書いててもまったくエンジンがかからなかったです。
やはり最近は原作をほとんどそのまま文章にしてるからですかね。
早く進めてオリジナル成分を書きたい……!
それを励みに頑張ります。
そして今回はかなりの駄文だと思います。
申し訳ありません!
では、どうぞ!
都内の中でも特に人も建造物も密集している中心地。人と建造物が密集しているため、そこには自然と様々な企業が集まっていき、企業同士の激戦区ともなっている。
そんな争いを見下ろすかのように建てられた超高層ホテル。実際、このようなホテルに来れる者たちにしてみれば密集している企業同士の激戦など小競り合い程度にしか感じないだろう。つまり、ここにいる者たちはそのような戦いなど痛くも痒くもないと感じるほど大企業の人間であったり、そのような戦いとはもはや無縁の大金持ちばかりということだ。そんな一般人とは程遠い階級の者ばかりがいるホテルのはるか上……最上階近くの一部屋に、そのような階級の者とも違う異様な雰囲気の集団がいた。
「…………」
その内の一人である青年は、人一人は余裕で座れるほどのスペースがある窓辺に座り外の景色を眺めていた。彼の容姿は、窓から見える雲のように白かった。髪も、肌も、服も……何もかも。彼を知る者は彼をこう呼ぶ。『捜シ者』、と。
そう、この部屋は『捜シ者』の拠点だった。その証拠に、部屋の中には彼以外の人間も数人いる。これまで大神たちの前に立ちはだかってきた……『Re-code』たちが。
「『捜シ者』! 朝ごはん、食べないんでございます
「日和、ソーセージに砂糖かけない」
先日、『捜シ者』と共に大神たちを襲った日和と時雨。彼らはテーブルに座り、朝食を食べていた。と言っても、時雨は新聞を読んでいるだけのため食べているのは日和だけである。しかも、その食べ方もかなり独特のようだ。
「てっきり
そのテーブルの近くで静かに立つ雪比奈。彼は視線を『捜シ者』に向けながら、先日の『捜シ者』の動きについて自分の予想を口にしていた。だが、これは彼にしてみれば質問の意図もあったのだろう。なぜなら、『捜シ者』がした行動には予想だにしなかったものが含まれていた。誰も予想していなかったであろう行動が。
「しかし、驚きました。まさか……桜小路 桜を連れてこられるとは」
部屋の隅に設置されている二人は余裕で入れるほど大きなベッド。そこに横たわって眠る少女……桜小路 桜。彼女こそが予想だにしなかった行動である。連れ帰ってくるのが大神というのならまだわかる。兄として弟を自らの元へ連れてくるというのはすぐ考えられる心理だ。現に、雪比奈もそのように予想していた。しかし、桜を連れ帰ってくることは予想できなかった。なぜなら、彼らにしてみればメリットはほとんど無いからだ。
確かに、
「弟は反抗期みたいだから……躾。彼女は……
「それってどーゆーことです
「日和、牛乳にオレンジジュース入れない」
『捜シ者』の言う理由に納得がいかず、日和は椅子の上で両手をバタバタと振り始めた。時雨はそこまで桜に興味が無いのか、理由について言及しようとはしない。
すると、雪比奈はスッと目を細くし、未だベッドの上で安らかな顔をして眠る桜を視界に捉える。そして、彼の中で浮かんだその
「それは……彼女が珍種だからですか?」
珍種……それは異能者にとって最も厄介な相手だろう。なにせ、珍種には異能が効かない。これまでの桜を見てもわかるように、どのような異能も一瞬で無効化してしまう。ならば、考えられるのは彼女が持つ珍種の特性を利用すること。珍種の力を使って大神たちの異能を無効化すれば優位に立つどころの話ではない。しかし……
「……違う。それも特別だけど……もっと違う
「……?」
雪比奈の言葉を否定する『捜シ者』。先ほどと同じく真意が掴めない返答に、雪比奈も思わず首を傾げる。すると、『捜シ者』はベッドの端に腰かけて桜の隣に座った。そして、彼女の長い黒髪をすくい上げると自分の口元まで持って来て軽くキスをし、彼女に話しかける。
「……もう高校一年生か。大きくなったね、桜小路 桜」
「
その口調は……知っていた。『捜シ者』は桜のことを。そういう口調だった。『捜シ者』のこの口調にはそこにいた全ての『Re-code』が注目した。『捜シ者』と桜の関係、そして桜が持つ珍種以外の
