ニンジャスレイヤー・バーサス・マジカルガールハンター   作:ヘッズ

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最終話 ニンジャスレイヤー・アンド・マジカルガールハンター・バーサス・ニンジャマジカルガール#7

◆フォーリナーXXX

 

 これはあの時の感覚に似ている。ネットを見ていて面白そうだとビビッときて、予約したゲーム発売日に店からダッシュで家に帰って3時間ぐらいプレイして、思ったより面白くなさそうと内心で思い始めている感じだ。

 フォーリナーXXXは魔法によってキンカクテンプルからニンジャソウルを憑依させ、元々憑依したニンジャソウルに加えて、合計6つのニンジャソウルを憑依させていた。

 

 新たに憑依したソウルにどのような力があるかと早速試した。キンカクテンプルには様々なニンジャソウルが入っている。ニンジャクランの創始者や神話のモチーフになったようなアーチ級のニンジャも居れば、ジツすら使えない名もなきレッサー級のニンジャも居る。

 そしてどのソウルが憑依するかは完全にランダムである。伝説の格闘家にレッサーニンジャのソウルが宿ることもあれば、社会の底辺のような人間にアーチニンジャのソウルが宿ることもある。

 だがフォーリナーXXXは魔法によってソウルの格をある程度選別していた。結果グレーターのソウルを4つとアーチのソウルを1つ選び、グレーターの4つを試す。結果どれも好みのジツを有していた。

 魔法少女の魔法には能力バトル物の作品に出てきそうな、難解で使いにくそうな魔法もある。ジツにもそういった類のモノが有ったとしても、1つぐらいは悪くはないが、性格的にシンプルに強く破壊力もあり派手なジツや魔法が好みだった。

 

 そしてメインイベントである1番力が強いソウルの力を試す。4つは好みのジツであり流れは来ている。これも自分好みのジツだろうと期待感は高まっていた。だがその期待感は一気に消え失せる。

 ジツを使うと何かが現れた。召喚系のジツは好みではある。だが召喚した者が明らかに好みでは無かった。身長は140センチ程度、オレンジ色の瞳に黒一色の非人間的肌、頭のてっぺんから青い炎が吹き出ている。意志や知性があるのか、キョロキョロと周りを見つめている。その表情は実にバカっぽい。

 

 人型ならイケメンや美女、獣型なら虎やライオンやドラゴンなど強そうで見た目がカッコイイのが良かった。目の前の人型には威厳も強さも何一つ感じられない。

 

「あ~、とりあえずそこの廃車を殴ってみろ、分かるか?それだよ」

 

 フォーリナーXXXはやる気なさげにグレーのトラックを指さす。召喚物は指示に従うように廃車に近づく。最低限の知性はある。だがそれは備わっていて当然であり、加点ポイントにならなかった。

 

「イヤーッ!」

 

 召喚物はカラテシャウトを発しながら殴る。扉にクレーターのような大きな跡が生じ、トラックは吹っ飛ぶ。フォーリナーXXXは思わず目を見開く。

 ニンジャ魔法少女になって身体能力は上がった。並のニンジャや魔法少女なら素手の勝負なら勝てる自信はある。その自分より数段は強いのを肌で感じ取った。

 

「キヒヒヒ、間抜け面だがやるじゃねえか」

 

 フォーリナーXXXは嬉しそうに手を叩きながら近寄る。召喚物も褒められたのが分かるのか甲高い声を出しながら満更でもない表情を見せる。

 召喚物に最も必要な要素は強さだ。いくらカッコよくても強くなければ意味がない。その意味ではこれは合格だ。間抜け面も愛嬌のある顔に見えてきた。

 

「さてと、召喚の儀式としゃれこむか、まずはワタシには絶対服従だ!従順の意を示す意味を込めて、この世界の風習に合わせてドゲザしろ」

 

 フォーリナーXXXは身振り手振りで土下座のやり方を教える。

 ジツの性質上召喚物が主人を裏切り害を及ばないのは無いのは感覚的に分かっていた。だが言霊という概念が有るように、一度行動することで縛りが強固になるよう気がしていた。そしてマンキヘイは指示された通り土下座する。

 

 

「次に名前だな。なんにするかな~?」

 

 フォーリナーXXXは顎に手を当て悩まし気な声を出す。頭に自然と浮かび上がると思っていたがそうではなかった。ならば自分で考えなければならない。

 

「よし、お前は今日からマンキヘイだ!」

 

 フォーリナーXXXの言葉にマンキヘイは気に入ったのか力強く返事する。ドイツ語とか神話に即した名前にしようとしたが、あまりしっくりこなく。強い、一騎当千、千より位の大きい万、連想ゲーム的な発想を繰り返し、万騎兵、改めマンキヘイという名前を思いついていた。

