CODE:BREAKER -Another-   作:冷目

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遅くなってしまい申し訳ありません!
課題やらなんやらで時間がありませんでした!
今回は書いていてわかりにくい部分が多いかもなぁ、と思う部分が多かったです……
やっぱり戦闘シーンは描写が難しい!
では、どうぞ!





code:15 地獄

 そこはとある場所にある普通のアパートの2階の一室。その中は普通なら感じることのないほどの緊張感に包まれていた。

 「放射性物質を保有する研究所が占拠された!?」

 神田からの連絡を受けた大神の言葉を桜はオウム返しした。そして、顎に手を当てて考え出した。

 「一体誰がそんなことを……」

 「おそらく『捜シ者』だろうネ。なんでそこを占拠したかはわからないケド」

 桜と違い、刻は犯人が誰かわかっていた。いや、彼だけでない。『コード:ブレイカー』の全員がわかっていた。

 「ま、最悪のパターンだけどこのまま……」

 「どっかーん!」

 刻の言葉を遮って大声を出す遊騎。あまりの声量に、刻は歯を食いしばりながら耳を塞いでいた。

 「……とでもなったら近くの地域一帯が放射性物質に汚染されるでしょうね」

 「そんな……!」

 冷静な大神の言葉に桜は衝撃を受ける。このまま放っておいたら、学校の友人たちや家族にまで危険に晒されるというのだ。桜は放射性物質に詳しいわけではないが、それがどれほど危険なものかはわかっているつもりだった。

 すると、刻がポケットに両手を入れて歩き出した。まるで行楽地へ行くかのように簡単に、素っ気ない言葉を口にしながら。

 「面白くなってきたジャン? じゃあ、先に行かせてもらいますカ」

 「…………」

 それに続いて、大神が制服の上着を着ながら歩き出した。それを見て刻は立ち止まる。

 「ナニ? お前も行く気なノ? でも『捜シ者』絡みである以上、バイトの依頼は遊騎に来たんダロ? 勝手に動くなよ」

 「……ロストしてるお前こそバイトどころかただの足手まといだ」

 「うっせーよ! 『捜シ者』に育てられたお前なんか信用できねーよ!」

 「二人とも! やめるのだ!」

 険悪な雰囲気になる二人を桜が止める。『捜シ者』が起こしたと思われる事件の連絡を神田から受ける前に出た、大神と『捜シ者』に関する話。それにより、大神は『捜シ者』が送り込んだスパイだという可能性が生まれた。二人が険悪な雰囲気なのはそれが原因だった。ちなみに、話に出てきた遊騎は部屋にあるベッドで目を開けたまま寝ていた。

 「まあ、この状況だと刻が行くのが妥当だな。遊騎は寝てるし。……大神はなにかと危険だからな」

 「夜原先輩! 先輩までそのようなことを!」

 優にしてみれば客観的に状況を見た結果なのだろう。桜もそれは理解しているのかもしれない。だが、理解していたとしても納得はできない。桜の心情を表すならそれが最も近いはずだ。

 「へえ? わかってんジャン、優。そんじゃ、お前も大神と一緒に遊騎のお守りでもしてろヨ。お前がいても役に立たねーだろうからサ」

 桜とは正反対にあっさり優の言葉を認めた刻。しかし、彼の言葉を認めても彼の同行までは認めようとはしなかった。

 すると、刻の言葉を聞いた桜は決心したかのように拳を握りしめ、力強く言い放った。

 「……よし、わかった! では、遊騎君は寝かせといて四人で参ろう! ロストしている刻君は私が護って──」

 「そもそもなぜあなたは来る気マンマンなんですか? あなたもここにいてください」

 「なぬ!?」

 自分の提案をあっさり大神に否定され、桜は信じられないというように目を丸くした。

 「あー! どいつもこいつも!」

 そんな二人のやり取りを見ていて苛立ちを覚えたのか、刻は大声を出してそのやり取りを止めさせた。

 「悪ィけどお前らなんかよりロスト中でもオレの方がよっぽど役に立つんだよネ。なんなら競争でもする? クズども何人殺せるか、とかサ」

 「刻君! 人の命をそのような……」

 「へーへー。とにかくオレは行くヨ。そもそも『捜シ者』の集団に用があるのは大神ダケじゃねーし」

 「え? 刻君も因縁が──」

 あくまでも一人で行こうとする刻。刻の言葉に反応する桜だったが、その言葉は刻による次の言葉……というより、行動によって途切れた。

 「ヘクチッ!」

 刻が突然くしゃみをした。見てみると、かすかに頬が赤くなっている。

 「刻君! まさか風邪をひいたのか!?」

 「スプリンクラーで濡れたままでしたからね」

 「子供の体だから免疫力も低下してるのかもな」

 「ほ、ほっとけ! クチンッ!」

 どうやら昼にリリィの部下の注意を惹くために作動させたスプリンクラーが原因のようだった。桜は心配しているが、大神と優にそんな様子は全くない。ただ冷静に原因について自分の考えを口にしていた。当の刻は、お構いなしに一人で行こうとしていた。

