CODE:BREAKER -Another-   作:冷目

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一カ月遅れての投稿で申し訳ありません……!
暑くなって疲れが抜けず、色々とありまして中々書けませんでした……
これから取り戻していければと思っています!
さて、今回からいよいよ『捜シ者』との対決が始まります!
優が闘いの中でどうなるのかも明らかに!
それでは、どうぞ!





code:59 パンドラ・メモリー

 「私が、大神と『捜シ者』(あなた)の母上が亡くなった原因──?」

 時すでに遅く、開かれてしまった扉。暗闇に閉ざされた空間から、『パンドラの箱(ボックス)』を手にした状態で現れた『捜シ者』からの言葉を、桜は驚愕の表情を浮かべながら繰り返した。自らの正体を隠すために着けてきた仮面を、無意識のうちに外しながら。

 『おーい! おーい、みんなー!』

 「なんだ……?」

 すると、その場の緊張感にそぐわない声が大神たちの通信機から流れた。何事かと思って大神たちは通信機を耳に着けると、声の主が再び話し始めた。

 『いかにも、みんな元気かなー?』

 「その声……会長?」

 「『にせまる』や」

 ここ最近聞き慣れた話し方に、「いかにも」という口癖。優と遊騎は声の正体が会長だと気付くと、通信機越しにさらに話が展開していった。

 『おい、渋谷……なんでお前が通信機を持ってんだよ』

 『いやだなぁ、仲間外れは寂しいでしょ?』

 『ふふふ、さすがは会長です』

 『そういう問題かよ……。つかお前、今どこにいるんだよ』

 『私のことより、今は桜小路君のことだ』

 王子と平家も通信機越しに加わり、一時だけ穏やかな空気が流れる。しかし、会長の言葉と同時にそれは打ちきられる。通信機越しでも真剣さが伝わってくる口調で、会長は静かに告げた。

 『珍種は“エデン”にとっては最大の脅威……。こうなった以上、記憶が戻ることも大いにあり得るけれど……それはやむなしだ。だけど、彼女が自分に特別な力があると……珍種だと自覚させてはダメだ。もし自覚してしまったら、もう『桜小路 桜』としては生きられない。私のように着ぐるみで正体を隠して生きる……『存在しない者』になってしまう』

 ──存在しないということはとても……とても悲しいことなのだな

 瞬間、大神の脳内に浮かんだのはロスト的な何かで小人化した桜の言葉。『存在しない者』の気持ちを味わい、押し潰されそうなほどの悲しみに満ちた笑顔。そして、彼女を『存在しない者』にはしないという彼自身の誓い。

 大神は再び誓いを噛み締めるように左腕に力を込め、視線を桜と『捜シ者』に向けた。その一挙一動に注視し、彼女が「桜小路 桜」として生きられるように。

 すると、『捜シ者』は今までと変わらない……柔らかくも冷たい視線を桜に向けたまま、「そう」と口を開いた。

 「君がいなければ私たちの母さんは死なずに済んだ。そして、母さんが死ななければ私たち兄弟も今とは違う道を歩めただろう。……わかるかい、桜小路 桜」

 悲しむような言葉を並べながらも、特に悲しさを感じさせない陶器のような表情を浮かべながら言葉を続ける『捜シ者』。その中で再び桜の名前を口にすると、その手に持ったパンドラの箱(ボックス)を見せつけるように桜の前に差し出した。

 「君さえいなければ、大神(私の弟)が犬として人殺しをすることもないし、私がこうして闘いを仕掛けることもなかった。何もかも全部──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──君のせいだよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ッ──!」

 視界に映る『パンドラの箱(ボックス)』と、平然とした語気にもかかわらず強い衝撃を感じる『捜シ者』の最後の言葉。

 その二つが合わさった瞬間、桜の中で何かが弾けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 逃げて──!!

 

 

 

 

 

 目の前を染める紅い鮮血。

 自分を護るように両手を広げて崩れ去る一人の女性と、その女性を手にかける一人の男。

 そして、同じ光景を見ている三人の男女。

 

 

 

 

 

 『コード:01』と呼ばれ、まだ悪に堕ちる前……若かりし頃の人見。

 両腕をもがれ、顔も半分失い……壊れかけの『ゐの壱』。

 

 

 

 

 

 そして、幼いながらも今の面影を残す……少年の大神。

 

 

 

 

 

 幼い大神と桜。二人の視線が交差し、その頬をほぼ同時に鮮血が染める。

 その二人の間に割って入り、冷たく桜を見下ろす女性を手にかけた男。

 男は何も言わず、ただただ静かに桜を見下ろしながらその手を伸ばして──

 

 

 

 

 

 

 

 

 やめて──!