 

「あと間抜け面はまあ許すとしても、ちょっとダサいな」

 

 フォーリナーXXXは魔法の袋から乱雑にアイテムを取り出し広げる。今のマンキヘイは何もつけていない素っ裸だ。別に使い魔が裸だろうか気にしないが姿はカッコ悪い。人が着るような服ではなく、鎧のようなものをピックアップして取り出すが、似合わないかセンスに合わないものしかなかった。

 

「おっ、これはどうだ」

 

 あるアイテムを取り出しマンキヘイに装着する。それは青色と銀色を基調にしたヘルムで頭頂部には小さな煙突のようなものがついていた。

 

「うん、いい感じだ」

 

 フォーリナーXXXは満足げに頷く。カッコよく、頭頂部の炎も丁度良く煙突部分を通れるようになっている。

 

「やるよ。大事に使え」

 

 その言葉にマンキヘイは嬉しそうに飛び跳ねる。その様子に思わず釣られ笑いをしていた。それからマンキヘイと2人で戦うようになる。

 フォーリナーXXXは連携して戦えなかった。気質も自分勝手で環境的にも異世界という味方も知り合いも居ない状況で戦い続けた。状況的に集団戦闘をしたこともあったが味方に合わせる気も連携する気もさらさら無く、1人で戦い続けてきた。

 人に合わせるというのは自分を束縛すると同じであり不自由であった。自由を欲するフォーリナーXXXとしてはストレスが非常に大きかった。

 だがニンジャ魔法少女、正確にはマンキヘイを召喚出来るようになってからは違った。マンキヘイと戦う時は一切周りに気を遣う必要はなく、自分がして欲しい事をしてくれ、自分がやってもらいたくない事をやらなかった。

 結果的には連携して戦え、2人の力は足し算ではなく掛け算のようになる。他人と力合わせてより大きな力を発揮する快感を初めて知る。

 

 それからアマクダリ打倒の戦力強化のために多くの異世界に足を運び、アイテムゲットの為に数多く戦闘をする。

 その際にマンキヘイを生かす戦いをする場面もあった。サポートするというのは自分の意志を抑え込む不自由だ、ニンジャ魔法少女になる前には到底考えられなかった。だがマンキヘイならサポートしても良いとすら思えていた。

 マンキヘイとの連携で力を発揮できるのはジツの性質によるものだった。ジツを使う者の思考を読み取り召喚されたカラテデミ人形が合わせる。ソウルの元であるマギカ・ニンジャかつてはカラテデミ人形と連携し、同じように力を発揮していた。

 

 仮にフォーリナーXXXとは違う人間にマギカ・ニンジャのソウルが宿ったとしてもある程度力を引き出せれば、同じように連携し大きな力を発揮できる。だがフォーリナーXXXはそうとは思わず、自分とマンキヘイは特別で、自分達だからこれ程の力を発揮できると考える。

 いつしかフォーリナーXXXにとってマンキヘイは戦闘の為のユニットではなくなっていた。戦闘以外でもマンキヘイを召喚し続け共に過ごした。異世界でもネオサイタマでもそれは変わらなかった。

 

「嘘だ!嘘だ!嘘だ!」

 

 フォーリナーXXXは思わず叫ぶ。恐竜のような生物が道路を走り、その上に乗る女性がヒステリックに叫ぶ。スノーホワイト達がいた世界であれば誰もが目を向ける非日常的な光景であるが、ネオサイタマにおいて珍妙な行動や恰好をする変人は履いて捨てる程いる。数少ない通行人は一瞥するとIRCのサイバースペースに意識を向ける。

 先程まで苛んでいたエネルギー吸収が唐突に終わる。それはマンキヘイがエネルギー吸収する必要が無くなった。つまりマンキヘイが敵を打倒した何よりの証拠である。そう脳内で結論を出す。だがその結論は間違っていると気づく。

 マンキヘイと繋がっている感覚が切れた。この感覚はマギカ・ニンジャのソウルが宿り、初めてマンキヘイを召喚した時から続いている。実験でどこまで実体化し自立行動できるかを確認した際にマンキヘイが何十キロ遠くに移動しても感じられ、召喚していなくても感じられた。こんな事態は初めてだ。

 マギカ・ニンジャで生み出したカラテデミ人形は一度破壊されれば二度と生成できない。この厳しい条件が有ったからこそ高いカラテを有していた。

 

「違う!違う!違う!そんな訳があるもんか!」

 

