汚い艦娘を見つけたので虐待することにした   作:konpeitou

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オータムクラウド先生のドリームワールド。
妄想の世界であれば、なんでも許されるのであった……。


第三十八話 秋雲と芸術の秋

「クックック、視察官よォ。もう逃げられねえぜぇ?」

 

「くっ……!」

 

 男が女を壁際に追い込んだ。

 壁に手を当て、逃げ道を塞ぐ。

 

 体格の良い男に接近され、顔を赤らめる女。

 

「ぼ、僕をどうする気だっ!?」

 

「そりゃあ、こうするに決まってんだろ?」

 

 男はそういうと、女の顎に手を当てた。

 

「なっ、ば、馬鹿!」

 

「クク、煩いのはこの口かァ?」

 

 そういうと男は女の唇に指をあてる。

 思わずその手を振り払おうとする女であったが……。

 

「おっと、そうはさせねえ」

 

「あっ!?」

 

 男は女の両手を一纏めにすると、彼女の頭上で押さえつける。

 壁に抑えられ、抵抗することも出来なくなった女。

 

 出来ることと言えば、赤らめた顔、潤んだ瞳を隠すためにうつむくのみ。

 しかし、男はそれさえも許さない。

 

「ホラ、前見ろって」

 

「あうっ」

 

 空いた右手で、再び顎を持ち上げる。

 キッとにらみつける女だったが、それに気迫は無い。

 

 ……無言が続く。

 

「……僕なんて、魅力無いだろう」

 

「クク、何故そう思う?」

 

「だ、だって、初めて会った時、僕の事を男だって」

 

「そりゃあしょうがねえだろ。だが、『今』は違うぜぇ?」

 

 男はそう言うと、右手を女の胸元へ運ぶ。

 

「あっ、駄目……」

 

「駄目じゃねえだろ。こんな立派なモン隠してやがって」

 

 男の無骨な手が、ゆっくり、しかし確実に女へ迫っていく。

 そして……。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ってのはどうよ?」

 

「なんで司令官様と視察官さんなの?」

 

「いやー友達だと思っていた奴がって、いい感じの展開じゃん」

 

 秋雲が描いてる漫画を見せてもらっています、巻雲です!

 こういう展開、最初は恥ずかしかったけどもう見慣れました。

 

 でも、絶対に司令官様はこんなことしなさそうだなぁ。

 まったく予想ができないというか、そもそも想像すらできないというか。

 

「他にも色々あるのよー、ほらほら」

 

「どうせ描くなら夕雲姉さん出してよね」

 

 人の趣味にはとやかく言えないけど。

 こうして一緒に見ている時点で、共犯みたいなものだし。

 

 こんなところ夕雲姉さんに見られたら終わりです!

 

 

「視察官さんって巨乳じゃん?」

 

「凄いよね。何食べたらあんなになるんだろ」

 

「あー、リアリティが欲しいなぁ。実際に揉んでさー」

 

 秋雲が無茶を言う。

 そんなことしたら怒られるだけじゃすまなそう。

 

「愛宕さんあたりで我慢しとこうよ」

 

「駄目だよぉ。リアリティが大切なんだよ、漫画にはさぁ!」

 

 秋雲はちょっと変なこだわりがある。

 そのせいで酷い目にあってるけど、それでもブレるつもりはないらしい。

 

 そういうところは少しだけ尊敬するかも。

 

「あー揉み拉きてぇー。ワシワシしてぇー」

 

「秋雲……」

 

 もう寝た方がいいんじゃないかな。

 

「えーい、よっしゃ次だ! 読んでみ巻雲ちゃん!」

 

 テンションのおかしい秋雲に手渡された紙に目をやる。

 さて、次はどんな妄想世界が広がっているのか……。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ごめんなさい提督、私、少し酔ってしまったみたいです……」

 

「鳳翔……」

 

 男にしなだれかかる女。

 その頬を染めるのは、アルコールだけが理由だろうか。

 それとも……。

 

「私は、艦娘なんです。人間とは決して」

 

「そんなもん関係ねぇだろ」

 

 目に涙を溜める女の、頬にそっと手を当てる男。

 そして目元を優しく拭う。

 

「俺は、お前が欲しい。身体も、心も」

 

「て、提督……っ!」

 

 見つめ合う二人。

 近づく顔の距離。

 

「鳳翔……」

 

「提督……」

 

 自然と目を閉じ、何かを期待するかのように女は口をすぼめた。

 その桜の如き桃色の唇に、誘われるように男は向かっていく。

 

 そして、男は女にそっと口づけを……。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「に、似合わない……」

 

「あ、やっぱり?」

 

 あの司令官様が、そんな雰囲気を出すとは思えなさすぎる!

