汚い艦娘を見つけたので虐待することにした   作:konpeitou

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提督の趣味に走った施設シリーズその2です。

やさぐれ明石さんに追撃を加える提督!


第十話 明石と工廠

 最近、とても楽しい。

 

 工廠に居て、装備をいじる事が。

 皆の艤装の応急修理をする事が。

 酒保で、色々な物を売る事が。

 

 そして……。

 

「おう明石。邪魔するぜぇ」

 

「あっ、提督! いらっしゃいませー!」

 

 提督と、お話する事が。

 

 

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 居酒屋設営を成功させ、俺は更なる計画を思いついた。 

 鎮守府内で色々買える、コンビニみてえな所を造るか、と。

 

 そして鎮守府の売店といえば、酒保。

 確か大本営では明石がやってたな。

 ウチにいる明石にも、無理やりやらせるかぁ。

 

 と、考えていたのが昨日の夜。

 そして今日、早速工廠にいる明石を見つけ出したのだが……。

 

「あ、提督……どうも」

 

「おう。 ……お前、何やってるんだ」

 

 俺の作ったシフト表は、明石の様な特殊艦には特別な物を用意している。

 今のこいつの予定は装備改修だったはずだが。

 

「何って……装備を改修してるんですよ」

 

「俺の目には、そうは見えねえけどな」

 

 明石がさっきから一心不乱にやってるのは、ただの鉄くずをハンマーで打ち続けるだけ。

 それが何になる事も無く、本当に、ただそれだけだ。

 

「……ええ、改修なんてしてませんよ。それがなにか?」

 

「あぁ?」

 

 こいつ、開き直りやがったな。

 俺の命令を無視し、あまつさえこんな態度を取るとはな。

 

 ずいぶん舐めてくれるじゃねえかよぉ!!

 

「おいてめえ! ふざけたこと言ってんじゃ……」

 

「……しょうがないじゃないですか」

 

 明石がハンマーを持つ手を止め、こちらを睨みつける。

 なにがしょうがねぇっていうんだこいつ。

 

「……私、装備改修なんて出来ないんですもの」

 

「は?」

 

 装備改修が出来ない、だと?

 工作艦である、こいつが?

 

 どういうことだ。

 

「……どうしても失敗するんです。私にも原因は分かりません」

 

 ふむ。

 原因不明の失敗か。

 なるほどなるほど……。

 

 なんて、納得するわけねえだろ!

 こいつ、そんなくだらねえ嘘つきやがって!

 

 めんどくさいからって、口からでまかせとはなぁ!

 

 失敗する理由も、本当はわかってんだろな。

 それを改善しようともしねえとは……。

 

 前任の甘ちゃんめ、とんでもない奴を置き土産にしやがったな。

 

「クックック……失敗する、ねぇ」

 

「なんですか……む、無能な私を解体でもしますか」

 

 明石、もうお前はピエロだぜ。

 仕事から逃れて楽になろうとしてんのは、完全に見切った。

 

 それじゃあその退路、塞がせてもらうとするかぁ!

 

「いいや、解体はしねぇ。俺がすることは……」

 

 俺は明石にツカツカと接近し、その手に持つハンマーを取り上げた。

 明石は俺に掴まれた腕を暴れさせる。

 

「な、なにを!?」

 

「お前が、失敗しないように『矯正』してやるよぉ」

 

 最高に残虐な笑顔を、明石に向ける。

 明石は動きを止め、そんな俺の顔を呆然と見つめた。

 

 クックック、さぁ、『虐待』の時間だぜ!

 

 

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「ほら、ここはこの部品だろ。よく見ろ」

 

「は、はい……」

 

 私は、工作艦明石。

 この鎮守府唯一の、工作艦。

 

 前任のやつのせいで、私は何も出来なくなってしまった。

 装備改修失敗の度に、あの恐ろしい罰を受けて。

 

 装備をいじる、という行為自体に、トラウマを持ってしまったのだ。

 何度やっても成功しない。

 

 手が震えて、頭が真っ白になって、吐き気がする。

 新しい提督が来ても、私は変われなかった。

 

 提督からの改修任務が来て、私はヤケになってしまった。

 適当な鉄くずを打って、作業しているフリをして。

 

 そして提督が来て、ついキツくあたってしまった。

 それほどに、私は参っていたのだ。

 

 しかし……。

 

「次はこっちだ。ここにあるコレが……」

 

 作業台の前まで連れてこられ、主砲の部品を引っ張り出し。

 そして、何故か提督が私のすぐ隣に立って装備改修を教えてくれているのだ。

 

 ……どうしてこうなった!?

 

「あ、あの提督、きょ、距離が……」

 

「あ? ここの部品はこの距離でいいんだよ!」

 

 ち、違う!

 提督と私の距離が近いんですよぉ!