 脳内に浮かぶ答えを口に出して否定する。でなければ浮かんだ答えが全身に染みわたり事実になってしまいそうだ。

 フォーリナーXXXはリンクの残滓からマンキヘイを追跡すると、上の方から残滓を感じたので恐竜のような生物を魔法の袋に仕舞うと、ネオン看板を足場にしてビルの屋上に駆け上がり、ビルつたいに移動する。

 その間も体の内に空いた穴が大きくなっていくような感覚を覚え、必死に開かないように抵抗していた。

 

 すると残滓が最も濃い場所に辿り着く。そこら辺一帯は酷く荒れ激しい戦闘があった事を物語っていた。

 そしてある物が視界に飛び込み思わず駆け寄る。床一帯は蜘蛛の巣状にひび割れている箇所は何個も有ったが、そこが最も破損が大きかった。

 その中心地に黒い球体と銀色の何かの欠片があった。それらには見覚えがある。黒い球体は異世界で見つけマンキヘイに埋め込んだバフ装置、銀色の欠片は最初に渡したヘルムの欠片だ

 フォーリナーXXXは膝をつき両手で球体と欠片を掬い上げじっと見つめる。体の中に空いた穴が広がり、喪失感が一気に押し寄せる。この感覚はなんだ?今までの経験から今の感覚を検索する。

 

「そっか、悲しいのか」

 

 フォーリナーXXXはポツリと呟き目から涙が零れていた。

 

 芽田利香に友達は居なかった。病気になる前は周りから見えれば友人と呼べる間柄の人間は居た。だが本人にとって褒めたたえ気持ちよくしてくれる存在に過ぎず、病気になってからは自然に離れていった。

 

 フォーリナーXになってもそれは変わらなかった。雇い主とはプライベートな関係はなく、ビジネスのみの関係だった。

 魔法少女には戦闘で強くなりたいという志を持った魔法少女達が集まる魔王塾など、サークルやグループが存在する。

 他にも定期的にイベントが開催され、そこで知り合いを作りコネクションを形成する魔法少女もいる。しかしそれは正規の魔法少女の場合だ。

 フォーリナーXは正規の試験を合格し認められた魔法少女ではない。

 ある魔法少女が勝手に魔法少女にしたのであり、魔法の国から公式に認められた魔法少女ではない。

 そんな者がイベントや寄り合いに参加すれば非公式の魔法少女であると即座に発覚する。それを見越し雇い主は魔法の端末に細工をし、意図的に横のつながりを消していた。

 

 異世界でも友達は居なかった。人類と遜色ない生物も居たが異世界人は魔法少女と比べれば下等生物であり、人が猿と友達になれないように異世界人は搾取し支配すべき存在であると認知していた。生まれてから喜怒哀楽は全て1人で完結し、分かち合うことは無かった。

 しかしマンキヘイが召喚出来るようになってからは違う。体感時間では1年も満たない時間だったが様々な体験をしてきた。

 アイテムを奪うために神殿を荒らした時はマンキヘイが余計な事をしたせいで、トラップが作動しかなり面倒だった。

 バフ装置の性能テストの為にその世界の最強と呼び声高いギルドを襲撃し、強者たちの誇りや自信が粉々にされた時の表情はゾクゾクした。

 マンキヘイに毒見させた時にあまりにも不味く、のたうち回っているのがオモシロく腹筋が攣る程笑った。

 逆に毒見させて大丈夫そうだと安心して食べた物が死ぬほど不味く、のたうち回っている様子を見てニヤついているマンキヘイを見て心底ムカついた。

 振り返れば、芽田利香やフォーリナーXとしての数十年の記憶より、マンキヘイと過ごしたフォーリナーXXXとしての思い出の方が鮮明に覚えていた。

 

 マンキヘイとの関係を言葉にしろという質問されたとして、先程までであれば答えに窮するだろう。しかし今ならハッキリと答えられる。友達だ。

 自らのジツによって生み出され言葉も交わせない存在に友情を抱く。傍から見れば歪で憐れで人形遊びのように見えるだろう。だが他人に指摘されようが答えは変わらない。

 マンキヘイと過ごし体験を共有する楽しさと喜びを知った。長年好き勝手過ごしても満たされないのを感じていた。その満たされない物は共有する友達だった。

 

 そしてたった1人の友達は死んだ。

 

 

「イヤーッ!」

 

 マンキヘイとの思い出に浸る間もなく声が聞こえてきた。

 

◆◆◆

 

