ニンジャスレイヤー・バーサス・マジカルガールハンター   作:ヘッズ

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第五話キャット・リペイズ・ヒズ・カインドネス♯7

ネオサイタマ有数の富裕層居住地域であるカネモチ・ディストリクト。地上百メートルの高さには広大な厚い強化樹脂製透明ルーフが築かれており、住民が重金属酸性雨に晒されることはない。スノーホワイトは興味深そうに空を見上げる。

 

自分の居た世界ではドーム球場はあるが、ここまで広範囲に雨を防ぐルーフは存在しない。もし作るならどれだけお金が必要なのだろうと、これからするのとは無関係なことを考えていた。ドラゴンナイトも同じように空を見つめる。

 

野球部に所属していた時にパーティーに呼ばれて一度だけ来たことがある。ニュービーの歓迎会という名目で行われたが、いかに自分の親がカチグミであるかを披露する場に過ぎず退屈だったのを覚えており、この場所に良い思い出がなかった。二人はディストリクトに入るとネコの鳴き声が聞こえてくる。そこには一匹の白猫が居た。

 

二人はネコの近くにしゃがみ戯れているように見せかけながら会話する。「ドーモ、ドラゴンナイト=サン、スノーホワイト=サン。ナシモト=サンの家を見つけた。案内する」「スゴイ、どうやって見つけたの?」「実際有名人で噂話などを聞いていれば、すぐに見つけられた」二人はマタタビの後を歩いていく。

 

スノーホワイト達は大通りを歩いていく。通りにはバイオ桜が植えつけられスポットライトの光が桜を照らし、幻想的なアトモスフィアを作り出す。桜は品種改良され一年中咲き、いつでもこの光景を見られる。スノーホワイトは目を向けながら歩く。

 

夜に見る桜はこんなにも綺麗なのか、花見は何度かしたことはあるが夜の時間にここまで大量の桜の花を見たことはなかった。次の春は友人を誘い夜にお花見をするのも良いのかもしれない。桜を通して遠い世界にいる友人に思いを馳せる。

 

「桜がキレイだね。スノーホワイト=サン」「うん」スノーホワイトは桜からドラゴンナイトに視線を向け相槌を打つ。その微笑みにドラゴンナイトの鼓動は激しく脈打つ。ライトアップされた夜の桜によってスノーホワイトがより魅力的に見えていた。ドラゴンナイトは心情を悟られないようにスノーホワイトから桜に目線を向ける。

 

しかし実際キレイだ。もしスノーホワイト=サンとデートするならこのストリートを歩くのも悪くはないかもしれない。ドラゴンナイトは手のひらで自分の顔を叩く。集中しろ、ここにはジンスケ=サンの陰謀を阻止するために来たのだ、浮ついた事を考えるな。ドラゴンナイトは二回三回と顔を叩き気合を入れた。

 

大通りを通り過ぎると豪邸と言えるような家が目立つようになる。不審者対策か路地はライトによってすべて照らされ、監視カメラの起動音が耳に届く。富裕層が住む家がある地域だけあって厳重である。ドラゴンナイトは左右に首を振りながら警戒心を強め歩く。

 

「ドラゴンナイトさん堂々と歩こう。警戒しながら歩いたら怪しまれる」「そうかな」ドラゴンナイトはスノーホワイトの指摘を受け、左右に首を振って周りを確認するのを止め、前方を真っ直ぐ見ながら歩く。「着いたぞ。ここはナシタニ=サンの家だ」二人は周りを見渡しある家に視線が定まる。

 

その家はネオンライトが装飾され極彩色に光り輝いていた。門から玄関に続く道にはエド・トクガワの銅像が設置され、それも蛍光塗料が塗られているのか極彩色に輝いていた。「何か奥ゆかしくないって言うか、趣味悪いな」ドラゴンナイトは思わず愚痴をこぼす。周りの家は奥ゆかしい設計なだけにナシタニの家は目立っていた。

 

「私は家に侵入しネコ達が操られた際にナシタニ=サンを守り、私を操ったニンジャが現れたら……対応する。二人はどうする?」「私達は一帯を監視しようと思う。ネコを操るニンジャは遠隔で操作するかもしれない。もし見つけたら叩く、それでいいよね?」「え…ああ、いいよ、それで」ドラゴンナイトは反射的に賛成する。

 

魔法少女の魔法はまさに何でも有りだ。理不尽と言えるような魔法を何のリスク無しに行使する者もいる。魔法とニンジャのジツが同程度と仮定すれば数十キロから操作している可能性も有る。そうなればお手上げだが長距離での遠隔操作は出来ず、この地域一帯でジツを使う可能性もある。今はその可能性に賭けるしかない。

