今回も新たなキャラクターが出たりして波乱の展開です。
そして、あの人の異能が明らかに!
それでは、どうぞ!
「大神 零。このリリィのために死んでくれる?」
遊騎を追ってファミレスに入った大神たち。大神はそこで『捜シ者』が日本に来たことを遊騎から聞いた。そんな彼の前に現れたのはリリィと名乗る『捜シ者』を知る女性。今、そのリリィによって大神はピンチを迎えていた。リリィの部下たちに囲まれ銃を突きつけられており、少しでも敵意を見せれば体中に穴が開くだろう。
「ククク……。どうした、小僧? ビビって声も出ないか?」
リリィの部下の中の一人、店員の制服を着た強面の男が大神をあざ笑うかのように話しかけた。明らかに人を殺すことにためらいを感じないということを感じさせる男の態度。一般人だったらそれだけで恐怖を感じるだろう。しかし……
「店員さん。コーヒー二つ追加で」
「な!?」
大神は何事もなかったかのように近くの席に座り、場違いな台詞を男に向けて言った。とてもじゃないが、丸腰の状態で大勢の人間に銃を向けられている人間の台詞とは思えない。
「こうなったら仕方がない。ゆっくり話を聞かせてもらいましょう。『捜シ者』の居場所を」
「ふざけるな!」
男が大神の頭に銃口を近づけた。それと同時に大神の周囲にいた他の部下たちも同様に銃口を大神の頭に銃を向け、重工と大神の頭を密着させている。それでも大神の態度は変わらなかった。それどころか余裕を感じさせるような笑顔を浮かべていた。
「奴はどこにいるんです? 教えてくださいよ、リリィさん。なんならケーキもう一ついかがです?」
「イキがるなよ! ガキが!」
強面の男が大神の目の前に立ちふさがった。ナイフを取り出して大神の頬を軽く傷つける。傷口から一筋の血が流れた。
「俺はな、中東では『
「ゴチャゴチャ言ってねーでさっさとコーヒー持ってこい」
「こ、このガキ……!」
大神の言葉に男は震えていた。恐怖ではない。純粋な怒りでだ。しかし、男はすぐに冷静さを取り戻してニヤリと笑った。
「……わかった。なら、俺の恐ろしさを教えてやるよ。これを見な! テメエもこうされてえか!」
男が大神から離れるとスタッフ用の部屋の扉が開かれた。そこにあったのは夥しい数の死体。店員の制服を着ている者もいれば私服を着ている者もいる。
「……全員殺してなりすましたのか」
「一般人でも関係なし……か」
「…………」
「な、なんということを……」
刻と優が独り言のように状況を把握し、遊騎は黙ったままで、桜は震えながらその光景を見ていた。桜のその震えは恐怖というよりも怒りに近かったが、桜は必死で自分の拳を押さえた。今、自分が出ていってもどうにもならない。むしろ状況が悪化するだけだからだ。
すると、男が床に何かを見つけた。
「おおっと。まだ二人残っていたか? ……妊婦とガキか。ガキは結構殺してきたが、妊婦を殺すのは何年ぶりだ?」
そこにいたのは、まだ店内が平和だと
「この腹を掻っ捌く時がまた最高なんだ……よな!」
「や、やめろー!!」
男のナイフが腹部に向かって振り下ろされた。桜は我慢できず、男に殴りかかろうとしたが距離があるので止めることはできそうにない。しかし、男のナイフは寸での所で止まった。周囲の異状によって。
「な、なんだ!?」
突然、部屋中に水がふりまかれた。天井を見るとスプリンクラーが発動していた。その原因はある席から発せられる炎。おそらく炎がスプリンクラーまで届き、その炎にスプリンクラーが反応したのだろう。だが、その席には違和感があった。なぜなら、そこには先ほどまで大神がいたはずなのだが、今は大神の姿はどこにもない。
「おい! ターゲットはどこに──」
「余所見とは余裕だな」
「なに!?」
男の腕が何者かに掴まれた。腕を掴んだ人間は……優。
「テメエはターゲットと一緒にいた奴か。この俺を止められるとでも……」
