CODE:BREAKER -Another-   作:冷目

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お久しぶりです。
今回はタイトル通りの内容となっております。
まあ、基本ギャグですが最後はかなりシリアスに……そんな内容となっております。
それでは、どうぞ!





code:14 大神宅にご訪問

 「なんであの雪比奈とかいう奴、逃がしちゃったんだヨ。あいつ『捜シ者』の部下なんダロ?」

 「『捜シ者』の部下なんだから安易に手を出せないだろ。下手に手を出したら何をするかわからないからな」

 「ななばんの言う通りや。それに、ろくばんが無事やったんやからそれでええやん」

 「そうだ! それに、大神は『捜シ者』たちに命を狙われているのだろう? ひとまず護るのだ! 一人にしてはおけん!」

 「……リリィの毒もほぼ抜けたんでほっといて頂いてかまわないんですが。ところで……」

 大神を狙い日本に帰ってきた『捜シ者』の部下であるリリィと雪比奈をなんとか退けた大神たち。彼らは今、とある場所に向かっていた。その場所とは……

 「なんで全員で僕の家に来なきゃならないんですか?」

 大神の家だった。何の変哲もない普通の二階建てのアパート。その前に大神たちはいた。遊騎は「ついたー」と言いながら万歳している。未だロストしている刻に結局持ってきたゴールデン『にゃんまる』の頭をかぶせて。

 「まあ、僕はかまいませんが桜小路さんは帰った方がいいのでは? きっとご両親が心配されるでしょうし……」

 大神がそう言うと、桜は携帯を出して笑顔を浮かべていた。

 「母上から了解は取っておいた。皆によろしく、と」

 「……そうですか。ん?」

 桜の行動の速さに感心していた大神の携帯が突然鳴った。見てみると、一通のメールが届いていた。差出人は、桜小路 剛徳。その内容は……

 

 

 

 

 

 

 「桜に手を出したら殺す!!」

 

 

 

 

 

 

 物騒極まりないものだった。

 「お前ってあの人からの信頼ゼロだな」

 「……ほっといてください」

 いつの間にか自分の隣に立ってメールを見た優の言葉を流して、大神は階段を上り始めた。どうやら大神の部屋は二階にあるらしい。

 「しかし意外と普通だな。“エデン”から支給されたものなのだろう? もっとすごいものかと……」

 「平凡な高校生の一人暮らしなんてこんなものですから」

 「無駄に豪華だと怪しまれるからな。普通が一番だ。オレの家もこんな感じだしな」

 階段を上りながら話していると、桜が優の方を見た。

 「そうなのですか。では、いつか夜原先輩の家にも──」

 「断る」

 「うう……やはりまだ冷たい……」

 そんなことを話していると、入口のドアの前に着いた。大神は鍵を出し、部屋を片付けるから待つよう言って中に入ろうとした。しかし、刻がその鍵を奪った。

 「そうはいくか! お前の●●●や●●●や●●●●! ハズカシイ部分ばっちり暴かせてもらうゼ!」※不適切な表現があったため一部音声を変えてお送りしています。

 刻はそのままドアを開け、中に入っていった。

 「そのすましたツラも今日限り──」

 

 

 

 

 

 

 次の瞬間、刻に向かってナイフが飛んできた。

 

 

 

 

 

 