 少女漫画チックだし、湿っぽいし、官能的だし。

 

 そもそもあの人にこういうのは無理があるんじゃないかなぁ。

 

「鳳翔さんといえばこういう雰囲気じゃん? 行けると思ったんだけどねぇ」

 

「相手が相手だからね」

 

「うーん、やっぱ提督を題材にしたのが間違いだったかな」

 

 そもそもナマモノは止めたほうが良いと思うんだけど。

 無難に漫画とかアニメのキャラにしとこうよ……。

 

 

「じゃあ次はこれね!」

 

「まだ有るの?」

 

 どうせなら私と夕雲姉さんのやつを……。

 

 

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「オラ! 大人しくしやがりなぁ!」

 

「ヒッ……ていとく、やめて!」

 

 男が少女を無理やり押し倒す。

 力の差は歴然。

 

 男の豪腕が、少女の細腕をギリギリと締め付けた。

 

「山風ぇ、お前は前々から狙ってたんだよ」

 

「なんで、どうして!? 信じてた、のに……!」

 

 涙を流しながら訴える少女。

 しかし、男はそれすらも欲望のスパイスとしてしまう。

 

「今までのは全部演技なんだよォ! 残念だったな!」

 

「そ、そんなぁ……う、うああ……!」

 

 少女は絶望し、男はそれに悦ぶ。 

 助けなどこない空間。

 

「ほらぁ、その可愛いお口をあけなぁ!」

 

「い、嫌! やだぁ!!」

 

 哀れな少女は、信じていたものに裏切られ。

 その身体を傷つけられようとしている。

 

 彼女はもう二度と……。

 人を信じることなど出来なくなってしまったのだった……。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ちょっと! 山風ちゃん可哀想でしょ!」

 

「はい……反省しております」

 

「なにこれ!? やって良いことと悪いことがあるよ!」

 

「はい、私も正直やりすぎたと思っております」

 

 なんであの娘を題材に選んだ!?

 もっと、こう、やりようがあったでしょ!?

 

 せめてイチャラブ親子プレイものにしろや!!

 

 

「……てかさー、秋雲」

 

「ん?」

 

「なんで提督ばっかなの? モブの禿げたおじさんでも良くない?」

 

「あ!? あ、そ、それはさぁー……」

 

 急に目が泳ぎ出した秋雲。

 どうしたんだろ?

 

 汚いおっさんは書きたくないのかな。

 

 

「よー。邪魔するぜぇー!」

 

「おわぁ!? て、提督!?」

 

「あ、司令官様」

 

 ここ、夕雲型の部屋なんですけど、司令官様が入ってきた。

 ノックからの入室スピードが早すぎる。

 

 でも、一体何の用事だろう?

 

「おい巻雲。お前今日飛龍と約束あったんじゃねえのか?」

 

「……あ! そうでした、忘れてました!」

 

 そうだった!

 今日は午後から飛龍さんと一緒にお茶会の予定だったんです!

 

 秋雲の漫画に夢中で、もうお昼過ぎじゃないですか!

 

「さっさと行ってやれよなー……ん? 秋雲、それ」

 

「なんでもない!! なんでもないよ提督ゥ!!」

 

 司令官様が秋雲の漫画を発見してしまったようです。

 こ、これってマズいのでは?

 

「何隠したんだよ。おい」

 

「なんでもないってば!」

 

 こ、これは。

 さっさと退散したほうがいいっぽいです!

 

「じゃあ秋雲、いってきまーす!」

 

「巻雲ちゃん!? 我を捨て置くか!!」

 

 

 どうにでもなれ!

 司令官様の追撃を誤魔化すんです!

 

 ……そういえば。

 秋雲が司令官様の絵ばっかり描いてる理由って。

 

 ふふーん?

 

 そういうことなんですかねぇ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「見せろよ―、見せろよ―」

 

「や、やめてってぇ!」

 

 秋雲の野郎、頑なに隠しやがって。

 そんなに俺に見られたらマズいもんなのか?

 

 俺の悪行を記録した機密文書かなにかか?

 

 クク……いや、待てよ?

 そうだな、良いこと考えたぜ。

 

 虐待は唐突に、だ!

 

「そうか、じゃあいいわ。無理に見ようとしてすまんな」

 

「あ、あれ? うん、いいけど……」

 

 いったん秋雲から距離を取る。

 別にもう、隠してるもんに興味はねえ。

 

 

 秋雲と言えば、絵を描くのが好きだったな。 

 であれば、隠してるもんもどうせそういうものだろう。

 

 俺を馬鹿にする落書きとかな!

 

 よって、それを逆手に取った手段を取らせてもらう!

 

「ああ、俺、秋雲にも用事があったんだよ」

 

「? なに?」

 

「『俺の似顔絵』を描いて貰おうかと思ってなぁ! クックック!」

 

「え!?」

 

 どうだ!

 散々バカにして、見下してきた相手からの突然の要求!

 その対象の目の前で、真面目に書かなきゃいけねえという恐怖!

 

 クク! 最高だなぁ。

 ま、それに俺様の最高な自画像がそろそろ一枚ほしいと思ってたところだしな。

 青葉にはもう写真撮らせたし。

 

 お前の罪悪感を、チクチクと刺激させてもらうぜ!

 

「い、いいの?」

 

「おう、勿論だ」

 

 いいの、なんて!

 わかりやすい嫌味!

 

 相変わらずだな、俺の艦娘よ!

 

「かっこよく、描いてくれよなぁ」

 

「あ、わ、分かった! ちょっと待ってて!」

 

 焦ってる焦ってる。

 動揺が出ちまってんぜ、秋雲先生よォ。

 

 

 …………。

 

 

 あの後。

 秋雲はたっぷり4時間はかけて似顔絵を描いた。

 わざと時間をかけて俺を苦しませようとするとはな。

 

 だが!

 一ミリたりとも動きはしなかったぞ!

 

 俺を舐めんな!

 

 

 それに、秋雲は息を荒げて顔も赤くしてやがったからなぁ。

 自分がバテてどうすんだっての、アホめ。

 

 だが、完成した絵だけは、認めてやるがな。

 俺の凶悪っぷりが表現された、いい絵だったぜ!

 

 




嬉しそうに、貰った絵を飾る提督がいたそうな。

提督LOVE秋雲はとてもいいものですよね。

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