──ガチャ
「誰!?」
突然、聞こえてきた扉を開く音に『Re-code』たちは一斉に警戒する。当然だ。彼らがいる部屋は彼らの拠点であり、突然の来客となれば敵の可能性もある。となれば、『捜シ者』を守護する者たちである『Re-code』が動くのは当然である。
だが、扉を開けて来たのはそのような警戒心が消えてしまうような者だった。
「うっそ……!」
「なに……?」
「…………」
その姿を見て、『Re-code』の三人は思わず固まる。だが、『捜シ者』だけは違った。彼だけは特に驚く様子も無く、ベッドに座ったまま視線を動かし、
「やあ、久しぶり……。そろそろ来る頃だと思っていたよ」
「…………」
『さ、桜小路さ──』
『邪魔』
『ぐあぁぁぁ!』
『……弱いお前が悪い』
『ぐ……。ま、待て……行くなぁぁぁ!!』
頭の中で繰り返される昨日の言葉と惨めな自分の姿。桜をさらおうとする『捜シ者』を止めようとするも見えない斬撃を受け、近づくことすらできないまま彼は消えていった。どんなに叫んでも返ってくる言葉は無く、ただ虚空に消え去るだけだった。
「…………」
すでに放課後となって夕焼け空に包まれた輝望高校のグラウンド。一角に設置されているベンチに、大神は静かに座っていた。昨日の『捜シ者』との闘いで受けた傷の手当として所々にガーゼや包帯がされており、彼がどれだけ重傷だったかわかる。
その傷からも予想できるが、大神は本来なら学校に来るはずはなかった。当然だ。これだけの重傷を負った状態なのだから、学校に来るより療養していた方がいい。だが、彼は学校に来た。他の誰でもない自らの意志で。そして、それは他の『コード:ブレイカー』も同じらしい。
「まさか今日、あなたが学校に来るとはね。傷は大丈夫ですか、大神君」
「……それはお互い様でしょう、平家
「私はこれでも生徒会の人間ですから。この程度で休むわけにはいきません」
大神が座るベンチの隣に設置された西洋の鎧の像……のように座る平家。まだロストしているため、昨日と同じく鎧を身に纏っている。彼は官能小説を手にしながら平然と座っているが、何も知らない一般生徒から見れば「突然、現れた官能小説を読む鎧の像」なのでとても怪しい。
「そんなことより、『捜シ者』の居場所は特定できたんですか? 特定できたのなら教えてください。今度は確実に燃え散らします」
そんな異様な光景を気にすることなく、大神は『捜シ者』のことについて尋ねる。昨日のことなど関係ない、とでも言いたげに。彼の中で、『捜シ者』は斃すべき標的でしかないのだ。
すると、そんな冷静な大神に近づく者が一人。彼は大神の問いに対する答えを口にしながら大神に近づいていった。
「……エージェントたちも力を尽くしているが、まだ何もわからないそうだ」
「優……。……そうですか」
優から答えを聞いた大神は、軽くため息をつきながらも納得しているようだった。おそらく、そんな簡単に見つからないというのは彼もわかっているのだろう。居場所を特定されるという初歩的なミスを『捜シ者』がするわけがない。それでも、「もしも」という場合がある。彼はその「もしも」に懸けたが……今の段階では空しい結果だった。
「……神田にも連絡してみます」
そう言って、大神は手元にあった物を耳に近づけて、彼のエージェントである神田に連絡を取ろうとした。しかし、何も聞こえない。彼女の声も、コール音も。それはそうだ。なぜなら、彼が持っているのは……
「大神君、
「……そうですね。気付きませんでした」
「普通、気付くだろうが……」
携帯と缶コーヒーの間違いについて指摘する平家。大神は特に表情を変えることなく間違いに気づき、優はその様子を見てため息をついた。一見するとギャグのようにも見えるが……大神にしてみれば一切ふざけていない。ただ、間違いに気付けないほど気が散っていたのだ。それは、彼の今日一日の行動を思い返してみてもわかることだった。
「朝は寝巻のまま学ランを着て登校して、鞄には教科書じゃなくて大量の缶詰。それ以外にも、違う教科の教科書を読むわ、男子トイレと女子トイレを間違えるわ、実験で変な調合するわ……平家さんに言われて見ていたが、気もそぞろってレベルじゃないぞ。いくら『捜シ者』との間に力の差があったからって、お前らしくない」
