色々と無茶苦茶な展開や設定があると思いますが、どうかスルーしてください。
ちなみに、今回出てくるオリキャラはチートとかではないです。
code:00 支配
人は常に支配されている。
子どもならば親に、学生ならば学校に、社会人ならば会社に、そして法に。
しかし、そんなものは人間が生み出した支配。その気になれば、いつでもその支配から逃れることは出来る。ほとんどの場合、犯罪者という汚名を背負うことになるが。
違う。そんなものは支配ではない。絶対に逃れることは出来ないから支配なのだ。
我々が絶対に逃げられない支配。それは我々の身近に、本当に身近に存在する。
それは……脳だ。
「……任務完了」
シャンデリアや天蓋付きのベッドなど、高級そうな装飾がなされた部屋に無機質な声が響いた。いや、高級そうな装飾がなされた部屋というのは間違いだった。なぜなら、その部屋にあるほとんどの物が汚れてしまっていて、装飾品としての価値が無いに等しいからだ。血という紅い液体によって。
「しかし、海外に逃げるとはな。そんなもの、ただの悪あがきだというのに」
無機質な声の主が再び無機質な声を発した。今、この部屋にいる人間は彼だけ。あとは、かつて人間だったもの、頭が潰れた体があるだけだ。唯一の人間である彼は少年だった。短く黒い髪。血で所々汚れている黒い学ランのような服。どこからどう見ても、ただの学生だった。しかし、その顔……というよりその眼は、明らかに学生のそれではなかった。冷たく、感情など無いかのような眼だった。
少年は顔を拭った。そして、ズボンのポケットから携帯電話を取り出した。最新のタッチ式のタイプだ。慣れた手つきでボタンを押すと、少年は携帯電話を耳に当てた。それからすぐ、携帯電話から電話特有の少々電子音染みた声がした。
『はい』
「任務は完了しました。偽装工作を行った後、空港に向かいます」
『了解しました』
ひどく端的なやり取りだった。しかし、少年は特に気にしていないようだった。
「では、失礼します」
少年がそう言って電話を切ろうとした。すると、制止の声が聞こえた。
『お待ちください。仕事のお話があります』
「仕事?」
『はい。日本に戻り次第、行ってもらいます。それは……』
この数十分後。とある国のとある高級ホテルの一室が木端微塵に破壊されるという事故が起こったという速報がニュースで流れた。
『快適な空の旅をお楽しみください』
そういう意味の外国語が飛行機の機内に流れた。それを聞くと、乗客たちは音楽を聴いたり窓から見える景色を楽しむなど、それぞれ楽しんでいた。
その中に一人、頬杖をついて窓の外を見る少年がいた。しわ一つ無い学ランのような服を着て、二つ並んだ席の窓側に座っていた。
少年は窓の外を見ながら、ポツリとつぶやいた。
「珍種……か」