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ッ──!? い、今の、は……?」

 「少しは思い出した? 君を庇って死んでいただろう、うちの母さん」

 「あれ、が……大神と『捜シ者』の母上……? う……!」

 まるで栓が外れた水道のように溢れ出たヴィジョンに、桜の表情は驚愕に染まる。

 なぜ自分はあそこにいたのか、人見はあそこで何をしていたのか、『ゐの壱』はどうしてあんなに壊れてしまったのか。

 なぜあの女性……大神と『捜シ者』の母親は桜を庇って亡くなったのか。

 突然のヴィジョンと『捜シ者』が告げた言葉に、桜の頭の中は疑問で埋まっていた。だが、それが真実であるかどうか思い出そうとしても、頭が痛むだけで何も思い出せない。

 そして、無意識のうちに桜はもう一人の真実を知るであろう人物のことを見る。

 「お、大神……。お前は……覚えているのか?」

 あのヴィジョンの中にいた登場人物の最後の一人である……大神。自分たちは幼い頃にすでに会っていたのか、という疑問も桜の中に浮かんだが、今はそれを飲み込んだ。それでも、上手く疑問を言葉にできず、短い言葉で絞り出すのが精一杯だった。

 「…………」

 だが、大神は何も答えようとしない。それが「覚えていない」という意味なのか、「覚えている上で話そうとしない」ということなのか……桜にはわからなかった。

 「ど、どうなのだ、大神。覚えていないのか? お前の母上を手にかけた、あの男のこと……」

 「…………」

 答えようとしない大神を見て、さらに言葉を続ける桜。大神と『捜シ者』の母親を手にかけた男について尋ねるが、口にしたのと同時に桜の中で男の姿が蘇る。

 大きく、有無を言わさぬ威圧感に溢れた姿。ただ立っているだけでも全身を飲み込むほどの恐怖に襲われる……幼い自分が感じた当時の感情を、桜は明確に思い出していた。

 それに対し、相も変わらず答えようとしない大神。すると、そこに『捜シ者』の言葉が割って入ってきた。

 「自分の記憶が信じられないのかい? 君は特別なんだよ。君は異能による命の危機に何度曝されても生きていた。そう、まるで……特別な力でもあるかのように、ね」

 「特別な、力……? そ、そういえば春人の時も、雪比奈殿の時も……」

 はっきりと言われたことで、今まで偶然と思ってきた様々な出来事が偶然ではないと思い始めた桜。大神の『青い炎』で燃え散ろうとした春人を救ったことも、雪比奈の異能で大神たちが窮地に陥った時も。記憶に新しいもので言えば、ついさっき遊騎を救った時も。

 「わ、私は何者なのだ……。その特別な力のせいで二人の母上が……? 私はいったい──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「合気道ですよ」

 「……は?」

 「だから、合気道です。嗜んでいるんでしょう?」

 「ま、まあ、もちろん……」

 「ですから、合気道です」

 「???」

 緊迫した空気を消し飛ばすかのように、笑顔で「合気道」と繰り返す大神。今まで黙っていた大神が急に話し出し、さらにその内容の意図もつかめず、桜は疑問符を何個も浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「合気道とは敵と争うのではなく、敵との和合を真髄としている。つまり、全ての攻撃を受け流し、無効化する武道。あなたは異能での攻撃を受け流して無効化した……まさに合気道そのものじゃありませんか」

 「た、確かに……! 父上から教わった合気道を知らぬ間に極めていたということか。……そうか! これこそ、まさに無我の境地なのだ! 父上! 私はやりましたぞ!」

 「おー」

 合気道の真髄を語り、無理矢理といった形で異能の無効化と話を繋げると、桜は目を輝かせて納得してしまった。ガッツポーズまでする桜を見て、遊騎も思わずそれに便乗する。

 しかし、周囲の(真面な)者たちの反応はというと……

 (やっぱアイツは大馬鹿か……)

