ここまで遅くなってしまうとは痛恨の極みです……
こんな調子じゃ一生かかっても終わりが見えないので、周りから病気と思われるくらい書いていこうかと思い始めました……
もっと真剣に、定期的に投稿できるように努力したいと思います。
さて、今回ですがタイトルの通りあの人がメインとなっております。
そのため、テンションが上がってかなり書いてしまったような……
それでは、どうぞ!
味方しかいないはずの遊騎の住処。現に彼らは住処に入ってから味方側の人間しか見ていない。それは今、遊騎と桜の目の前にいる者も同じ……はずだった。
「『にゃんまる』、騙されたらアカン。こいつは平家やない。ニセモノや」
「ニ、ニセモノ……?」
「…………」
いつもと変わらぬ微笑みを浮かべて二人の前に立つ平家。彼は桜を「一緒に安全な場所に行く」と言って彼女に手を伸ばしたところを遊騎に止められている。しかし、彼はそれに構わず止められている方の腕に力を込め、桜に向かって手を伸ばそうとした。
「私は平家ですよ? 桜小路さん。さあ、早く私と一緒に行きましょう……」
「ッ……」
桜は明らかに警戒の表情を浮かべていたが、平家の手を避けようとはしなかった。「もしかしたら」とは感じているが、確信が得られないのだろう。同じく仲間である遊騎と平家。それぞれへの信頼感の間で桜は揺れていた。
すると、遊騎は平家を止めようと彼に向かって拳を放とうとした。
「このニセモノ! ええ加減に──」
瞬間、遊騎の背中に何かが転がってきて遊騎は衝撃でその場に倒れた。
「ゆ、遊騎君! 大丈夫か……って、え?」
突然、倒れた遊騎を心配して声をかける桜。しかし、そこで彼女が見たものは予想だにしなかったものだった。
「…………」
「…………」
桜の視線の先で倒れる
「ゆ、遊騎君が二人!?」
「なんだ平家、もう来てたのかヨ。ま、同時に敵サンも来たみたいだけどナ」
「桜小路さんも一緒ですか。探す手間が省けて助かりました」
「今度は遊騎が面倒なことになっているがな」
遊騎に起きた異常に続いて、大神たちが集まった。とりあえず今わかることは敵が来ていることと、その敵が二人の遊騎のどちらかに化けているということである。結局、平家は本物だったということだ。
「すみません、平家先輩! 思わず疑ってしまいました!」
「いえいえ、いいんですよ」
「ソーソー。そもそもこいつは得体が知れねーんだからしょーがないシ」
桜は平家に疑ってしまったことを詫びたが、当の平家はいつものように微笑みながら答えた。どうやら本当に気にしてないようだ。そのため、刻のフォロー(?)も大きな効果は無かった。
遊騎が二人に増えたことで、平家がニセモノであるという可能性は否定された。しかし、それと同時にニセモノがいるということは確実となった。ニセモノが化けているのは平家ではなく……遊騎ということだ。
「ふむ……二人の遊騎君のうち、どちらかがニセモノか。見た目はまったくもって一緒だし、どうすれば……」
「こういう場合、無難なのは……本人しか知らないことを質問したり、っていうのがある。今のところはこれが最も有効だろう」
「おお、さすが夜原先輩です」
桜の悩める声で全員の意識が二人の遊騎に集まった。桜の言う通り、二人の遊騎は見た目がまったくもって一緒のため見た目による判断は心もとない。ならば判断材料となるのは優の言う通り内面ということになる。そこで、桜たちはそれを確かめる方法を考えた。
「では、遊騎君しか知らない質問か……。大神、何かいい案はあるか?」
遊騎しか知らないこと……それを知っている者がいるとすれば、彼と付き合いの長い『コード:ブレイカー』の面々だと判断した桜は大神に意見を求めた。しかし……
「知りません」
「生憎、オレも知らない」
「つーか、遊騎にそんな興味ないシ」
「この薄情者共が!」
「心配すんなや、『にゃんまる』。遊騎はオレやし」
「え? そうなのか?」
「嘘言うなや。オレが本物の遊騎やし」
「え? え?」
二人の遊騎の「自分が本物」発言をそれぞれ真に受けた桜は、余計に頭の中がこんがらがってしまっていた。そんな桜に対し、二人の遊騎はまだ「自分が本物」と言い合っていた。
「うるさいわ、ニセモノ。遊騎はオレや」
「お前こそうるさいわ。遊騎はオレやって」
『…………』