 すると、桜が思わぬ行動に出た。

 「ふむ。それでは私のベストを貸そう。ロストしている今ならサイズも問題なかろう」

 「いや、別にイイって言っ──」

 「な……!」

 「ちょ……!」

 「ZZZ……」

 遊騎以外の男性陣が固まった理由。それは桜だった。刻に貸すためにベストを脱いだ桜。ベスト自体には問題があるわけではない。ベストはすでに乾いているため風邪をひいている刻に貸すのは正しい判断と言える。しかし、その下に着ていた彼女のシャツはまだ濡れていた。そのため、シャツが透けて下着が見えてしまっているの。それを見て彼らは固まったというわけだ。

 「さ、桜小路さん……!? ベストの中、まだ乾いてないようですが……」

 「心配いらん! 私は大丈夫だ!」

 「いや、そうではなくて……」

 大神としては下着が見えているということを伝えたかったのだろうが、桜が気付く様子は全くない。そして、桜は下着を透けさせたまま刻にベストを差し出した。

 「ほら刻君。あったかくしような。まだ外は寒いからな」

 「うん! ぜひ喜んで!」

 大神と違い、刻は間違いなくこの状況を楽しんでいた。その証拠に、彼の視線は桜の下着に釘づけだった。

 言葉ではこの場を何とかできない。そう思った大神は言葉ではなく行動をすることにした。

 「桜小路さんはまず風呂に入って服を乾かしてきてください!」

 そう言って桜を脱衣所に押し込みドアを閉めた。そして、一緒に入ろうとした刻の頭を踏みつけ、桜が出てこないように大神はドアを押さえた。桜も「私は大丈夫。それより刻が心配」と言い張る桜に、刻の服はエージェントに用意させると言った大神。すると桜は納得し、素直に風呂を頂くことを決めた。

 「まったく……。大丈夫ですか? 優」

 「……なんとかな」

 桜が風呂に入ったのを扉の向こうから聞こえる音で確認した大神は、顔を押さえて床に突っ伏している優に声をかけた。女性が苦手な優にとって、桜のあれはかなり効いたらしい。

 「さて、それじゃあ行きますか」

 「ケッ! 命令すんな」

 「いいから出るぞ……。というか早く出たい」

 そう言って、三人は遊騎と桜を置いて外に出た。

 

 

 

 

 

 

 「では研究所に向かいますか」

 「おい、大神。さっさと神田チャンに連絡してオレの服用意しろよな」

 そんなことを言いながら歩く大神と刻。階段を下り、道路に出た。すると突然、優が立ち止まった。

 「…………」

 「どうしました? 優」

 「ナニ? 怖気づいたワケ?」

 急に立ち止まった優に気付いて大神と刻もその場に立ち止まる。すると、優の口がゆっくりと開いた。

 「悪いが先に行っててくれ。相手があの『捜シ者』とその部下となると……少し準備が必要だからな」

 「心配性ですね。まあ、僕は構いませんが」

 「ヘッ。お前がどんな準備しても役に立たねーのは変わらねーヨ」

 「悪いな」

 そう言うと、優はその場から跳んだ。そして屋根の上を跳びながら自宅へと向かい、大神と刻は研究所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は変わって大神の家。大神に言われて風呂に入った桜は温まった体に乾いた制服を着て、勢いよくリビングへと続くドアを開けた。

 「待たせたな! さあ、みんなで『捜シ者』のところに……って、あれ?」

 部屋には風呂に入る前まではいたはずの大神、刻、優の姿はなかった。いた人物といえば……

 「なんであいつらいねえんだよ……」

 寝ていたはずの遊騎ただ一人。彼は黒いオーラを出しながら部屋の壁に拳をめり込ませて怒りを表現していた。この時、桜は悟った。自分は騙され、置いていかれたのだと。

 「おのれ大神ィィィィィィィ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ふう……」

 某所にあるアパートの一室。その中で一人の少年が息を深く吐いた。八畳ほどの広さで奥にある木製の棚としわ一つ無い布団が敷かれてある以外に何もないすっきりしたリビングに、そのリビングに隣接されたキッチン。どちらも綺麗に整頓されていて部屋の持ち主である少年の性格がよくわかる。