「……その口ぶりだと、大神に関する情報しかもらってないようだな」
「ああ? 何を言って──」
「もういい。黙れ」
男の言葉を遮って優は動いた。男のナイフを持った方の手をひねりナイフを床に落とさせ、そのまま男の背中に押し付けた。
「ぐあ!」
男はそのまま床にたたきつけられた。男は自由だった首を動かして優を睨みつける。
「テメエ! ただのガキじゃ──」
「黙れと言った」
次の瞬間、店内に鈍い音が響き渡った。優が掴んでいた男の腕の骨を握力で握りつぶしたのだ。
「ぎゃあああああ!!」
「苦しいか。なら……楽にしてやる!」
苦痛に耐えきれず叫ぶ男を見て優はもう片方の手を出し、男の頭を床に思い切りたたきつけた。周囲に血が飛び散り、先ほどまで苦痛で歪んでいた男の顔は完全に床に埋まっていた。
「キ、キサマ!」
今まで呆然としていた他の部下たちがハッとして優に銃を構える。しかし、そのうちの一人の頭が鷲掴みにされた。それは、親指に指輪をつけた“悪魔”の左手……大神だった。
「全員燃え散りな」
次の瞬間、大神の左手から『青い炎』が発せられ、リリィの部下たちを次々と燃え散らした。
「目には目を 歯には歯を 悪には悪を」
「ゴミが……。コーヒー一つまともに運べねえなら店員も失格だな」
そうして、一分と経たないうちにリリィの部下は全滅した。
「スプリンクラーなんて使わなくてもオレは間に合ったぞ」
「誰が手を貸せと言った。余計なことをするな」
「オレが勝手にやったことだ。妊婦を殺そうとする“
「相変わらず子供が関わると必死だな」
全身が濡れている状態で言い合う大神と優。ちなみに、優は最初に強面の男を裁いた後、ただ傍観に徹していた。彼にしてみれば、妊婦と子供を助けられればそれでよかったのだろう。
「アハハ! やっぱり強いのね、大神。それと、優だったかしら? あんたのことは特に何も聞いてないけどあなたも中々ね。どっちも普通の人間じゃ太刀打ちできないわ。でも、『捜シ者』には敵わない」
大神たち同様、スプリンクラーで全身が濡れたリリィが微笑を浮かべながら大神の前に立つ。そして、クスリと笑った。
「わかってるでしょ? 異能者が『コード:ブレイカー』だけじゃないってことは。『捜シ者』の下には多くの異能者が集まっている。こんな光景が今にそこら中で見れるようになるわ。『捜シ者』がこの国を戦場に変える」
「な……! 一体何のために……!?」
リリィの言葉に桜が驚く。そんな桜の言葉を聞いてもリリィは笑みを絶やさない。
「クスッ。さあねえ、知らないわ。そんなことどうだっていいし。楽しきゃいいの。リリィはね。……ねえ、大神。『捜シ者』からは殺せって言われたけど、あんたも一緒にやらない? あんた結構カワイイからさ、殺すの惜しいのよ」
言いながらリリィは大神の左手を自分の胸に押し当てた。それは傍から見れば非常に大胆な行動。しかし……
「なんならリリィが『捜シ者』にとりなおしてやっても──」
それは同時に非常に危険な行動だった。
「断る。燃え散れ、“
大神がリリィの胸に押し当てられた左手から『青い炎』を放った。元から密着していたため、リリィの体は一瞬で『青い炎』に包まれた。しかし、燃え散ったのは彼女の服だけだった。
「フフッ!」
いつの間にか空中にいたリリィが笑いながら大神に向かって踵落としをした。どうやら大神が『青い炎』を発した瞬間に服を脱ぎ空中に跳んだのだろう。その証拠に、今のリリィは先いほどまでとは違い露出が多い服装となっている。
大神は両腕でリリィの一撃を防いだ。しかし、リリィはもう片方の足を振り下ろし、大神の両腕を足場にしてジャンプした。その勢いを利用して背中でファミレスの窓を割り、リリィは外に出た。その時、リリィの手元には一つのスイッチが握られていた。
「それじゃあバイバイ♪」