似たような問答が数回続くと、二人は黙って互いを見合った。すると、お互いにまったく同じポーズをし始めた。おそらく、
そして、何度かポーズを繰り返すと二人の遊騎は声を揃えて結論を言った。
『別に両方、遊騎でええやん』
「いいワケあるカー!」
なんとも遊騎らしい結論に刻は思いっきり叫んだ。どうやらニセモノは遊騎の内面すら完璧に真似ているらしい。遊騎の結論に呆れながらも、大神たちは改めてニセモノを見つけ出すことが困難だと思い知った。
「ここまで遊騎にそっくりだと判断は相当難しいな」
「……ダナ。どうやって見分けりゃいーんだか」
優と刻が困り顔で弱気な言葉を洩らす。もはや手は無い……そう思った時だった。
「わかったのだ! 本物の遊騎君はこっちなのだ!」
ふと桜の声が響いた。見ると、桜は片方の遊騎をハグしていた。どうやら、そのハグでその勇気が本物だと判断したらしい。そして、その根拠はというと……
「こうしてハグしているとわかるぞ! こっちの遊騎君からは遊騎君のあったかミルクの匂いがするのだ!」
「おー。『にゃんまる』すげー」
匂い。それが桜が本物と確信した証拠だった。そして、今までの彼女を知る者たちにとって、それはほぼ確定的と言ってもいいほど有力な証拠であった。
「いやいや、そんなんでわかるわけないやろ。本物はオレやし」
「残念でしたね。桜小路さんの匂いに対する嗅覚は異常なんです」
「つーわけで、ニセモノさん? さっさと正体言った方がいいゼ」
「アドバイスするなら、次からは匂いも真似た方がいい。真似られるなら、な」
ニセモノと判断された遊騎は桜の言葉を否定したが、大神たちは構わずニセモノの遊騎の前に立ちはだかった。この状況を見て、これ以上続けるのは難しいと判断したのか、ニセモノの遊騎に異常が起きた。
「う、ぐ……。こ、こんな…………こんな当て方反則ー!」
「なっ!?」
ニセモノの遊騎の口調が変わった瞬間、彼の体が風船のように膨らみだした。突然のことに大神たちは驚きながらも、一気に戦闘態勢に入った。そして、限界まで膨らんだのかニセモノの遊騎の体が勢いよく割れ、ニセモノの正体が現れた。
「
「女!?」
「なんかわれたし」
「やはり『Re-code』でしたか……」
姿を現したのはどこかの女子用制服と思われる服装に身を包んだツインテールの少女……日和。大神たちはまだ知らないが、新宿で警察官たちを……というよりは繁華街全体を手にかけたと思われる張本人。『Re-code』と名乗った彼女に対し、大神たちは少女とはいえ警戒心を高まらせる。唯一、遊騎だけは先ほどまで自分と同じ姿をしていた割れた
「遊騎に化けてたトコを見る限り、
「
冷静に日和の異能を分析した刻は余裕の態度でいた。しかし、日和は特に不安を感じていたり焦っているような雰囲気は無い。むしろ、彼女の方が余裕に感じられた。
「実は……もうみーんな、日和の手の内なのだ!」
「ハ?」
無邪気な表情で堂々と自分の遊里を宣言する日和。状況と矛盾した言葉に刻は頭に疑問符を浮かべていたが、異常に気付いた遊騎がいち早く動いた。
「『にゃんまる』! ろくばん!」
「うわ!」
「遊騎!?」
突然、遊騎に突き飛ばされた桜と大神。その次の瞬間……
──ぷくんっ
「ハ!?」
「これは……」
「なんかふくれたし」
遊騎が先ほどまで弄っていた
「三人かー。みんな捕まえられなかったのは残念だったけど、まーいっか。用があるのは桜小路 桜が持ってる
刻たちを捕えた日和は理想の結果に届かなかったことを残念がりながらも、遊騎のおかげで罠から逃れた大神と桜の前に立ちはだかる。そして、無邪気で屈託の無い笑顔で桜に話しかける。
「ほらほら、早く
「キ、
日和の言う
「このヤロ!
桜を助けようと、刻は運良く足元に転がっていた鉄製の置物を『磁力』で飛ばし膜を破ろうとした。しかし……膜は破れることなく置物を包むように伸びていき、反動で刻に向かって飛んできた。
「
「どこいってもトランポリンみたいに飛んでくるんや。おもろいなー」
「面白がってる場合カー!」
刻が飛ばした置物は刻に当たった後も膜の中で飛び続けた。遊騎の言うように、膜に当たるとトランポリンのように勢いがつくので刻は自分で自分の首を絞めたような結果になってしまった。とりあえず、刻はもう一度『磁力』で置物を操って動きを止めようとした時……
──グシャ!