少年はリビングの奥にある棚の一番下の扉を開いた。そして、そこにあったものをゆっくりと手に取った。

 「……これを使うことになるとはな」

 ポツリと呟いた少年は覚悟を決め、静かに部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「よし! 共にみんなを『捜シ者』より護ろうぞ!」

 「『にゃんまる』、ついたで」

 「なんでお前らがいるんだヨ!?」

 放射性物質を保有する研究所。神田からの連絡を受けて乗り込んだ大神と刻。敷地内にいた『捜シ者』の部下と思われる普通(・・)のテロリストを制したことで研究所内に乗り込もうとした二人。だが、そこに本来なら大神の家にいるはずの桜と遊騎が来たことでそれができなくなっていた。遊騎はなぜかゴールデン『にゃんまる』も持っている。

 「遊騎! どーせヤル気ねーんだから帰れヨ!」

 「……あ? なんか言ったか?」

 「い、いえ……。……ん?」

 遊騎と刻が結果が見えている言い合いをしていると、刻が何かに気付いた。

 すると、大勢の人間が建物の陰から出てきて大神たちを囲んだ。防弾チョッキを着て銃を構えている様子を見ると『捜シ者』の部下のテロリストのようだ。

 「まだいたんですか」

 「チッ。次から次へと……」

 大神と刻が一歩前に出た。そして大神は左手から『青い炎』を出し、刻は銃を二丁構えた。ロストしている間の武器なのだろう。

 「待て! 大神! 刻君!」

 桜がそれを止めるために前に出ようとすると、遊騎がポツリと呟いた。

 

 

 

 

 

 

 「……来る」

 「え?」

 桜が振り向いた次の瞬間、何かが彼らの前に降ってきた。

 

 

 

 

 

 

 「なっ!?」

 「新しい敵かヨ!?」

 「ぬぅ……!」

 降ってきた衝撃で辺りは土埃に包まれた。しばらくして土埃が晴れると、そこには先ほどまでいなかった人物が立っていた。

 「…………」

 「や、夜原先輩……?」

 桜は目の前に現れた人物の名を呼んだ。だが、桜は違和感を感じていた。目の前にいる彼はどこか違うと感じた。いつもとはどこか雰囲気が違っているのだ。学校での雰囲気とはもちろん違う。しかし、桜が今まで見てきた『コード:ブレイカー』としての雰囲気とも違った。

 「んだよ、優。別に来なくてもよかったのによ。どいてろ。テメーは銃持ってる奴の相手なんかできねーんだ──」

 「心配ない。遅れた詫びとして、こいつらの相手はオレがする」

 そう言うと優はゆっくりと前に出た。それを見て、優の前にいた男が銃を優に向けた。

 「それ以上近づくな! 頭撃ち抜かれたいか!」

 男にそう言われると優は立ち止った。そして、男の顔をゆっくりと見た。

 「……なあ、なんであんたはこんなことしてるんだ?」

 「はあ?」

 優の問いに男が顔をしかめた。しかし、すぐにその表情はニヤリと下品に歪み、男は大笑いを始めた。

 「ギャハハハ! 何を言うかと思えばそんなことか! 決まってるだろ! どうせ人間は『捜シ者』によって殺される! ガキもジジイもババアも関係ねえ! だが『捜シ者』に味方すれば生き残れる! それだけじゃねえ! 『捜シ者』と共にこの世を支配できるんだ!」

 「…………」

 優は黙った。そして、ゆっくりと腰のあたりに右手を伸ばした。

 「動くな! テメー、状況がわかって──」

 

 

 

 

 

 

 次の瞬間、男が構えていた銃の先端が銃から離れた(・・・)

 

 

 

 

 

 

 「な……!?」

 男は状況が理解できずに後ずさった。しかし、何かが背中に当たった。何かを確かめようと振り向いた男は再び理解できない状況を目にする。なぜなら、そこにいたのは目の前にいたはずの優だったからだ。

 「テ、テメエ!? いつの間に──」

 男の言葉はそこで途切れた。優が右手を腰の左側から右上に動かした瞬間、男の体は上半身と下半身に分かれていた。男の後ろに移動した優の手に握られていたのは、月明かりを反射して妖しく光る日本刀。男は日本刀により真っ二つにされたのだ。

