CODE:BREAKER -Another-   作:冷目

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なんとか一週間後に投稿することができました……
このペースを維持できるよう努力したいと思います!
さて、今回は黒と白ということであの二人がついに対決します!
なので今回……オリキャラの夜原先輩はほとんど出番なしです!(笑)
それでは、どうぞ!





code:32 黒と白の対峙

 「時雨……!」

 「…………」

 平家と日和による闘いで半壊状態となった遊騎のすみか(・・・)。半壊状態のため瓦礫の山となった場所で、四人の『コード:ブレイカー』と二人の『Re-code』が対峙していた。そのうちの二人……遊騎と時雨の間には初対面とは思えない異質な雰囲気が漂っていた。

 「時雨、オレは──!」

 「真理(まこと)は死んだ。お前が……真理を殺した」

 「ッ……!」

 時雨が口にした「真理」という名を聞き、遊騎は言葉を詰まらせた。時雨は表情一つ変えることなく、さらに畳みかけるように言葉を続ける。

 「あいつはもう帰ってこない。今度はオレがお前を殺す。今のオレには……それだけの実力がある」

 「…………」

 「……遊騎! お前『Re-code』に知り合いがいるってどういうことだヨ!」

 明らかな殺意が込められた時雨の言葉。遊騎は彼の言葉になんの反論もせず、ただただ黙っていた。どうやら遊騎と時雨は因縁があるらしい。そして、それには真理という人物が深く関わっている。

 二人のやり取りから二人の関係性を察した他の『コード:ブレイカー』たち。その中でも特に『Re-code』を意識している刻は、遊騎の知り合いが『Re-code』にいるという事実を知り彼を問い詰めようとしていた。

 「……日和、帰ろう」

 「()

 すると、先ほどまで遊騎に殺気を向けていた時雨から殺気が消えた。それどころか遊騎たちに背中を向け、日和を連れて去ろうとしていた。日和も時雨の言葉に逆らうことなく、服についた土埃を払いながらそれに応じた。

 「オイオイ、待てヨ! そう簡単に逃がすワケねーダロ! ブッ斃すついでに、オレが知りたいことを洗いざらい話してもらうゼ!」

 しかし刻がそれを許そうとはしなかった。彼にしてみれば姉である寧々音の仇……瘢痕の『Re-code:03』に関する情報を入手できる絶好の機会なのだ。さらに、その情報源であると同時に『捜シ者』一派の戦力の中枢でもある彼らを素直に返すわけにはいかないのだ。

 だが、それが不可能であると彼らは思い知る。そして……今その場にいることが誤りであるということを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「オレと日和の仕事はここでキサマらを足止めすること。そして、すでに『捜シ者』は桜小路 桜と(キー)を手に入れているだろう」

 「……ハ?」

 時雨の言葉が鼓膜を通して脳内に響き渡る。瞬間、刻たちの全身に悪寒が走り冷や汗が流れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「──! ──!!?」

 「ぬお!? ど、どうしたのだ、『子犬』! 待て! 暴れるな!」

 「何やってるんですか! 静かにしてください!」

 ちょうどその頃。大神と桜にも異常が起きていた。今まで桜の腕の中で大人しくしていた『子犬』がジタバタと暴れ出したのだ。突然のことに桜も思わず大声を上げてしまい、大神もそれを叱る。彼らは今、桜を『Re-code』から護るために身を隠そうとしている。それが大声を出してしまっては場所を教えていることと同義であるため意味が無い。

 「──!!」

 「痛っ!」

 桜はなんとか『子犬』を落ち着かせようとしたが一向に落ち着く気配はなく、とうとう『子犬』は桜の顔に蹴りを入れて桜から離れた。そして、そのまま大神たちが向かおうとした方向とは逆方向に走っていってしまった。

 「『子犬』! どこに行くのだ!」

 「桜小路さん……! 今は『子犬』と遊んでいる場合じゃ──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────チンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────カ……チンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……ッ!」

 小さく、だがハッキリと聞こえる金属音。金属が指で弾かれ、重力に引かれて戻り金属同士でぶつかる音。それが聞こえた瞬間、大神の耳には他の音は一切入らなくなり、言葉も続かなくなった。

 「……む? なにやら音が────え?」

 『子犬』を追いかけようとした桜だったが、大神と同じように彼女の耳にも金属音が届く。不審に思った桜は音が聞こえてくる方向を見た。見ると、そこにあったのは二回へと続く踊り場付きの階段。よくテレビで見る豪邸のような、踊り場からさらに左右に分かれた階段があるタイプだ。音の出所はその踊り場のはるか上……月光が差し込む窓だった。そして見えたのは……窓辺に座る一つの人影。それも、ただの人影ではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「…………」

