ニンジャスレイヤー・バーサス・マジカルガールハンター   作:ヘッズ

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最終話 ニンジャスレイヤー・アンド・マジカルガールハンター・バーサス・ニンジャマジカルガール #3

 

◇ファル

 

 フォーリナーXXXの居場所を探り出して、こちらから仕掛ける。メッセージが届いてから暫くして2人から提案を受ける。

 それは予想外の提案だった。ニンジャスレイヤーの傷はまだ完治しておらず、てっきり万全の準備を整えてから指定された場所で戦うと思っていた。

 だが悪くはない提案だ、指定された場所にどんな罠が仕掛けてあるか分からない。そして指定場所に向かう時点で相手のフィールドに誘い込まれている。わざわざ相手のフィールドに行く必要はない。

 しかし今まで見つけられなかった相手を残り2日間で見つけられるだろうか、徒労に終わりそうな気がするがやるだけのことはやってみる。ファルは全機能をフォーリナーXXX捜索に費やす。すると半日で所在を割り出せた。

 きっかけはネットワーク上でやけにハッキングで荒らしまわっている存在がおり、気になって調べるとフォーリナーXXXだった。ハッキングの痕跡を辿っていくとあっさりアドレスが割り出せ、所在も割り出せた。

 今まで探すのに苦労したのにこうもあっさり割り出せるとは、あまりの順調さに肩透かしを喰らった気分だ。恐らくニンジャ魔法少女になってコトダマ空間への適性を身に着けて、子供が玩具で遊ぶようにハッキングしていたのだろう。

 慎重さがまるで足りない、それか居場所を割り出されても返り討ちにできるという自身の能力への自信か、どちらか知らないがニンジャ魔法少女になってくれたことで居場所を割り出せた。能力を持つのも考え物かもしれない。

 強固なプロテクトを破っているところを見るとかなりのタイピング能力であるのは分かる。だがあまりにも雑だ。最低限痕跡を消しているがファルから見れば筒抜けだった。超一流の素人、それがフォーリナーXXXのハッカーとしての印象だった。

 プロテクトを破るいわば攻撃力は凄まじいが、アドレスが割られないようにする偽装工作などをする技術、いわば守備力が弱い。この様子だとアマクダリのヴィルスバスターに察知されて刺客を差し向けられているかもしれない。

 今すぐにでも居場所を教えて奇襲を仕掛けていいが、そういう訳にもいかない。スノーホワイトの魔法で、フォーリナーXXXは2人の動向を監視している生物を配置しているのが分かった。ニンジャスレイヤーの手裏剣なら目を潰すことは可能だが、即座に異変を察知し移動することも考えられる。

 それを2人に相談するとニンジャスレイヤーがナンシーに相談し、答えが返ってきた。

 フォーリナーXXXにハッキングを仕掛け、対応している間に奇襲を仕掛ける。ハッキングは片手間にできるものではない。さらにヤバイ級のファルがハッキングを仕掛ければ全力で対応しなければニューロンが焼かれる。その間は監視装置を見る余裕はなく異変に気付かない可能性は充分にある。

 念には念を入れる為にナンシーへの助力を依頼し、幾つかのハッキングを手伝うという条件付きで承諾してもらった。

 そして依頼をこなしてネットワークに網を張る。暫くするとフォーリナーXXXのIPアドレスがハッキングしたのを察知する。即座に所在を割り出す。

 

「場所はマゴコロテイネイ社だぽん」

「イヤーッ!」

 

 返答代わりにニンジャスレイヤーが窓から手裏剣を投擲し、スノーホワイトが頷く。これで目は潰れた。

 2人は即座にアジトを出ると自律走行してきたバイクに乗り目的地に向かい、超人的な走行技術でトラックや車の間をすり抜けていく。このスピードで走れば目的地まで約10分。その間まで引き付ける。

 ファルはフォーリナーXXXが侵入したネットワークに先に侵攻し、防衛プログラムに偽装し攻撃を仕掛けた。

 相手もコトダマ空間認知者だけあってヤバイ級ハッカーの実力はあった。同じヤバイ級であるが負ける気はしなかった。電子妖精はいわば電子の申し子だ。ニンジャ魔法少女であっても電脳戦で負ければ存在意義を失う。

 数回の攻防で相手の実力を見切る。タイピング能力は互角、だが経験や老獪さがまるでなくいかにもハッキングを始めて数日ですという拙さがあった。さらに今はナンシーのサポートもある。ニューロンが焼き切られる可能性はコンマ数パーセントだ。

