汚い艦娘を見つけたので虐待することにした   作:konpeitou

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可哀想な吹雪は悪の提督に虐められてしまいます。


第一話 吹雪とお風呂

 私は、駆逐艦吹雪です。

 海の平和を守る為に、この世に生まれたはずでした。

 でも、私が初めて着任した鎮守府の司令官は、とても酷い人だったんです。

 

 あの人は、毎日毎日、腹立たしそうに怒鳴り散らしていました。

 事あるごとに、私達の事を『化け物』『人外』と罵ってきました。

 飽きもせず、私達に暴力を振るっては、楽しそうに笑っていました。

 

 小破、中破しても入渠させて貰えず、そもそもお風呂にすら、

まともに入らせて貰えませんでした。

 

 補給は最小限、ご飯も、カラカラに渇いたお米と、

冷たいお味噌汁程度しか食べさせて貰えません。

 

 一度鳳翔さんがちゃんとしたご飯を作ってくれようとしたけど、あの人にばれてしまいました。

 泣いて謝りながら蹴り飛ばされる鳳翔さんを見て、私達も泣きました。

 その日から、もう誰もご飯に文句は言わなくなりました。

 

 私達は、あの人が怖くてしょうがありませんでした。

 また殴られる、怒鳴られる、そう思うと足が竦んで動かなくなってしまうんです。

 最初は反抗していた娘達も、結局心が折れてしまいました。

 

 私達艦娘は、人間に対して『船の力』を行使することが出来ません。

 だから、人を相手にすると、普通の女の子としての力しか出せないのです。

 力が無い私達に、あの人を止められることは出来ませんでした。

 

 あの人は、私達を一隻も沈めたりしませんでした。

 私達が沈むと、大本営に怒られるからでしょう。

 大破したら撤退する事が許されていました。

 その代わり、気絶するまで殴られた後、懲罰房に入れられます。

 

 懲罰房は暗くて狭くて、酷い所です。

 友達の睦月ちゃんが、一回だけ入れられるのを見ました。

 泣いて謝りながら、提督に髪の毛を引っ張られて引き摺られていきました。

 

 本当に可哀想で、なんとかしてあげたかったけど。

 逆らったらどうなるか解っていたので、見て見ぬふりをしました。

 その日は、罪悪感で一晩中眠れませんでした。

  

 もう、こんなところは嫌でした。

 もう、あんな人は嫌でした。

 誰でもいいから、この地獄から救ってほしいと、願っていました。

 

 そして、その願いは叶いました。

 

 

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 艦娘は、兵器だ。

 俺は心の底からそう信じて疑わない。

 あいつらは使われる道具であって、それ以上でもそれ以下でもない。

 

 だから、俺はその信念を、着任した鎮守府で実行することにした。

 

「今日から着任する事になった。よろしく頼むぜぇ、『兵器』どもよォ!」

 

 大広間に集まった艦娘達が、俺の事を絶望に染まった眼で見ている。

 当たり前だろうな、今まで楽しくやれてただろうに、俺みたいなのが来ちまったんだ。

 

「先に言っとくが、俺はお前たちの事を道具としか見ていない。覚えときな!」

 

 艦娘達の顔に、更に絶望の色が広がっていく。

 今までどうせ人間扱いしてもらっていたんだろ? よかったじゃないか。

 だが今日からは、そうはいかないぞ?

 なんせ、お前たちは俺の『道具』なんだからな。

 

「さて、では最初の指令だ。耳の穴かっぽじってよく聞きやがれ!」

 

 俺の大声に、艦娘達から恐怖の視線が集まる。

 ククク、恐れ戦いていやがるぜ。

 

「まずはお前たちに……風呂に入ってもらうぜ!」

 

「え……?」

 

 あ? 誰だ今のやつ。

 俺の崇高な指令に文句ある奴がいるってのか?