 ────カ……チンッ

 「あれは……」

 そこにいたのは、真っ白な髪に真っ白な肌……さらには輝望高校の学ランと同じタイプの真っ白な服に身を包む白い者。その手には刀を持ち、親指で鍔を弾いては戻ってきた鍔が鯉口とぶつかり金属音を響かせていた。だが、そんなことは気にならなかった。なぜなら、最も気になったのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「大……神?」

 その者の容姿が……完全に大神と同じということだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────カッ!

 桜が驚きの声を出し呆然とした直後、白い者は先ほどまでよりも強く鍔を弾いた。その分、鯉口に戻ってくるまでの時間も長くなる。すると、鍔が鯉口に戻るよりも前に彼は柄を握る。そして、そのまま刀を鞘に納めようと……

 「桜小路さん!」

 ────チンッ

 「ぐああああ!!」

 「……ッ! お、大神!?」

 白い者が刀を鞘に納めた瞬間……先ほどまでと同じく鍔が鯉口にぶつかる音がした瞬間だった。桜を突き飛ばし、桜が立っていた場所に立った大神の全身に無数の切り傷が刻み込まれ、大量の出血が流れ大神は体を支えきれず倒れた。突き飛ばされたことと大神の血を見たことで、呆然としていた桜も正気を取り戻す。だが、一体何があったのかわからなかった。というより、何があったかまるでわからなかった。

 (いつだ……? いつ、刀を抜いたのだ? いや、それよりも……)

 桜は驚愕の表情をしながら、改めて白い者を見る。いや、正確には彼との距離を、だ。彼は階段の先にある踊り場の上に設置されている窓の窓辺。明らかに刀が届く距離ではなかった。それだけではない。彼は……座っているのだ。

 (なぜ……なぜ届いた!? あの者はあんな離れた場所にいて……座っているというのに…………!)

 刀を抜いたタイミング、届くはずがないのに届いた斬撃。多くの謎が頭の中で渦巻く桜に対し、白い者は平然とした態度で未だ窓辺に座っていた。そして、彼は右手を右頬に添え、不思議そうに口を開いた。

 「人を庇って傷つく……。そんな風に育てた覚えは無いけどなぁ」

 彼の右頬に添えられた右手……その甲には十字架のような特徴的な刺青が刻まれていた。桜も見覚えがある……「彼」と同じ刺青が。

 「『捜シ者』……!」

 「『捜シ者』……この者が、本物の──!」

 全身に力を入れて起き上がろうとする大神。彼は今までにも何度か見せてきた異常なほどの殺気を込めた眼で白い者……『捜シ者』を睨みつけた。大神の言葉を聞き、桜も自分の前にいる人物が『捜シ者』であることを理解した。『捜シ者』は窓辺から降り、軽やかに踊り場に着地した。そして、手すりに右手を添えながら一段ずつ階段を下りてきた

 (大神と同じ姿をした白き者……。大神は否定していたが、雪比奈殿の言う通り兄……なのか? それもあそこまで似ているということは……双子、か?)

 少しずつ近づいてくる『捜シ者』。その姿はどう見ても大神と瓜二つだった。違うところといえば、黒髪と黒の学生服である大神とは真逆の白髪に白の学生服。そして、大神と比べると顔がかすかに大人びているということだった。

 大神と瓜二つな『捜シ者』を見て、桜は雪比奈が言っていた「『捜シ者』が大神の兄」という言葉が本当は事実なのではないかと感じた。それに対し、『捜シ者』はゆっくりと階段を下りながら自らの目的を口にした。

 「……(キー)が欲しいんだ。元『コード:01』の人見が“エデン”から盗み出し、桜小路 桜に託した(キー)が」

 「キ、(キー)だと? 人見先輩殿が、って……私はそんなもの託された覚えは──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……ねぇ」

 「ッ──!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 託された覚えは無い……そう言おうとした時だった。今まで桜の前にいたはずの『捜シ者』が桜の隣に移動していた。彼女の肩に手を乗せており、もう片方の手を桜の頬に触れていた。その手のあまりの冷たさに桜の言葉はそれ以上、続かなくなった。

 (い、一体いつの間に……! そ、それに、まるで陶器のように冷たい手……! 眼も……人の心を嬲るようで、死人のような冷たさしか感じない……!)