 強制ログアウトされないように適当に煽りながら相手して時間を稼ぐ。そうしている間に2人は目的地にたどり着き、スノーホワイトの指示で外壁を駆け上がり4階に駆け上がり、窓を突き破る。

 目的は達成した。本当ならログアウトしてよかったがニューロンを焼き切れない代わりとばかりにフォーリナーXXXの論理肉体の両腕を吹き飛ばす。

 これはスノーホワイトを傷つけた怒りか、自身を使ってスノーホワイトを傷つけさせた怒りか、電子妖精らしくない感情を抱いていると自嘲しながらログアウトした。

 

◆◆◆

 

「ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン、フォー……」フォーリナーXXXが頭を下げた瞬間スノーホワイトは攻撃を仕掛ける!ブッダも言葉を失ってしまうほどの卑劣な攻撃だ!先にオジギし、オジギを返す瞬間を狙う。ニンジャの本能を利用した攻撃であり、あのモータルでありながらニンジャを殺害しているヤクザ天狗も使用しているメゾットだ!

 

フォーリナーXXXは攻撃が届くコンマ数秒前にアイサツをキャンセルし攻撃を躱す!表情に怒りの感情が刻み込まれている。「クソが!折角準備してたのに台無しだ!普通は大人しくスタジアムで戦うだろう!」「イクサとは不確定要素で満ちているケオスだ、俺達はオヌシの思惑で動くショーギのコマではない」

 

「折角ドラマチックに殺してやろうと思ったのに!何で慈悲が分からない!」「では慈悲としてオヌシを何のドラマも無く無残に爆発四散させてやろう」「負けたくせによく言う!」フォーリナーXXXは血管を浮かべながら怒りで目を見開く。「その言葉をそっくり返そう。今しがたニューロンを焼き切られそうになって敗戦兵めいて強制ログアウトしたのだろう」「なっ!」フォーリナーXXXは言葉を失いさらに怒りで目を見開く。シンラツ!

 

言葉で相手のセイシンテキを崩すのもまたカラテなり!ニンジャスレイヤーの言葉によってフォーリナーXXXのヘイキンテキは大きく崩された。「もうここで死ね!マンキヘイ!」フォーリナーXXXはジツでマンキヘイを召喚する。堪忍袋は完全に温まっている!

 

「イヤーッ!」マンキヘイが実体化した瞬間に赤黒の弾丸めいた物体がぶつかり、窓ガラスを破りロケットめいた勢いで飛び出していった!怒りによってヘイキンテキを乱されたフォーリナーXXXは思わぬ事態に理解が追い付かない。そして眼前には刃が迫っていた。

 

♢スノーホワイト

 

 スノーホワイトはフォーリナーXXXの一瞬の隙を即座に察知し、ルーラで喉元への突きを繰り出す攻撃を繰り出した。

 フォーリナーXXXは強い。戦闘能力は荒事が得意な魔法少女級はあり、異世界のどんなモノが出てくるか分からず、下手したらアイテム1つで魔法少女の固有魔法のような効果を発揮する可能性もある。

 だが何よりも脅威なのはジツで呼び出したマンキヘイによるコンビネーション攻撃だ。

 阿吽の呼吸と呼べるほどの息が合ったコンビネーション攻撃、あれほど息が合った攻撃を出来る魔法少女は居ない。

 まるで自分が2人になっているような意志の疎通ぶりである。もはや魔法少女の固有魔法と言っても差し支えない。2人の力はお互いを掛ける掛け算だ。そのコンビネーションは2対2でも発揮してくる。

 一方スノーホワイトは困った声が聞こえるという魔法で仲間の思考や意図を読み取り、他の魔法少女より息を合わせられるが自分と相手の力を足す程度で、所詮は足し算であり掛け算には勝てない。

 ならば掛け算をさせなければいい。分断して各個撃破、ニンジャスレイヤーとスノーホワイトはその結論に辿り着いた。

 どちらがマンキヘイとフォーリナーXXXを相手するかは、戦闘力が高いマンキヘイをニンジャスレイヤーが相手し、異世界のアイテムによる初見殺しを警戒して、魔法による読心が出来るスノーホワイトがフォーリナーXXXを相手するという振り分けになった。

 そして作戦通りニンジャスレイヤーがマンキヘイにタックルを仕掛けて野外に飛び出し、フォーリナーXXXとの距離を取りお互い1対1の状況を作り上げた。

 

