闇を照らす光   作:れいたん

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待たせすぎました・・・ごめんなさい。


これからもよろしくお願いします・・・


第九話

横浜の風を身に受けながら、喫茶うずまきに色黒の男とニット帽を被った男が来店した。

 

然し、其の二人は何処か近寄りがたいとういうか、二人の間に漂う空気があまり良いものではなかった。

 

「ほら、ルーシーちゃん。お客さんを案内してあげなさい。」

 

「わっ判りました。」

 

店長に云われ、最近働き始めた給仕の新人、ルーシー・モード・モンゴメリが店に入ってきた二人組の元へ行く。

 

「此方へどうぞ。」

 

ルーシーに案内され、二人組は窓際の席へと案内される。

 

「ご注文がお決まりになられましたらお呼びください。」

 

丁寧にお辞儀をしてからルーシーは其の場から退散した。

 

ルーシーが去った後も尚気まずい空気が二人の間に流れている。

 

 

 

「彼の二人組……如何したんですかね。」

 

「私に訊くな。彼処の二人組は此処に来る事自体が初めてなんだから理由なんて知らない。」

 

「……ですよね。」

 

ルーシーは店長の返しに相槌を打ってから亦彼の二人組を見た。

 

 

すると、何やら其の二人が会話をしていることに気付いた。

 

「此処で大丈夫なのか。ふるっ」

 

「其の名前で僕を呼ぶなと何度云えば判るんですかFBI!!」

 

「君も其れを大きな声で云ってもらうと困る。」

 

「ふんっお互い様ですよ。」

 

FBI……と云えば、米国にある警察機関のことだが何故其の言葉が出てくる?

 

…彼の二人は一体どんな関係なんだ?

 

「全く……あっすみません。」

 

「はっはい。」

 

「珈琲ニ杯お願いできますか?」

 

「畏まりました。」

 

段々雰囲気も和らいできたように見えたルーシーは店長の処に行き、注文を伝える。

 

「ヨコハマにも随分と洒落た店があるんだな。」

 

「…貴方は一体ヨコハマにどういうイメージを抱いていたんですか…。」

 

思わず笑いを零したルーシーは店長に「笑うと可愛いね。」と茶化されてから注文を届けに行った。

 

 

「お待たせしました、珈琲二つです。」

 

「嗚呼、ありがとう。」

 

「ありがとうございます。」

 

 

珈琲をテーブルに置くと二人組の男は優しく微笑んでからルーシーに軽くお辞儀をした。

 

 

「ごっ……ごゆっくりしていってくださいね。」

 

 

其れに応えるようにルーシーも軽く会釈をしてからその場を去っていった。

 

 

 

「ああいう結構顔が良い人が常連になってくれるとこっちも商売上がったりなんだけどねぇ…。」

 

「あははは…。」

 

 

 

店長の戯言を軽く流しながらルーシーは席に座る二人組を只々見つめていた。

 

 

 

▼▼▼▼▼

 

 

 

「あー何でマフィアの送りで探偵社まで行かなきゃいけないのー。私厭なんだけどー。」

 

「じゃあ今すぐ降りろ。手前が居なくなった方が俺も楽になる。」

 

狭い車内の中でくだらない口喧嘩をする太宰と中原にコナンはため息を吐きながら云った。

 

「…後、どのくらいで着くの?」

 

「ん、あぁ……大体十分ぐらいだな。」

 

「そんなに待たなきゃいけないのー?ねぇ、もっと早くできないわけー?」

 

「すっすいません、太宰様……。」

 

運転手を急かす太宰に中原は呆れ顔で云う。

 

「・・・もうちょっと優しく接しろよ手前は・・・。」

 

「私は何時も優しく接しているよ?」

 

「どの口が云いやがるンだよ。」

 

如何やらポートマフィアと太宰さんには何らしかの繋がりがあるみたいだ。

 

じゃなければ、普通はポートマフィアの構成員に偉そうな態度を取れるはずがない。

 

其れに加えて、「太宰様」、と呼ばれるんだ。

 

「・・・・・・太宰さん。」

 

「何だい・・・工藤君?」

 

「・・・太宰さんって武装探偵社に入る前は何してたの?」

 

「・・・・・・ポートマフィア。」

 

「えっ」

 

「ポートマフィアの幹部だったよ。」

 

「・・・・・・・・・えぇぇぇえぇぇえ!!!?」

 

こんな飄々としてる人が非合法組織の一員で、しかも、トップに近い地位??