 

「じゃあ見つけたら連絡して、見つけても一人で対応せずに私が来るのを待って」「分かった」ドラゴンナイトは出掛かった言葉を飲み込み頷く。見栄と自尊心から自分一人でやれると言おうとした。だが以前醜態を晒した自分が口を出す資格はなく、対面するニンジャはすべて格上だと思うべきであり、スノーホワイトが来るのを待ったほうが賢明だ。

 

「マタタビ=サン、スノーホワイト=サン、カラダニキヲツケテネ」ドラゴンナイトは言葉をかけ、スノーホワイトとマタタビはしめやかに頷く。マタタビはこの場に留まり、ドラゴンナイトとスノーホワイトは別々の方向に移動した。

 

 

◇マタタビ

 

 カチグミという種族の家に侵入するのは困難だそうだが、それは人間にとっての話だ。ネコならば人間では入れない小さな隙間も侵入できる。

 さらにニンジャであればニンジャ柔軟性を駆使すればより小さな隙間に入ることもできる。だがこの家ではそのような力を発揮しなくても侵入できる。

 門を一足で飛び越え素早く移動し目的の場所に向かう。ニンジャの身体能力ならば目的の場所に着くまでは一秒未満、コマ送りで映像を見ない限りマタタビの姿を捉えることはない。

 そこは一見変哲もない壁に見えるがネコ専用の出入り口になっており、壁を押せば中に入れる仕組みになっている。実際庭で遊んでいた飼い猫が使用しているのを目撃している。

 マタタビは壁を押して家に侵入すると畳の匂いが聴覚を刺激する。その部屋の床には畳が敷き詰められ、LEDライトと蛍光色に光った畳が部屋を照らしていた。

 その光に思わず目を細める。この光は目に優しくない、以前住んでいた家はボンボリが部屋を照らし奥ゆかしく温かみがある光だった。

 それに畳の匂いも気に入らない。恐らくこの畳を下から照らす装置のせいで嫌な匂いがこびり付いたのだろう。

 

 若干の嫌悪感を抱きながら辺りを見渡す。家に住む住人はいない、見つからないうちにナシタニ=サンを見つけ監視できる場所を確保する。行動を起こそうとした瞬間動きが止まる。

 光沢のある金色のネコがこちらを凝視し毛並みを逆立てている。騒がれると面倒なのでマタタビは軽く睨みつける。

 金色のネコは即座に仰向けになり自身の腹を見せる。これはネコの世界に置いて屈服の証であり、人間の世界ではドザゲに相当する屈辱的行為だ。それ程までにマタタビの圧倒的アトモスフィアに恐怖していたのだ。

 

 すると金色のネコに近づきナシタニの所在についてインタビューを試みる。するとか細い鳴き声を出しながら質問に答え、ナシタニがいる部屋に案内すると歩き始め後を付いていく。

 畳の部屋を抜けて階段を上がり部屋の前に着く、そこは家に侵入した場所と同じように扉を押せば部屋に入れる仕組みになっており、金色のネコと一緒に部屋に入った。

 

 部屋の中は大きなベッドがあり、庭にあったような銅像が着ていた鎧が三つ、何を描いているか分からない絵が十数個、床も光る畳が敷かれていた。

 ここにも光る畳があり不快感を示す、さらにこの絵はカツタロウが描いた絵に似ており、ネコの自分でも下手であることが分かった。そんな絵を飾る何て人間の嗜好はよく分からない。

 

「ん、どうしたキン?そのネコは?」

 

 部屋には4匹のネコと一人の人間がいた。禿げ上がった頭髪に肉がついた肉体、ドラゴンナイトに見せてもらったナシタニの姿と同じだ。

 ナシタニは回転椅子を回してマタタビに視線を向ける。一方ネコたちは低く唸りマタタビに警戒心と敵対心を募らせる。

 だがキンの鳴き声でネコ達の警戒態勢が解かれる。どうやらこのキンと呼ばれるネコがこのグループで最も強い個体のようだ。

 

「それは友達か?まあこれでも食べてゆっくりしていけ」

 

 ナシモトはマタタビに話しかけながら、トレーにキャットフードを入れ目の前に差し出した。マタタビは数秒ほど考え込みキャットフードを食べる。

 今は少しばかり空腹だ、エネルギーを蓄えニンジャに備えなければならない。キャットフードを食べた瞬間目を見開く。これはカツタロウの家に住んでいた時に食べた物と同じものだ。

