特に深い意味も無く、「こんなんだろうなー」と考えながら書いたのであっさりと短めになっております
良く言えばスッキリ短編
悪く言えば適当(笑)
それでは、どうぞ!
code:extra 16 あの人たちのバレンタインデー
「なんか、今日は甘い匂いがするわ」
「社長、今日はバレンタインデーですよ」
「バレンタインデー……?」
ふらりと、珍しく住処である自宅に戻ってきた遊騎は、街中で感じたいつもと違う感覚について社員に話していた。そういった一般常識に縁がない遊騎と違い、一般人である社員は今日がバレンタインデーであることを話す。
聞き慣れない単語を聞いた遊騎は首を傾げ、そのままバレンタインデーがどういったものなのか詳しく話を聞いた。
「なるほどなー。そういえば学校行ってた時、毎年チョコもらえる日があったわ。差し入れや思ってたけど、違ったんやな」
「ちなみにホワイトデーのお返しは私共の方で送らせていただいてました」
「チョコ……」
バレンタインデーについて聞き、長年の謎が解けた遊騎。補足するような社員の言葉を聞き流しつつ、遊騎はボーっと天井を見上げる。
そして、ポツリと呟いた。
「……でっかい『にゃんまる』のチョコ、食べたいわ」
『!!』
その何気ない呟きに、屋敷にいた社員すべてが反応した。
「社長から食事のリクエストがあったぞ!」
「いつも『何でもいい』と仰っていたあの社長から!」
「急いで厨房にも伝えろ! 本社とも連携して素材と道具を準備させるんだ!」
あっという間にてんやわんやの大騒ぎ。社員たちはしていた仕事も中断して準備をし始めた。一方の遊騎はというと、そんなこと気にせず『にゃんまる』の絵本を読んでいた。
そして、数時間後……
「お待たせしました、社長!」
「『にゃんまる』や……!」
遊騎の前に用意されたのは、子どもくらいの大きさの『にゃんまる』……の形をしたチョコ。どうやって準備したかは不明だが、これほどのものを数時間で用意してしまうとは、天宝院グループのレベルの高さが伺える。
その社長である遊騎は、目の前に用意された『にゃんまる』チョコに、目を輝かせ……
「♪にゃんにゃん『にゃんまる』みんなのなかま~♪こころやさしいにゃんこのみかた~♪」
「やったー」と両手でチョコを抱き、歌いながら走り回り始めた。満足気なその様子に、社員一同はやり切った様子で笑顔を向けていた。
こうして遊騎……もとい、天宝院グループのバレンタインデーは過ぎていった。
~翌日~
「……なんやべとべとするわ」
「社長がチョコ塗れになっているぞー!」
「急いで入浴の準備をしろ!」
「いかにも、今日はバレンタインデー! 私はチョコだって好きだから、バッチリいつでもウェルカムなんだな!」
「うっせぇ! いい大人が騒いでんじゃねぇぞ!」
『渋谷荘』でも、気分はバレンタイン一色となっていた。といっても、なっていたのは会長だけで、王子はそうでもないようだが。
「え~、王子ったらノリ悪くない? ささ、ギブ・ミー・チョコレートだよ」
「あ? テメェにチョコなんてやるわけねーだろ。大体あんな甘ったるい物、オレは食うのはもちろん買うのも嫌だしな」
──バタン!