リリィが手に持ったスイッチを躊躇することなく押した。その瞬間、ファミレスは店内から爆発を起こし、周囲に爆音が響いた。リリィは爆発に巻き込まれることなく、地面に華麗に着地した。
「あ~あ、残念。リリィの誘いを断るからよ? リリィはね、強い男が好きなの。ウフフフ、アハハハハハ!」
「う……んん……」
呆然とした意識の中で、桜はゆっくりと目を開けた。徐々に司会を広げながら、自分の置かれている状況を整理した。リリィと大神の戦闘があった後、リリィは店外に逃走した。そして、それとほぼ同時に店内で爆発が起こったのだ。命を落としてもおかしくないような状況だが、桜は確かに自分の心臓の鼓動を感じていた。なら、自分はどうやって助かったのか。その答えは、今まさに桜を抱えている人物だった。
「ゆ、遊騎君!?」
桜を抱えていたのは遊騎だった。桜だけではない。リリィの部下に殺されかけた妊婦と子供、そして刻。さらにゴールデン『にゃんまる』も無事だった。
「ちょっと重たいからギリギリやったわ」
そう言いながら順番に降ろしていく遊騎。どうやら、遊騎が店内にいた生存者全員を一瞬のうちに救ったようだ。しかし、そんなことは常識的に考えて不可能。
なら、答えは一つしかなかった。
「まさか遊騎君……。異能を使って皆を助けてくれたのか?」
微笑みを浮かべる遊騎。それが肯定なのかはわからないが、その表情を見て桜も安心する。しかし、その隣では刻が怯えていた。その理由は……「にゃんまる」だった。
(ヤベエ! ゴールデン『にゃんまる』が壊れてる! キレる! あいつ絶対キレる!)
刻の視線の先には、見事に首と体が離れたゴールデン「にゃんまる」があった。「にゃんまる」大好きの遊騎なら絶対に怒りを爆発させると予想したのだろう。しかし、遊騎はゴールデン「にゃんまる」に構わず妊婦と子供の所に歩み寄り、妊婦のお腹と子供の頭をそっと撫でた。
「こどももあかんぼも無事でよかったなあ……」
「遊騎君……」
自分の好きな「にゃんまる」よりも人の命を心配する遊騎。その姿を見て、桜は微笑みを浮かべた。
しかしその後、遊騎は刻に『磁力』でゴールデン「にゃんまる」の首と体を繋げるよう少しキレながら言った。やはり許せないらしい。
さらに、桜がふと気づいた。
「……遊騎君。大神と夜原先輩はどこなのだ?」
「重かったから置いてきたわ」
ケロッと言う遊騎。その言葉を聞いて途端、桜は慌てだした。
「遊騎君! なんでそんな平然と! 大変なのだ! 大神と夜原先輩を救出せねば!」
「いや、別に良いんジャネ? てか、オレとしては死んでくれた方がスッキリするし」
遊騎同様ケロッと言う刻。しかし、そんな刻に桜は猛反発する。
「何を言っているのだ、刻君! いくら大神と夜原先輩でも爆発の直撃を受けては危険だ! 大神! 夜原先輩! 今すぐ救出し、痛!」
桜は高らかに宣言し、すでに瓦礫と化したファミレスへと向かっていった。すると、その桜の頭を何者かがスパンと叩いた。
「人を勝手に救助対象にするな」
「夜原先輩! ご無事だったのですね!」
叩いたのは桜が救出しようとした優だった。優は気怠そうに腕を回しながら言った。
「まったく……。脚力を強化すればあんな爆発は簡単に避けられる。オレの異能を知っているならすぐわかるだろ」
「そ、そうでした……。いやあ、うっかり……って、そうだ! 大神! 先輩! 大神はどこに!?」
桜は優に掴みかかった。優は目を合わせないように顔をずらした。
「大神も無事だろう。あいつの『青い炎』は普通の炎すら燃え散らす。おそらくリリィを追っていったんだろう。『捜シ者』の居場所を吐かせるために」
「では今すぐ大神を追いましょう! 大神はリリィに命を狙われてた……。一人では危険です! 助けに行きましょう!」
「その必要はないよ、桜チャン」
刻が平然と言った。その後ろでは、遊騎はゴールデン「にゃんまる」の頭を被りながら「にゃんまる」の歌を歌うことで自分の世界に浸っていた。