 「ふおー!!」

 飛んできたナイフは勢いよくドアに突き刺さった。ナイフは刻にかすりもしなかったが、刻はかなりビビっていた。

 「ちょ、ナニが……ひゃああああ!?」

 ナイフから離れようと動いた刻が宙に浮かんだ。もちろん本当に浮かんだのではなく、ロープが足に巻きつきそのまま吊るされただけだ。

 「ハア……だから片付けるまで待てと言ったでしょう?」

 「…………」

 「おー」

 「対侵入者用のトラップか。それにしても見事に引っかかったな、刻」

 刻の惨状に大神はため息をつき、桜は驚きのあまり何も言えず、遊騎は拍手し、優は大神に感心していた。

 「いいからはやく降ろせー!!」

 「わかった。ほら」

 「んぎゃ!」

 優が手刀で刻を吊るしているロープを切り、刻はそのまま床に頭から落ちた。

 「やり方が乱暴なんだヨ!」

 「わざわざ異能を使って助けてやったんだぞ?」

 「普通にほどけばいいだろうガ!」

 「やめるのだ、刻君。それにしてもトラップなんて……」

 「ここから先のトラップは解除しておきました。どうぞ入ってください」

 刻と優の言い合いを桜が止めると、大神が中に入った。土足で。

 「大神。なんで靴を脱がぬ?」

 「ガラス飛散時にも移動可能なようにです」

 「電気が点かぬが?」

 「暗闇に慣れないと夜目がきかなくなりますから」

 「あの窓の目張りは?」

 「隙間からの偵察防止です」

 「…………」

 「どうしました?」

 見た目はいたって普通だった大神の家。しかし、中に入ってみればトラップはあるわ必要以上に用心されているわで明らかに普通ではなかった。やはりここは『コード:ブレイカー』という“非常識”的な者の家なんだと感じる。

 「普通そこまでするカ? ……って、オイオイ。なんでベッドが膨らんでんダヨ。エッチなものでも隠して──」

 大神がランタンを用意して明るくなった部屋を見渡していた刻が、大神が使っていると思われるベッドが膨らんでいることに気がついた。そして、布団を乱暴にめくった。そこにあった、というよりいたものを見て刻は絶叫した。

 「きゃあああ! 死体ー!?」

 布団の下にいたのは不気味に笑う黒人の男、の人形だった。下半身は棒になっていて持ち運びできるようになっている。

 「寝込みを襲われた時の身代わり人型模型チャーリー4号です。ちなみに僕はベッドの下の寝袋で寝ます」

 「お、お前は軍事マニアか何かかよ!?」

 「大丈夫だぞ、刻君。よしよし」

 平然と説明する大神。しかし、今の刻は完全にビビって桜に頭を撫でてもらっているため頭に入っていないだろう。

 「なあなあ、ろくばん。1号は?」

 「1号と2号は殉職。3号は対狙撃用です」

 「遊騎! お前は順応しすぎダ!」

 刻と違って遊騎は普通に馴染んでいた。それどころか、大神の言葉を聞くと1号と2号のお墓を作り始めた。

 「なあ、『コード:ブレイカー』ってみんなこんな……」

 「なワケねーし!」

 「最低限の防犯はしているが……大神ほどの対策はしてないな」

 「あ、そうそう……」

 桜の疑問を刻と優が否定していると、大神が何かを探し始めた。そして出てきたのは、大量の缶詰だった。

 「食料はたくさんあるので食べたいだけどうぞ」

 「しょ、食料って……ソレ?」

 「……大神。お前、まさかいつもこれを……?」

 「ええ」

 刻と桜が少し引きながら質問すると、大神は平然と答えた。一方、遊騎と優は……

 「缶詰でジャグリングやし」

 「上手いな、遊騎。お、カレーの缶詰。オレはこれにするか」

 「ななばん、カレー好きやしな」

 遊騎は缶詰でジャグリングを始め、優は缶詰をあさって自分が食べる缶詰を決めていた。

 「テメーら二人はどんだけ順応してんダヨ!」

 「「ええやん(いいだろ)、別に」」

 刻のツッコミもスルーだった。すると、それを黙って見ていた桜が勢いよく制服の裾をまくった。

 「よい! 食事は私が作ろう!」

 「ええ!? いやいや! それはそれでヤバいデショ! 台所ぶっ壊すとガス爆発……! マジで食事どころじゃなくなるカラ! やめてくれー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「母上直伝の肉じゃがだぞ」

 「「「…………」」」

 桜が作った肉じゃがに、大神と刻と優は言葉を失っていた。悲惨な出来だったからではない。むしろその逆だった。その肉じゃがは見た目は完璧な出来だったのだ。ちなみに、遊騎は「にゃんまる」が敵に自分の食糧を分け与えるシーンを思い出し、桜が「にゃんまる」であると改めて認識していた。

 「まあ、台所ぶっ壊さなかったのは褒めてやるヨ。それにしても、肉じゃがとはまたベタな……。もしかしてユキちゃんの入れ知恵?」

 「よくわからんが母上がこれだけは覚えておくようにと」

 「なるほどな」

 「でも大事なのは見た目より味! オレのセレブ舌はそう簡単には──」

 「なくなるぞ」

 「な! 待て、この野郎!」

 「食うしー」

 「……いただきます」

 そして、男性陣は肉じゃがを口にした。すると、文字通り目が点になった。

 

