年内投稿を目指しましたが……残念無念
相変わらずの投稿スピードで申し訳ないです
さて、今回は新年一発目にして……『エンペラー』復活篇最終回!
最初に言っておく……優はぜーんーぜんー…………出ない!(笑)
オリキャラ不在ですが、名前くらいは出てくるので忘れたげないでください……
それでは、どうぞ!
大神と春人の闘いが終わり、春人から今回の依頼についての真実が語られる数分前……『渋谷荘』では驚くべき事態が起きていた。
それも、並大抵のことではない。なぜなら……
「ったく……将臣のバーカ! 私の弟いじめるなって、何回も言ったでしょーが!」
「ね、
かつて瘢痕の『Re-CODE』によって刻の目の前で命を奪われ、もう二度と会えるはずがない姉……寧々音が目の前で生きており、平家に悪態をついている。
いや、正確に言えば藤原寧々音という一人の少女の
しかし、現実はどうだろう。今まさに刻の目の前で喋っているのは、紛れもなく『コード:ブレイカー』だった時の寧々音の人格。今あるべき彼女だったら平家のことを「まーくん」と呼ぶし、間違ってもこんな強気な口調で悪態をついたりしない。
さっぱり現状が理解できない刻に対し、平家は刻から奪った煙草を咥えたまま平然と寧々音と向かい合った。
「おや、手厳しいですね。寧々音、これでも私はとても大切に彼のことを見守っているのですよ?」
「ハッ、どうだかね……。っていうか、いい加減煙たいのよ!」
かつて共に『コード:ブレイカー』として活動してきた旧知の仲であることを感じさせるやり取りをしつつも、寧々音は平家が咥えている煙草を勢いよく没収する。そして華麗に煙草の向きを変えると、火が点いている方を平家へと向けた。
「あんたは昔から
「……あなたには敵いませんね」
──ジュウ
火を向けられながら変わらず悪態をつかれる平家だったが、特に気にする様子も無く彼女に向かって掌を出す。すると、寧々音は何の躊躇もなく平家の掌に煙草の火を押しつけ、彼の手でその火を消した。
まるでいつものことのように接する二人に対し、刻は完全に置いてけぼりをくらっていた。
(ど、どーなってんだ……? 今の
警戒しつつ、まじまじと寧々音を見る刻。普段から彼女が着ている輝望高校の制服ではなく、黒を基調としたへそ出しのセーラー服。そして学校では常にかけていた眼鏡も無く、学校での彼女しか知らない者が見たらとてもじゃないが寧々音とは信じられないだろう。
一体何が起こっているのか、刻が混乱していると寧々音は軽快な足取りで刻に近づいていき……
「久しぶり」
「のわっ!」
刻の胸倉を掴み、ぐっと自身の顔に近づけて刻の額と自身の額をコツンと合わせた。先ほどよりもより近くで見る寧々音の顔……それは見れば見るほど偽者とは思えないし、額から感じる彼女の体温がしっかりと現実に彼女が存在していることを感じさせた。
「すっかり背も伸びてイイ男に育って……。ねーちゃん、嬉しいよ」
「ほ、本当に……
「当たり前でしょ? あんたは私の可愛い弟なんだから」
「け、けど
寧々音の存在を確かにその身に感じながらも、やはり信じきれない刻。無理もない。いくら一般とは外れた世界にいる『コード:ブレイカー』といえども、死んだはずの人間が生きているなんて超常現象を易々と信じられるはずもない。
なぜ、どうして、なにがあって……どれだけ考えても答えが出ない刻は、当人である寧々音に尋ねようとする。平家も事情を知っていそうな雰囲気だったが、彼の性格を考えると素直に教えるとは思えない。
しかし……
「悪いけど、詳しく説明してる時間はないの。……今回は、
「
「……ごめんね。いつか…………また、必ず────」
寧々音の復活にパンドラ
「ま、待ってk──!」
──キィン!
「ッ!?」
なんとか呼び止めようとした時、寧々音から光が放たれる。突然のことに思わず目を瞑った刻が次に見たのは……身体から力が抜けて座り込む寧々音の姿だった。そして……
「……あれ? まーくんとマグネスなのー」
(も、戻ってる……!?)