 

コナンは余りにも吃驚しすぎてしまい、思わず大声を出してしまった。

 

「判るぜお前の気持ち・・・。何でこんな自殺嗜好の男が幹部だったのか、俺にも理解出来ねぇ。」

 

只者ではないと薄々思ってはいたが、真逆元マフィアだったとは・・・。

 

「其れよりも・・・手前の部下は大丈夫なのか?女に殺られそうになったって云ってたが。」

 

「嗚呼、敦君のこと?彼なら大丈夫だよ。与謝野さんもついてるんだし。」

 

「・・・。」

 

────────武装探偵社に向けて出発する直前、太宰の元に同じ職場の“乱歩”から電話がきた。

 

 

 

 

其処で探偵社に謎の女性が来て、降谷零が殺されそうになった処を社員の“中島敦”が庇い、現在意識不明の状態らしい。

 

 

 

幸い命に別状にないらしいが、何時目を覚ますのかは解らないとのこと。

 

「幾ら人虎とはいえ・・・・・・。」

 

「中也敦君のこと心配してるの?うわー蛞蝓の癖に気持ち悪~。」

 

「うっ五月蝿ェ!!!!部下のことを心配するのは普通だろ!!」

 

「はいはい。」

 

「流すんじゃねぇ!!!」

 

「あはは・・・・・・。」

 

────────そうこうしているうちに、ヨコハマの地に車は入っていた。

 

「もう直ぐ探偵社に着きます。」

 

「そうか。」

 

米花町とはまた違った風景にコナンは目を奪われた。

 

 

 

 

────────もし、また此処に来る機会があれば、その時はちゃんと観光してぇな。

 

 

 

 

「・・・太宰。」

 

「なぁに?」

 

「今回の件、面倒か?」

 

「・・・面倒に決まってるじゃないか。」

 

「・・・・・・手前が云うんだから其の通りなんだろうなぁ。」

 

「特に今回は・・・。」

 

太宰はそう云いながら、コナンの方に目を向ける。

 

「・・・・・・?」

 

「・・・・すっごく面倒な探偵君も居るからね。」

 

「・・・はっ・・・はぁ!?おい、其れって如何いうっ」

 

 

 

 

 

 

 

「御三方!!!!危険です!!!!!!!!」

 

 

 

 

「「「え」」」

 

 

 

 

運転手がそう叫んだ途端、車体が突如浮いたのだ。

 

 

 

 

 

否、突如浮いたというよりは車体を“何かが貫いて其の儘浮いた”と云った方がいいだろう。

 

 

 

「糞っっ!!!!捕まれ工藤!!!!」

 

「おっおう!!」

 

此の儘じゃ危ういと思った中原は慌ててコナンの腕を掴み車から飛び出した。

 

其れに続いて、太宰も飛び出す。

 

「うっ運転手は!?」

 

「彼なら既に死んでいた。全く残忍な手口だね。」

 

「・・・・・・死んだ?」

 

「残念ながらね。」

 

 

 

 

 

 

さっきまで一緒に居た人間が、彼の一瞬で死んだというのか。

 

 

 

 

「あーあ。遣り損ねちゃった。だからもうちょっと深くいけって云ったのに。」

 

「其れだったら全員殺すことになるじゃないか。お前はseventhが云っていたことを忘れたのか?」

 

「忘れてまーせーん。」

 

車から脱出したコナン達(たち)の目の前に現れたのは黒いマントを纏った老人と可愛らしい姿の青年だった。

 

「まー結果オーライってことでいっか。」

 

「・・・・・・矢張りお前と来るべきじゃなかった。」

 

彼らが森が云っていたfeintの一員なのか。

 

「手前らが・・・feintの奴らか。」

 

「えっ・・・そうだよ!!僕達がfeintの幹部だよ!!!因みに僕はfifth!」

 

緊張が走る場面でも顔色一つ変えない青年は陽気に告げる。

 

「嗚呼、そんなこと如何でもよかった!………ねぇ、酷いことしないからさぁ…“クドウシンイチ”を此方に寄越してよ。」

 

体が強張った。

 

「(…此奴らの狙いは矢張り俺…。)」

 

コナンを庇う様に前に出た太宰と中原は目の前に居る二人を睨みつける。

 

「君達みたいな連中に渡すと云う輩が居るとでも思ってるのかい?」

 

