汚い艦娘を見つけたので虐待することにした   作:konpeitou

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サマーシーズン到来!
夏を楽しむ虐待提督……。

視察官さんはまたいつの日か来ます。


第十七話 陽炎型と海水浴

 

 

「夏、だよなぁ」

 

「? どうしたんですか司令」

 

 司令が急に語りだしました。

 まぁ司令が唐突なのはいつものことですけど。

 

「ククク、雪風。今日は暑かっただろ?」

 

「今日も、でした! 最近やばいです!」

 

 司令の用意してくれた食塩と水を摂りながら嘆息します。

 雪風達は海上に出ること多いから、夏の日差しはキツいんです。

 

 艦娘は『そういうの』に強いといっても、限度があります。

 前任さんの頃は倒れる駆逐艦の子もいたほどです!

 

 司令はそういうのに配慮して艤装に日傘を付けてくれますし。

 こうして塩分と水分補給も注意喚起してくれます。

 

 本人曰く『道具の管理だ!』そうです。

 流石司令、いつも通りです!

 

「こんなに暑いと、いっちょ泳ぎたくなるだろ!?」

 

「うーん? ……涼しそうです!」

 

 いつも海に出てますけど、泳ぐってことはありません。

 潜水艦の子以外は。

 

「そうだろぉ。ククク、鎮守府海開き、虐待、遊ぶ、クーククク」

 

「あ、あの司令? 大丈夫ですか?」

 

 なんか司令、いつも以上に変じゃないですか?

 この連日の猛暑で、頭が更におかしくなっちゃったんですか!?

 

「よっしゃぁ! 決めたぜ雪風! 水着の準備をしろぉ!!」

 

「えぇ!? 水着ってなんですか! ちょっと、司令!」

 

 い、行っちゃった。

 何を思いついたんでしょう。

 

 まあ、いいです。

 司令のことだから、きっと『虐待』のことですよね。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「海だーっ!!」

 

「おーっ!!」

 

 艦娘共の声が、砂浜に駆け抜けていく。

 燦々と降りかかる真夏の陽光は、海に反射して目に突っ込んでくる。

 

 絶好の、海日和だぜぇ!

 

 この間は視察官が来て色々大変だったからなぁ。

 最近海域攻略も安定してきたし、今日は非番だ!

 

 ここは軍が管理するビーチ。

 一般人は立入禁止。

 

 邪魔するものは何も無し!

 

「行くぞ艦娘共ぉ! 俺に続けぇ!」

 

「きゃーっ♪」

 

 もう辛抱たまらねえ!

 俺はダッシュで砂浜を駆け、海にダイブした。

 準備運動もバッチリだからなぁ!

 

 俺が海水浴を『虐待』の場に選んだ理由、それは非常に単純だ。

 

 俺が遊びたいから!

 そして、クソ暑いからだ! 

 

 俺は季節の風物詩を大切にするタイプなんでなぁ。

 それに加えた虐待で、二重に夏を満喫してやろうって寸法よ!

 

 避暑できて、遊べて、虐待出来る。

 最高のプランだぜ!

 

「気持ちええわぁ。 司令はん、海って凄いんやねぇ……」

 

「いつも出撃してんだろうが! ほれほれ!」

 

「わぷっ!? もうっ、止めてーや!」

 

 ククク、今は楽しいだろうなぁ。

 だが、ここはもう俺の虐待フィールド。

 

 お前らはもうそこに足を踏み入れちまったんだぜ?

 

「なんか新鮮ね。いつもの水着じゃないからかしら」

 

「ねえねえねえ! ニムの水着、似合ってる?」

 

「おー、似合ってる似合ってる」

 

 潜水艦娘どもが着ているのは、いつものスク水じゃあねえ。

 今日の為に各自購入した、それぞれ異なるモンだ。

 

 ちなみにニムのは花柄の入ったオレンジのビキニだ。

 程よい肉付き、ハリのある肌、うーむこれは……。

 

 健康な様子で大変結構だなぁ!

 俺の道具たるもの、いつでも身体は丈夫にしとかねえとな!

 

 ちなみに、艦娘共には海水浴開催を知らせた時に、同時に水着を買わせた。

 クク、自然な流れで金を消費させることが出来たぜ!

 

「しれー! 競争しようよーっ!!」

 

「時津風か。いいぜぇ!」

 

 カモが来たなぁ!

 自ら俺に食われに来るとは、愚かなことだ!