「優……!」
「これぐらいで騒いでる場合じゃない。……見ろ」
今まで黙っていた優が飛び続けていた置物を片手で握り潰し、その場で捨てた。そして、大神たちがいる方向を指差した。言われた通りに見てみると、状況が動いていた。
「その前に、私をニセモノ呼ばわりした罪をきっちりお仕置きしてあげましょう。大神君、ここは私に任せて桜小路さんを安全な場所にお連れしてください。生徒会室でも言った通り、今の桜小路さんは我々『コード:ブレイカー』全員の命を失ってでも護らねばなりません。それに、あまり人が多いと私も闘いづらいので」
「平家……」
平家が『光』のムチを手にし、桜を庇うように日和の前に立ちはだかった。彼は大神に桜を連れて逃げるよう言うと、手にした『光』のムチをピンと伸ばした。
「…………」
一方、大神は桜を護らねばならない理由や
「平家先輩……みんなの命を失ってもなどと言っては──って、大神!?」
「黙って来てください……! 平家、ここは任せました!」
大神はあらゆる疑問を内に仕舞いこみ、『コード:ブレイカー』として任された仕事を全うすることを選んだ。桜の手を引き、日和から離れるために走り出した。それと同時に、平家は一歩前に出て日和との距離を詰めた。
「ろくばん、『にゃんまる』護ってなー」
「平家か……。未知の異能者である『Re-code』相手に『コード:02』がどう闘うか……見させてもらおうじゃねーカ」
(思えば、平家さんが闘うところを見るのはこれが初めて……。かつての『Re-code』とも闘った実力者の力……見逃すわけにはいかない)
遊騎は声援を送ることで大神の背中を押し、刻と優はこれから始まるであろう平家と日和の闘いを見届けようと二人の方に視線を集中させた。
そして、対峙した平家と日和。日和はジロジロと平家を見ると、面白くなさそうな顔をした。
「あんた、日和の邪魔するんだ~。ふ~ん……」
すると、日和は右手の人差し指と親指の指先同士を合わせて円を作り、自らの口元に円の部分が合わさるように構えた。まるでシャボン玉を作る時のように。そして……
「じゃあ……ちょっと遊んでアゲル
そう言うと、日和は思いきり息を円に向かって吐き出した。すると、次々とシャボン玉が放たれ、平家に向かっていった。
「シャ、シャボン玉!? 本当に遊ぶ気かヨ!?」
「おやおや、なんとも可愛らしい……」
日和の意外な攻撃方法に刻は目を見開いたが、平家は冷静に『光』のムチを操り次々とシャボン玉を真っ二つにしていった。だが……
「──ッ!? これは……」
「お、オイ! なんかシャボン玉、増えてねーカ!?」
「まさか……この膜みたいに一部分でも残っていれば、そこからシャボン玉を作れるのか? だとしたら無暗にシャボン玉を攻撃しても数を増やすだけ……」
平家がムチで真っ二つにしたシャボン玉……しかし、それは割れて地面に落ちることはなかった。それどころか、真っ二つにされたことで二つに分かれた後、それぞれが膨らんでシャボン玉となっていた。優の言う通り、考え無しの攻撃は自分を不利にするだけだった。さらに、日和のシャボン玉はそれだけで終わらなかった。
「切っても増えるシャボン玉ですか……。さて、どうすれば……」
「ッ──! 平家! 体にシャボン玉が!」
「!」
増えることへの対策に気を取られていた平家。その間に、いくつかのシャボン玉が平家の体にくっ付いていた。刻の言葉でそれに気付いた平家は振り払おうとしたが、次の瞬間──
「ぐっ!」
シャボン玉はくっ付いた部分の制服を溶かしていき、平家の皮膚に触れる。その瞬間、シャボン玉は勢いよく破裂し、火傷のような痛みが広がり体からは勢いよく血が飛び出た。