 一口食べるごとに在りし日の思い出が蘇る。カツタロウ=サン、カツタロウのお父さん、お母さん、クロ。必ず敵を討ってやるからな。マタタビは思い出を噛み締めるようにキャットフードを夢中で食べた。

 

◇ファル

 

 廃墟と化した神社から音が漏れ出す。音楽については詳しくはないがクラブで流れるような音だった。中では何かしらのイベントが開催されているのだろう。その証拠に廃神社に相応しくない格好をした若者達が何人も鳥居を潜り入っていく。

 スノーホワイトはドラゴンナイト達と別れてから、カネモチ・ディストリクトを巡回するように歩いていた。だが夜が更けるにつれ人が減っていき、歩き回っているのが不自然になってくる。

 ファルとスノーホワイトは怪しまれるのはマズイと考え、この時間でも人がいる場所を探しここにたどり着いた。ここなら人の行きかいが多くスノーホワイト達が居ても不自然ではない、

 そして魔法を使う際に多くの人に紛れることで隠れようと考えているかもしれない。鳥居から離れた十数メートル離れたブロック塀にもたれ掛かり、誰かを待っている体を装う。

 

「これがパリピって奴かぽん?それにしては変なファッションだぽん」

「パリピなんて言葉よく知っているね」

「電子妖精だって魔法少女をサポートするために流行りの言葉や情報を入手しているぽん」

 

 人に紛れる為に神社に入ろうと考えたが鳥居の前には屈強な男性がSPのように立っており、特定の人物の侵入を拒み追い返している。条件としては服装だろう、中に入る人の服装には統一感があった。

 女性は花魁のような和服か、ゴシック調のドレスを着ている。そして特徴的なのが顔にオシロイを塗りたくり、死体のように目の周りを縁取りしている。紫や黒の口紅を塗っている。

 ファッションが全体に陰気で知っているパリピの情報とは全く違う。その陰気さから何か犯罪でも計画しているのではと思うほど不気味だった。だがスノーホワイトが特にアクションを起こしていないので特に悪事を計画している事はないだろう。

 スノーホワイトはSPの門前払いされた人への過剰な暴力を止め、暴力を受けた人の治療をしながら、時計を確認して人を待っているような演技をしながら聞こえる範囲の困った声に神経を傾けていた。

 

「それっぽい人は居たぽん?」

「今のところは居ない」

「ここは外れかもしれないぽん。別の場所を探したほうがいいかもしれないぽん」

 

 この場に来てから30分が経過するがそれらしき声は聞こえない。ここは多少怪しまれようが広範囲に捜索したほうがいいかもしれない。するとスノーホワイトの体が一瞬反応した。

 

「居た。東から500Mぐらい」

「ドラゴンナイトに連絡するぽん?」

「しない、私で対処する」

 

 スノーホワイトは寺の門に背を向け全速力で声が聞こえた地点に向かっていく。着いた先は富裕層が住むレベルでは平均的な家だった。だが明かりがついておらず人が住んでいる気配はない。

 

「相手は一人かぽん?」

「いや、三人」

「三人ならドラゴンナイトを呼んだほうがいいんじゃないかぽん」

 

 ファルは思わずスノーホワイトに進言する。魔法少女に匹敵する力を持つニンジャと三対一での戦闘、過去に複数の魔法少女と同時に戦闘する事があり、苦い記憶が蘇る。

 一人一人凡庸な戦闘力でも合わされば驚異となる。人数が増えたことで個々の実力を出しきれなくなり、一対一で戦ったほうがマシだったというケースがあるがそれは例外だ。

 合理的に考えればドラゴンナイトを呼んで数の差を埋めるべきだが、スノーホワイトは最悪の事態。三人全員がスノーホワイト達より強く殺されてしまう事態を想定している。

 それならばドラゴンナイトを遠ざけたほうがいいと考えているのだろう。先の戦いで傷だらけになった姿を見て狼狽した様子を思えば不思議ではない。

 スノーホワイトは心の声に耳を傾けながら極力気配を殺し辺りを周回する。

 ニンジャ達がいる場所の目星はついたがカーテンが閉められ、姿を目視できなかった。するとスノーホワイトは魔法の袋からルーラを取り出すと数メートル助走をとり全速力で空家に突入する。

 ガラスが割れた澄んだ音が空家に響き渡る。中は家具が一切撤去されたフローリングのリビングでその中央に赤いレインコートのようなものを着た人物、両腕に鉄の腕をつけた人物、青のストライプのスーツを着た人物が居た。 