 ルーラがフォーリナーXXXの喉にあと10数センチで刺さるというところで相手はブリッジする。刃が顎先を僅かに切り裂き血しぶきが舞う。

 スノーホワイトは全身の筋肉でルーラを止めると同時にそのまま振り上げ振り下ろす。ニンジャはブリッジによる回避を多用する。ニンジャスレイヤーにも同じように回避された。そして同じ攻撃を繰り出す。

 この攻撃はニンジャスレイヤーにしたのとは若干異なる。振り上げの距離を小さくしコンパクトにする。威力ではなく速度を重視した攻撃、これで相手を倒そうとは思っていない。これは相手を削る攻撃だ。

 目を切りつければ視力を奪える。額を切れば流血し血が目に入って邪魔になる。どこかしらに攻撃が当れば相手を削げる。その僅かな積み重ねが勝敗を左右する。

 

「ンアーッ!」

 

 フォーリナーXXXはブリッジからバク宙をしながら叫び声をあげる。ルーラからコンクリートの衝撃の前に別の感触が伝わる。これは肉を切られた感触、その証拠に宙に血と何かが舞っている。それは耳の上半分の部分だった。

 スノーホワイトは追撃しようと間合いを詰める。だがフォーリナーXXXの右手にはいつの間にか大剣が収まり、間合いに入られるのを阻止しようと切り払う。それと同時に魔法の袋に左手を入れて何かを放り投げる。

 スノーホワイトは急停止して剣の攻撃を避けると、投げつけた何かをルーラで即座に潰した。フォーリナーXXXは表情を歪ませながら睨みつける。

 先ほど投げつけた物は異世界から収集したアイテムの1つだった。数秒ほど経てば瞬く間に成長し、スノーホワイトを攻撃するはずだった。だが心の声を聴き成長する前に潰した。

 スノーホワイトは足首に向けてルーラを薙ぎ払う。フォーリナーXXXは剣を床に突き立て防御しながら僅かな時間を利用して魔法の袋に手を入れ何かを左側に投げる。

 しかしスノーホワイトは投げられた物を無視し攻撃を続け、何かを投げた動作による隙をつき二の腕や太腿を切りつける。

 フォーリナーXXXが投げた物は異世界のアイテムで、攻撃した者に猛然と襲い掛かる特殊な生物だった。魔法の袋から飛び出した何かはとりあえず破壊すると決め打ちしていると予想し、それが仇となるように仕向けた。しかしスノーホワイトはその考えを魔法によって完全に把握し無視した。

 フォーリナーXXXは態勢を整える間もなく守勢に回り続けている。相手が知らないアイテムで攻撃する。それが今のフォーリナーXXXの戦闘スタイルだった。

 仮に相手がニンジャスレイヤーであればアイテムによる攻撃やフェイクもニンジャ第6感で防げても、多少の思考時間が生まれ態勢を整える猶予時間が生まれただろう。だがスノーホワイトは魔法によってほぼノータイムで相手の思考を読める。フォーリナーXXXにとってスノーホワイトは相性の悪い魔法少女だった。

 

◆◆◆

 

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーとマンキヘイはマゴコロテイネイ社4階から勢いよく飛び出ていく。マンキヘイの視界に極彩色のネオンライトが飛び込む。視界が反転すると同時にネオンライトがマンゲキョめいて回転していく!おお!見よ!マンキヘイの身体が上下逆さまになり高速回転しながら地面に激突しようとしているではないか!?

 

ニンジャアーツに精通している読者の方がいればマンキヘイが何をされているか分かるだろう!ニンジャスレイヤー胴タックルで外に飛び出した後ホールドを離さず、上下逆さまになるように体勢を変え回転しながら落ちる。これはアラバマ落とし!かつてデスフロムアバブはテキサス独立戦争において多くの兵士の脳天を地面に叩きつけ殺していた!

 

マンキヘイは兵士達のようにアスファルトに突き刺さり蜘蛛の巣状のヒビが生じ粉塵が舞い上がる。「あたたかみ」「いつでも対応」のマゴコロテイネイ社のネオン看板が隠れる。これで勝負ありか!?粉塵が舞う中2つの影が落下地点から勢いよく飛び出す。1つはニンジャスレイヤー、もう1つはマンキヘイである!