「スゥーッ……ハァーッ……」ニンジャスレイヤーはマンキヘイが消えた場所から球体を拾い上げるフォーリナーXXXを物陰から見ながらチャド―の呼吸をする。この場に居るということはスノーホワイトは戦いに敗れた。そして対面した時のアトモスフィアからしてカイシャクせずに見逃す慈悲はない、スノーホワイトは死んだ。無慈悲な結論を出す。

 

未来ある若き少女が死んだ。感傷的になると同時にニンジャへの憎しみが込み上げるがヘイキンテキを保ちながらフォーリナーXXXを観察する。マンキヘイは恐るべき相手だった。受けたダメージは深く、ニンジャスレイヤーはフォーリナーXXXを追うより、ダメージの回復を優先した。その最中ニンジャ感知力がフォーリナーXXXの接近を感じ取る。

 

すぐさまニンジャ野伏力を高め物陰に身を隠す。すると数秒後にフォーリナーXXXが現れた。アトモスフィアから動揺や混乱を感じる。ヘイキンテキを失った状態ではニンジャ感知力は発揮できず、フォーリナーXXXはニンジャスレイヤーの存在を全く発揮できていなかった。

 

フォーリナーXXXはマンキヘイが消滅した場所で足を止めると何かを拾い上げ、何かを呟くと同時に一筋の涙が零れた。「イヤーッ!」その瞬間チャドーの呼吸で抑えていた感情の高ぶりを一気に開放しスリケンに込めて投擲する。もし読者の中にニンジャ歴史学に詳しい方がいればスターリングラードの戦いを想起せずにいられないだろう!

 

かつてスターリングラードの戦いにおいてロシア軍にいた狙撃手ザイツェフは狙撃によって225名のドイツ兵を倒したと記されている。そしてザイツェフはニンジャであり、銃ではなくスリケンによって1000名以上のドイツ兵を殺害した。主な方法はドイツ兵を敢えて生かす。また死体を辱め傷つけた状態で放置し駆けつけた兵士をスリケンで殺す。

 

その非人道的な方法により多くのドイツ兵は死に、死なずとも同僚が拷問めいてスナイプされる様子を見続けた記憶は精神を傷つけ、多くの兵士を再起不能にさせた。またその邪悪なミームは受け継がれ、ドイツ軍を徹底的に苦しめる。もしザイツェフ・ニンジャがいなければ世界二次大戦の終戦は数年遅くなったと言われるほどである。

 

ニンジャスレイヤーはその邪悪なミームを無意識に実践した。マンキヘイの遺品であるアイテムを敢えて放置し、見つけ動揺したところにアンブッシュスリケンを投げ込む。ブッダ!何たる無慈悲な所業!ニンジャを殺すにはここまで非道にならなければならないのですか!?

 

スリケンがフォーリナーXXXのこめかみまで数インチにせまる!「イヤーッ!」フォーリナーXXXは膝を突きながらバレリーナめいて背を逸らす。スリケンはネオサイタマの夜空に消える!アンブッシュ失敗!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは物陰から飛び出しジャンプし頭上からフットスタンプ!アンブッシュは続いている!

 

「イヤーッ!」フォーリナーXXXはワームムーブメントで頭をスイカめいて粉砕されるのを回避!そのままバックフリップで距離を取る。ニンジャスレイヤーは追撃をやめて手を合わせてアイサツする。「ドーモ、フォーリナーXXX=サン、ニンジャスレイヤーです」「ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン、フォーリナーXXXです」

 

アンブッシュで仕留めきれなければ一旦手を止めアイサツする。それはかつてニンジャの祖であるカツワンソーにコブラ・ニンジャがアンブッシュについて抗議した際に決めたルールであり、古事記にもそう記されている。「マンキヘイを殺したな?」「そうだ。スノーホワイト=サンは?」「死んだ」

 

2人は淡々と言葉を交わす。一見落ち着いているが、互いの双眸には決断的な殺意が宿り、メルトダウンめいて憎悪の熱が上昇する。片や友を殺したニンジャ、片やモータルを虐げる邪悪なニンジャ、生かす理由は何一つなし!『怖くない。正当な経済行為、返済プランは無限大、皆で借りようふわふわローン』空から欺瞞宣伝放送が流れる。

 

「「イヤーッ!」」両者が同時に動く!フォーリナーXXXは右手を魔法の袋に突っ込む!それを見越してニンジャスレイヤーは右手に向けてスリケン投擲!右手に当る前にフォーリナーXXXが大剣を取り出し弾き、それと同時に横薙ぎで切りつける!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは左手でヌンチャクを取り出し弾く!