優から語られる大神の異常。ほとんどのことに集中できていない証拠だ。そんな彼をなんとか支えたのは彼のクラスメイトたちである。彼らは今まで見せてきた大神の様々な姿から傷だらけなことについては言及しなかった。ただ、彼の異常な行動については手を貸さざるを得ない。というのも、彼らは大神の異常が桜がいないことが原因だと解釈しているからである。もちろん彼らは桜がさらわれたことなど知らない。まだ風邪が治っていないということになっている。
「……そんなことありませんよ」
そんな経緯があって放課後を迎えた大神。今日一日の行動が『捜シ者』との力の差にあるという優の私的だったが、大神は静かに否定した。そして、自分がこんな状態になっている原因を思い浮かべ、決意に満ちた顔をして拳を握りしめた。
「力の差は関係ありません。ただ……早く
「…………」
あくまでバイトに失敗したことが気になるだけだと言う大神。そんな彼を見て、平家は視線を本に向けたままポツリと呟く。
「本当にバイトのためだけ……ですか?」
「……どういう意味ですか? 他に理由なんてあるわけが──」
平家の呟きに大神は意味がわからないという顔をする。すると、彼の足元にのそりのそりと近づいてくる者がいた。大神はそれに気付くと、視線を下に向けた。
「ク~ン……」
「『子犬』……? 顔色が悪いぞ」
見ると、『子犬』が顔を真っ青にしていた。口元を押さえて、何かを我慢しているようだった。
「腹でも下したか? 吐きそうなのか? 一体、何を食べたらそうなるんだ……」
「ク~ン……」
とりあえず見たままの状態で症状を確認する大神だったが、もちろん『子犬』は犬のため言葉を喋るはずもない。具合が悪いためか、頷く元気も無いらしい。ならば仕方ないと、大神は視線を上げ原因を知っているであろう者を呼んだ。
「……参ったな。
「────」
ほとんど無意識に呼んだ彼女の名前。だが、それに答える声も姿も……そこにはなかった。
「ッ……!」
無意識に彼女の名前を呼んだことに気付いた大神は、思わず顔を伏せた。だが、彼自身わかっていなかった。なぜ、彼女の名前を呼んだのか。いないことはわかっていたはずなのに。なぜ当然のように名前を読んでしまったのだろうか、と。
(なぜ……なぜ、オレは……)
「……ったく、なんつー顔してんだヨ。桜チャンならいねーだろーガ」
「ろくばん、大丈夫か?」
「刻……それに遊騎まで……」
自分の行動がわからず自問する大神に対し、今しがたやってきた時と遊騎が声をかける。呼びかけもせずに二人が来たことに驚き、優は思わず二人の名を呼んだ。
刻は軽く煙草をふかすと、近くに設置されていた物置に寄りかかりながら口を開いた。
「ま、でも仕方ねーカ。あのバカ珍種、いつでもお前にくっ付いてたんダ。……いつの間にか、
「当たり前……」
刻の言葉を繰り返す大神。確かに桜は何かがあると必ず大神の傍にいた。他の誰でもない、彼女自身の意志でそこにいた。大神自身はそれを望んでいなかったとしても、何があっても傍にいる彼女の存在は当たり前になっていたのだ。
そして、それは彼らも同じだった。
「『にゃんまる』おらんとオレも寂しーわ」
「あのバカ珍、いちいち突っかかってきてウゼーんだヨ。……いねーと物足りなく感じっからマジでタチ悪いぜ」
「そうだな……。いても騒々しいが、いないと静かすぎて気味が悪い」
「色々と面白い方ですからね、桜小路さんは」
それぞれが、それぞれの言葉で桜への思いを口にする『コード:ブレイカー』たち。彼らの言葉を聞きながら、大神はふと視線を動かす。それと同時に、先ほどの時の言葉が頭の中で繰り返される。
──いつの間にか、
『大神……!』
動かした視線の先……そこには一瞬、いつもの笑顔を浮かべる桜の姿が見えた気がした。
「……はっ、バカバカしい。揃いも揃って何を言ってるんですか」
一瞬だけ見えたいないはずの桜の姿。それを振り払おうとしてか、大神は『コード:ブレイカー』たちの言葉を鼻で笑った。そして、そのまま自分にとっての桜という存在について口にした。