 

マンキヘイは唸り声を挙げながらニンジャスレイヤーを見つめる。アラバマ落としは本来羽交い絞め、あるいは相手の腕を自分の腕でホールドする技である。だがニンジャスレイヤーは胴タックルで外に飛び出した後にアラバマ落としを繰り出し、結果的に腕をホールドできず不完全な技となった。

 

そうなれば相手の腕は自由になり、マンキヘイは腕を使い頭から落とされるのを防いだのだった。ニンジャスレイヤーは即座にジュージツを構える。今のアラバマ落としは居酒屋チェーン店のオトオシに過ぎない。あくまでも分断するのが目的であり技を繰り出したのはついでだ。あの程度で死ぬ弱敵だとは全く思っていない。

 

「ワッザ?何が起こった……アイエエエ!!!ニンジャナンデ!?」1階の工場で働いていた従業員達は様子を見る為に外に出たと同時に失禁!あるいは失神!ニンジャスレイヤーとマンキヘイの間には可視化できるほどのキリングオーラが生じ、それを察知した従業員たちはNRSを発症していた。

 

従業員達が地面に落ちる音を合図にマンキヘイがスプリントで詰め寄る。その手にはいつの間にかにトーテムポールめいた巨大なランスが!それは先の戦いでフォーリナーXXXがマンキヘイに与えた武器だった。だが召喚されて今の今までに武器は渡されていない。では何故今持っている?

 

フォーリナーXXXはニンジャスレイヤー達との戦いの直後に、一々武器を渡すのが面倒だと異世界の力を利用して、マンキヘイの意志で出せるようにしていた。なんたる異世界のアイテムとニンジャのジツの合体か!

 

「イヤーッ!」マンキヘイはバッファロー殺戮武装鉄道めいた勢いで突きを放つ!ニンジャスレイヤーはブリッジで回避!マンキヘイの勢いは止まらずニンジャスレイヤーの後ろ10メートルにある車をケバブめいて串刺しにする!マンキヘイは即座にランスを引き抜き振り返る。するとニンジャスレイヤーが挑発的に手招きする姿が見えた。

 

マンキヘイはニンジャスレイヤーに向かって走り出す。そしてニンジャスレイヤーは背を見せて決断的に走り出す!?臆したかニンジャスレイヤー!?その行動にマンキヘイは唸り声を挙げながらニンジャスレイヤーを追いかける。

 

(((愚かなりフジキド!そのカラテデミ人形はマギカ・ニンジャといくら離れようが弱まらぬ!かつてはイクサに出向きたくないあまりに、カラテデミ人形に遠く離れたイクサの地に出向かわせたほどぞ!)))(((黙れナラク)))ニンジャスレイヤーはナラクの罵倒を無視し決断的に走り続ける。

 

これは予定されていた行動だった。もし分断に成功したら可能な限りフォーリナーXXXとマンキヘイとを離す。その為にニンジャスレイヤーは敢えて逃走し、追ってきたら出来る限り逃げる手筈だった。仮に何方かが破れたとしても合流する時間を稼げ、その間にフォーリナーXXXかマンキヘイを倒し、1対1の状況に持ち込めるかもしれない。

 

2人は車道を全力でスプリントする。すると十字路の左側からジゴクのようなエンジン音を響かせるバイクがニンジャスレイヤーに突っ込んでくる!アブナイ!ニンジャスレイヤーはそのバイクに飛び乗るとそのまま走る。

 

このバイクは高性能インテリジェントモータサイクルアイアンオトメ、ニンジャスレイヤーの愛車である。予め自立走行でこの地点に来るようにセットしていたのだ。一方マンキヘイはブレーキ跡を作りながら急停止し左折しニンジャスレイヤーを追う。すると目の前にスリケンが迫っていた!

 

マンキヘイは手に持っていたランスでスリケンを払いのける。しかし即座にスリケンが次々と飛来して来る!ニンジャスレイヤーは運転をアイアンオトメに任せ、サドルに立ちマンキヘイに向けてスリケンを連続投擲していた。マンキヘイはランスをサイズに変えると、バトンめいて回しスリケンを防ぎながらチェイスする。

 

マンキヘイはマギカ・ニンジャのジツによって作られたカラテデミ人形である。そのカラテはサンシタニンジャより強い。だがそのインテリジェンスはクローンヤクザより下回る。基本的な命令はフォーリナーXXXがするが、命令が無い場合は目の前の敵を倒すという単純な行動しかできない。

 

今の状況においてフーリンカザンはニンジャスレイヤーにある。インテリジェンスが有ればニンジャスレイヤーへの追跡を止め、スノーホワイトの方に向かい2対1の状況を作るだろう。だがそんなインテリジェンスもなく、フォーリナーXXXもマンキヘイに指示を出せない程追い込まれていた。

 


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