 

「グワーッ!」だが大剣を弾ききれず太腿が切り裂かれる!「イヤーッ!」「グワーッ!」ボトルネックカット切り!「イヤーッ!」「グワーッ!」右逆袈裟切り!ニンジャスレイヤーの身体が切り裂かれ血が濡れた床にしみ込んでいく。ニンジャスレイヤーは眉を顰める。左手に残る重い衝撃、攻撃のスピード、明らかにカラテが増大している。

 

「ヌゥ…」ニンジャスレイヤーの視界が歪み、斬られた箇所が緑色に染まる。ニンジャスレイヤーはホロビ・ニンジャクランのドクジツに対してチャドーの呼吸で解毒していた。だからこそジツが付与された斬撃を受けても戦えた。だが今はチャドーの解毒力より相手の毒の方が上回っていた。ジツの威力が増している。 

 

これも異世界のテックか?だがニンジャスレイヤーの想定とは裏腹に異世界のアイテムは一切使っていない。ならば何故カラテとジツが増しているのか!?この場にもし魔法少女愛好家ピティ・フレデリカが居たとすれば、この現象を理解すると同時に素晴らしいものが見られたと喜びに打ち震えるだろう!

 

魔法少女とニンジャの違いの1つとして、感情による強さの振れ幅がある。魔法少女は想いの強さで強くなる。勿論日々の鍛錬や才能によるカラテの差によって勝敗が決まる。だが思いの強さによって爆発的に強くなり、一種のカラテドーピングにより強敵とのカラテ差を上回り倒すケースも稀に存在する。それは魔法少女の間では『覚醒』と呼ばれている。

 

 

マンキヘイに対する親愛、友を失った悲しみと憎しみ。それらの強い感情が混ざり合い覚醒を促したのだ。オオ、ブッダよ!何故このような邪悪な魔法少女にカトゥーンのヒーローめいた力を与えたのですか!?

 

「イヤーッ!」フォーリナーXXXの猛攻は続き、ニンジャスレイヤーのシノビ装束が赤く染まっていく。まだ致命傷は受けていない、だが防御に集中しているからであり、それもダメージと疲労によって限界は見えている。このままではジリー・プアー(訳注・徐々に不利)なのは明らかだ!

 

フォーリナーXXXは大剣を振るいながら魔法の袋に手を入れて放り投げる。これはスノーホワイトを苦しめた人形だ!いまのフォーリナーXXXにかつてのサディストめいた加虐嗜好はない、マシーンめいて無慈悲に獲物を追い詰めるメキシコライオンだ!人形によってニンジャスレイヤーの防御はさらに崩されていく!

 

「ヌゥ!」人形の拳が足の甲に刺さる!そこはキンナカラテで使われるテンケツと呼ばれる箇所であり、通常の数倍の痛みを感じてしまう。そのテンケツに偶然にも攻撃が当ってしまう。それは致命的な隙を生む。フォーリナーXXXは腰を捻る。狙うはニンジャスレイヤーの首、ハイクを詠ませる時間すら与えないつもりだ!

 

回避は不可能、防御しようにもブレーサーはマンキヘイとの戦いで破壊され、ヌンチャクもフォーリナーXXXの猛攻によって破壊された。防ぐ手立てはない!フォーリナーXXXの剣が断頭台の刃めいて迫る。ニンジャスレイヤーは感覚を鈍化させ防ぐ手段をニューロンから探すが見つからない!

 

ナムサン!ネオサイタマの死神はニンジャ魔法少女によってインガオホーを迎えてしまうのか!?ニンジャスレイヤーのニューロンが高速稼働する。ニンジャへの憎悪がハイクを詠む時間すら惜しみ殺す術を探す。左目の端から何かが駆け上がるのが見える。その何かは何かを投げる。ニンジャ動体視力は槍めいた武器であると判別する。

 

その槍はフォーリナーXXXの大剣を弾く。ニンジャスレイヤーは即座にバック転で間合いを取る。「グワーッ!」フォーリナーXXXが吹き飛ぶ。駆けあがった何かの飛び蹴りを喰らっていた。そして何者かは弾かれ宙に浮かんでいた槍めいた武器を手に取り構える。ニンジャスレイヤーにはその姿に見覚えがあった。

 

ピンク髪のショートヘアー、学生服めいた白い服、腰元やカチューシャについた花が飾り。その目には冷静さと情熱が混ざり合った決断的な意志が籠っている。一方フォーリナーXXXはニンジャスレイヤーを追い詰めていた無慈悲なメキシコライオンの表情ではなく、オーボンフェスに先祖のオバケを見た子孫めいた表情をしていた。

 

「なんでお前が居るスノーホワイト!」「どーも、フォーリナーXXXさん、スノーホワイトです」魔法少女狩りのエントリーだ!


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