「ただのシャボン玉じゃねーのカ!」
「刻! 周りを見ろ! シャボン玉が触れた部分の壁に穴が開いている!」
「ムシクイやし」
「虫食い……それって新宿の繁華街と同じ状況じゃねーカ! てことは、新宿で暴れたのもアイツってことかヨ!」
平家が傷を負ったことで日和の放ったシャボン玉が危険だと理解した刻たち。さらに、周囲を見るとシャボン玉が触れた部分の壁に穴が開いており、虫食い状態になっていた。その状態から新宿での被害は日和によるものだと判明し、改めて彼女の危険性を知った。やはり彼女も『Re-code』の一人としてかなりの実力を持っているのだ。さらに、絶望的なことにシャボン玉は消そうとして攻撃しても増え続けてしまう。現に、平家の周りには無数のシャボン玉が浮いていた。
「シャボン玉に触れた部分は溶かされ、まるでシャボン玉に喰われたみてーに消えちまう……。しかもあの量のシャボン玉に囲まれたんじゃ何もできねーじゃねーカ……」
「『光』のムチで日和を攻撃しようとしても、あんな自由に動けない状態じゃそれも難しい……。一体どうすれば……」
「……大丈夫や」
絶望的な状況に刻と優は弱気な声を洩らす。しかし、それに対して遊騎は平然とした顔で「大丈夫」と呟いた。そして、確信に満ちた顔で言った。
「なんでにばんが『コード:02』なのか……すぐわかるし」
遊騎は知っていた。平家の強さがこんなものではないということを。一方、当の平家はというと出血と痛みに耐えながら、いつものように背筋を伸ばし口を開いた。
「……日和さん。状況を見る限り、新宿で暴れたのはあなたのようですね。そこで質問です。あなたは新宿で罪なき者を何人殺しましたか?」
「え? えっとぉ……ひー、ふー…………って、わかるわけないじゃん! だって日和は指十本しかないから十までしか数えられない
平家の問いに対し日和は、無邪気に両腕を振り回し唇を尖らせながら悪びれもせずに答えた。まるで、自分が知らない人間ならば何人殺してもよい……とでも言いたげに。すると、平家は若干の微笑を浮かべて日和のことを真っ直ぐ見て、再び口を開いた。
「……そうですね。所詮、人は自分に親しい者しか大事にしない生き物です。ですが、日和さん。だからこそ、常人には無い異能を持った我々は己を
「何言ってるの? 日和はちゃんと大切にしてるもん。 そう、大切に……
殺してる
──その答えは、彼の前では言っていけない言葉だと後に知る。そう、彼は…………
「──
平家は笑っていた。その眼に明らかな殺気を込めながら。彼は……大きな怒りを感じていた。そして、彼は制服のボタンに手をかけ、一つずつゆっくりと外していった。
「どうやら、あなたの性格は普通のお仕置きじゃダメそうですね、日和さん。いいでしょう。なぜ私が『コード:02』でありながら、なぜ先陣を切って闘わないのか。その
そう言うと、平家はボタンを全て外し終えた制服を脱ぎ、手を離した。すると……
──ドゴォォォ!!
制服は……
「ハ、ハァ!? 嘘だろ! なんだよ、あの制服! 重いなんてもんじゃねーゾ!」
「にばんは上手く異能をコントロールできへんのや。『光』の異能は強すぎて何もせんと体から『光』が出まくってすぐロストしてしまうんや。せやから、いつもあの特別性の制服で束縛して押し止めてるんや。にばんがあれを脱ぐのはキレた時……。そして、あれを脱いだら──」
遊騎が答えを言うより早く、平家の体から徐々に『光』が放たれた。それは微々たるものだったが、少しずつ……少しずつ強くなっていった。そして……
「もう、私を拘束し縛るものは何も無い……。まさに……グレート☆オープン・ザ・マインド!」
──カッ!!
「な、なにこれ!?