「
桜はあくまで観察対象、自分は自ら望んで人との関わりを断った者、今まで幾度となく自ら手を下すことで人との決別を成してきた者。つまり自分にとって桜とは他の者と何ら変わりない……ただの他人でしかない。そう言った……そう、口にした。そう……
「今更……今更、気に病むことなど……無──」
自分に……言い聞かせていた。
「……ろくばん、大丈夫や。『にゃんまる』は絶対、戻ってくるで」
「……そうだな」
「遊騎、優。テキトーなこと言ってんじゃねーヨ。気休めにもならねー」
大神のそんな姿を見てか、優しい言葉をかける遊騎と優。だが、刻はそれが無駄であるとわかっていてか彼らに背を向けながら一蹴した。だが、次に聞こえてきた言葉には思わず反応した。
「いいえ、適当ではありませんよ」
「ほれ、見てみぃ」
「ハ?」
確信に満ちている平家の言葉。さらに続く遊騎の言葉に刻も思わず振り返った。見ると、遊騎は一つの法学を指差していた。そこには大神が立っている場所から少し離れた場所……彼が先ほどまで座っていたベンチの後ろにある木々があった。そして、その中に……
「いかにも、あの表情はベストショットなんだな」
ガラケー片手に大神の表情を写真に収める会長。そして……
「むぐむぐ……」
会長に口元を押さえられ、黙ってその様子を見守る……桜の姿があった。
「ハァ!? 会長に……桜チャン!? ど、どーいうことだヨ!」
「……ッ!!」
『捜シ者』にさらわれたはずの桜に普段は姿を見ない会長。そんな二人の姿を見て、刻と大神は素直に驚きを表情に出していた。自分がいたことがばれたため、会長は堂々と出てきて堂々とまた写真を撮り始めた。
「うんうん。いかにも、その驚き顔はレアなんだな」
「てめぇは何をしてやがる……!」
まったくもって空気を読まない会長の行動に大神は怒りを露わにした表情で会長を睨みつけた。だが、これは単に会長の行動のせいではないだろう。彼の中で、怒りを表に出せるだけの余裕が生まれたということだ。そして、その余裕が生まれた理由は……
「大神!」
「…………」
いつものように目の前に立ち、いつものように自分の名を呼ぶ彼女。先ほどのような幻とは違う。確かに存在している。桜小路 桜は……また
「…………」
「…………」
お互いに顔を見合わせ、瞬きを繰り返す二人。何を話せばいいのか、何を言えばいいのかわからないのだろう。そして……
「ぬぅ……」
「な!? ちょ、どうしたんですか!?」
急に桜は電池が切れた玩具のようにへなへなと座り込んでしまった。突然のことに大神は慌てるが、桜はすぐにいつもの笑顔を浮かべた。
「いや……いつもと変わらないお前やみんなの顔を見たら安心したのだ……。ようやく、いつもの場所に戻ってこられた、と……」
「桜、小路さん……」
自分の……『存在しない者』の傍を「いつもの場所」という桜。先ほどの話を聞いていただけなのかもしれないが、たとえそうだとしても桜のその言葉は本心からのものだと大神は強く感じた。そして、それは一つの安心となって彼の表情にも柔らかさを取り戻させた。
「うん、今のもいかにもベストショットだよ」
「てめぇはさっきから何をやってんだ……!」
「え~、せっかく桜小路さんが帰ってきたのに大神君ったらご機嫌ななめ?」
「誰のせいだと思ってやがる……!」
表情に柔らかさが戻ってきたからか、会長に対する怒りもより鮮明になってきた。一方、会長はそんなことは関係ないとでも言いたげに自由に発言しだした。
「いやね、桜小路さんがいなくて大神君も寂しがってるだろうな~って思って、私も急いで連れ帰ってきたんだよ。そしたら大神君が落ち込んでたからそっとしておこうと思ったんだ。あ、写メは暇だったから撮っただけだから」
「そういうのを……余計な気遣いって言うんだろうが!」
「いかにも~!」
「こら、大神! やめぬか!」
行動としては評価されるべき会長だったが、余計な気遣いが全てを無駄にしていた。大神はとうとう怒りを我慢できず、会長に手を出す。桜は持ち前の正義感でそれを止め、なんとかその場は収まった。
すると、刻が慌てた様子で会長を問い詰めていった。