すぐに目を開いた寧々音は、完全に今の彼女に戻っていた。その雰囲気も、先ほどまでの彼女のような力強さは感じられず、おっとりとした雰囲気が漂っていた。
「んー……なんかお腹がスースーするの。あれ? メガネがないのー」
「……藤原さん、眼鏡はこちらにありますよ」
「やったー。ありがとなの、まーくん。……まーくん?」
自分の格好がいつもと違うことに気付き、寧々音は腹部をさすりながらキョロキョロと辺りを見渡す。すると、平家がどこからか彼女がいつもかけている眼鏡を差し出した。戻ったからか、彼女に対する呼び方も、「寧々音」から「藤原さん」へと意図して変えて。
しかし、意図せずして変わった部分もあった。
「まーくん……どうしてそんなに悲しそうな顔してるの?」
「……なんでもありませんよ、藤原さん」
声色だけ聞けば普段と変わりない様子だったが、その表情はどこか悲しそうに曇っていた。なぜ彼がこんな顔をしているのか……それは彼にしかわからないが、寧々音は「いーこ、いーこなの」と言って優しく平家の頭を撫で始めた。
「オイ、平家! 一体どうなってんだヨ! 説明しろ!」
何があったか聞き出そうとした寧々音も消えてしまい、彼女が一時的にとはいえ戻った原因を知っているであろう人物は平家一人となった。本意ではなかったが、刻はなんとか彼から真実を聞き出そうと声を荒げた。もちろん、寧々音もいるのである程度ボリュームは下げているが。
だが、はたして平家が素直に教えるものか……と考えていると、意外な言葉が返ってきた。
「……教えるのは構いません。しかし、一つだけ条件があります」
「はぁ……?」
意外にもすぐに「教える」と言う平家。思わず面食らってしまった刻だったが、平家が発した「条件」という言葉に首を傾げる。
「“エデン”からのある指令をあなたに受けて頂きたい」
「指令って……“
「……いいえ。
『狩り』ですよ。ある獲物の……ね」
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──
そして時は戻り、大神と春人の決着がついた頃……春人は大神と桜に今回の依頼についての真実を語り始めた。
「大神……今回オレに貴様の左腕を狙うよう依頼した者、そしてオレに異能を与えたのはパンドラ
「パ、パンドラ
「生憎、依頼主とは直接顔を合わせたわけではない故、その時雨という者かどうかはわからぬが……奴は貴様のことをよく知っているようじゃったぞ、大神」
「…………」
春人が語った依頼主の正体は、パンドラ
春人の口から語られた真実に桜は驚くが、対して大神はいたって冷静だった。
そして、次に春人は自らに与えられた異能について話し始めた。
「そしてオレに与えられた異能じゃが……実際のところは催眠状態にあったため詳しい方法はオレにもわからん。だが、依頼主の話だとパンドラ
「パンドラ
続けざまの真実に、桜は大きく目を見開く。先の闘いで、パンドラ
(あんな小さな箱にそんな力が……? まさか、パンドラ
掌に収まるほど、白くて小さな箱。だが、渋谷はそんな小さな箱を命懸けで守ろうとしていた。それは『捜シ者』に異能を戻さぬためかと桜は考えていたが、春人の話から察するにパンドラ
「……オレが知るのはここまでじゃ」
「……そうか」
「…………のう、大神」
全てを話し終えた春人は、真っ直ぐ大神を見る。そして、意を決したように次の言葉を口にした。
「オレを燃え散らすがいい。元々、許しを乞うつもりは毛頭ないからな」
「は、春人!?」
まさかの言葉に、桜は先ほど語られた真実を知った時以上に驚く。和樹たちという守るべき存在があるにもかかわらず、大神に自分を殺すよう言ったのだ。
「オォ!? なんだよコイツ、面白ぇじゃねぇか! どうすんだよ、零!」
「…………」
大神の左手に『青い炎』の火の玉が宿り、『エンペラー』がにやにや笑いだす。ふざけているとしか思えない様子の『エンペラー』に対し、大神は表情を一切変えずに春人を見ていた。
「駄目だ、春人! 死んで何になるというのだ! 死は何も生まん!」
桜はなんとか春人を説得しようと、力強く春人の両肩を掴む。彼女はこれまでの闘いで知っている。死というものがどれだけ残酷で、どれだけ虚しいものなのか……を。
「たとえ己の罪を認め悔やんでも……死はなんの償いにもなりはしない! どんなに悪人だとしても、死は虚しさしか生まないのだ! そうだろう、大神!」
必死に言葉をぶつけながら、桜は平家たちが言っていた言葉を思い出していた。
──……人が死んだ後ってのは、無駄だとわかっていても色々と考えちまうのサ。
──たとえ相手がどんな“悪”だろうと……報復という名の死には虚しさしか残らない。何事でも決して埋めることなどできない虚しさが。……もっとも、我々『コード:ブレイカー』の手は、そんな虚しさしか生み出すことはできませんがね。
これまで数えきれないほどの“悪”をその手で裁いてきた『コード:ブレイカー』たち。そんな彼らだからこそ、死の後に遺るのがどんなものかよく知っていた。そして、それは彼らと行動を共にしてきた桜も痛感していたことでもあった。だからこそ、彼女はどうしても春人が死ぬことを止めたかった。