 「テメエ!」

 「死にやがれ!」

 「伏せろ!」

 他の男たちが優に向けて銃を構え、一斉に発砲した。大神の指示により桜たちは弾丸を受けることはなく、弾丸はすべて優に向かっていった。

 「なに!?」

 しかし、優に傷がつくことは無かった。どの弾丸も、彼に届く前にその威力を無くしてしまうのだ。その理由は、優が持っていた日本刀だ。

 「クソ!」

 男たちは優に向かって発砲を続けた。しかし、いくらやっても優に当たらない。その理由だが、肉眼で見るのは難しかった。しかし、スロー映像で見れば一目瞭然だろう。

 男たちの銃弾が優に届かない理由……それは、彼が自らの日本刀で銃弾を斬っている(・・・・・)からだった。

 「なんだ!? 一体こいつは何者なんだ!?」

 男の一人が追いつめられたように叫んだ。その言葉を聞くと、優は冷淡にポツリと呟いた。

 「お前らが知る必要はない。死ね」

 次の瞬間、優が男たちの視界から消えた。正確には、視認できないほどのスピードで移動したのだ。そして、男たちの体は次々に二つに分かれていった。

 

 

 

 

 

 

 「目には目を 歯には歯を 悪には無慈悲なる裁きを」

 

 

 

 

 

 

 優がその言葉を言い終わることには、大神たちを囲んでいた男たちはただの肉塊になっていた。

しかし、まだ戦いは終わっていない。

 「フッ!」

 優が短く息を吐き出すのと同時に日本刀を振るった。一つの金属音が響き、優の足元に真っ二つに分かれた銃弾が転がった。優の周囲にいた男たちは全滅したため、おそらく遠距離からの発砲だろう。

 「このクソが!」

 遠くの物陰から数人の男が体の半分だけ露わにして発砲した。日本刀は完全な近接用武器。距離を取ることで優の攻撃を無効化しようとしたのだろう。

 しかし、それは無駄だった。

 「ぐは!」

 「な!?」

 突然、発砲をしていた男の一人が銃を手放した。見てみると、露わになっていた部分の肩を押さえて座り込んでいた。肩を押さえている手には血が付着している。どうやら肩を撃たれたらしい。それは見ればわかる簡単な事実。しかし、ここで一つの疑問が浮かぶ。誰が(・・)やったのか、というのものだ。男たちにとって敵である優は日本刀を装備しているため、距離を取っている男の肩を撃つのは不可能。仲間の誤射という可能性もあるが、彼らは仮にも『捜シ者』の部下だ。そのような初歩的なミスはまずないだろう。じゃあ、誰がやったのか。答えは簡単だった。

 「テ、テメエ……!」

 男の一人が見つめる先で、優が静かに構えて立っていた。それはさっきまでと特に変わらない様子だと思えるだろう。しかし、違っていた。構えているものが違った。先ほどまで彼が装備していた日本刀は鞘に納められている。今、彼が構えているのは……月夜を反射して光る拳銃だった。以前、桜の護衛のバイトの時に『壱49』と戦った時に使ったものだ。

 「死ね」

 まるでおもちゃのボタンを押すように引き金を引く優。彼が引き金を一回引く度、男たちが一人ずつ倒れた。今度は肩ではない。彼らの脳天を撃ち抜いている。先ほど肩を撃ち抜かれた男もすでに額に穴が開いている。こうして、優を無力化したはずの男たちは一分と経たないうちに全滅した。

 すると、一発の銃弾が優の耳元を後ろからかすった。優はすぐに振り向いて銃を構えた。そして、遠距離狙撃用のスコープ付きの銃を構えている男がビルの中にいるのをビルのガラス越しに確認した。優はガラスを破ろうと発砲したが、優が撃った銃弾はガラスによって弾かれた。どうやら防弾ガラスらしい。

 「ハハハ! ここなら何もできねえだろ! さっさと死ね! さっきのガキみてえなこと(・・・・・・・・・・・・)なんてそうホイホイとできるわけがねえ!」

 ビルの中にいる男が愉快そうに言った。圧倒的な距離に防弾ガラスという防御手段。男は優が自分を殺せないと確信していた。そして、絶対の余裕の中で優を討とうと引き金に手をかけ、容赦なく優に向かって発砲した。

 瞬間、二発(・・)の銃声が宙に響いた。

 「な!?」

 銃声が響いてすぐ、金属と金属がぶつかり合う音が響いた。そして、優と男の間に二つの銃弾が転がった。それは優が『壱49』と戦った時にもやってみせた「銃弾で銃弾を撃ち落とす」という技だった。しかし、それだけでは終わらなかった。

 「そんなバカな! こいつもあのガキと(・・・・・・・・・)──!」

 男が驚愕の言葉を言い終わるより前、男の持っていた銃が爆発した。彼が持っていた銃の銃口に銃弾が吸い込まれるように入っていき、銃が暴発したのだ。人ですらボールほどの大きさに見えるほど離れた相手が持っている銃の銃口を狙って銃弾を放つ。そんな普通なら考えられないことを()はやってみせた。男の銃の爆発を確認し、()はゆっくりと口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 「ま、ラクショーだネ」