 

「あ、あの、提督様……フロって、お風呂のこと、っぽい?」

 

「あぁ? 当たり前だろうが! それ以外何があるんだ」

 

 なるほど、ここの艦娘は常識ってモンも知らないらしい。

 これだから兵器は嫌なんだよな。

 

「生憎、俺は身の回りの物を綺麗にしときたい質でなぁ」

 

「お前らみたいな汚ねぇ道具を見てると、気分が悪くなるんだよ!」

 

 艦娘達は驚いた顔で俺を見ている。

 そりゃそうだろう、汚いなんて罵られる事、いままで無かっただろうしな。

 だが、俺は構わず言う。

 なんせこいつらは『兵器』、遠慮なんていらねえ。

 

「お、お風呂に入ってもいいっぽい!? ん、ですか……?」

 

「さっさと全員入れ、これは命令だ」

 

 こいつら、俺が命令したってのにまったく動きやがらねえ。

 これだから甘っちょろい奴の居た鎮守府は……。

 

「や、やった! 行こう皆!」

 

「あ、て、提督様、ありがとうございますっ!」

 

 艦娘達は礼を言い続々と大浴場へ向かい、中には泣き出している奴もいた。

 クク、汚いと言われた事がよっぽどショックだったんだろうな。

 

 さて、全員風呂に行ったことだし、次の段階に入るとするか。

 あいつら艦娘どもを、更に絶望させる支度をなぁ!

 

 

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「ふ~……」

 

「久々のお風呂すっごい気持ちいいっぽいよー!」 

 

 湯船で嬉しそうにはしゃぐ夕立ちゃんを見ていると、私も嬉しくなってしまいます。

 夕立ちゃんだけじゃなくて、みんな、嬉しそうな顔をしているんですけど。

 

「……新しい提督、いい人、なのかな?」

 

「うーん、まだ、わからないよ」

 

 あの新しい司令官、目付きが悪くて怖そうな顔でした。

 でも、私達をこうしてお風呂に入れてくれました。

 まだ彼の人となりは分からないけど、これだけは確かな事です。

 

「お風呂から上がったら、何かされるかもしれないよ」

 

「睦月ちゃん……」

 

 睦月ちゃんは、あの人に怒られる事が多かったから、『提督』を信用できないみたいです。

 睦月ちゃんだけじゃない、みんな、疑心暗鬼になっているんです。

 

 でも、私は新しい司令官の事、信じてみたいなぁ……。

 

「吹雪ちゃん、睦月ちゃん見て見て~アワアワっぽいー!」

 

「あははっ、夕立ちゃん何やってるの」

 

「……えへへ、でも、久しぶりに楽しいなぁ」

 

 私達は、先のことは一旦置いておいて、今を楽しむことにしました。

 願わくば、あの司令官がいい人でありますように。

 

 ……久しぶりに見た皆の笑顔を、絶対に絶やしたくないから。

 

 

 

「気持ちよかったね吹雪ちゃん!」

 

「うん! 身体も綺麗になったし、これで司令官に汚いって言われないよ」

 

 お風呂から上がった私達は、浴衣に着替えて大広間に戻っていました。

 そういえば、お風呂から上がった時に置いてあったこの浴衣、誰が用意したんでしょう。

 司令官が一人で出来るとは思えないし……。

 

「……夕立は新しい提督さんのこと、少しずつ信じていけばいいと思うっぽい」

 

「うん、そうだね。少しずつ、彼のことを知っていけばいい、んだよね」

 

 夕立ちゃんは、不安そうにしていた時雨ちゃんとお話しています。

 普段はムードメーカーな彼女も、仲間が困っていたらちゃんと相談に乗ってくれるんです。

 夕立ちゃんの明るさに、何回助けられたか……。

 

 そうこうしている間に、大広間前にやってきました。

 司令官、まだこの中にいるんでしょうか。

 

 私は、大広間のドアノブに手を掛けました。

 

「ふ、吹雪ちゃん。こ、怖くないの?」

 

「睦月ちゃん……少し、ほんの少しだけ怖いけど、大丈夫だよ」

 

 見れば、周りの娘が私を心配そうに見ていました。

 多分、部屋に一番初めに入るのが怖いのだと思います。

 

 私だって、少し不安です。

 でも、自分から前に進まないと、いつまでも過去に囚われたままだから。

 

 私はゆっくりとドアを開けていきます。

 隣では夕立ちゃんと睦月ちゃんが、手を固く繋ぎ合っていました。

 ……そこまで怖がることないと思うんだけどなぁ。

 

 ギギ、と、立て付けの悪くなったドアが開かれました。

 大広間の明かりが、目に眩しくて。

 そして、嗅いだことも無いような、とてもいい匂いが私の鼻に飛び込んできました。

 

「来たなお前ら……『虐待』の時間だぜぇ?」

 

 ……私達は今日、地獄から解放されました。

 

 




熱湯をかけられる恐ろしい虐待……!

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