HSDD 転生生徒のケイオスワールド2 卒業生のアザゼルカップ   作:グレン×グレン

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でかいのは力だ

 

 マコトが執着していたビエカルという堕天使。

 

 奴がエイエヌ事変で死亡していることは既に調べがついているはずだが、しかしなぜか生きてここにいる。

 

 しかも、そいつは俺の兄貴である宮白天騎から彼女を寝取ったチーマーだった。

 

 どっから反応していいのかわからんが、しかしわかることがある。

 

「兄上!! 暁さんと姫柊さんを連れて先に行ってくださいまし!! あとシルシ義姉様も!!」

 

「だな。ここはアタシ達は抑えるしかねえだろ」

 

 雪侶とノーヴェが一歩前に出て、武器を構える。

 

「確かに、相手がフォンフなら付き合いの長い兄さんが適任だね」

 

「露払いは任せなさい、義兄さん」

 

「ふっふーんっ。トマリちゃんも新技引っ提げて参戦させてもらうのですよっ」

 

 俺の家族はみな頼りになる。

 

「いきなさい、雪菜!!」

 

 さらにどんどん量産型の魔獣創造で敵が現れる中、煌坂も煌華麟を構えて戦闘準備は万全。

 

「走るぞ暁、姫柊ちゃん!!」

 

 俺は即決で判断する。

 

 あいつらを野放しにしていたら、それこそ本当に都市の一つぐらい焼け野原にしかねない!!

 

「ああくそ!! 死ぬなよお前ら!!」

 

「ここはお願いしました!!」

 

 俺達は一斉に駆け出すと、港まで出る。

 

 こっから先は全力で移動するのみ。

 

「来い、ラージホーク!!」

 

 素早くラージホークを展開すると、俺は二人を抱えて飛び乗った。

 

 目立つがさすがに仕方がない。

 

 どうせ獅子王機関はこれを見越して俺達を呼びつけたんだろうし、こうなれば後始末は全部あいつらに押し付ける!!

 

「飛ばすぞ!! しっかりつかまってろ!!」

 

 最大船速でぶっ飛ばせば、すぐに巨体が見えてくる。

 

 あれがレヴィアタン!! ええい、でかすぎだろう!!

 

 うちの魔王レヴィアタンはどっちかというと小柄だぞ!! もう少し見習え!!

 

 と、思った瞬間奴の背中から何かが大量に飛び出てきた。

 

 ………ふむ。生体ミサイルといったところか。

 

「暁撃ち落とせ!!」

 

「わかってる!! 疾く在れ、獅子の黄金(レグルス・アウルム)

 

 放たれた雷撃が生体ミサイルを一瞬で破壊し、さらにレヴィアタンに激突する。

 

 ……あ、江口結瞳がいるけど大丈夫か!?

 

 と、思ったがレヴィアタンは焦げ目ができた程度でぴんぴんしていた。

 

 さすがは世界最強とか付けられる魔獣だ。何ともないぜ!!

 

 ……などといっている場合じゃない!!

 

 今度は顔を向けると、なんか莫大なエネルギーが込められてるぞ!!

 

「姫柊ちゃん!! 雪霞狼!!」

 

「わかりました!!」

 

 こっちは純粋な魔力だったのでかろうじて相殺に成功。

 

 だが、これ以上時間を掛けているわけにもいかない。

 

「宮白!! 俺が穴を開けるから、そこから俺達を連れて飛び込んでくれ!!」

 

「なるほど。確かに数人分のサイズならあれが役に立つか!!」

 

「……こ、こちらのことは気にせずやってください」

 

 そういえば姫柊ちゃんは空飛ぶの苦手だったね。

 

 だが気にしてられないので俺は二人を抱えると、ラージホークを召還して突貫する。

 

疾く在れ(きやがれ)龍蛇の水銀(アル・メイサ・メルクーリ)!!」

 

 双頭の蛇が次元ごとレヴィアタンの腹に穴を開ける。

 

「行くぞシルシ!! 姫柊ちゃんを放すなよ?」

 

「それ位の腕力はあるわ! 行くわよ兵夜さん!!」

 

 そして、俺達はその中に勢いよく飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方そのころ、残った雪侶達もまた、敵に苦戦を強いられていた。

 

「この男、まさか例のダイスで強化をしてますのね!?」

 

「そりゃまぁ、俺っち達は悪の組織だしぃ?」

 

 超高出力で振るわれる光の刃を避けながら、雪侶は素早く反撃の飛び蹴りを叩き込む。

 

 さらに、事前に低速で発射していた冷気の弾丸が時間差で襲い掛かるが、ビエカルはそれを翼ではじき落とす。

 

 そこに、大量の光の槍が展開された。

 

「あ、やば!」

 

「蝙蝠がハリネズミになっちゃうねぇ!!」

 

 質より量を体現する、低威力ながら圧倒的多数の光の槍。

 

 迎撃出来て精々四割だが、三割も喰らえば命に係わる量。

 

 切り札の龍化を使うにしても、屋内では無用な被害が出る可能性もある。

 

 クスキエリゼの中にも事情を知らないものは多いだろうという事実が、一瞬の躊躇を雪侶に生んだ。

 

「グッバイ!!」

 

「させないわよ!!」

 

 その瞬間、全方位をカバーするように防御フィールドが展開される。

 

「オーラを貸しなさい、グラム!!」

 

 魔剣のオーラを纏った広範囲防御フィールドが、光の槍の群れを全て受け止め防ぎ切った。

 

 そして、その攻撃を目くらましに、須澄が懐へと潜り込む。

 

「もらった!!」

 

「うおっとぉ!!」

 

 聖槍はわずかにビエカルに傷を作らせるが、しかし堕天使である彼には致命傷には全くならない。

 

 しかし、それで崩れたバランスを見逃さずに今度はトマリが仕掛ける。

 

「甘いよ嬢ちゃん!! あんたの能力はパワーがありすