CODE:BREAKER -Another-   作:冷目

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お久しぶりです!
もう二月も終わりですね……
ようやくやることが落ち着いてきたので一気に書き上げて投稿させていただきます!
今回はタイトルの通り、『捜シ者』たちがメインとなっております!
まだ『捜シ者』や『Re-CODE』は出番が少ない状態なので色々と難しかったですが、まあ自由にやらせていただきました(笑)
一部キャラが崩壊しているかもしれませんが……お許しください!
それでは、どうぞ!





code:extra 13 『捜シ者』たちの日常生活

 この物語は、日本に滞在する『捜シ者』と彼に付き従う者たちの日常生活を描いたものである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ①技術だけは世界一

 

 

 

 「これ! これなんてどうだい!?」

 『…………』

 唯一の女性であるリリィが目を輝かせて差し出した物を見て、残った男性陣は揃って無言を貫いた。だが、その態度は一人ひとり違うものだった。

 「ぬ、うぅ……」

 まず一人。仙堂はどう言葉を返していいのかわからないのか、ただでさえ強面の顔をさらに強張らせていた。よく見ると、その額には汗が流れている。おそらく彼自身、それを嫌な(・・)汗だと認識していることだろう。

 「……ハァ」

 もう一人、新たな『Re-CODE』である風牙は完全に呆れた様子だった。ほとんど半開きの目からは「早く帰りたい」という彼の思いが強く伝わってくるようで、開いたままの口からは面倒くさそうにため息が漏れていた。

 「…………」

 そして最後の一人、『Re-CODE』の一人である雪比奈は完全に無反応だった。仙堂のように困っているわけでもなく、ましてや風牙のように呆れているわけでもなかった。あえて彼の様子を言葉にするなら……「どうでもいい」というのが正解だろう。

 そんな三者三様な態度を見たリリィは、先ほどまで輝かせていた目をスッと細め、三人に対して怒りを露わにし始めた。

 「ちょいと、アンタら! いくらなんでもその反応はないんじゃないのかい!? ファッションとかに詳しくなくても似合うか似合わないかくらいはわかるだろ!?」

 三人に差し出した物……かなり布の面積が少ない水着を握りしめながら怒るリリィ。しかし、それを見ても三人の反応は特に変わらなかった。

 「い、いや……オレはそういうのはよくわからん……」

 「すげー寒そう」

 「…………」

 「あーもう! アンタらに聞いたリリィがバカだったよ!」

 今、彼らがいるのは都内にある服などの専門店。時期が時期だけに、店内の一角は水着関係の品が所狭しと並べられている。彼らはまさにその一角にいるわけなのだが、見事にリリィ以外は興味が無さそうだった。近年は色々とこだわる男も多くなってきたが、やはりこういったファッション関係の店にいることを苦痛に感じる男も少なからずいるようだ。少なくとも、ここに三人。

 そんな彼らに意見を求めても無駄だと悟ったリリィは水着を戻し、頬を膨らませて三人背を向けた。どうやらかなりご立腹らしい。そんなリリィを見て、仙堂は咳払いを一つしてから口を開いた。

 「だ、だがリリィ……なにも無理に買う必要はないだろう。どうせすぐにターゲットのところに出向くことになる。大体、お前は日本はそこまで好きではないだろう? 来た時も『湿気臭い所』だと……」

 「日本は確かに湿気臭い所さ! けど日本の技術とかはトップレベルなんだから欲しがってもいいじゃないか! どうせターゲットを消したらすぐに帰ることになるんだから少しくらいはいいだろ!」

 「……面倒臭い奴」

 「お黙り、風牙!」

 ギャーギャーと騒ぎ立てるリリィたち。その騒ぎに参加せず傍観していた雪比奈だったが、軽く息を吐いてから静かに手を伸ばした。そうして手に取ったのは……リリィが最初に手に取った水着だった。そして……

 「……ゆ、雪比奈?」

 そのままそれをリリィに手渡した。突然のことに瞬きを繰り返すリリィ。すると、雪比奈は相変わらずの無表情のまま今まで閉じていた口を開いた。

 「……お前が気に入ったのなら好きにすればいい。お前は元がいいから、大体の物は着こなせるんだから心配する必要もないだろう」

 「雪比奈……」

 どこかぶっきらぼうながら、リリィを褒めちぎる言葉。急にそんなことを言われたリリィは思わず頬を赤く染めたが、すぐに気を良くしたようで満面の笑みに変わった。

 「わかってるじゃないか! さすが雪比奈だよ! じゃあ、これ買ってくるから待ってておくれよ!」

 水着を手に満面の笑みを浮かべたまま足早に会計に向かうリリィ。その様子を黙って見ていた雪比奈だったが、そんな雪比奈を風牙は呆れたような目で見ていた。

 「……よくああいう台詞が出てくるな。まぁ、おかげで早く帰れるからいいが」

 「オレには……無理だな」

 風牙と違い、感心するように頷く仙堂。すると、二人の様子に優越感を感じたのか、雪比奈は珍しく口元を緩ませて静かに笑みを浮かべた。

 「……お前たちは女心がわかってないだけ」

 『お前には言われたくねぇ(ない)』

 優越感たっぷりな雪比奈の言葉に対し、即答でその言葉を否定する二人。見ると、会計を済ませたリリィが笑顔で戻ってくるのが見えた。こうして日本に来てすぐの買い物は終え、四人は目的に向けて歩き出した。

 ……ただ心残りがあるとすれば、その後“エデン”に捕えられたリリィはこの水着を着る機会が完全に無くなってしまった、ということである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ②これもまた一興

 

 

 

 瘢痕の『Re-CODE:03』である虹次のプライベートは謎に包まれている。元々、多くを語らない男であるため、謎は明かされるどころか深まっていくばかりである。

 「……『捜シ者』、虹次の姿が見えないようですが」

 『捜シ者』たちが過ごすホテルの一室にて、同志の姿が見当たらないことに疑問を抱いた時雨が窓辺に座る『捜シ者』に声をかける。すると、『捜シ者』は柔らかな笑みを浮かべて時雨の方を向き、優しい口調でその疑問に答えた。

 「虹次はいつものアレ(・・・・・・)をしに行っただけ。夜には帰ってくる」

 「アレ?」

 「『捜シ者』! アレってなんでございますKA()!?」

 『捜シ者』の発言を聞き、日和も興味が湧いたのか会話に参加してきた。時雨と日和の二人が首を傾げる中、『捜シ者』はその視線を再び窓の向こうに向けて静かに呟いた。

 「それは秘密。虹次との約束だから」

 「そんなー! 気になるじゃないですKA()ー!」

 「日和、埃が立つから暴れるな」

 『捜シ者』の言葉に納得できないらしく、日和は両手をバタバタと振って地団太を踏んだ。それに対して、時雨はそれ以上の追及はしようとせず隣で暴れる日和を止めた。

 そんな彼らを横目に、『捜シ者』はただ窓の向こうを見続けた。窓の向こうでは、青い空がどこまでも広がっていき、雲が静かに風に吹かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 世間的に今日は休日であり、天気も快晴。さらに時間が昼過ぎという人通りが自然と多くなるであろう条件下にもかかわらず、そこには人の気配など微塵もなかった。

 正確に言えば、人はいる。ただ、その唯一の人が感じるような人の気配がないのだ。だが、それも当然である。その人がいるのは山の中。それもかなり奥だった。整地された場所ならば、ちょっとしたレジャー気分で登る者もいるだろう。しかし、そこは尋常ではないほど生い茂った草木のさらに向こうであるため、滅多なことが無い限りそこに行こうとする者はいなかった。

 そんな場所に……()はいた。

 「…………」

 尋常ではない量の木々があるため、その葉が日光を遮断して薄暗さを作り出し、とても今が昼間とは思えなかった。さらにその薄暗さに加担するように、ジメジメとした湿気が籠っていた。そして、それらと同時に感じる、思わず耳を塞ぎたくなるような轟音。

 そこは、罰白(ばつはく)の滝《たき》と呼ばれる場所だった。昔、とある組織(・・・・・)が罪人に正しい()を与えるために、その罪人に全ての情報を吐く(・・)ように強いるために利用した激流の滝である。しかし、ほとんどの罪人はその強すぎる激流に耐えることはできず、その水圧に潰されて死んでいった。そのため、ここは『死の滝』の異名を持っている。

 だが、考えてみればそこまでの激流だ。観念して何か言おうとしても滝の轟音にかき消されて何も伝わらないだろう。そう考えると、これは単なる処刑に近いものだったのではないかとも思えてくる。あまり気持ちの良い場所とは言えない。

 しかし、そのいわくつきの場所で彼は……ただ静かに滝に打たれていた。

 「…………」

 何人もの命を潰してきた激流の水圧が、休むことなく上から全身を押し潰そうとのしかかってくる。しかし、彼はその姿勢を微塵も崩すことなく打たれ続けた。まるで僧が修業するように褌のみを身に纏っているため、その激流のほとんどは素肌に直接打たれているにもかかわらず。

 「……そろそろ頃合いか」

 ボソリと呟いたその瞬間、今まで彼の素肌に届いていた激流が届かなくなった(・・・・・・・)。まるで彼の周囲に見えない壁があるように、激流を完全に遮断していた。そして……

 「無用」

 ──パァァンッ!!

 再び呟いた瞬間、一筋の何か(・・)が滝の中心を切り裂いた。切り裂かれたことで、一瞬だけ中心の激流が弾け飛び、水圧がゼロとなった。その一瞬の間に彼は立ち上がり、その場から跳んだ。そして、彼が滝の周囲に着地すると同時に、罰白の滝はいつも通りの激流を取り戻した。その様子を見て、彼はすっかり濡れた自分の髪をかき上げながら、満足そうに笑みをこぼした。

 「やはり、ここの滝はいつ来てもいい。身が引き締まる」

 そう言うと、水辺から離れていき用意していたタオルで身体を拭き始めた。それにしても、かつて何人もの命を奪っていった激流の滝を「身が引き締まる」程度に感じてしまう。かつての罪人が軟弱だったのか、それとも彼が強靭すぎるのか……まあ、おそらく後者だろう。

 「……さて、行くとするか」

 念入りに全身を拭いて水気を取り、服に着替えていく。そして、彼は下山すべく静かに歩き出した。その背中に、響き続けていく滝の轟音を受けながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ふむ……。やはり滝に打たれた後はここに限る」

 のんびりと、完全にリラックスした様子で彼は呟いた。今いるのは滝ではないが、同じく水に関する場所。違いといえば、冷水ではなくお湯であり、打たれるのではなく浸かっているということだ。

 そう、彼がいるのは……銭湯である。

 彼が先ほどまでいた山のふもとには昔ながらの銭湯があり、周囲に住む人々がよく利用している。そして、彼は滝に打たれた後はここに来るというのがいつものことだった。なんでも、滝に打たれたことで強張った身体をほぐすにはこれが一番だとかなんとか。

 「はいはい、失礼しますよ……おっと、旦那。随分といい身体してるじゃねぇか。羨ましいねぇ」

 「……フッ。御老人よ、そちらも中々に引き締まっているように見えますが?」

 「ハッハッハ! 口が上手いな、旦那! けど、旦那の身体にゃ負けちまうよ!」

 たまたま近くにいた地元の老人に声をかけられ、楽しげに談笑を交わす。その姿は銭湯でよく見る光景かもしれない。しかし、老人は知らない。そのいい身体をした目の前の男が、先ほどまで殺人級の激流に打たれていたとは。そして彼が、自分たちの生活を脅かすかもしれない存在であることを。

 「では、御老人。会って早々で申し訳ないが、先に失礼させていただく」

 「おいおい、堅っ苦しい喋り方だなぁ。しかし、これも何かの縁だ。名前を聞かせてもらってもいいかい?」

 老人との談笑を切り上げ、一足先に湯船から上がる。すると、老人は名残惜しそうにしながらもそれを見送った。そして、その後ろ姿を見ながら彼の名を尋ねた。

 すると、彼はその場で立ち止まり、顔だけを老人の方に振り向いた。その時、老人が見たのは……左目に刻まれた瘢痕だった。

 「……オレの名は虹次。では、お元気で」

 そう言って、彼……虹次は再び歩き出した。その背中を見て、老人は静かに手を振っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「こうした出会いも、また一興か」

 だいぶ下山に時間がかかったため、入る頃には薄暗かったのが、出てみるとすっかり夜になっていた。はるか頭上に輝く月と星々を見上げながら、先ほどの老人との会話を思い出す虹次。彼は一般的な世界とはかけ離れた存在。それでも、こうした出会いに悪い気はしなかった。

 湯冷めしないうちに戻ろうと、虹次は静かに歩き出した。その顔はとても満足気で、彼が過ごした一日が充実したものであると物語っていた。

 これが、虹次のアレ(・・)……日本に来る度に行っている彼なりの過ごし方だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ③ここが一番いい

 

 

 

 その日、『捜シ者』と『Re-CODE』たちは珍しく揃って外出していた。行き先は……なぜか大型ショッピングモール。

 「『捜シ者』、わざわざこんなところに来るとは……何かお捜しで?」

 「特にないけど……たまには目的もなく歩いてみてもいいと思ってね」

 「ハイハーイ! 日和CHAN(チャン)、ファミレスとか行きたーい!」

 「日和はおかしな食べ方して食欲無くすからダメ」

 「そう言うな、雪。趣向は人それぞれ。他人が口を出すことではない」

 入って早々、一般人とは違うオーラを醸し出す『捜シ者』たち。その後、彼らは周囲の視線が集まるより前に分かれ、それぞれがそれぞれの時間を過ごすことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「…………」

 『捜シ者』は、特に何か商品を見て回ると行ったことはせず、ただ階段の踊り場から買い物する主婦など一般人を眺めていた。

 こうして見ているだけでも多くの人がおり、それぞれが目的のために動いている。食事のためという目的一つでも、材料一つひとつを吟味する者もいれば、総菜コーナーに並んでいる者を深く考えもせずにとる者もいる。日常品を買うにしても、詳細を確認する者がいれば、とりあえず買っている者もいる。

 何かあれば店員を見つけて聞く者もいれば、店員に頼ることなく自力で目的の物を見つけようとする者もいる。さらには、その店員に文句を言う者もいれば、何かあっても黙っている者。本当に人というのはさまざまである。

 そんな彼らを、黙って見続ける『捜シ者』。そして、ボソリと呟いた。

 「やっぱり……人って醜いね。そう思うだろう? 虹次」

 「生憎、同じ景色を見ていないオレには答え難いな」

 今まで見ていた景色に背を向けて、踊り場の中央にある椅子に向かって『捜シ者』は口を開いた。見ると、そこには虹次が深々と座っていた。冷たい言葉を言う『捜シ者』に対し、虹次はただ静かに構えていた。

 すると、『捜シ者』はそのまま移動し、虹次の近くに座った。そして、二人はそれぞれ前を向いたまま話を続けた。

 「答え難くなんかないさ。虹次だって知っているだろう? 人の身勝手さや醜さを。だから、ここにいるんでしょ」

 「確かに、少なからずそういう人間はいる。だが、オレがここにいる理由には関係ないな」

 「……そうだね。虹次がいるのは、もっと別の理由。だから、信頼できる」

 「……フッ」

 それぞれ前を見ているため、視線は決して交わらず重なることも無い。だが、二人の間にはそんなものは必要なかった。別の場所を見ていても、彼らには関係なかった。それだけの強い信頼が二人の間にはあった。その信頼を感じながら、二人は過ぎ去る人々の中で時間を過ごしていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 趣味趣向は人それぞれ。そう割り切ってしまえば世の中とは楽なものである。自分にとってはあり得ないことでも、自分にとって信じられないことでも、「人それぞれだから」と割り切ることができれば何も感じない。だが、多くの人は無意識のうちにそれをやっているものである。例えば、飲食店に入った時に近くの席にいた別の客が信じられないような食べ方をしているとする。最初はそれを見て驚愕し、同席者などに一つの話題として口にする程度だろう。だが、それも最初だけであり、いつまでもそれを見てはいない。「変わった人もいるものだ」と無意識に割り切っているのだ。

 だが、彼らに関してはそんな無意識も働かなかった。その異常を超えた異常な食べ方を。

 「ねぇねぇ、時雨。本当に一緒でいいNO()?」

 「お前を放っておいて面倒なことになるよりマシだからな。それより日和、オムレツにイチゴジャムかけない」

 「ふーん、ならいいけどSA()。でも、せっかくファミレスに来たんだから時雨も色々食べたらいいのNI()

 「そこまで腹は減ってない。コーヒーで十分だ。それより日和、サラダにリンゴジュース混ぜない」

 一見すると普通の会話のようだが、日和の手元と時雨の最後の言葉を聞くと普通の会話などという言葉は一気に通らなくなる。普通に会話しながら、日和は明らかに普通では考えられない食べ合わせをしていた。その一つひとつに時雨は注意するが、聞く気は無いらしい。そして、その異常な食べ合わせは周囲の客も一斉に驚愕していた。

 「なんだよ、アレ……。スゲェ……」

 「美味しい……ワケないよね。大丈夫なの? あの人……」

 「なんか、食欲無くなってきた……」

 ひそひそと日和たちには聞こえないように話す他の客たち。その食べ合わせにドン引きしたり、それを堂々とする姿に感心したり、顔を青くして食欲を無くしたりなどその反応は様々である。

 しかし、日和はそんなことを気にすることも無く、その後も彼女オリジナルの食べ合わせをして食事を楽しんでいった。

 「ちょっと辛いのも食べたいKANA(かな)。カレーちょうだーい」

 「日和、カレーにアイスクリーム入れない」

 「辛いの食べたら甘いものだよNE()! ケーキ食べYO()!」

 「日和、ショートケーキにソースかけない」

 「うーん……しょっぱいのも食べたいKAMO(かも)