太宰の纏っている雰囲気が先程とは一変して、思わず鳥肌が立ちそうになった。

 

「……だよねー!そんな簡単に渡してくれるわけないよねー!!」

 

然し、青年は笑いながら其の言葉を受け止める。

 

「……。」

 

此の男は一体何を考えているのかコナンには理解が出来なかった。

 

 

 

 

何でそんなに笑っているのか、何でそんなに余裕な顔をしていられるのか。

 

 

 

 

「ならば此方も強硬手段でいかせてもらう。」

 

そう云うと老人は右手を上に上げた。

 

 

 

 

 

 

「“地”に落ちよ。」

 

 

 

 

 

 

────────────そしたら、突然先程まで頭上にあった車が落ちてきた・・・・・。

 

 

 

「……っ糞!!」

 

 

 

 

間一髪の処で全員避けたので誰も怪我はしなかったが、若し車の下敷きになっていたら……────

 

 

 

「…工藤、下がってろ。太宰、手前はちゃんとそいつを守ってろよ。」

 

「中也に指図されるのは気に食わないけど…判ったよ、“相棒”。」

 

「けっ‥‥都合のいい時だけ云いやがって…。」

 

太宰とコナンが離れると、中原は長外套を脱ぎ捨てて一人敵陣へと歩んでいく。

 

「だっ太宰さん!」

 

「何だい工藤君?」

 

「あんなのに一人で挑むなんて無茶だ!!」

 

相手は拳銃や剣じゃない…力・を持った人間だ。

 

普通の人間が立ち向かったら間違いなく即死だろう。

 

「……工藤君。」

 

…でも、太宰は一切焦っていない。

 

「中也の力・を甘く見てもらったら困るよ。…あんな蛞蝓だけど、実力はポートマフィアの中でも随一を誇るんだよ?」

 

逆に余裕に満ち溢れた顔をしている。

 

其れはまるで彼を心から信頼しているかのような──────

 

「我の異能の前に散れ。」

 

突然老人はマントを翻し、右手を突きだす。

 

 

 

其れにつられるかのように、地面がうねって中原に襲い掛かる。

 

「あんなのくらったら…死んじまう。」

 

「まあまあ工藤君。見てたら解るよ、私の云っていることの意味が。」

 

 

対して中原は至って冷静な顔で立っている。

 

 

「……“重力操作”。」

 

 

 

 

微かにそう呟いた中原は次の瞬間、思いっきり“尖った動く地面”を殴った。

 

 

 

 

 

 

 

──────────すると、一瞬で“地面が砕け散った。”

 

「……っ!!?」

 

 

 

此れには敵も驚いたらしく、瞳孔が開いている。

 

 

 

「だから云っただろ工藤君。中也を甘く見てもらったら困るって。」

 

「中原さんも異能力者だったの?」

 

「嗚呼そうだよ。私もだけど。」

 

 

 

場慣れした雰囲気に、さっきの“異能力”─────

 

 

 

「すごい…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「此れだけで終わりか?…なら此方もいかせてもらうぜ!!」

 

 

 

中原さんの言葉を合図に二人組の周りがミシミシと音を立て始めた。

 

 

 

 

 

「此れが……重力使いの異能力者の力か。」

 

「おっ……重いぃぃぃ…。」

 

 

 

 

流石に此れには耐え切れないみたいだ。

 

 

 

 

 

「さぁ、手前らを如何してやろうか…。」

 

 

 

一気に形勢逆転した。

 

 

流石、一角の組織の幹部を担う男といった処だろうか。

 

 

 

 

 

「此の儘いけば………。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふっふふ。あはははは!!」

 

 

 

 

 

 

後少しという処で青年は突然笑い出した。

 

 

 

「なっ何が可笑しいんだ!!」

 

「いやぁ、此れから君が『大事な“相棒”に殺されかける』と思うと面白くてつい……!!」

 

「手前……一体何を云って…!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから……“其の儘”の通りだよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────何でだ。

 

 

 

 

 

 

 

何でこうなっているんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────如何して、如何して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だっ……だざっ…い……てめ…え…!!」

 

「すまない……中也……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────誰か、嘘だと云ってくれ。

 

 

 

 

 

 

 

「っ……中原さん!太宰さん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────“太宰さんが、中原さんを刺しているなんて。”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ……。」

 

 

 

 

 

コナンは動けずに其れを見ることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕の異能力に勝てる奴なんていないんだよ。」


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