汚い艦娘を見つけたので虐待することにした   作:konpeitou

11 / 44
提督の趣味に走った施設シリーズその3です。

純朴な伊良湖が目撃したものとは……?




第十一話 伊良湖と甘味処

 

 

 ……夜の鎮守府。

 

 消灯時間が過ぎて、艦娘がほぼ寝静まる時間。

 私、伊良湖もいつもは眠っている時間なんですけど……。

 

 今日、甘味処の休憩室に、手鏡を置き忘れてしまったんです。

 どうしても気にかかって、こっそり起き出して来ました。

 

 暗い寮の廊下は、新しくなってギシギシいわなくなりました。

 夜トイレに行く時、いつも怖かったのでよかったです。

 

 寮棟を出て、甘味処『間宮』へ向かいます。

 私と、間宮さんの仕事場。

 

 前は何もさせてもらえませんでしたが、新しい提督さんは、

私達非戦闘艦にも役割をくださいました。

 

 提督さんと妖精さんが建てた『甘味処間宮』。

 間宮さんと私を店員として、つい最近から運営が始まりました。

 

 提督さん曰く、『妖精さんが喜ぶからなぁ』という理由だそうです。

 『艦娘には残り物だけだ』と仰っていましたが、皆さん普通に利用できています。

 

 ……提督さんは、優しい人です。

 艦娘の事を道具だと言っていますが、酷いことなんか一度もしません。

 

 なんというか、『可愛い男の人』って感じがするんです。

 こんなこと言ったら、怒られてしまいそうですけどね。

 

「……あれ?」

 

 間宮さんや鳳翔さんは、一般の消灯時間より少し長く作業する事があります。

 遅くても12時には寝ろと提督さんが仰っているので、それ以内にはしていますけど。

 

 現在時刻は深夜12時半。

 本来は電気が消えているはずの建物から、光が漏れています。

 

 ……間宮さん?

 

「お、お邪魔しまーす……」

 

 私は甘味処の裏口から、そっと入ります。

 間宮さんが、時間を守らないとは思えないのですが。

 

 ……もしかしたら、泥棒さん!?

 

 皆の中にそんなことする娘はいないだろうし、部外者が侵入した!?

 

(ど、どうしよう)

 

 もし、知らない人が盗みに入っていたら、どうしようもありません。

 私達艦娘は、人間に直接的な危害を加えられない。

 

 それが例え盗人でも、なんです。

 

 もし見られて、襲いかかられちゃったら……!

 

(でも……!)

 

 私は、間宮さんと一緒に此処を任されたんです。

 提督さんのご期待に、答えるために!

 

 さ、叫び声くらいあげられるんですからねっ!

 

 なるべく音を立てないように、ゆっくり進んでいきます。

 灯りは一つくらいしかついてなく、それも客席の方みたいです。

 

 ……ま、間宮さん、ですよね?

 

「……だ。…………なよ」

 

 お、男の人っ!?

 よく聞き取れないですけど、男の人の声です!

 

「……ました……ましたから」

 

 あれ、間宮さんの声も?

 男の人と間宮さんが、何かを話している?

 

 い、一体何が起きているのでしょうか……?

 

 はっ!?

 ま、まさかッ!?

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『ぐへへー、良い身体してんなぁ姉ちゃんー』

 

『い、嫌っ、お止めくださいっ!』

 

 間宮の細腕が、醜い太腕に押さえつけられる。

 

『艦娘は人間に逆らえないんだろー? うへへぇー』

 

『だ、だれかっ、誰……んむーっ!』

 

 逃げようとする間宮の口を、男は布を当てて塞ぐ。

 その豊満な身体を揺すって、もがく間宮。

 

『朝まで時間はたっぷりあるんだー、楽しもうぜぇー』

 

『んんーっ!!』

 

 男の手が、間宮の胸元に伸びていき……。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 た、大変です!

 間宮さんのあの豊かなお身体がっ!

 

 悪漢の魔の手に掛けられてしまうっ!

 それだけは絶対に阻止しなけれないけません!

 

 で、でも私が突入したところで結果は……。

 しかし、間宮さんのお胸がっ!!

 

 カチャカチャ……。

 

 これは、金属音ッ!?

 金属同士が触れ合う音が、僅かながら確かに聞こえましたっ!

 

 悪漢と、襲われた間宮さん。

 そのシチュエーションから導き出される、音の正体は……ッ!

 

 『ベルトを外した』音なのでは!?

 

(ほ、本格的にマズいです!)

 

 大好きな間宮さんが。

 豊満なバストの持ち主の間宮さんが。

 

 私より胸が大きい、間宮さんがッ!!

 

(覚悟は、完了しました……)

 

 暴漢め。

 私の間宮さんには、手を出させません。

 たとえ、艦娘としての制約があってもかまいません。

 

 間宮さんは、私が守る!