 皆が突然の襲撃に驚愕の表情を浮かべている。スノーホワイトは直線上にいるレインコートの男に突進の勢いを乗せた石突きの一撃を繰り出す。

 

「グワーッ!」

 

 レインコートの男は血を吐きながら後方に吹き飛んでいく残りの二人はスノーホワイトの存在を確認すると向かっていく。

 

「イヤーッ!」

「イヤーッ!」

 

 鉄の腕の男が右から殴りつけ、レインコートの男から少し離れていたスーツの男が左から苦無を投げ込む。

 スノーホワイトはルーラの柄でパンチを防御、その場で踏ん張らずパンチの勢いそのままに後方に吹き飛び、その数コンマ後にスノーホワイトが居た場所に苦無が通過した。

 

「どーも、スノーホワイトです」

「ドーモ、アイアンフィストで……グワーッ!」

 

 スノーホワイトは突如お辞儀をするとアイアンフィストは返礼するようにお辞儀をする。頭を下げた瞬間に間合いを詰め斬りつけた。

 アイアンフィストの左鎖骨あたりから袈裟に切り裂かれ、致命傷では無いが軽くはないダメージを被う。スノーホワイトは返す刀で脛を切りつける。

 

「ドーモ、ストライプブルーです。何たるシツレイ!イヤーッ!」

「ドーモ、テイマーです。アイサツしろクズ!」

 

 青のスーツの男はストライプブルー、レインコートの男はテイマーと名乗りながら、お互いは苦無とピストルによる十字砲火で追撃を阻止する。

 その攻撃を予測し、脛斬りの後は追撃せずバックステップで後方に回避し、それでも防げない物はルーラによるパーリングで弾く。ルーラから火花が散り苦無と弾丸は明後日の方向に飛び天井や床に穴を開ける。

 

「テイマー=サン!ジツを使用しながらこの場から退避、ディスピアー=サンからターゲットの殺害報告を聞いた後俺たちの援護だ!」

 

 アイアンフィストは大声で指示を伝えテイマーは離脱の準備に掛かる。

 スノーホワイトはテイマーに向かって追撃を図る。恐らくあれがネコを操るニンジャだ。だがアイアンフィストが進路を塞ぎ、ストライプブルーの苦無による牽制で追撃を防がれる。

 

 逃げられたか。スノーホワイトは表情を崩さず袋から通信機を取り出しドラゴンナイトに連絡する。

 

「騒がしい廃寺から500Mぐらい離れた民家付近から赤いコートを着たニンジャが移動した。それを追って」

 

 スノーホワイトは端的に用件を伝える。本来なら自分で片付けたかったはずだ。だがドラゴンナイトに相手を追うように指示したということは十分に対応できると判断したのだろう。

 通信機を素早く袋にしまうとルーラを握り二人を見据える。一秒でも速く無力化してドラゴンナイトの元に向かう。その相手を見据える冷たい視線は魔法少女狩りと恐れられるいつものスノーホワイトだった。

 

ーーーーーー

 

「ニャバーッ!」静寂に包まれていたナシタニの部屋にネコの叫び声が響き渡る!その瞬間マタタビのニンジャアドレナリンが全開になる。この反応!あの時と同じだ!ニューロン内にあのツキジめいた光景が蘇る。「ニャーッ!」クロネコが弾丸めいた勢いでナシモトに襲いかかる!

 

「ニャーッ!」マタタビはクロネコの元に飛びつくと腹を足の裏につけ押し出すように蹴る。CLASHH!クロネコは砲弾めいた勢いで吹き飛び窓を突き破りながら庭に落ちていく。「ニャーッ!」茶色のネコがナシモトに襲いかかる!「ニャーッ!」マタタビはクロネコを蹴った勢いを利用し茶色のネコに飛びつき、腹を足の裏につけ押し出すように蹴る!

 

茶色のネコは扉に激突!「ニャーッ!」白色のネコがナシモトに襲いかかる!「ニャーッ!」マタタビは茶色のネコを蹴った勢いを利用し白色のネコに飛びつき、腹を足の裏につけ押し出すように蹴る!白ネコは外に飛び出し庭に落ちていく。

 

「ニャーッ!」キンがナシモトに襲いかかる!「ニャーッ!」マタタビは白ネコを蹴った勢いを利用しキンに飛びつき、背中を足の裏につけ押し出すように蹴る!キンは壁に激突。この一連の動きでマタタビは一回も地面に着地していない。何たる非凡なニンジャキャットによる俊敏性と身のこなしか!