 手も、眼も、何もかも。全てが冷たい『捜シ者』に触れられた桜は全身に強い寒気を覚え、その体はカタカタと震えだした。しかし、それは恐怖もあった。何か言わなければ死ぬ……そんな恐怖を全身に感じた。

 「キ、(キー)など……知ら、ぬ…………」

 それが精一杯だった。震えて上手く動かない口をなんとか動かし、桜は『捜シ者』の問いに答えた。しかし、それでも震えは止まらない。『捜シ者』は桜が(キー)を持っていることを知っている。ならば、その張本人である桜が「知らない」と言ったところで信じる可能性は高くはないだろう。嘘と判断され、そのまま殺されることもあり得ることだ。大神はまだ倒れている。仮にそうなったら助かる可能性は無かった。

 「……あれ?」

 『捜シ者』は冷たい眼で桜の眼をジッと見る。桜の言葉が偽りであるかどうか確かめるかのように。そして……

 「本当に何も知らないんだ、桜小路 桜。……悪かったね」

 桜の言葉が本当であると判断した『捜シ者』は桜から離れ、謝罪の言葉を述べると彼女の頭に手を置いた。普通なら安心する行為だが、それでも桜の震えは止まらない。

 そして、『捜シ者』は手を桜の頭から離し……刀の柄に手をかけた。

 「じゃあ……もういらないな」

 「ッ──!」

 殺される……そう桜が確信した…………その時。

 「燃え散れ!」

 立ち上がった大神が左手に『青い炎』を纏い、『捜シ者』の後ろから奇襲をかけた。刀は主として前方への攻撃が最速。言い換えれば、後方への攻撃は前方への攻撃に比べ少しばかり遅くなる。そのわずかな時間の間に大神は『青い炎』で『捜シ者』を燃え散らそうとしたのだった。そして、左手が『捜シ者』の肩に届──

 「邪魔」

 ────チンッ

 「がっ!」 

 「大神!」

 隙を突いたはずの大神の攻撃。しかし、攻撃が届く直前に『捜シ者』から金属音が響き、大神の体に傷が刻まれる。先ほどまでと同様、太刀筋も何も見えない攻撃により。

 (また何も見えない……! 居合なのか……? いや、いくら居合でも早すぎる……。ということは……これ(・・)が『捜シ者』の異能……?)

 目の前で起こる見えない攻撃という理不尽に対し、桜はその理不尽を説明することができる唯一の結論にたどり着いた。そう、異能という結論にだ。この世には存在しないはずの大神の『青い炎』、普段は発揮できないほどの力を発揮できる優の『脳』など、今まで経験した中で理不尽なことは全て異能だった。ならば『捜シ者』が起こしている理不尽も異能だと考え付いたのだ。だが──

 「違うよ、桜小路 桜」

 「え……?」

 柄に手を添えている『捜シ者』。その状態で視線を動かし、死者のように冷たい眼を再び桜に向けた。そして、その視界に彼女を捉えながら口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「これ(・・)は異能じゃない。そもそも、異能を使うまでもないしね」

 「……え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 (まさか、今……)

 そんなことはあり得ない。自分は何も口にしていないはず。だから、わかるはずがなかった。しかし、現に『捜シ者』は桜の考えを否定した。冷たい眼で桜を捉えながら。まるで、その眼で全てを見透かしたかのように。

 (心を読まれた、のか……?)

 桜の全身に悪寒が走る。触れられた時とは違う。もっと直感的な理由でだ。見えない攻撃、圧倒的な力の差、全てを見透かす読心術。目の前にただ立っているだけのはずの男に、絶望的とも言える力の差を感じたのだ。これでは追い返すどころか、まず彼から逃げることすらできない。無意識のうちにそう考えていた。

 しかし、最も力の差を感じているはずの男の背中が桜の前に再び現れた。

 「逃げろ……! 早く……!」

 「お、大神……」

 後ろ姿を見ただけでも重症だとわかるほど傷つけられた体。足元を見れば全身から流れる血がぽたぽたと零れ落ちていた。そのせいか、その左手で揺らめく『青い炎』もひどく不安定に見えた。その姿を見たせいだろう。桜の正義感がここぞとばかりに燃える。

 「バカを言うな! そんな傷だらけのお前を置いていけるわけが──!」

 「いいから逃げろ!」

 自らの正義感を貫こうとする桜に対し、大神は彼女の言葉を遮るように言い、さらに力づくで彼女を逃がそうと右手で彼女を後ろに押した。だが、その間にも『捜シ者』は彼らの近くまで迫っていた。