 

 

 

 

 

 「うま……」

 「だな……」

 

 

 

 

 

 

 刻と優が思わず声を漏らした。それだけ桜が作った肉じゃがは絶品だったのだ。

 「オレも一人暮らしだから料理はするが、ここまでのものは作れないな……」

 「本当ですか、夜原先輩! 喜んでいただけたなら嬉しいです!」

 「近い。離れろ」

 「……はい」

 優から評価を得たのが嬉しかったのか、桜は優に近づき、また拒絶された。

 桜はため息をつきながら大神にも感想を聞きに行った。

 「大神。美味いとは言えないかもしれないが、作り立ての分缶詰よりはマシだろう?」

 「ええ、とても美味しいですね」

 大神は学校で見せるような好青年の笑顔で答えた。対して桜は、不服そうな顔をしていた。

 「ケッ」

 「……なんですか?」

 「お前のその顔はウソをつく時の顔だぞ。不味かったならはっきり言え」

 「ウソじゃないですよ」

 「いや! 今のはウソをつく時の顔だ! そうでない時のお前の顔は──」

 桜が大神の顔について説明を始めると、大神はため息をついて箸を置いた。そして、どこか遠くを見るように言った。

 

 

 

 

 

 

 「ウマいとかマズいとか……そんなこと、どうでもいいじゃないですか。食事なんて要はエネルギー摂取。腹が満たされればそれでいいんです」

 

 

 

 

 

 

 「大神……」

 大神の言葉を聞いて、桜は改めて部屋の中を見渡した。そして、遊騎が作ったチャーリー1号・2号のお墓が目に入った。

 (殉職ってことは、命を狙われたってことだよな……)

 身代わりのために用意した1号・2号が殉職したということは実際に大神を狙った者がいるということを表している。

 さらに部屋を見渡すと、驚くほど何もない。驚くほど……殺風景な部屋。

 (大神って、どんな風に育ってきたんだろうか……)

 そんなことを思っていると、『子犬』が何かしていることに気付いた。見てみると、壁に刺さったナイフにかけてある制服を落とそうとしているようだった。そして、よく見ると壁に刺さったナイフが壁以外の何かを刺していることに気付いた。

 (写真……?)

 それは写真のようだった。今いる位置からは何の写真かわからないので、桜はその写真を撮ろうとした。すると……

 「…………」

 「お、大神?」

 大神に止められた。写真に向かって伸ばした手を、大神に掴まれた。その力は強く、振りほどけなかった。しかし、次の瞬間には力が緩んだ。原因は……遊騎だ。

 「このろくばん、ちっちゃいなあ」

 遊騎がいつの間にか写真を撮っていた。おそらく異能を使い音速で移動したのだろう。遊騎の言葉で力が緩んだ大神の手を振りほどき、桜は遊騎の隣に移動した。

 「どれ?」

 「ちょ……!」

 大神の言葉を無視し、桜は写真を見た。そこに映っていたのは二人の男と一人の女、そして大神の顔をそのまま幼くしたような顔をした少年だった。大神以外の人物の顔は写真が破れたりしているため見えない。

 「おお! なかなか可愛いではないか! しかも今と違ってとても素直そうだ!」

 「せやな。……あれ?」

 遊騎がふと何かに気がついた。そして、幼い大神の隣にいる一人の若い男を指差し、驚愕の言葉を口にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「これ、『捜シ者』やん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「え?」