 

「ニャーッ!」キンと茶色のネコは立ち上がり、白ネコと黒ネコは窓から部屋に上り唸り声を上げながらナシモトに敵意を向ける。マタタビが本気で蹴っていればネコ達の腹は蹴り破られ絶命していた。だが操られた同胞を殺すのはしのびなく手加減をしていた。だがそれでも無傷では済むことはなく、肋の一本や二本は折れている。

 

「アイエエエ!」ナシモトは飼い猫の突如の変化と凶行に腰を抜かし床に座り込む。マタタビは服の襟首を掴み部屋の隅に放り投げ防御しやすいような場所に置き、庇うように立ちふさがった。「ニャーッ!」「ニャーッ!」「アイエエエ!」四匹のネコが飼い主に猛攻を仕掛けマタタビが防御、ナシモトが悲鳴をあげる。

 

ナシモトを傷つけさせずネコ達にも可能な限りダメージを与えない。それは容易なことではなかった。マタタビは熟練のスシ職人めいた集中力で手加減しながら防御する。ネコ達の体から血が噴き出し体の筋繊維が切れる音が聞こえてくる。あのジツはモータルの全ての能力を引き出す。その先に待っているのは破滅であり、防御していてもネコ達は死亡する。

 

(((ドラゴンナイト=サン、スノーホワイト=サン、同胞を操っているニンジャを見つけてくれ)))マタタビは祈りながらナシモトを守り続ける。すると突如ネコ達の動きは止まり糸が切れたジョルリめいて倒れ込んだ。ニンジャを倒したのか?マタタビの目に希望が宿るが、だがネコ達は直様襲い掛かる。

 

ネコ達はナシモトに襲いかかるが以前とは変化が生じていた。動きが遅く力強さが無くなってきている、ジツの力が弱まっている。これはニンジャに何かが起こったのか?真相は分からないが、これでジツによる自己破滅への時間は伸びていることを実感する。

 

スノーホワイトかドラゴンナイトがジツを行使するニンジャと戦闘しているかもしれない。自分の手で殺したいのが本音だが、同胞達が命を落とさず憎き敵が死ねばそれでいい。マタタビは希望を抱きながらナシモトを守り続けた。

 

「イヤーッ!」突如聞こえるカラテシャウト!その瞬間にマタタビのニンジャシックセンスが最大限働き、ナシモトを守ることを放棄し前方に全力で跳ぶ!「ニャバーッ!」マタタビの腹から血を流しながらエスケープ!「俺のアンブッシュを避けるとは、獣故の勘が鋭さか」

 

マタタビがいた場所にはドスタガーを床に突き立てている迷彩服の男がいた。状況から察するに頭上からアンブッシュされ、数インチの差で致命傷を避けたが腹部を切り裂かれた事は分かる。だが何時からこの部屋に居た?この部屋には暫くいたが自身のニンジャ感覚には全く感じられなかった。何が起こっている?

 

「アイエエエ!アバババ!!」ナシモトは突如泡を吹き失禁!そして失神!これはNRSの典型的症状だ!この症状を発するということは即ち!「ドーモ、ディスピアーです」『ドーモ、マタタビです』両者はアイサツを交わす。ディスピアーはニンジャである!

 

「おお、鳴き声が人の言葉に聞こえる。獣のニンジャの特殊能力か?」ディスピアーは興味深そうにマタタビを見つめる。一方マタタビは警戒心を最大限に強めながら見据える。優秀なニンジャ感覚を持っているマタタビが何故ディスピアーの姿どころか存在を感知できなかったか疑問に思う読者もいるだろう。

 

ディスピアーは最新鋭の光学迷彩で姿を隠し、マタタビが来る前から潜んでいたからである。だが姿を消してもマタタビのニンジャ感知力なら発見できた。ディスピアーに宿ったソウルはシノビ・ニンジャクランのソウルである!テイマーが何かしらのアクシデントでナシモトを殺せなかった時の為に潜んでいたのだ!