 

「向こうのブイまで行って帰ってくる、それでいいな?」

 

「いいけど、しれー、もしかして勝てる気でいるの~?」

 

 クックック。

 当たり前だろ?

 

 俺を誰だと思ってやがる。

 お前らの、提督だぜ?

 

「天津風、スタートの合図頼んだ」

 

「え、わ、分かったわよ」

 

「ふふーん、私結構速いよー!」

 

 時津風よ。

 確かにお前は艦娘。

 そのパワーは見た目以上だ。

 

 一般的な成人男性であれば、勝利はねえかもな。

 

 だがな……!

 

「よーい……ドン!!」

 

 俺は虐待の化身!

 一般的なんて言葉、おばあちゃん家に置いてきちまったぜ!!

 

 

 …………。

 

 

「うえー!? しれー速すぎるよー!!」

 

「ふん、お前が遅すぎるんじゃないか? クックック」

 

 俺はかなりの差をつけて、時津風に勝利した。

 クックック……!

 

「アナタ、水泳選手かなにかだったの?」

 

「クク、泳ぎは得意、とだけ言っておくぜ」

 

 昔は川や池で泳ぎまくったからなぁ。

 ついたあだ名は『人間酸素魚雷』!

 

 人間に海で負けてさぞ悔しそうだなぁ時津風ぇ?

 俺を負かして見下そうなんて考え、読めてんだよなぁ!!

 

 

 悔しがる時津風を尻目に、俺は悠々と砂浜を歩いて行く。

 

 そして俺が次に目をつけたのは、砂で遊んでいた浜風と磯風だった。

 なにか城みたいなモンを作っている傍に近寄ってみる。

 

「おい、いいもん作ってんじゃねえか」

 

「あ、提督」

 

「司令、見てくれ。ノイシュバンシュタイン城だ」

 

 大層な名前の割には、しょぼい城だな。

 本物の威厳とか迫力なんてまるで出せてねぇ。

 

「俺も何か作るかな」

 

「提督がですか?」

 

 クク、浜風、俺を見くびるなよ?

 お前達より俺のが優れている事を思い知らせてやる。

 

 さぁて、それじゃあ俺の実力を見せつけるパート2と行きますかぁ!

 刮目せよ!

 

 

 …………。

 

 

「し、信じられん」

 

「鎮守府をミニチュアスケールで……!?」

 

 ふぅ。

 いい仕事したぜ。

 俺の芸術センスが爆発した、ミニ鎮守府。

 

 細部まで拘った至高のデザイン。

 製作時間三十分だぁ!!

 

「せめてこれくらいは作れるようになりなぁ! クックック!」

 

「待ってくれ司令、コツを教えてくれ!!」

 

「甘味処とか居酒屋まで再現してる!?」

 

 残念だったな。

 俺のパワーを見せつける『虐待』。

 お前らはどうあがいても勝てない実力差に絶望するんだなぁ!!

 

 

 お次はスイカ割りに勤しんでいる嵐と萩風、そして谷風だ。

 中々うまくいかないみてーだな。

 

「右だよ右ぃ!!」

 

「あー! ぜんぜん分かんねえよ!」

 

「嵐ったら……あ、司令」

 

「よぉ。俺も混ぜてくれや」

 

 嵐から目隠しと棒を受け取る。

 そしてその場でグルグルと回転させられ……。

 

「スタートだぜ!」

 

「司令、右ですよー!」

 

「提督ぅ! 真っ直ぐ真っ直ぐ!」

 

 クックック、お前らの声には惑わされねえぞ。

 俺には分かる……。

 

 スイカがどこにあるのかが!

 

 スイカをシートの上に置いた音と!

 何回回されたかを計算!

 

 瞬時に導き出したぜ!

 

「うっしゃああああああああ!」

 

「一直線に行った!?」

 

「見えてる!? ズルしてる!?」

 

「いや、司令はズルなんかしていない……完全に!」

 

 ……そこだぁっ!

 

 

 …………。

 

 

「美味いなスイカ」

 

「塩はかける派だねぇ」

 

「海を見ながら食べるのも、いいですね!」

 

 クックック。

 俺の妙技に言葉もねえようだ。

 

 棒で割ったから歪になっちまったスイカを食って。

 腹ん中を無駄に水っぱらにしなぁ!

 

 

 …………。

 

 

 あー楽しいなぁ!

 好きなだけ遊び、好きなだけ虐待出来る!

 提督になって本当によかったぜ!

 

 艦娘共も俺の虐待を食らって、もう疲労困憊みてえだな。

 海で泳ぐ奴も減ってきて、砂浜で過ごしてるのが多い。

 

 夏、満喫だな!