「だから春人! 償うんだったらもっと別の形で償うべきだ!」
「……だからといって、オレが傷つけてきた者たちへの痛みをなかったことにはできん」
しかし、春人の決意は揺るがない。始末屋として多くの者を傷つけてきた彼の罪は計り知れない。そして、それは当人である彼自身がよくわかっていることだった。
だからこそ、自分には死という罰が相応しいと考えているのだろう。
「春──!」
「桜小路」
春人の説得を諦めようとしない桜に対し、春人はそれを遮るように右手を彼女の前に出して彼女の言葉を制した。そして、少し離れたところに視線を送る。
そこには、無邪気な笑顔で遊ぶ和樹たちの姿があった。
「ぬしがあの時、オレを生かすなどという余計なことをしてくれたおかげじゃ。こんな……こんな下らん気持ちを知ることができたのは。……すまんが、じゃり共を頼む」
「ッ──!」
和樹たちを見つめながら、フッと微笑む春人。それはどこか満ち足りたようで、それでもどこか残念なようで……今まで春人が大神たちの前で見せたことのない顔だった。
その言葉を最後に、大神が春人との距離を詰める。そして、『エンペラー』が消えた左手を静かに自らの胸の高さまで上げた。
「……春人、命の罪は命でしか償えない。お前の望み通り……裁いてやる」
そして、大神は左手を春人の肩へと置く。次の瞬間には……左手に『青い炎』が灯った。
「目には目を 歯には歯を 悪には悪を」
「っぐ! ぐああああああ!!」
「や、やめろぉぉぉぉ!!」
──フッ
「な……!?」
大神の『青い炎』が春人の全身を包み込んだ……かに見えたが、その『青い炎』は一瞬で消え去った。大神が左手をグッと握りしめたのと同時に。
全身を襲っていた痛みが突如として消えたことに春人が戸惑っていると、大神は春人の胸を指差した。
「──『
「オレの、体内で……」
大神の言葉を受け、春人が自身の胸に意識を向けると僅かながら焼けるような痛みが確かにあった。死ぬ間で燃え続けるということはこの痛みが一生続くということだが、決して日常生活に支障をきたすほどの痛みではない。
「言った通りだ。命の罪は命でしか償えない。だが、お前のような“
「……ッ!」
大神のその言葉を聞き、桜の頭の中には『捜シ者』が最期に遺した言葉が浮かんだ。
──お前に死など甘すぎる。苦しんで生き抜きな。
「大神、お前……」
「チッ、オレ様と共に生まれた『火種』をもう自在に操りやがって。しっかし、随分とイキな裁きをするようになったじゃねーか」
大神が下した裁き……それは『捜シ者』が大神へと遺した言葉を同じだった。今までの大神だったら、おそらく何の躊躇もなく春人を燃え散らしていただろう。しかし、『捜シ者』との闘い……『捜シ者』の死によって、大神も少しずつ変わっていっているのだと桜は感じていた。
だが、もちろん春人はそんなことは知らない。それでも大神が以前とは違うことは感じた春人は、どこか疑うような視線を大神に向ける。
「オレを……生かすのか? 何があったのか知らんが、随分と変わったものだな。じゃが、こんなことしたところで──」
「変わってねぇよ」
「なに……?」
春人の言葉を遮るように、大神はそう言い放つ。そして、フッと笑いながら続けた。
「オレは“悪”……いや、“極悪”だ。地獄に堕ちるその時まで、この世の“悪”を燃え散らす。……一人残らずな」
覚悟の証のように、静かにそう告げる大神。そして、彼は“悪”を燃え散らすための左手に手袋をして──
「ぬん」
──ガシッ
「……は?」
──ぶんぶん
「……ちょっと」
──ぶんぶんぶんぶん
手袋をしようと思ったら、桜が両手を掴んでそれを止めた。そして、なぜかそのまま左手をぶんぶんと上下に動かし始めた。振りほどこうとしたが、桜の馬鹿力の前に大神は成す術が無かった。ちなみに、桜の握力は51kgである。
「な、何するんですか……。手袋を……」
「へへへへへへ」
振りほどけないなら直接言おうと桜に声をかける大神だったが、当の桜はにやにやと笑いながら普段なら絶対しないであろう不気味な笑い方をしていた。
しかし、そんな不気味な光景は束の間。心から安心したような穏やかな表情を浮かべた桜は、掴んだ大神の左手に自身の頬を静かに当てた。
「初めて『ハグ』した時から伝わっていたぞ。大神……お前の手は確かに血塗られてはいるが、やはりとてもあたたかい。
──大好きだ」
「……誰が何を好きだって?」
「む? 何がなのだ?」
桜らしい、純粋な気持ちのこもった「大好き」という言葉。それに対して、『エンペラー』は
「…………」
そんな桜たちの様子を見ていた春人。今までだったらこんなやり取りは「茶番」と言っていたかもしれないが、今は違う。彼らのやり取りを見て、春人は一人静かに穏やかな笑みを浮かべ……
(この娘にして、この男あり……ということか。何が“正義”で、何が“悪”かわからんこの世界だが……貴様なら辿り着けるかもしれんな。
その先の真実に────)
「──困った……困ったものだ」
──ドッ!!