 「そこ……どいて」

 ──チンッ

 「ぐあ!」

 容赦しない……とでも言いたげに眉一つ動かさずに大神を攻撃する『捜シ者』。大神は彼の攻撃を避けることなく、全てその体で受けた。先ほどまでと同じように。

 だが、先ほどまでとは違うところがあった。

 「ま……まだ、だ……!」

 大神は『捜シ者』の攻撃をまともに受けながらも、倒れることなく立ち続けた。そして、強い意志を込めた眼を『捜シ者』に向けていた。しかし……

 「……聞こえなかった? どいてよ」

 ──チンッ

 「ッ──!」

 『捜シ者』はそれでも容赦なく、攻撃を続ける。しかも、今回は一回だけではない。最初の金属音以外はまるで聞こえない。聞こえず見えないが、彼は連続で攻撃している。そのため、大神の体には傷が刻まれ続けている。しかし、それでも大神は倒れようとはしない。それどころか、意地でも桜の前から動こうとしなかった。

 「ぐ……!」

 しかし、とうとう膝を突いた大神。すると、『捜シ者』が止めと言わんばかりに再び攻撃を繰り出す。だが、大神は逃げない。膝を突いても桜を庇うように腕を広げ、再び全身で攻撃を受けた。

 「は、早く……早く、逃げろ……!」

 「お、大神……」

 自分の傷に構おうともせず、大神は桜に対して逃げるよう言い続けていた。桜はわからなかった。なぜ彼がここまでして自分を護ろうとしているのかが。

 (いくら『コード:ブレイカー』の仕事だからと言って……平家先輩の言うように命を失ってでも護ろうとしているとでもいうのか……!? だからと言って、こんな──!)

 その時、桜の中にはあるビジョンが浮かぶ。数時間前の彼の姿を。決意が込められた……彼の言葉を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……今度はちゃんと護ります。あなたを小さくした時のようなヘマは二度としません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「大神……お前は────」

 「ぐうっ!」

 自分の目の前で今なお傷つく大神。だがそれは、仕事だからではない。それは……誓い。彼が自分に、そして彼自身へ誓った約束(・・)。何があっても……彼女()を絶対に護るという自らに課した絶対遵守の誓いだった。

 「…………」

 どんなに傷つけても、どんなに血を流しても立ち続ける目の前の男。わからなかった。なぜそこまでしようとしているのか。なぜそこまで自分を犠牲にできるのか。なぜ……

 「どうしたの? 一体、いつからだい?」

 なぜ彼は……彼の()は…………

 「いつからそんな眼をするようになった?」

 「…………」

 ここまで強い意志が込められているのか……まるで理解できなかった。ただ、わかるのは……今の彼がどうにも気に入らないということだった。

 「……醜いな、人臭い。そんなお前……」

 ゆっくりと鞘から刀が抜かれ、その刀身を自らの目線と重ねる。窓から差し込む月光が刀身に反射し、妖しく光った。そして……

 「見たくない」

 大神の体を、頭を裂こうと刀を容赦なく振り下ろした──!

 「お、大神ィィィィィィィ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──カッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 「な、何だ!?」

 「桜小路さん──!」

 『捜シ者』の刃が大神に届こうとしたまさにその時。突然、目が眩むほどの光と何かが壊れていくような轟音が響いた。突然のことに『捜シ者』の刃も止まる。だが、桜も咄嗟に動くことができなかった。すると、大神が彼女を光から庇おうと光を背に覆いかぶさる。それに対し、『捜シ者』は刃を止めた状態のまま動かない。避けようとも防ごうともせず、ただその場に立っていた。

 そうしているうちに、光と轟音は三人を飲み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 周辺の住民にとって、そこは一つの観光スポットのようなものだった。世界を股にかける大企業の社長が住んでいる大豪邸なのだから、それも当然とも言える。しかし、今は別の意味で観光スポットになりそうだった。大豪邸があったはずのその土地には家一つ建っておらず、大量の瓦礫の山が出来ていた。

 「こ、この……バカ平家ー!」

 突然、瓦礫の中から怒りを露わにした刻が顔を出した。よく見ると、その近くには遊騎が瓦礫の上で横になっていた。なぜ彼が怒っているのかというと……

 「いくら間に合わねーからって屋敷ごとブッ飛ばすことはねーだろーガ!」

 一体何があったのか。数分前の彼らはというと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「『捜シ者』が桜小路のところに……!? 遊騎、何か聞こえるか?」