 「ねぇ時雨、あいつバカなNO()?」

 「…………」

 『ハハ……。桜小路が素直な子でよかったな、零』

 『ククク……』

 「……ハァ」

 片や馬鹿扱いし、片や呆れた目で見つめ、片や笑うしかないという状況だった。説得した張本人である大神ですら、ため息をついてしまうほどである。

 すると、大神はそのまま桜に背を向けて、静かに言葉を続けた。

 「……あんたの過去や正体なんてどうでもいい。そもそも、あんたが持っている事の善悪すら超えて理屈抜きで命が大事なんていう夢物語な思想……オレは絶対に信じない。オレとあんたは一生、相容れることは無いだろう」

 「お、大神……」

 先ほどとは打って変わって、冷たさを感じる大神の言葉。自身の思想を否定され、桜の浮かれた気持ちも一気に静まり、真剣な表情に戻る。また来るであろう冷たい言葉を覚悟する。

 しかし、現実は想像とはまるで違っていた。

 「だが、あんたは命を懸けてそれを貫いてきた。オレたちがいくら止めようと、何度も何度も。その甘っちょろい夢物語を叶えるために。……オレは、そういうアンタを信じる」

 「大神……!」

 過去がどうだろうと関係ない。自分が信じるのは、自分が見てきた今の桜であると、振り返って真っ直ぐに桜を見る大神の視線を受け、桜は今まで自分にのしかかってきていた多くの疑問から解放された気分になった。変えられない過去ではなく、これからの未来に目を向けようと。

 だが、過去を含めてその目で見てきた者にしてみれば、そんなことは関係なかった。

 「過去に縛られない……それはとても素晴らしいことだね。でも、その過去は確かに私が知っている。そして、未来も『パンドラの箱(ボックス)』を持つ私のもの。後は、今をどうにかすればいいだけ。といっても、必要なものは手に入ったし……

 

 

 

 

 

 

 

 

 だからもう全員いらないな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ッ──お前ら! 今すぐ構え──!」

 「『流星霜(りゅうせいそう)』」

 何かを感じ取った優の言葉が届くよりも先……『捜シ者』の刀から神々しいほどの光が発し、その空間の全てを破壊していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「う、く……。な、何が……」

 「……無事ですか、桜小路さん」

 光と衝撃に呑まれ、一瞬だけ気を失った桜。上手く回らない頭を抱えながら、ゆっくりと顔を上げていく。すると、最初に視界に映ったのは自分を庇うように立つ大神の姿だった。

 「大神……お前が守ってくれたのか?」

 「いえ、実際のところオレも無傷です。他の誰かが──」

 「オレだよ」

 「夜原先輩!」

 桜を庇うように大神が立ち、さらにその大神を護るように立つ優の姿を見て、桜の頭は一気に覚醒していく。見ると、周囲はほぼ瓦礫として崩れている中、優は『斬空刀』を構えて凛と立っていた。

 「先輩が護ってくれたのですね! ありがとうございます!」

 「余計なことを……とは言いません。助かりましたよ」

 「なに、礼を言われるようなことじゃない」

 大神たちに背を向けたまま立ち続ける優。リリィの時同様に彼の背中を見ることになり、桜は改めて彼の優しさを感じていた。大神も今回ばかりは皮肉を言わず、素直に礼を言った。それを流すと、優は変わらず二人に背を向けたまま続けた。

 「……それに、オレはむしろ謝るべきだ」

 「え……?」

 ──ビシ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──ブシャア!!

 瞬間、優が構えていた『斬空刀』の刀身が粉々に砕け、優の身体に無数の傷が浮かんだ。そこから溢れ出た大量の鮮血は、あっという間に周囲の瓦礫を染めていき、その身体も瓦礫同様に崩れ去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「優!!」

 「夜原先輩!」

 崩れ去った優を案じて取り囲む大神と桜。大神が頭を抱えると、優は荒くなった息を何とか整えながら自虐のように口を開いた。

 「ざまあ、ないな……。あの時……修行で、大神の一撃を受けた時に……『斬空刀』にヒビが入ったままにしていた報い、か……」

 「な──!?」

 優の言葉に大神は静かに衝撃を受ける。剣術の仕上げとして行った優との修行。その中でついに完成した彼の技だったが、その代償に優の『斬空刀』に大きなダメージを与えていた。だが、それよりも衝撃なのは優がそれを黙ったまま闘ってきたことだった。