 

「間宮さんを離せぇー! この×××め!」

 

「え?」

 

「は?」

 

 ……結論から申しますと。

 提督さんがこっそり甘味を食べに来ていて。

 間宮さんがアイスをお出ししていただけでした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「おい伊良湖よぉ。覚悟は出来ているんだろうなぁ!」

 

「ごめんなさい! ごめんなさい!」

 

 艦娘共の消灯時間も過ぎたころ。

 こっそりと間宮のところへ来て、お楽しみだったっていうのに。

 

 こいつはよぉ……。

 

「まぁ提督。この娘も悪気があったわけではないようですから」

 

「しかし、見てはいけない物を見られちまったからなぁ」

 

 俺がこの鎮守府に甘味処を作った理由。

 それは単純に『俺が食いたかった』からだ。

 

 甘い物は、俺の虐待脳に必要不可欠!

 そして妖精さんも大喜び、とくれば。

 

 作らねぇ理由はねえんだよなぁ。

 

 だが、俺は兵器共を纏める、いわば恐怖の象徴。

 そんな奴が昼間っから駆逐艦のチビどもに混ざって、甘味を食う。

 

 そんなことしたら、舐められるのはわかりきっていることだからなぁ。

 

 だから表向きは妖精さんのためとして、夜中に食いに来るのが当たり前になっていた。

 間宮を脅迫して、作ってもらってな。

 

 そして最高のスイーツタイムを楽しんでいたっていうのによぉ!

 

「……しょうがねえな、最後の手段だ」

 

「な、なにをするん、ですか?」

 

 こうなったら仕方がねえ。

 弱みを握って口封じさせてもらうとするか!

 

「ここに取り出したるは一つのボイスレコーダー」

 

「えっ」

 

 そう、俺はいつもこれを持ち歩いている。

 色々と『便利』なんでなぁ。

 

 そして伊良湖、ククク……。

 

『間宮さんを離せぇー! この×××め!』

 

「ちょっとぉ!?」

 

「あらあら……」

 

 さっきのてめえの超絶意味不明発言、ばっちり録音済みなんだよなぁ!

 何を思って俺に×××なんて言ったのかは、さっぱりだが。

 

 少なくとも、女としての感性を持つお前が言って良いような言葉ではない!

 

「この音声をばらまかれたくなかったら……分かるよなぁ?」

 

「は、はいぃ……」

 

 クックック、完璧だな。

 こういう不測の事態に備えてこそ、虐待マスターといえるぜ。

 

 これで伊良湖と間宮は、俺に逆らえない!

 

「今度からは、お前も間宮に協力しな」

 

「わ、私も、ですか?」

 

「ああ、お前の最中を、俺に捧げな!」

 

 間宮のアイスや羊羹は最高にうまい。

 だが、こいつの最中も、それに匹敵するほどのものだ。

 

 偶然とは言え、伊良湖まで俺の手中に収まった。

 災い転じて福となす、だなぁ!

 

「……はい!」

 

「いい返事だぜ。クックック」

 

 どうやら諦めたらしい。

 いいねぇ、挫折に堕ちた表情は。

 

「さて、ご馳走様だ」

 

「はい」

 

 皿とスプーンは洗わねえ。

 こいつらに洗わせてやるぜ!

 

「おやすみお前ら。良い夢を」

 

 糖分とって、いい気分ってな!

 クックック……!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「間宮さん」

 

「何かしら、伊良湖ちゃん?」

 

 私は提督が去った後、間宮さんと一緒に片付けをしていました。

 一時くらいには、床につけそうです。

 

「提督さんって……可愛いですよね」

 

「クスッ、そうね」

 

 甘い物が大好きな提督さん。

 それがバレるのが恥ずかしい提督さん。

 

 でも。

 

「それでもあれは酷いですよ!」

 

「でも伊良湖ちゃんがあんな事言うのがいけないんじゃない?」

 

 うっ、確かにそうです。 

 あの時の私は、緊張でどこかおかしかったんです。

 

 まんまと弱みを握られてしまいました。

 ……そういえば。

 

「間宮さんは、なんで脅迫(?)されているんです?」

 

「…………さ、終わったし、帰りましょうか」

 

 間宮さん。

 何で無視するんですか。

 

「教えて下さいよっ、間宮さんの弱み!」

 

「ちょ、ちょっと、人聞きが悪いわよ!」

 

 だって、私ばかり知られるのは不公平です!

 

「……ちょっと、ね」

 

「うーん……」

 

 なんですかその表情は。

 ちょっと恥ずかしそうな、艶めかしい様な。

 ……気になります!

 

「ま、まぁでもいいじゃない。提督の弱みも、私達は握っているのよ」

 

「提督さんの、弱み?」

 

 あの人に、弱いところなんてありましたっけ。

 いつでも強くて、優しいと思いますけど。

 

「……ほら、ねっ」

 

「ああっ!」

 

 間宮さんが取り出したのは、一枚の写真。

 この間青葉さんが買った、カメラで撮られた物。

 

 そこに写っていたのは。

 

 見たことのない笑顔で、アイスを食べている提督さんでした。

 

 

「……これって盗撮」

 

「しーっ!」

 

 




清純で素朴な伊良湖が脅迫されてしまった!

ご報告。
本日は昼と夜の二回投稿予定です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。