「『捜シ者』の件はともかく、大神が誰に命を狙われてようと護んなきゃいけねー理由はねーヨ。同じ『コード:ブレイカー』だとしても、バイトでもない限り互いに助け合う必要もないし。それに大神が死んだところで他の異能者が新しい『コード:06』になるだけだし。あ、優以外のネ」
「…………」
刻の言葉に優はただ黙っていた。しかし、桜は刻に向かって叫んだ。
「大神が命を狙われているのだぞ!? 『コード:ブレイカー』の考える命の重みとはその程度のものなのか!?」
桜のその言葉を聞いた瞬間、遊騎が歌うのをやめた。そして、ゴールデン「にゃんまる」を頭から外すと言い合う桜と刻を見た。
どこを探すどう探すと言い合いをしていた刻と桜だったが、ついに桜は一人で探しに行こうと歩き出した。そんな桜を、遊騎は髪を引っ張って止めた。
「遊騎君! 急いでいるのだ! こうしてる間にも大神が──」
「待っとって」
「え?」
遊騎がまるで耳を澄ますかのように両耳の後ろに両手をあてた。しばらくすると、一つの方角を指差した。
「ろくばんの居場所わかったで。あっちや」
「理由などどうだっていい! 助けたいから助ける! それだけだ!」
大神を助けるために飛び込んだ桜が力強く大神に宣言した。「助けられる理由がない」と言い放った大神だったが、桜の力強い言葉に何も言えないようだった。
遊騎によって大神の居場所を突き止めた桜たち。大神の所に駆けつけると動けなくなっている大神とそれを見下ろすリリィ、そして褐色の肌をした男がいた。どうやらリリィと同じ、『捜シ者』の仲間のようだ。
「…………」
なぜか刻だけでなくゴールデン「にゃんまる」を脇に抱えてきた遊騎は桜のその言葉を聞いてあるものを思い出した。それは「にゃんまる」の絵本にあった1シーン。「にゃんまる」が敵である「かげまる」を助けるというシーンだ。「かげまる」に自分を助けた理由を聞かれた「にゃんまる」はしばらく悩んだ後、自信満々にこう言い放つのだ。
「それは明日考えるにゃん! にゃんまる、助けたいからたすけるにゃん!」
それはまさに桜がさっき言ったこととそっくりだった。その時、遊騎の中で「にゃんまる」と桜の姿が重なった。
「にゃん……まる……が、おった…………」
まるで宝物を見つけたかのように遊騎は呟いた。そしてこの時、遊騎の中でやるべきことが生まれた。
「なによ、この女。うざいわね」
リリィは大神を護るように自分に立ちふさがる桜を見ながら、小馬鹿にしたような笑みを浮かべた。すると、一人の人物が二人の間に割って入った。
「まったくだな。それに、大神も情けない」
「夜原先輩!?」
優だった。優はリリィと目を合わせないように注意しながらリリィと褐色の肌をした男の方を見た。すると、自信を感じさせるような笑みを浮かべた。
「いくら知らなかったとはいえ、リリィの異能『分泌』によって生成された毒を受けて動けなくなるとは。そこの雪比奈って男も内心呆れてるんじゃないのか?」
「……ふん」
「へえ?」
リリィの異能と褐色肌の男の名を言い当てた優。実は大神の元に向かう途中、優は聴力を強化して大神たちの会話を少しだけではあるが聞いていた。そのため大神の状況、リリィの異能が皮膚線から様々な代謝物質を分泌する『分泌』だということや雪比奈と呼ばれる者がそこにいるということをいち早くわかっていたのだ。
「……名前を知ったところで関係ないだろう。『コード:07』夜原 優」
褐色肌の男……雪比奈が特に興味もなさそうに言った。すると、リリィが一歩前に出た。
「ふうん。あんた耳が良いのね。さっきのパワーのことも考えると身体能力をパワーアップさせる異能ってとこかしら? まあ、どうでもいいわ。知ったところでどうにかなるものじゃないし」
リリィが自分の左手を舐めた。すると、左手からドロリとした液体が分泌された。
「この濃硫酸で、そこの女もろともグチャグチャにしてあげる!」