 

シノビニンジャクランは姿を隠すことを得意とし、光学迷彩とシノビニンジャの力によるニンジャ野伏力がマタタビのニンジャ感知力を上回っていた。ディスピアーはIRC通信機を取り出す。マタタビは攻撃しようと考えるが、怪我の影響と存在を感知できなかった事への恐怖から躊躇した。

 

「もしもしテイマー=サンか、ジツが弱くなっていたぞ何があった?襲撃を受けた?そうか、こちらは予想外のトラブルだ。目の前のニンジャキャットのせいでターゲットをネコ共が殺せていない、プランを遂行するためにニンジャキャットを殺す。そいつにジツをかけてくれ」

 

通信が切れた瞬間四匹のネコは崩れ落ちマタタビの体が鉛めいて重くなる。この感覚には覚えがあった。これは!この感覚はあのジツだ!今ディスピアーが話していた相手はあのニンジャだ!テイマーという名前なのか!殺す!殺してやる!マタタビは憎悪の炎を燃やし、それを燃料に体を動かそうとする。だがその憎悪をねじ伏せるが如く体が重かった。

 

テイマーは四匹のネコに使っていたジツの力を全てマタタビに向ける。ニンジャキャットは普通のネコのように操られることはないが、能力は大きく制限されてしまう。「イヤーッ!」「ニャバーッ!」ディスピアーのキックでマタタビはサッカーボールめいて壁に叩きつけられる。相手の動きは見えていた。だが反応が追いつかず直撃を受けてしまった。

 

「来いニンジャキャット」ディスピアーは手招きし挑発する。その挑発に応じるようにマタタビは飛びかかる!「ニャーッ!」「イヤーッ!」ディスピアーは飛びついてきたマタタビを飛んでくるモスキートを叩くように叩き落す。

 

「ニャバーッ!」床に叩きつけられる瞬間に受身をとり着地!そのまま右足の腱を切断しにかかる!「イヤーッ!」「ニャバーッ!」ディスピアーの左の蹴りが脇腹に入り壁に叩きつけられる!「イヤーッ!」「ニャバーッ!」「イヤーッ!」「ニャバーッ!」

 

おお!ナムサン!それは目を覆いたくなるようなワンサイドゲームだ!ディスピアーは自分からマタタビに攻撃しなかった。マタタビが攻撃を仕掛けそれを迎撃する。それがリプレイ映像めいて繰り返されマタタビは瀕死の重傷を被っていた。

 

「ふう~よかったぞマタタビ=サン」ディスピアーは爽やかな表情を見せながらマタタビに近づく。ディスピアーはカラテでニンジャを殺したかった。だがカラテは弱くニュービーにも負けるレベルだった。だがジツにかかったマタタビはニュービー以下のカラテであり、ディスピアーのカラテでいたぶれるほど弱体化していた。

 

ニンジャキャットであるが夢が叶い大いに満足していた。「さてジョブをするか」ディスピアーはマタタビの襟首を掴み上げる。このままカイシャクすれば爆発四散し部屋に爆発跡が残る。そんな証拠を残すヘマはしない。マタタビを窓の外に放り投げスリケンを投げて爆発四散させる。そうすれば爆発四散跡は部屋に残さず殺せる。

 

そして改めてテイマーにジツを使わせネコの手によってナシモトを殺させる。これで計画は達成だ。テイマーは振りかぶり窓の外に標準を定める。マタタビは薄れゆく意識の中必死に反抗する。ここで死ねば同胞は死にかつタロウの敵も討てず死んでしまう!だがニューロンのリンクが切れたように体は動かない。

 

「アバーッ!」突如叫び声が部屋の中に響き渡る!何が起こった?マタタビは薄れゆく意識の中原因を探す。するとディスピアーの額には鋼鉄の何かが刺さっていた。この形状は見たことがある。カツタロウが見ていた番組で見た、確かスリケンという武器だ。

 

「サヨナラ!」ディスピアーは叫び声をあげながら爆発四散!爆発にマタタビは録に受身を取ることもできず床に落ちた。ディスピアーはスリケンによって死んだ。それが混濁するニューロンで出した結論だった。結論を出すと直ぐに別の思考に切り替える。

 

テイマーのジツを受けたことでニューロンが繋がり相手の位置が分かる。そこに移動し殺す!マタタビは憎悪を燃料にしてように移動する。それはナメクジの移動スピードめいて遅かった。それでもマタタビは血痕で畳を染め上げながら進んでいく。すると一陣の風が肌を刺激すると同時に部屋に謎の人物がエントリーしマタタビを見下ろす。

 

その者赤黒のニンジャ装束を着ていた。マタタビは本能的にニンジャと悟りアイサツした『ドーモ……、ハジメマシテ……、マタタビです……』赤黒のニンジャ装束を一瞬驚きの仕草を見せるとアイサツした「ドーモ、マタタビ=サン。ニンジャスレイヤーです」

 


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