「つか、待てヨ! 連れ帰ったって言うケド、相手はあの『捜シ者』だゼ!? 一体、どんな手を使ったっていうんだヨ!」
「いかにも、なんの手も使ってないよ。ただ、久々『捜シ者』とお茶してきたのだよ。ホテルのケーキセットも奢ってもらっちゃったし」
「ハア!?」
刻の問いに対して、会長はさも当然のように言葉を返す。言葉の内容を考えると、とても簡単なことに感じるが相手が『捜シ者』と考えるとその難易度は跳ね上がる。本当に言葉通りのことがあったのだとしたら、それが可能なのはほんの一部の人間だけだろう。
「だって桜小路さんは病気でもないんだから何日もお休みさせるわけにはいかないでしょ。だから連れ帰ってきたんだよ」
「ずる休みはあかんからな。『にせまる』真面目やし」
「いかにも、生徒会長だからね」
「そんな話が通じる相手かヨ!」
連れ帰った理由としては筋が通っているようにも感じる会長の言葉。だが、肝心の「どうやって」連れ帰ってきたのかは詳しくは語られなかった。となれば、考えられるのは本当にそんな話し合いだけで解決させたということ。そして、会長はそれが可能な数少ない人物であるということである。
「桜小路以外の珍種であるだけでなく、あの『捜シ者』とも対等に話し合いができる会長……。平家さん、会長は何者なんですか……?」
「会長は会長ですよ、優君。それに、私も今回のことは予想外です。まさか会長自らが動かれるとは」
「いかにも、いかにも」
会長の正体について疑問を感じずにはいられない優の問いに対し、平家は簡潔な言葉だけを返す。彼自身、会長が桜を連れ帰ってくるなどとは予想しなかったので、彼も驚きを感じているのだろう。会長は変わらず陽気な対応をするが、ふと呟くように言葉を続けた。
「……しかし、仕方がなかったとはいえ『捜シ者』ととんでもない『約束』をしてしまったよ。まあ、あの
「『約束』……?」
今までとは違い、なにやら重みを感じる会長の言葉に平家は首を傾げる。すると、珍しく優が桜の元まで歩いていった。その手に、相変わらず具合が悪そうな『子犬』を抱えて。
「ところで桜小路。『子犬』の調子が悪そうなんだが、何か変なものでも食べさせたのか?」
「えぇ!? 私は断じて変なものは食べさせてませんぞ! どこがで拾い食いでもしたのだろうか……」
優に指摘されて『子犬』の不調に気付いた桜は慌てて原因を探ろうとする。だが、彼女は今までペットを多く飼ってきたわけではないので思いつく対処が無いのだろう。ただ慌てるだけだった。
「落ち着け。とりあえず、こういう時は背中をさすることだ。それか、こうして軽く背中を叩けば吐き出すこともある」
「ムグムグ……ぷぺっ!」
「ほらな。さて、一体なにを食べ──」
桜と違い、冷静に対処する優。ニ、三回『子犬』の背中をさすると、軽く背中を叩いた。よく応急処置として習う異物の吐き出させ方を実践しているのだろう。すると、そのおかげか『子犬』が何かを吐き出した。一体、何を食べたのか確認しようと吐き出したものを見る。だが、
「な……! か、鍵……!?」
「鍵!? お、おい……鍵って、まさか……!」
「もしかして、これが……?」
「『捜シ者』が捜している……
『捜シ者』が捜す捜し物。つまり桜が狙われる原因となった物。闘いを呼ぶ存在であり、見つからなければ安心とした会長の思いも空しく……
そして、この
CODE:NOTE
Page:26 『子犬』
桜が飼っている子犬。元々は野良犬の子どもだったが、その野良犬が桜を襲った不良グループから桜を護ろうとして死んでしまい、“エデン”のエージェント(神田)から大神へ、そして大神から桜に手渡された。だが、一向に桜に懐く気配はなく、むしろ大神の方に懐いているため桜からすれば飼い主は大神となっている。
大人の掌に座れるほど小さいからか、母親譲りの性格なのか非常に怖がり。懐いていない桜に抱かれたり、危険を察すると「いやいや」と両手をバタバタさせる。だが、刻に対しては敵対心を強く持っており、彼にだけは強く出ることがある。また、この『子犬』という名前は桜が命名。理由は「子犬だから」。ちなみに、親の名前は『犬』。これも桜が命名。
※作者の主観による簡略化
とりあえず桜のセンスがパネェ。