瞬間、平家から目を開けていられないほどの『光』が放たれ、シャボン玉も、日和も、床も、壁も……
「ちょ、待て! これってオレたちも危な──どわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
……もちろん、膜に捕らわれていた刻たちも。
「……生きてるか?」
「ナ、ナントカ……。つか、今のって一体……」
「あーあ、やっぱりや」
平家が全身から放った『光』によりできた瓦礫の山。その中から、優、刻、遊騎が顔を出す。優の生死の確認に対し、刻は訳がわからないといった様子で答え、遊騎は瓦礫の上でも構わず寝転んで特に高く積まれた瓦礫の山を見ていた。
「にばんは嫌いやけど……やっぱめっちゃ強いなぁ」
遊騎の視線の先……瓦礫の山の頂上に一つの人影があった。自分を制縛する制服という名の拘束衣を片手で持ち、風にたなびかせながら瓦礫の山を見下ろす……
「どんなに強大な力を持っていたとしても、真に斃すべき者を斃さねば意味はありませんがね……」
「……やはり、平家さんはすごい。尊敬します」
「オレはせーへん」
憂うような表情でつぶやく平家。彼を見つけた優は尊敬の意を込めた拍手を送り、遊騎はつまらなそうに顔をそむけた。ちなみに、刻はというと……
「オイ、平家……。なんでもいいケド……
思いっきり怒鳴り散らしていた。無理もない。なぜなら、平家の攻撃により生まれた被害は尋常ではない。それは周囲を見ればわかった。遊騎の
「危うくオレたちも死ぬトコだったろーガ!」
「私の『光』の奔流は私自身も上手くコントロールできませんからね。ですが、結果的に膜からも脱出できたのですから良いではないですか。遊騎君、あなたの
「そういえば……まさかとは思うが、社員の人たちは巻き込まれてないよな? 大神たちは逆方向に逃げてたから心配は無いと思うが……」
「心配あらへん。
自分たちの安全を考慮しなかったことに怒りを露わにする刻に対し、制服を着直しながらいつも通りの対応をする平家。一方、優は被害の大きさを見て一般人である天宝院グループの社員たちの安否が気になっていたが、遊騎の言葉が彼らの安全を保障していた。
そして、遊騎は敵である日和を斃せたかどうかを尋ねた。生憎、日和が吹き飛ばされたと思われる場所には土埃が蔓延しており、すぐに確認はできない。攻撃した平家が手ごたえを感じたか尋ねているのだろう。すると、急に突風が吹き、辺りに蔓延していた土埃を吹き飛ばしていった。それと同時に、平家は答えを返した。
「それが……まだです」
「…………」
土埃が晴れた先には、左眉にバーコードを刻んだ仮面のような表情をした男……繁華街では時雨と呼ばれた男が右手を前に出した状態で立っていた。脇に服と髪がボロボロになった日和を抱えて。
「
「……油断するなと言っただろう。あの人は……とても強い」
バンバンと瓦礫を叩いて文句を言う日和に対し、時雨は眉一つ動かさず平家を見ていた。突然、現れた日和の味方に刻たちは警戒心を濃くする。しかし、一人だけ彼らとは違った感情を抱いている者がいた。
「……時雨?」
「どうした? 遊騎」
遊騎だった。彼はボソリと日和が口にした名前を呟くと、時雨のことをジッと見た。そして、今度は確信を持ったかのように時雨の顔を見ながら繰り返した。
「時雨……!」
遊騎はおそらく知っている。この男が誰なのか……知っている。一方、時雨は先ほどまでと変わらない冷たい眼を遊騎に向けていた。
闘いは……まだ終わりそうになかった。
「さっきの音と光はなんだったのだろう。大神、わかるか?」
「おそらく、平家が何かしたんでしょう。それより、今は身の安全が第一です」
その頃、大神と桜は身を隠そうと走り回っていた。今のところ、他の『Re-code』と出会ってもいないため無事に済んでいる。しかし、日和たちを撃退し、平家たちと合流するまでは安全とは言い切れない。体力と周りに気を遣いながら大神たちは移動を続けた。
「……?」
ふと、大神が急に立ち止まって周りを見渡した。強い警戒心は感じないため敵の気配を感じたわけではなく、何か気になることがある程度なのだろう。しかし、突然のことに桜は少し驚き、彼に声をかけた。
「大神? どうかしたのか?」
「何か……誰かに、見られているような気が」
「え? そ、そうか?」
「……いえ、杞憂ですね。忘れてください」
大神に言われて周囲を見渡す桜だったが、誰の姿も無い。大神も同じなのだろう。すぐに首を振って杞憂と判断した。
「…………」
しかし、ここで気付くべきだった。それが杞憂ではないことに。大神たちよりはるか上……月光が差し込む窓辺。そこに静かに微笑む白い影がいることを。
「……見つけた」
白い影……『捜シ者』が静かに呟く。その眼は、確実に大神と桜を捉えていた。
CODE:NOTE
Page:24 天宝院グループ
オモチャからIT関連、株などの投資事業もこなす世界に名を轟かす
企業としての規模や資金の量なども規格外だが、それらをまとめる天才社長も色々と規格外だとされている。未成年でありながらケンブリッジ大学を飛び級で卒業した、投資事業をほとんど一人でこなす、オモチャのアイデアのほとんどを出している、高級食材でも普通に食べまくるetc,etc……。ちなみに、最近の社長の方針は「適当に頑張ってな」だとか。
※作者の主観による簡略化
グー○ル的な。(←2014年の人気企業ランキング第一位……だったはず)