今回はかなり短めです。
その分、中身が詰まってる……とは断言できません(泣)
本日は3月14日。ホワイトデーである。
「で、大神。父上と母上へのお返しは決めたのか?」
「無理矢理連れてきたと思ったら……。まったく」
大神と桜がいるのは喫茶店。桜は大神を無理矢理そこに連れ出してきたのだ。それというのも……
「だからお返しだ。よいか? 相手が喜ぶ物を送るのが一番だぞ。相談に乗るから早く決めるのだ」
ホワイトデーのお返しがあるからだった。バレンタインの日、桜が渡したのはあくまでユキが作ったチョコと剛徳が書いた手紙なので、大神は二人にお返しをする必要があるということでこうなったのだ。
「ハァ……。とりあえず注文しましょう」
「おお、そうだな」
大神の話題を逸らすための提案に桜は簡単に応じた。メニューに載った料理の写真を見て目を輝かせた桜だったが、すぐに表情が曇った。
「ここのハンバーグは絶品なのだ! コーヒーはもちろんケーキやフロートスパゲッティも! ……だが、今日はお小遣いがピンチなのだ」
「なんでそんなに食べたいものが……あ」
言葉の途中で大神はハッとした。そして、目を瞑って言った。
「……食べたいだけ食べるといいです。今日はおごりますから」
「本当か! 相談には乗ってみるものだな!」
大神の言葉で桜は再び目を輝かせた。そして、意気揚々と店員を呼んだ。
「うむ。では、コレとアレと……」
「オレはコレと……って、冷てぇ!」
「ここは禁煙席です」
いつの間にか大神の隣に座って煙草をふかす刻に、大神はテーブルにあった水をかけて煙草を消した。刻はもちろんびしょ濡れである。
「刻君。いつの間に」
桜も気付いたようで少し驚いていた。刻は二、三回頭を振って水気を飛ばすと大神を見た。
「大神さ。ホワイトデーのお返しなら、執事かホストになってユキちゃんに心よりのご奉仕しろよ。って、イテテテテ!」
黒い笑顔を浮かべて刻の両頬を引っ張る大神。すると、桜がポンと手を叩いた。
「刻君の言う通りだぞ、大神。ご奉仕だ。『旦那様、奥様。ご用件はこの大神にお申しつけくだせえ』」
「桜小路さん。それは
その後、大神の手から解放された刻は近くのカウンター席に座って店員から借りたタオルで髪を拭いていた。
「そういえば、刻君はお返しに何をあげたのだ?」
「オレ? 決まってんジャン」
そう言うと、刻はシャツを少しめくり自分の腹筋をあらわにして微笑を浮かべた。
「オレを……ア・ゲ・ル」
「大神。スープも頼んでよいか?」
「どうぞ」
「聞けヨ!」
そんなやり取りをしていると、彼らのよく知る人物が来店してきた。
「なんだ。いたのか」
「夜原先輩」
入ってきたのは優だった。優は桜たちに気付くと、刻の隣のカウンター席に座った。
「そういえば夜原先輩。ホワイトデーのお返しは何にしたんですか?」
「人数が多かったからな。全員クッキーだ。一応、手作りな」
「……女性が苦手なのによく渡せましたね」
「そこは工夫した。貰った時に目を合わせないように顔を見て顔を覚えて、教師に『生徒会で使う』と言って全生徒の顔写真付きの名簿を借りた。そして、自分の記憶と照らし合わせて一致したやつの住所をメモして朝のうちに家のポストとかに置いてきた」
「いや、それ軽く職権乱用! てか、くれた相手の顔を全部覚えるとかありえねーだロ!」
隣のカウンター席にいる刻が瞬時にツッコんだ。すると、優は平然と答えた。
「ばれなきゃいい。それに、記憶に関してはオレの異能を使えば簡単だ」
「やっぱり使ったのかヨ! バレンタインデーの時といい異能の無駄遣いしすぎだロ!」
優が刻のツッコミを受けていると、大神が尋ねた。