 「…………」

 遊騎が指差した男は口元に右手を当て、その手の甲には特徴的な刺青があった。よく見ると、その男の顔のあたりは特にボロボロだった。

 「どういうことだ、大神? なんでお前と『捜シ者』が……」

 「……そっか。そうやったな」

 遊騎は目を閉じた。そして、さらに衝撃的な事実を口にした。

 「ろくばんは『捜シ者』に育てられたんやったなあ」

 「……え?」

 「「…………」」

 遊騎の言葉に桜は意味がわからないようでその場で固まり、刻と優は黙って大神を見ていた。大神は遊騎と桜に背を向けている。

 「この部屋見ればわかるわ。よう訓練されとるし」

 「ほ、本当なのか? 大神。だから、こんな生活を……」

 「……だから何なんです?」

 大神は桜に背を向けたまま答えた。そして続けた。

 「その通りですよ。たしかに闘いの技術、戦場で生き残る術、異能の扱い方、……人の殺し方。オレはすべてをあいつに教わった」

 そう言うと、大神はナイフを投げた。ナイフは遊騎の方に飛んでいき、遊騎が持っていた写真のちょうど『捜シ者』がいる部分を貫き、そのまま床に刺さった。

 「だからあいつは必ずオレの手で殺す」

 「お、大神……」

 冷たく、殺気に満ちた大神の言葉。その迫力に、桜は息を呑んだ。すると、刻が突然口を開いた。

 「それはどーかネ? 『捜シ者』に育てられて、『捜シ者』の部下の雪比奈がお前を見逃した……。こうなるとお前の言ってること何一つ信用できないんだケド? ……むしろ、お前は『捜シ者』が“エデン”に送り込んだスパイだったりして」

 「何を言うのだ、刻君! 夜原先輩! 先輩からも言ってやってください!」

 「……悪いが、大神をフォローする気はないな。刻の言う通り、大神が『捜シ者』が送り込んだスパイという可能性は十分にある。まあ、そうだったら容赦なく殺すけどな」

 「夜原先輩!」

 刻と優の言葉に桜はただ一人反論する。それを見ていた大神は二人の方を向いた。

 「別にお前らに信用しろと言った覚えはない。さっさと帰れ」

 「お前のためにいるんじゃねーよ。遊騎がワガママ言わなきゃテメーの家なんか来ねーっつの」

 「おい! 二人とも──」

 大神と刻が一触即発の雰囲気になってきて、桜が間に入ろうとする。すると、遊騎が突然口を開いた。

 「無理や。ろくばん一人じゃ『捜シ者』は殺せへん。前に『捜シ者』が暴れた時にオレらの前の世代の『コード:ブレイカー』がツブシにかかったんやけどな。『捜シ者』にはすんでのところで逃げられ、『コード:ブレイカー』の大半は再起不能か死亡だったらしいわ」

 「オレたちの前の世代ってことは……人見さんたちのことか」

 「せや。もといち(人見)がいても『捜シ者』は殺せへんかった。『捜シ者』はホンマ、メンドウな相手やって」

 「そ、そんな……」

 遊騎の言葉にショックを隠せない桜。すると、大神の携帯が鳴った。見てみると、エージェントである神田からだった。

 「神田か。どうした? ……何?」

 「な、なにがあったのだ?」

 桜が尋ねると、大神は携帯を耳から離した。

 「ウランやプルトニウムなどの放射性物質を保有する研究所が正体不明の集団に占拠された」

 「な……!?」

 正体不明の集団……。大神たち『コード:ブレイカー』はそれが誰の仕業なのかすぐにわかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「…………」

 原子力物質を保有する研究所。その屋上で一人の男が外の世界を見下ろしていた。男は黒い帽子を目深にかぶり黒いコートを着ていた。

 男の背後に色黒の男が立った。それは、昼に大神達の前に現れた雪比奈だった。

 「すべての手筈は時間通りに整いました。……あとは彼だけ」

 雪比奈が話しかけている男をよく見てみると、右手を口元に当て右手の甲には特徴的な刺青があった。

 「大神が来るのを待つだけです。……『捜シ者』」

彼らの足元には、武装した兵士の死体が大量に転がっていた。

 




CODE:NOTE

Page:7 大神 零

 現『コード:ブレイカー』の『コード:06』。異能は左から発する『青い炎』。ロストすると体温が著しく低下する。公園で“悪”を『青い炎』で裁いていたところを桜に目撃され、目撃者である桜を始末するために輝望高校に入学した。しかし、桜が珍種という異能が効かない存在だとわかると殺すことをやめ、一緒にいることで彼女の観察を始める。そのため、校内では「大神と桜は付き合っている」とされている。
 仮の姿である学生時には真面目な優等生キャラを演じているが、バイトの時はその時の優しさなど欠片もないような冷酷な悪魔へと変わる。『捜シ者』に殺意を抱いており、彼を殺すために『コード:ブレイカー』になった。だが、殺意を抱いている理由は現時点では不明。
モットーは「目には目を 歯には歯を 悪には悪を」

※作者の主観による簡略化
 格好よく言うとダークヒーロー。しかし、正体はただのエロがm(燃)



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