 「日和、ショートケーキのイチゴに塩かけない」

 「ちょっと、時雨! コーヒー全然飲んでないJAN(じゃん)! 飲まないならもらうから!」

 「日和、コーヒーにコーラ入れない」

 「ふぅ……ご馳走様!」

 「よし、それじゃあ行くぞ」

 「ハーイ!」

 それにしても、日和の食べ合わせや味覚も大したものだが、それを目の前にしてもまったく動じない時雨も大したものである。

 これは余談だが、日和と時雨がいる時間帯は一部のメニューがまったく注文されなかったという。理由を尋ねたところ、「あの食べ方を見た後に同じ物は食べられない」とのこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「お待たせしましTA()ー!」

 「遅くなりました」

 「そんなに待ってないし、想定内だから気にすることはないよ」

 「どうやら有意義な時を過ごせたようだな」

 その後、しばらくして『捜シ者』と虹次、日和と時雨は合流した。一応、それぞれが自由に過ごしたので、度合いは違えど満足感はあるようだった。これ以上いる理由もないため、帰る雰囲気になっていた時……日和が周囲を見渡してあることに気付いた。

 「……アレ? 雪比奈HA()?」

 「確かに姿が見えないな」

 最初は確かにいたはずの雪比奈の姿がどこにも無かった。探そうとしたが、ここは都内の大型ショッピングモール。無数に存在する人の中で目的の人物を一人探すことの難易度はとても高い。それに、雪比奈は元から何を考えているかわからない。どこに行ったか見当のつけようがない……と、日和と時雨は考えていた。しかし、『捜シ者』と虹次は違った。

 「じゃあ、行こうか」

 「そうだな」

 「()!? 雪比奈は置いてっちゃうNO()!?」

 雪比奈がいないのに移動を始めた『捜シ者』と虹次を見て、日和は驚きながらもその後に続いた。時雨も続いていくと、『捜シ者』はいつもの微笑みを浮かべながら口を開いた。

 「心配ない。雪比奈は……そこにいるから」

 そう言って『捜シ者』が指差した先には……数多くの家電が並べられていた。そして、その店先に並んだ目玉商品の中のとあるスペースの前に彼はいた。

 「…………」

 「ゆ、雪比奈!」

 そこには確かに雪比奈がいた。彼は日和の声を聞いたことで『捜シ者』たちの存在に気付き、そのまま合流した。

 「……もしかして、『捜シ者』は事前に雪比奈がどこにいるか聞いていたのですか?」

 「いや、どこにいるかは聞いていない。ただ、どこにいるかは大体わかっていた」

 「はあ……?」

 「フッ、雪比奈のことを考えればすぐわかることよ」

 「雪比奈のことを? ん~」

 『捜シ者』と虹次の言葉に頭を悩ませる時雨と日和。すると、虹次は静かに笑いながら今まで雪比奈がいた場所を指差した。

 「答えはアレ(・・)だ」

 そう言って虹次が指差したのは……店先に並べられた加湿器だった。少し時期外れだからか幾分か安くなっており、何台も並べられている。そして、虹次はそのまま答えを口にした。

 「雪比奈は湿度が高い場所を好む。だから奴はこういう場所に来ると加湿器の前から離れない」

 「人混みはうざったい」

 「……なるほど」

 この日、時雨と日よりは少しだけ雪比奈のことを理解することができた。また、帰りの雪比奈の顔はよく見るといつもより潤っており、その表情も生き生きしていたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おまけ 日和と時雨の3分クッキング(台詞のみ)

 

 

 

 「ハーイ! 日和CHAN(チャン)の3分クッキング始まるYO()!」

 「またくだらない遊びを……」

 「今日のメニューは肉じゃがだYO()! まずは、材料を切りながら味付けしちゃいまーす!」

 「日和、野菜にハチミツかけない。そして滅茶苦茶に切るな」

 「次はお肉だYO()!」

 「日和、肉にオレンジジュースかけない」

 「その後は煮込んだりとか色々して~……完成したら最後のひと手間をしちゃ()ー!」

 「日和、肉じゃがにカフェオレかけない」

 「ハイ! 日和CHAN(チャン)特製の肉じゃが完成! じゃあ、時雨! 召し上がれ!」

 「食べない」

 

 

 




いかがだったでしょうか?
今回、結構メインだったのは日和でした(笑)
彼女の食事シーンはなんだか書いてて楽しかったです(笑)
とりあえず「これは合わないだろう」というのを並べましたが、結果として日和がただの味覚崩壊キャラになってしまったのは反省点ですね……すみません!
雪比奈の高湿度好きは原作の四コマからとりましたが、それ以外の話はほとんど妄想ですので深い意味はありません(笑)
なるべくキャラ崩壊はしないようにしましたが、もし崩壊していると感じてしまったらすみません……
それでは、次回作をお待ちください!



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