「そ、そんな殺生な~!」
いそいそとチョコをせがむ会長に対し、王子は冷たい言葉と視線で一瞥してから自室へと戻る。非情な現実に、会長はしばらく扉の前で悶えていたが、そのうちに諦めてトボトボとその場を後にした。
「いかにも、動いたから小腹が空いたんだな。何かないかな?」
気を取り直して、とでも言わんばかりに台所にやってきた会長。腹の虫を鳴らしながら、手ごろな食べ物を捜しにあちこちを探る。
しかし、どこを捜しても出てくるのは食材や調味料のみ。料理する気などさらさら無かった会長にしてみれば意味は無いものばかりである。散々な結果に肩を落としながらも、最後の希望として冷蔵庫を開いてみる。
「う~ん、ここも野菜とかしか……ん?」
丁寧に保管されている野菜や肉類の中に、明らかにそれらとは別物の色を見つける。ちょうど一口で食べられるほどのサイズの丸型で、食欲をそそる甘い匂いを放つ……茶色の菓子。
それは、誰がどう見ようとチョコレート。詳しく言うなら、トリュフチョコレートと呼ばれるものだった。さらにそのチョコが等間隔に並べられた皿の下には、短い言葉がかかれた紙が一枚。
『勝手に食え』
「……いかにも、勝手に食べていい物だからあげたわけじゃない、ってことかな? 相変わらず回りくどいやり方なんだな。王子らしいといえばらしいけど」
皿と一緒に紙を取り、そこに込められた王子の意図を察する会長。その回りくどいやり方に、ため息をつきながら紙をぽいとゴミ箱に投げ捨てる。王子らしいやり方でもらうことができたチョコを一つだけ摘み、そのまま口に入れる。着ぐるみなのにどうやって食べているのか……などはこの際、気にしないことにしておく。
「うん! いかにも、美味なんだな!」
口内にじわりと広がる優しい甘みを感じつつ、会長は満足そうにピッと片手を挙げる。そうして次のチョコに手を伸ばし、充実したバレンタインデーを過ごしていった。
「…………」
──くぴっ
「……ったく、面倒くせぇ」
「『捜シ者』ー!! いっぱいチョコ買ってきちゃいまし
とある高級ホテルの一室……『捜シ者』と『Re-CODE』が現在の拠点とする一室に、日和の明るい声が響き渡る。外出から帰ってきた彼女の手には、大量のチョコが入った袋が握られていた。
「そんなにあっても邪魔」
「また無駄な出費を……」
「……ふ、バレンタインというやつか」
雪比奈と時雨が冷めた反応をする中、日和の意図を察した虹次が静かに呟く。一人でもわかってくれた者がいて嬉しいらしく、日和はパタパタと両手を振りながら部屋を駆けまわる。
「正解だ
「……ていうか、バレンタインって何? そいつを殺せばいいの?」
「そんな血生臭いイベントじゃない
『Re-CODE』として、一般的とは言い難い人生を歩んできた日和だが、年若い女子であることは変わりない。イベントには敏感なのだろう。
それに対して、雪比奈は常識など欠片も感じられない言葉を口走りながら首を傾げる。これを冗談などではなく本心で言っているのだから余計に恐ろしい。
「仕方あるまい。雪比奈は興味が無いことに関してはまず知ろうとしない。行事や祭事なども、確実にその部類に入るしな」
「うわ~、女につまんない男って言われる
「別に知らなくても死なないし」
「それには同意するな」
「時雨まで冷め過ぎ!」
そんな雪比奈をフォローする虹次だったが、当の雪比奈は特に気にする様子も無く冷めた反応をする。そこに同意する時雨も、相当に冷めているタイプの人間だと伺える。しかし、いくら日和がバレンタインを楽しもうと考えていても、こうまで冷めた人間が揃っていては難しいだろう。
「あー
「虹次、結局のところバタンレインって何するの」
「バレンタイン、だ。簡単に言うなら、好いている者にチョコを渡す日だな。外国では関係ないが、日本では
「要するに浮かれた奴らが行う愚行ということか。くだらない」
意地でもバレンタインを満喫しようとする日和に対し、男性陣は日和との圧倒的な温度差を維持したまま話を続ける。
最終的に愚行とまで吐き捨てる時雨は、特に興味を示さぬまま新聞に目を通す。
「ハグハグハグ!! ヤケ食いしちゃうんだから! 止めても無駄だ
「日和、チョコに酢かけない」
「ゴクゴクゴク!! ヤケ飲みだってしちゃう
「日和、ホットチョコに納豆混ぜない」
自分が買ってきたチョコを、相変わらずの異色の組み合わせで食べていく日和。時雨は新聞に目を通しながらも、日和に細かく注意していく。
「……甘いし、ベタベタする。後は虹次が食べて」
「苦めのものならいいだろう」
一方で、雪比奈と虹次もチョコを食している。しかし、雪比奈は一口食べただけで嫌気がさしたらしく虹次に全部渡す。当の虹次も、苦めのチョコを選んでいるためその減りは遅いが。
ちなみに彼らが自由にやっている間、変わらず窓辺に座り込んでいた彼はというと……
──パリ
「……甘い、ね」
~おまけ~
「ZZZ……」
「ZZZ……」
「ZZZ……」
『いやぁ、チョコのベッドにチョコの枕……意外と寝心地がいいね』
「ZZZ……」
『コード:01』人見……寝てばかりの彼も、彼なりにバレンタインを楽しんでいた。
以上、あの人たちのバレンタインデーでした
息抜き程度に、軽い気持ちで読んでいただけたなら幸いです
さて、バレンタインときたらホワイトデー!
今回に負けないくらいあっさり風味でお送りするかと思います!
では、失礼します!