「しかし、人数が多いからポストに入れるだけでも大変じゃないんですか。それに、家に行けば顔を合わせる可能性もありますよね?」
「問題ない。朝と言ってもやったのは午前1時からだ。1時から異能で脚力を強化して回っていったら1時間後の2時には全員に渡し終わった」
「だから! 異能の無駄遣いすんナ! あと午前1時は朝じゃねー! 深夜だ!」
「お店でそんな大声を出すとは。おしおきしますよ? 刻君」
「ドワア!?」
いつの間にか背後にいた平家に驚いた刻は、思わず席から落ちそうになった。平家の手には、明らかに束縛を意識した巻き方がされた箱があった。
「平家先輩。先輩は藤原先輩にお返しですよね。何をお返しするんですか?」
「キャンディーですよ」
「……わりと普通ですね」
大神の言葉に平家は目を細めた。そして、制服のボタンを一つずつ外しながら言った。
「ただのキャンディーではありません。スーパー・スウィーティ―・シースルー・キャンディーですよ」
「やめろー!! ねーちゃんに何する気だ! このド変態!」
「悪い子です」
「ギャアアアア!!」
顔を真っ赤にして平家を止める刻だったが、すぐに平家の光るムチに拘束された。
そんな彼らの様子を一人のウェイトレスが店内にある植物の陰から見ていた。
「マイ・マスター……。まずは桜小路さんにお返ししないといけないのでは……」
神田だった。どうやら大神が桜にお返しをちゃんとするのか気になっているらしい。おそらく、そのためだけにウェイトレスとして侵入したのだろう。神田の後ろでは1-Bの男子メンバーが顔を真っ赤にしていた。それというのも神田が来ているウェイトレスの服は胸部分がだいぶ開いており、丈も短くほとんど足を出しているからだった。
「いやあ。本当に美味だなあ」
そんなことに気付くこともなく、桜は料理をおいしそうに食べていた。ちなみに、大神はコーヒーのみだ。
「なら、もう一つ頼んだらどうです?」
「いいのか!? しかし、大神。なぜ相談に乗っただけでこんなに気前よくおごってくれるのだ?」
すると、大神は少し固まり、桜からスッと視線を外した。
「別にどうだっていいでしょう。あなたは黙って好きなものを、好きなだけ食べていればいいんです」
「あ……! まさか、ここのおごりって……」
大神の言葉を聞いて、神田は理解した。この喫茶店でのおごりが、大神から桜へのお返しなのだということを。
「そうか? よくわからんが、ありがたく頂戴するぞ」
当の本人である桜はわかっていないようだったが大神としてはどうでもいいのだろう。平然とコーヒーを口にした。
一方、平家に呼ばれて喫茶店に来た寧々音は平家ご自慢『スーパー・スウィーティ―・シースルー・キャンディー』を堪能していた。
「まーくん、まーくん。すけすけなの~」
「今度はイチゴ味です」
「お~」
「……副生徒会長。オレの頭と体にくっつけるのはやめてもらえませんか」
ちなみに『スーパー・スウィーティ―・シースルー・キャンディー』とは、お祭りの屋台でよく見かけるアレである。
「『スーパー・スウィーティ―・シースルー・キャンディー』って綿あめかヨ!」
ちなみに、同時刻の桜小路家には大神からのお返しが宅配便で届けられていた。
『ユキ様へ』と書かれた真っ赤なバラの花束。
「きゅんきゅんきゅ~ん」
そして、『剛徳様へ』と書かれた真っ白なアレ。
「菊の……花……!」
短かったですがホワイトデーでした。
このネタはキャラが一通り出てきたらもう一回やってみたいと思いながら書きました。
さて、次回からは原作ではないオリジナルの話しで番外篇をやっていきたいと思います。
テーマとしては「人見と『コード:ブレイカー』たちとの過去」です。
妄想全開でお送りいたします。