 

「提督さん、お疲れじゃね」

 

「浦風か」

 

 砂浜に敷いたビニールシートに座って休んでいると、浦風が横に来た。

 こいつの髪と同じ色の、パレオ付きのビキニ姿。

 

 こいつも健康的な、いい肌だ。

 

「どうだ? 楽しんだか? ククク」

 

「うん。一杯泳いで、へとへとじゃ」

 

 そうだろうな。

 

 しかし艦娘共、意外に楽しそうだったな。

 いつも海なんて見てるだろうから、そこまでだと思ってたんだが。

 

 ま、テンション上がって俺に挑んできたんなら、結果オーライとするか。

 

「綺麗じゃねぇ……海」

 

「……ああ、そうだな」

 

 海は変わらず、光り輝いたままだ。

 今も、昔もな。

 

 深海棲艦に支配されている、目の前の海。

 この海を人間が取り返すには、こいつらの力が必要だ。

 

 取り返す、なんて考えも、おこがましいのかもしれねえけどな。

 

「うち、これからも頑張るけん……期待しとってもええんよ?」

 

「はっ、頑張るのは当たり前だ。なんせ俺の兵器なんだからなぁ」

 

 戦争に勝つ為に、俺は艦娘共を最大限活用する。

 それに尽力は惜しまねえ。

 

「ふふっ、そーじゃったね。じゃ、改めて任しとき!」

 

 浦風はそう言って笑う。

 クックック、俺の道具らしさが、出てきたな。

 

 最近艦娘共も、俺という存在に慣れてきたんだろう。

 『虐待』に抗いつつも、『道具』扱いに慣れてきたということか。

 

 俺の、理想的な鎮守府の形だなぁ。

 

「さて提督さん、そんな真面目な艦娘からお願いがあるんじゃけど」

 

「なんだよ」

 

 こいつ、いきなり反撃か?

 夏を楽しむモードの俺は強いぜ?

 

「うち日焼けしちゃって……痛いんよ……」

 

 何!?

 こいつ、予め肌が弱いやつは日焼け止め塗っておけって言ったのによぉ!

 よく見たら所々赤くなっちまってるじゃねえか!

 

「だからぁ、整備点検、してくれると嬉しいんじゃけど」

 

「世話のかかるやつだな。だがしょうがねえ。そこに寝な!」

 

 俺の兵器が必要なこと以外で傷つくのは許されねえ。

 今ならまだ間に合う。

 

 応急処置用にアロエジェルを用意しておいてよかったぜ!

 

「ほら、水着の紐外すぞ」

 

「ありがと……んっ……」

 

 まあ、俺に全身触られるっていう罰で、おあいこにしといてやるか。

 道具の管理、整備は、俺の仕事だからな!

 

「こんなとこまで赤くしやがって……塗りまくってやるぜぇ!」

 

「あ……ふっ……♡」

 

 何変な声出してんだ?

 

 そして、周囲の他の艦娘共から凄い視線を感じるぜ。

 仲間が俺にやられて、悔しがってんのか?

 

 兵器の考えることは、たまにわからねえ事があるな。

 

 

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 秘書艦日誌。

 

 雪風です。

 今日は鎮守府の皆で海水浴というのに出かけました。

 いつも戦うために行く海に、遊ぶために行きました。

 

 砂浜も綺麗で、新鮮な気分になりました。

 司令も茹で上がった頭が冷やされて気持ちよさそうでした。

 

 時津風が、提督と競争をしてました。

 まさかあんなに速かったなんて。

 次に行く時は、潜水艦の娘達と戦ってほしいです。

 

 あとはものすごい速度でバタフライしてたり。

 砂と水だけでミニ鎮守府を作ったり。

 スイカをスタート宣言と同時に一瞬で叩き割ったりしていました。

 

 全部『虐待』のつもりでしょう。

 やっぱりどこに行っても、司令はいつも通りです。

 

 浦風が司令にアロエの何か? を塗って貰っていました。

 皆の目つきがエグかったです。

 

 でも司令は馬鹿なので、どうせ気づいていないでしょう。

 馬鹿なので。

 

 でも、皆で遊んで、提督も楽しそうで、雪風はとても嬉しかったです。

 またいつか、海水浴に行きたいと思いました。

 

 そんな、一日でした。

 

 




これまでの秘書艦日誌にも、
恐るべき虐待の記録が……!?

虐待成分を一気に補給したい提督でした。

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