闇を照らす光   作:れいたん

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第三話

「ねぇ中原さん。」

 

 

「んっ?如何したコナン。」

 

 

「これからどこに行くの?」

 

 

「安全な場所。」

 

 

「・・・・。」

 

 

江戸川コナンは今日出会ったポートマフィアの男、中原中也と一緒に米花町の町を歩いていた。

「具体的に言ってもらわないと安心できないんですけど。」

「そうか?」

「そうです!」

「俺の家。」

「えっ。」

言葉を詰まらせたコナンを見た中原は見下すかのような顔で見つめてきた。

「安心できないって手前が云うから答えてやったのに、何だよその反応はっ・・・。」

そして、腹を抱えて笑い始めた。

「だってっ「コナーン!何してんだー?」

「「!!」」

二人が声のした方を振り向くと、そこにはコナンの現在のクラスメイトである小林元太、円谷光彦、吉田歩美がいたのだ。

「荷物なんかまとめてどこに行くのコナン君?」

「おっお前らこそ何してんだよ。」

「僕達はこれから公園にサッカーをしにいこうと思ってたんですよ。」

「コナンも一緒に来るか?」

「おっオレは・・・これから行かなきゃいけないところがあるから・・・。」

「えっコナン君どこに行くの?」

「何だ?ウマいもん食いに行くのか?」

「元太君よだれたれてますよ・・・。」

コナンが困ってることに気付いたのか、中原は元太達と目線が合うくらいまでかがんで静かに微笑む。

「此奴は暫くの間俺が預かることになったから今から連れて行く処。」

「じゃあコナン学校来ねえのか?」

「そんなに長い間じゃないよ。少しの間だから。」

「そっか・・・。」

やはりコナンが言うよりも説得力はある。

「・・・心配すんなよ。すぐに戻る。」

「ホント・・・?」

歩美のコナンを見つめる瞳に、思わず本音が漏れそうになる。

「じゃあ時間もあれだし、そろそろ行くぞこなっ「あれれ~?其処に居るのはだっさい帽子置き場の中也君じゃないですかー?」

「なっ・・・!?」

さっきまで冷静に対応していた中原が突然態度を一変しはじめた。

不思議に思ったコナンは声のした方を見ると、そこに立っていたのは中原よりは身長も高く、雰囲気も大人っぽい感じなのだが、体の至るところに包帯を巻いている黒髪の男性だった。

その人は何が面白いのか、中原を見ては腹を抱えて笑っている。

「手前っ・・・何で此処に居るんだ!?」

「ちょっとした遠出ー。」

「・・・絶対ェ態とだろ・・・!!」

「え~?真っ坂~!」

「こっ此奴・・・殺す!!」

どうやらかなり因縁深い知り合いのようだ。

また男性を見てみようとコナンが視線を太宰に戻そうすると、偶然にもその男性と目が合ってしまった。

しかも、その男性はずかずかと迫ってくる。

何が何だか全く分からない。

そして、その男性はコナンの前に来たかと思うと先程見せた笑顔とは違う“別の笑顔”でコナンに微笑みかけた。

「・・・・!?」

コナンはその笑顔に今まで感じたことのない恐怖を感じた。

まるで黒の組織の一員に見つめられているかのような―――――。

「今から三人で仲良くお喋りしない?」

「・・・・えっ?」

「なっ何云ってんんだ手前。此方は此方で忙しいんだよ。そんなこと出来る訳ねぇだろ。」

言葉が出ないコナンの代わりに中原が断りを入れると、なぜなのかまた微笑んでいるように見えた。

 

 

 

 

 

 

「仲良くお喋りって云っても、其方と此方の情報交換をしたいだけなのだよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コナンは後に彼が赤井秀一や自分以上の策士だということを思い知らされることになる―――――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ▼  ▼  ▼  ▼  ▼

 

 

 

 

 

「ったく工藤君ったら・・・何で私のランドセルに自分のノート入れるのかしら・・・。

そんな風にぶつぶつ文句を言いながら一人歩く少女、灰原哀は片手にノートを持ちながらある場所へと向かっていた。

「わざわざ持っていく苦労を考えてほしいわね。」

灰原が足を止めたのは工藤・・・・―――――――現在は江戸川コナンなのだが、その彼が住んでいる場所、毛利探偵事務所のビルだった。

「ちゃっちゃと渡して早く帰りましょ・・・。」

ため息をついて探偵事務所へと繫がる階段を上がりながらふと笑みを浮かべた。

 

「こんな平和な日常を私は過ごしてもいいのかしら・・・・。」

彼女は体が縮んでしまう前は黒の組織の一員として、危険な薬剤などを開発していた。

簡単に言えばやってはいけない犯罪行為をしていたのだ。

今、彼女がここにいるのは自分の意志で組織から抜け出し、光の中へと飛び込んでいったからだ。

しかし、黒の組織は裏切り者は何があろうと抹殺をしてくるために灰原自身もそれに恐れ、やはり組織を裏切ったのは間違いだったのだろうか、と考える時期もあった。

でも、江戸川コナンはそんな灰原にずっと声をかけてくれた。

いつも彼に助けられた。

だから、いつか自らの手でコナンのピンチの時に助けてあげたい―――――――でも、、、

「そんなことできるはずないわよね・・・。」

ぽつりと呟くと灰原は探偵事務所の扉を開けた。

「あれっ?哀ちゃんじゃない。どうしたの?」

灰原に気付いて声をかけてきたのは、毛利探偵事務所を営む毛利小五郎の一人娘、毛利蘭。

「江戸川君の忘れ物を届けに来たの。」

「あっ・・・・そうなんだ。」

江戸川君と聞いて彼女の笑顔が歪んだのは気のせいだろうか。

「あのね哀ちゃん。コナン君はね・・・・しばらく帰って来ないかもしれないの。」

「えっ・・・・?」

灰原は蘭の言動に衝撃を受けて思わず声が出てしまった。

「何でなの?」

必死に冷静を保とうとするけれどそれでも動揺は隠せていない。

 

 

黒の組織に見つかったから?

 

それとも、何か大きな事件に巻き込まれた?

 

 

「何かねしばらく親戚の人のお家に預けられることのなったの。」

“親戚”と聞いた灰原は全身から血の気が引いていくのを感じた。

「親戚って誰!?」

急に食いついてきた灰原に驚きながらも蘭はゆっくり話し出す。

「えっと・・・・確か遊川洋輔だったと思うよ。コナン君の両親と親交深いからその関係でこれからしばらくの間面倒見てほしいってお願いされたって言ってたわよ。」

考えが追いつくより先に体は勝手に動いていた。

「あっ哀ちゃん!?」

灰原は後ろから聞こえる蘭の声にあえて反応せずにその場を去っていった。

「工藤君・・・!!」

どういう理由でコナンがこうなったのかは灰原にもわかる訳がない。

―――――けど、これで・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっとあなたを助けることができる。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少女の大きな決意が動き出す――――。


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