 「……刻」

 

 

 

 

 

 

 ()……刻は右目に装着した眼帯を外しながら挑発するかのように舌を出した。優は自分の後ろにいた刻を見て、自分が構えていた銃を下ろした。

 「二発目はお前が撃ったのか。それに、その眼帯は……」

 「オレは左目の視力は8.0あるんだヨ。だから遠くのモノを狙う時は左目だけの方がいいってワケ。ていうか、お前が手こずってから手伝ってやったんだっつの。つか自慢げにしてるとこ悪いケド、銃弾で銃弾を撃ち落とすぐらいオレでもできんだから偉そうにすんじゃねーゾ」

 「銃口を狙ったお前相手にできるわけないだろ」

 「へっ」

 どうやら銃弾を撃ち落としたのは優で銃口を狙ったのは刻らしい。優は刻に「助かった」と言うと、大神たちのところに歩いていった。

 「待たせたな」

 「せ、先輩……。まさか、先輩も日本刀を扱うとは……」

 「も?」

 「大神も剣術を心得ているのです」

 「嗜む程度だと言ったでしょう」

 優が使った武器について話し出す大神たち。すると、刻が頭の後ろに両手を組みながら言った。

 「つーか、お前って刀使うんだっけ。使ってるとこ見たことないんだけど」

 「今まで使う機会がなかったからな。今回は必要だと思って持ってきた」

 「しかし、さっきのには驚きました。全ての銃弾を斬るなんて」

 感心したかのように大神が言った。先ほどの技も見事なものだが、大神が言うように日本刀で銃弾を斬り捨てるというのも規格外の技と言える。大神の言葉を聞くと、優は腰にある日本刀の柄に手を添えた。

 「ま、『束脳・反転』を使って腕力を強化していたしな。そこにこの『斬空刀(ざんくうとう)』の切れ味が揃えば銃弾を斬るなんて簡単だ」

 「『束脳・反転』?」

 優の口から出た聞き慣れない技名に桜は首を傾げた。優はため息をつくと、簡潔に説明を始めた。

 「通常時以上のリミッターをかけてリミッターをかけた能力のついになる能力を限界以上に強化させる技……それが『束脳・反転』だ。銃弾を斬り捨てたのは脚力にリミッターをかけて腕力を強化し、銃弾を撃ち落とした時は聴力にリミッターをかけて視力を強化したというわけだ」

 「ようするにギブ&テイクということですね!」

 「……それは違うと思いますよ。しかし『斬空刀』ですか。空を斬る刀とは随分な名前ですね」

 「こいつの切れ味は相当なものだからな。その鋭さは空気さえも切り裂く」

 「やるなあ、ななばん」

 五人が談笑していると、突然気配がした。それにいち早く反応したのは大神だった。

 「ッ!」

 大神が建物を見上げた。他の四人も大神が見上げたのを見て同じところを見上げる。そこにいたのは、昼間に大神たちを襲った雪比奈と帽子を目深にかぶり甲に特徴的な刺青がある右手を口元に当てた男──

 「……『捜シ者』!!」

 大神は歯を食いしばり、その眼に殺気を纏わせた。

 

 

 




CODE:NOTE

Page:8 桜小路 桜

 輝望高校に通う女子高生。学校の中でも際立って美しい容姿をしており学校のマドンナ的存在となっている。学校内にある木の下のベンチで涙を流しながら読書をする姿をよく見かけられることから「おしとやかな大和撫子」というイメージを持たれているが、実際は空手や柔道といった武術の段を持っているほどの強さを持っているかなりの武闘派。読んでいる本は格闘技の雑誌で巨大なおにぎりを昼食として何個も食べるというイメージとはかけ離れた素顔を持っているが、その素顔を知る者は不思議なことにほとんどいない。さらに、今は様々な勘違いが膨れ上がって大神と付き合っているという噂が流れているが本人(大神含む)はまったく気にしていない。
 本人は気付いていないが、異能が効かない『珍種』という存在。後先考えない性格によって無茶をすることが多かったが、この能力のおかげで異能による怪我は無し。実家は歴史ある任侠組織『鬼桜組』で父親は組長である桜小路 剛徳で母親は彼の妻である桜小路 ユキ。家族の仲は『鬼桜組』のメンバーも含めて良好。人の死に対して異常な反応を見せる。

※作者の主観による簡略化
 武士道娘。



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