左手を前に出して優たちに向かっていった。それに対し、優は構えた。そして、リリィの左手は付着させた。……地面に。
「!?」
音を上げてドロドロに溶ける地面。さっきまでそこにいたはずの大神、桜、優の姿は影も形もない。彼らはリリィの後ろにいた。遊騎に抱えられて。
「『にゃんまる』の言う通りや。ろくばんもななばんも『にゃんまる』もオレが護るし」
遊騎は大神たちを降ろしてリリィの方を向くと片方のつま先で地面を「トン」と叩いた。
次の瞬間、遊騎はリリィの背後に移動していた。
「な!?」
「あかん……。行きすぎたし」
「フフッ! 目障りなネズミは、骨まで溶かしちゃうわよ!」
リリィが毒を『分泌』した右手を遊騎に向かって伸ばした。しかし、次の瞬間には遊騎は目の前から消え背後に移動していた。
「は……速い! なんなのこの異能!? ……ううん。そんなことどうでもいいわ。だってリリィには誰も触れられないわ! 触れなきゃ倒せないでしょ!? アハハハ!」
「触れたりせえへん……よ!」
「!」
次の瞬間、リリィが後ろに吹っ飛んだ。しかし、遊騎は特別なことは何もしていない。ただ
「な……!? 大神、遊騎君の異能って……?」
「『音』ですよ。あらゆる音を遠距離からでも聞きわけ、音波が生み出す衝撃波さえも操り、音速で一瞬の内に移動することができる唯一無二の異能」
「その聴力、速度といった能力は俺が『束脳・反転』を使った時よりも高い」
「人間の限界を超える『束脳・反転』を使った夜原先輩以上ですか!?」
「まあ、異能自体が人間を超えた力だからな」
桜に遊騎の異能について説明する大神と優。そこにリリィの相手を終えた遊騎が歩いてきた。
「遊騎君。ありがとうなのだ」
「……『にゃんまる』」
「?」
二人は固い握手を交わした。当の桜は遊騎の言葉の意味を理解してないようだが、この際どうでもいいだろう。
「なんかあいつスゲー大きな勘違いしてねえ?」
「してるな」
いつの間にか大神たちの所に移動した刻が遊騎を見ながら言い、優もそれに同意した。どうやら遊騎の中で桜は「にゃんまる」になったらしい。
すると、リリィが立ち上がった。
「ガキが! 面白いじゃない! リリィを本気に──」
リリィの言葉が途切れた。首に雪比奈の手刀を受けて気絶したからだ。気絶したリリィの体を雪比奈は支え、木材のように担ぎ上げた。
「味方を気絶させた……!?」
「これ以上、戦う気はないんだろう」
雪比奈の行動に戸惑う桜。対して、優は冷静にその行動の意味を理解した。
「あいつ……めっちゃ強いわ」
遊騎が雪比奈を見ながら呟いた。雪比奈は振り返ることなく、リリィを担いだまま歩き出した。
「待て……雪比奈。『捜シ者』はどこにいる……!? あいつはなにをしようとしている……!」
「大神……。お前が『コード:ブレイカー』などに成り下がるとはな。オレたちの邪魔はするな。次に会った時はオレがお前を殺す」
「…………」
いまだリリィの毒が抜けない大神は、この場から立ち去る雪比奈の背中を睨みつけることしかできなかった。
CODE:NOTE
Page:6 『コード:07』
歴代の『コード:ブレイカー』には存在しないナンバー。現『コード:07』である夜原 優が“エデン”に頼み込み、その姿勢を認めた藤原総理が特別に用意したナンバーである。しかし、特別に用意された本来なら存在しないナンバーなので他の『コード:ブレイカー』とは扱いが異なる。『コード:ブレイカー』はナンバー保有者が亡くなると下のナンバーの者を昇格させるが、優は昇格の対象にはならない。彼は死ぬまで末尾である『コード:07』だということ。また、彼が死ねば『コード:07』というナンバーも無くなるため、『コード:07』を名乗れるのは彼だけだと言える。
※作者の主観による簡略化
ほとんど形だけのナンバー。また、この設定は二次創作であり、原作の設定とは一切関係ありません(笑)