「がっ!?」
「は、春人!?」
「ぐ……う……!」
突然、春人の背後から先の尖った鉄パイプが投げつけられ、的確に春人の左胸に突き刺さった。幸いにも心臓に直撃はしなかったらしく、春人は痛みに耐えるように歯を食いしばりつつ膝を突いた。
桜と大神はすぐさま春人に駆け寄り、そのまま背後の方を見やる。そして、そこにいたのは……
「この程度も避けられんとは……所詮は“
「し、時雨!」
所有権を主張するかのようにその手にパンドラ
「左腕も奪えぬ“
春人に突き刺さったものと同じ鉄パイプを持って座るフードを被り肩に小鳥を乗せた謎の人物、さらに彼らの奥には同じようにフードを被った者が二人……三人とも顔は見えないが、彼らからは明らかな敵意を感じた。
「よくも……こんな、卑劣な……! 時雨と一緒ということは、お前たちが依頼主か!?」
「…………」
春人の身体を支えつつ、時雨たちに怒りを爆発させる桜。隣では大神がいつでも動けるように鋭い視線を時雨たちに向けていた。
しかし、当の時雨たちは何も答えようとはせず、それが桜の怒りをより爆発させた。
「この……! なんとか言ったら──!」
「──やめや。『にゃんまる』、そこまでにしとき」
「遊騎君! それに刻君も!」
桜たちと時雨たちの間……そこに現れた顔を見て桜の表情は明るいものへと変わる。当然だ。遊騎と刻……これまでの闘いを共に乗り越えてきた者たちだったのだから。
「よかった……。二人とも、助けに来てくれたのだな。けど二人とも、気を付けるのだ。奇襲とはいえ……奴らは春人に──」
「わかっとる。
全部……
そう言って、二人は歩き始める。
彼らが……共に闘うべき者たちの方へ。
「……え?」
そう……
「ふ、二人とも……? なにを、してるのだ……? 危険だぞ……早く、こっちへ──」
「行けねーヨ」
「え……?」
「『にゃんまる』……オレらもう、
“エデン”は……オレら『コード:ブレイカー』にこいつらと組んで、
「な、にを…………」
遊騎の言葉を、頭はすぐに理解しようとはしなかった。だが、目に見える現実……時雨たちと並んで立つ遊騎と刻の姿を見て、身体は自然と震えていた。
「なにを……言っているのだ……? う、嘘だろ……? そうに決まって──」
「『コード:エンペラー』が復活した……その時点で、こうなることは決まってたらしいわ。言っとくけど、ここにはおらんだけで……
「な、あ……そ、そん…………」
嘘だ、という言葉は出てこなかった。出したい、と思っても身体がそれを拒否するかのように口が上手く動かない。それだけ遊騎の言葉と態度は真剣そのもので……向けられる
「堪忍な、
「…………」
こうして、新たな闘いの幕が開く。
だが、それは今までの闘いよりもはるかに厳しく、凄惨な闘い。
背中を任せる者も、共に闘う者も誰一人としていない……孤独な闘い。
敵は…………『コード:ブレイカー』。
next chapter────『青い炎狩り』篇
というわけで、『エンペラー』復活篇終了となります!
そして次章は『青い炎狩り』篇となりますが……その前に例の如く、番外篇を挟みます!
ただでさえ遅いんだからさっさと本編進めろ……そんな声が聞こえてきますが、番外篇で息抜きしないとやってられないのです……
ですが次の番外篇は今までとは少し違います!
以前、投稿話数100話目を迎えた時に後書きにも書きましたものを実行致します……!
そう、クロスオーバー!
正直、上手く書ける気は全くしないし完全に自己満足です
お目汚しかもしれませんが、ぜひお付き合いいただければと思います
それではまた次回!!