本当の正体は東の高校生探偵と言われる名探偵、工藤新一の彼に今、“親戚”と言える人物は誰一人としていない。

 

 

 

 

 

「何で工藤君はそんな嘘をついたの・・・?」

 

 

 

 

 

 

そう――――何故そんな嘘を彼がつかなくてはいけなかったのか―――。

 

 

 

 

 

正体を知っている灰原にさえ相談しないのだ。

よっぽどのことがあったに違いない。

 

 

 

 

違いないのだが―――

 

 

 

 

 

「今あなたはどこにいるの・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれっ?お前確か工藤とおんなじ学校に通っとる灰原か?」

 

 

 

 

 

 

―――聞き慣れた関西弁、工藤と口にする人物。

 

 

 

 

 

 

「服部さん。」

 

「何やっとるんじゃ?あっわいが今回米花町に来たのはな、工藤にサッカーの試合のチケット譲ろう思うたからや。電話で伝えよう思うたんやけど、驚かせよう思うたから直接会いに来たってワケや。」

 

 

服部平次――――西の高校生探偵で江戸川コナンの正体を知る数少ない人物の一人。

灰原のことはコナンから話をよく聞いているため服部の方は普通に接しているが灰原自身は服部のことが苦手なためあまり積極的に接しようとはしない。(服部と遠山のことになると話は別なのだが、、、)

 

「無理よ。今、工藤君はどこにいるかさえも分からないの。」

 

灰原が冷たく言い切ると服部は一瞬驚いた表情をしたがすぐに表情を元に戻した。

 

「工藤のやつ・・・また面倒ごとに巻き込まれたんやな。くっそーわいにも言ってくれればいいのに・・・。」

「はっ・・・?言ってる意味が分かってるの?」

「分かっとるで。どこにいるのか分からんのやったらわいらから探しにいけばええやないか。そんなんで引き下がってどないすんねん。」

「・・・・。」

「あいつが困っとるんやったらわいらが手を差し伸べに行くんや。ほら行くで。」

「えっ?」

「お前何か便利なもん持っとったやろ??・・・ほら眼鏡の・・・・。」

「あっ・・・!!そうだわ・・・ちょっと待ってて!すぐに持ってくるから!」

「おっおう・・・。」

 

服部にそこで待つようにと言い残し、灰原は一目散に走り去ってしまった。

 

 

その場に残った服部はそんな灰原の後ろ姿を見つめてはわずかに笑みをこぼした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どんだけ工藤のこと大事に思っとんねん。」

 

 

 

 

  ▼  ▼  ▼  ▼  ▼

 

 

 

太宰がいなくなった武装探偵社では中島や国木田達がずっと降谷のことを見ながら爆発事件や違法取引との関係性について話していた。

 

「未だ目を覚ましませんね・・・。」

「嗚呼、そろそろ目を覚ましても可笑しくないのだが・・・。」

「目を覚ましてもらったら色々なことを訊きたいのにねぇ。」

「まぁ大体は此の超推理で中ててあげるけどね!!」

「あはは・・・。(其れって話訊く意味ないんじゃ・・・。)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・か・・・い・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!!!くっ国木田さん!!」

 

 

 

―――――――――微かに降谷の口と右腕が動いた。

 

 

 

 

それを中島はちゃんと捉えていた。

 

 

 

「大丈夫ですか!?」

 

 

 

 

 

中島が必死になって声をかける。

 

 

 

 

 

 

「・・・・・ここはどこだ?僕は・・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

降谷が意識を完全に取り戻したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「国木田さん!降谷さんが意識の意識がっ・・・!!」

「落ち着け敦!」

「心拍に異常はないから如何やら体は大丈夫みたいだね。」

 

降谷は中島達の姿を見て早々顔色を一気に青色へと変えた。

恐らく本人もこの事態を想定していなかったのだろう。

 

「おっお前らは誰だ!?まさか爆発を起こした犯人グループか!?・・・・・っ・・・。」

 

降谷はすぐにベッドから起き上がり中島達を警戒したが、脇腹に痛みを感じたせいか上手く立てずにその場に倒れこみそうになったところを中島に支えられた。

 

「おっお前らは一体何者なんだ・・・?」

「・・・・僕達は武装探偵社です。軍警では手に負えない荒事の仕事などを引き受けたりする場所なんです。だから安心してください。僕達は貴方の味方です。」

「っ・・・・。」

「取り敢えず蒲団に戻りな。其の状態じゃあ自分で立つことすらままならないからねぇ。」

 

与謝野に促されながら、降谷は渋々ベッドへと戻った。

 

 

「・・・・僕はどのくらい気を失っていた?」

 

 

「推測で大体二日だ。爆風の衝撃が物凄かったんだろうな。無事だった方が奇跡としか思えない。」

「・・・・そうですか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ『butterfly』で遭ったことについて詳しくお話を訊きたいんですけっ「その必要はない。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武装探偵社の医務室の扉の前に立つ青いニット帽を被った男はまっすぐ降谷だけを見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「赤井ッ・・・・!?」

 

 

「降谷君はこちらで引き取らせてもらう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その男の名は―――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――赤井秀一。


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