 「なんで……なんで言わなかった! 刀にヒビが入ったままわざと放置するような、お前はそんな馬鹿じゃないだろうが!」

 「……悪いな。けど、直す時間なんて、なかっただろうが……。それに、オレ自身さっきの闘いで、結構ギリギリだった……。壊れかけのオレと『斬空刀』でも、お前らを護れたんだから十分だ……」

 「先輩……!」

 自分を犠牲にして二人を護った優の姿に、桜はわなわなと肩を震わせる。だが、当の優は落ち着いた様子で言葉を続ける。彼らが今すべきことを諭すために。

 「行け、大神……『捜シ者』はお前が斃せ。……手を貸せなくなって、悪いな」

 「……うるせぇよ」

 諭すと同時に、手助けできなくなったことを謝罪する優に対し、大神は静かに優の胸に自身の拳を当てた。そして、そのまま強気な言葉を微かな笑みを浮かべながら口にした。

 「ハナから手を貸してもらおうなんて思ってない。わかったらテメェはここで静かに寝てろ。その間に……終わらせる」

 「……任せた」

 それだけ言葉を交わすと、大神は優の頭をゆっくりと床に下ろした。そして、斃すべき敵を斃すため、そのまま振り向き──

 「結局、『脳』を使う彼もその程度か。つまらない」

 「──『捜シ者』!」

 自身の身体についた埃を払いながら退屈そうに言葉を並べる『捜シ者』に対し、大神はその眼で鋭く睨みつけた。しかし、『捜シ者』は構わずに視線を動かす。

 「そう……彼らと同じでね」

 彼ら……『捜シ者』の視線の先にいたのは、優と同じように重傷を負って倒れる遊騎と、その遊騎が庇った時雨と日和の姿だった。

 「遊騎!」

 「く……!」

 大神が叫んだ瞬間、時雨がボロボロの身体を動かし始める。優と比べて遊騎は小柄で武器もない。どうやら完全に時雨たちを護れなかったようだった。現に、時雨の手にいるロストした日和も頬に斬撃を受けただけでなく、飛び散った瓦礫が腹部に深々と刺さっていた。

 「日和……! しっかりしろ、日和!」

 時雨は自分の傷など気にせず、ただ一心に日和に呼びかけ続けた。しかし、日和の眼は一向に開く気配がない。それどころか、時雨に向かって『捜シ者』が静かに歩み寄っていき……高々と刀を掲げた。

 「私の『捜シ者』は強い異能者だ。この程度で死ぬようなら……もう必要ない」

 ──ズン!

 「ぐああぁぁぁ!!」

 手負いの、『Re-CODE』(自分の部下)であるはずの時雨に向かって、なんの容赦もなく刀を刺す『捜シ者』。あまりに残虐なその光景に、桜は大きく目を見開く。

 「じ、自分の配下の者まで殺そうとするなんて……。なんて、なんて酷い……!」

 「……アンタは、いつもそうだ」

 瞬間、桜とは対照的に冷ややかな声が空間に響く。まるで、『捜シ者』がそうすることをわかっていたかのように。その眼で彼の行為を見て、同じくその眼で彼を睨みつけながら……大神は続けた。

 「相手が誰だろうと、アンタは人をモノとしか扱わない。敵はもちろん、自分の部下だってそうだ。そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 自分の母親(・・・・・)であっても」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「さ、『捜シ者』が母上を!?」

 大神の口から出た言葉に、桜の表情は再び驚愕に染まる。死んだ原因は桜にあると言いながら、直接母親を手にかけたのは『捜シ者』自身だということに対してもだが、それ以上に信じられない点が一つあった。

 (では、あの恐ろしい男は『捜シ者』……!? だが、今の姿とはあまりにも……!)