 

 そもそも私は、装備開発の知識はしっかり持っている。

 問題なのはトラウマであって……。

 

「ほら、しっかりドライバーを持ちな!」

 

「ひゃ、ひゃい!」

 

 提督に、ドライバーを持った右手を上から掴まれる。

 男の人の手が……!

 

「よし、そしてこのネジをだなぁ」

 

「あ、あわわわ」

 

 そ、そういえば私、男性になんてあいつくらいしか会った事なかった。

 こんな近くに、男の人が……。

 

 お、落ち着くのよ明石!

 こんなちょっと優しくされた程度で、何を動揺しているのだ。

 

 どうせ、この人も失敗ばかりの私にすぐ愛想を尽かすはずだ。

 今こうやっているのも、無駄だと気付くだろう。

 

 馬鹿な提督。

 私はそんなに簡単な女じゃありませんよっ!

 

 

 ……あれ、そういえばなんで提督は装備開発にこんな詳しいんだろ。

 

 

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「いや~提督もなかなかのマニアですねぇ! そう、このネジが希少なんですよね!」

 

「ああ、特殊金属だからなぁ。産出する海域も数が少ねぇ」

 

 明石のやつ、顔を真っ赤にしたりしたかと思ったら、いつのまにか饒舌になったな。

 しかしこいつ、中々話が出来るじゃねえか。

 

 艦娘の装備というものには、専門の知識が必要だ。

 軍学校で教わった基礎に興味を持った俺は、独学で調査を行った。

 

 その結果、ちょっと弄るくらいなら出来るようになったんだ。

 ま、『虐待』の為の知識勉強ってことだ!

 

「あぁ、楽しいなぁ。こんな風に誰かと話したのなんて初めてですよ」

 

 おいおい、どれだけ引きこもりだったんだこいつは?

 しかし、俺と話していて楽しい、ねぇ。

 

 物好きな奴もいるもんだな。

 

 そして明石、気付いているのか?

 俺の策略は、着実に進行しているんだぜ?

 

「さぁて明石、目の前をよーく見てみな」

 

「え? なんです、か……あ……?」

 

 ククク、話に夢中で無意識みてえだったな。

 明石、お前はもうすでに装備開発をその手で終えてんだよ。

 

 俺がちょいと手伝ってやれば、必ず成功させると思っていたぜ。

 いいや、これは、『信じていた』ともいえるがな。

 こいつなら、絶対にやれると。

 

 自分の道具を信じる、当然だよなぁ?

 

「こ、これは……私が!?」

 

「ああそうだぜ。クックック……」

 

 さて、これでもうお前は逃げられない。

 自身の手で、開発を成功させちまったんだ。

 

 原因不明の失敗、なんて言い訳、完全に潰させてもらったぜ!

 

「嘘……なんで……」

 

「そいつは簡単だぜ明石。たったひとつの単純な答えだ」

 

 俺の策に嵌り、絶望している明石。

 そんな明石に、俺は止めを突きつける。

 

「これが、お前の実力だ。そういうことなんだよ」

 

「……あ、あぁぁ……!」

 

 明石は完成した主砲を触り、嗚咽を漏らしていやがる。

 ククク、これでもう、お前は終わりだ!

 

 工作艦明石、これにて完全敗北ってな!

 

「でいどぐぅ! わだじ、わだじぃぃ!!」

 

「うおっ!?」

 

 こいつ、急に俺にタックルをぶちかましてきやがった!?

 そして凄まじい力で俺に抱き着く!

 

 ば、馬鹿な、艦娘は人間に直接的な危害を加えられないはずだ!

 こんなことが……!?

 

「私頑張りますっ! 提督の為に、頑張って開発しますっ!」

 

「?」

 

 いや、どうやら様子がおかしい。

 これは俺に対する危害ではないようだな。

 

 なるほど、俺にしてやられた恨みを返してやろうと。

 ワザとらしく忠誠を誓って、油断を誘おうって魂胆か。

 

 危ない危ない、動揺しちまったぜ。

 この俺をここまで乱すとは、褒めてやるぜぇ?

 

「クク、良い心がけだ。励みな」

 

「……っ、はいっ!」

 

 適当に頭でも撫でて、その演技に付き合ってやるか。

 ククク、俺に頭を触れられた瞬間、ビクリとしたのは見逃さねえぜ。

 

 生理的嫌悪は隠せねえみたいだなぁ?

 

 今回も俺の完全勝利だぁ! クックック!

 

 

「ああ、そういえば酒保についてなんだが」

 

「やりますっ! やらせてくださいっ!」

 

 こ、こいつ、まだ演技すんのか。

 それとも開き直ってんのか。

 まぁいいか……。

 

 




何処までも徹底的に追い詰めて号泣させるなんて……。

ご報告。
明日は午前中と夜の2話投稿の予定です。

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