 「……聞こえるわ。ろくばんと『にゃんまる』、そしてもう一人……たぶん『捜シ者』やな。……ヤバいで。ろくばん、やられとる。間に合わへん」

 「でしたら一か八かお任せを。ここから『光』で全てを破壊し、『捜シ者』ごと吹き飛ばします!」

 「ハァ!? それだと大神と桜チャンも吹っ飛ぶだろうガ! って、オイ! 脱いでんじゃネ──ギャアァァァァァァァァ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……つまり、原因は平家ということであり、刻が怒っているのはそのためだ。

 「オイ、コラ平家! お前、聞いてんのかヨ──!」

 さすがに今回ばかりは退く気が無いらしく、刻は平家を探し出そうと振り向いて──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「…………」

 「……ハ?」

 振り向いた刻の視線の先……そこには制服の上着を持った()が立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「え? 鎧って、え?」

 意味がわからず混乱しだす刻。すると、鎧は平然とした様子で喋り(・・)始めた。

 「刻君、私です。平家(・・)ですよ」

 「平家ェ!?」

 衝撃の答えに思わず叫ぶ刻。一方、そんな刻に構うことなく平家(鎧)は話を続ける。

 「さっきの『光』でロストしてしまいましてね。『人前に出られない姿』になってしまったので遊騎君の家に飾ってあった甲冑をお借りしたのです」

 「え? それって、まさか──」

 なんとロストしてしまったと言う平家。その言葉を聞き、刻は特に深く考えずに顔部分を開き、中にいる人物の状態を確認する。

 「…………」

 すると、数秒の沈黙が生まれ、刻は無言で顔部分を戻した。そして……

 「ロストしてやがるぅぅぅぅぅぅ!」

 「だから言ったではないですか」

 「よんばん、ズルい。オレも、オレも。にばんのロストめっちゃ見たいねん」

 「おーい、無事か……って、平家さんロストしたんですか」

 まだ敵がいるかもしれないというのに賑やかに騒ぐ刻たち。優も合流し、彼らは大神と桜を探すため行動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「う……」

 轟音が止んだため、大神はゆっくりと目を開いて周囲の状況を確認する。今まで月光だけが明かりだった薄暗い廊下とは打って変わり、広々とした場所だった。と言っても、瓦礫が周囲に転がっているだけなので良い場所とは言えない。

 「あの光……平家か。助かったといえば助かったが、荒っぽいにもほどがある……」

 状況判断を簡潔に済ませながら文句を垂れる大神。だが、先ほどまで目の前で自分に攻撃していた『捜シ者』の姿は見えなくなっていたため、平家の荒っぽい助けも効果はあったらしい。

 「……そうだ。桜小路さん、大丈夫で──」

 敵の姿が見えなくなったことに一先ず安心し、次に彼は護衛対象である桜の無事を確認しようとした。桜を光から護ろうと覆いかぶさったので、おそらく後ろにいるだろうと思い、大神は後ろを向いた。

 すると……

 「(キー)は無いようだから私はそろそろお暇するよ」

 そこにいたのは消えたと思っていた『捜シ者』。彼は平家の『光』を受けたはずだが、衣服もまるで乱れておらず、体のどこを見ても傷一つ無かった。そして、もう一人……

 「ああ、それとコレ(・・)。なんだか大事そうだからもらっていくことにするよ」

 「な……!」

 気を失っているのか目を瞑り、まるでモノのように『捜シ者』に担がれている彼女……桜小路 桜の姿がそこにはあった。護らなければならない彼女。今度こそ護ろうと決めた彼女。その彼女が今……『捜シ者』()の手の中にいることに、大神はただただ目を見開くことしかできなかった。

 

 

 




CODE:NOTE

Page:25 『にゃんまる』

 教育系列のチャンネルで放送されている子ども向け番組『にゃんまる劇場』の主人公である白猫に似た容姿をした二頭身のキャラクター。また、性格が似ていることから遊騎からすると桜=『にゃんまる』である。さらに、遊騎は彼(?)を目標にしている。
 少々ふっくらとした容姿や語尾に「にゃん」をつける可愛らしさから、子どものみならず若い世代の女性にも大人気であり、ぬいぐるみはもちろん絵本など様々なグッズ展開もされている。また、とても強い正義感を持った性格のため教育番組としての評価もそれなりに高い。その他、『にゃんまる』自身が歌う主題歌である『にゃんにゃんにゃんまる』もかなりの売り上げを叩きだしている。決め台詞は「にゃんち!」。

※作者の主観による簡略化
 マスコットキャラですね、はい。



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