 桜が思い出したヴィジョンの中に出てきた、彼らの母親を殺した謎の男。見ただけで身体の芯から震えあがるような恐怖感を与える存在。確かに今の『捜シ者』からも陶器に似た冷たさ、類を見ない残酷さを持っている。

 しかし、桜はどうしてもヴィジョンの中の男と『捜シ者』が結びつかなかった。考えるほどに、本当にあれが『捜シ者』なのかという疑念が浮かび上がる。

 「大神! 今の話は本当なのか!?」

 ならば聞くのが早いと、桜はその言葉を告げた大神へと声をかける。だが、彼は桜に背を向けたまま何も答えようとしない。だが、今回ばかりは引くわけにはいかない。なんとか問い詰めようと、桜は身体をずらして彼の顔を──

 

 

 

 

 

 

 

 

 「──ッ!!」

 その時、彼女は全てを悟った。

 

 

 

 

 

 「…………」

 もう、声は届かない。

 彼女はあの眼を知っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの眼は、冷たく激しい“悪”の瞳。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……お前は本当に私の若い頃に似ている。でも、いくら覚悟を決めても私の太刀筋は止められないんじゃないかな」

 「…………」

 ──カ……チンッ、カ……チンッ

 真正面から向かい合い、二度目の対峙を叶えた(大神)(『捜シ者』)。その瞬間に一切の音を消え去り、長い静寂が訪れる。聞こえるのは、『捜シ者』が癖のように奏でる金属音のみ。指で鍔を弾いては鯉口にぶつかる。

 それに対し、大神は黙って刀を構える。静かに手を添え、全神経を『捜シ者』の一挙一動に集中させていく。その間も、『捜シ者』が奏でる金属音は続く。

 一定のリズムで、それは繰り返されていく。

 

 

 

 

 

 ──カ……チンッ、カ……チンッ

 ただただ、繰り返されていく。

 

 

 

 

 

 

 ──カ……チンッ

 だが、それは突然に訪れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────カ……!

 それは突然に、刹那の閃光と化す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────……………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──ドッ!

 次の瞬間、『捜シ者(・・・)』の身体に深い傷口が刻まれ、刀身が粉々に砕け散った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『捜シ者』との一騎打ちを制した大神。だが、彼が放った一撃はこれだけでは終わらなかった。

 ──ドン!!

 「ッ……!」

 「き、傷口が燃えた!?」

 彼が『捜シ者』の身に刻んだ傷口から、猛々しく『青い炎』が燃え上がった。『青い炎』は傷口から周辺の肉を焦がしていき、さらなるダメージを『捜シ者』に与えていく。

 見ると、大神の刀の刀身には『青い炎』がゆらゆらと刃をゆらめかせていた。会長との修行の中で、彼は『捜シ者』を超える一撃の速さと強さを習得していた。

 「今のはよかった。この短期間でここまで仕上げるなんて、渋谷師匠にどんな手解きを受けた?」

 「…………」

 『捜シ者』は大神が自分を超える一撃を習得したことを素直に認め、賞賛の声をかける。だが、その間も傷口から燃え上がる『青い炎』は身体を燃やし続ける。それを気にも留めずに話す姿は異様で、嫌でも警戒心が前に出てくる。故に、大神も集中を切らそうとはしない。

 「……ふぅ」

 ふと、『捜シ者』が俯いて小さく息を吐いた。気怠そうに、呆れるように。すると、そのまま静かに顔を上げて、平然と続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「もう、このロスト姿(・・・・)にも飽きたなぁ」

 「な──!?」

 『捜シ者』がロスト中……まさかの真実に桜は思わず声を上げ、闘いがまだ終わらないことを密かに感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 




CODE:NOTE

Page:44 『光』

 『コード:02』平家 将臣が操る異能。掌からムチ状の『光』を出し、対象を縛り上げたり、身体から放出した『光』による衝撃で全てを吹き飛ばすことも可能。また、縛った状態で極限までムチを絞めることでそのまま切断することができる。その切り口は、人間相手ならば血が一滴も出ないほど滑らかで、普通の刃物ではあり得ない切り口となる。闘い以外でも、光通信網にてコンピュータと通信して情報のダウンロード・閲覧も可能。
 万能に近い異能に感じるが、実際はかなり扱いが難しい異能。異能自体の力が強すぎるため、通常時でも全身から『光』が出続けてしまい、すぐにロストしてしまう。そのため、平家は制服に似せた特別性の拘束具を常に身につけることで『光』の放出を押さえている。ちなみにこの拘束具は1mあたりから落としただけで床にめり込むほど重い。

※作者の主観による簡略化
 ファンタスティック☆イリュージョン!!!



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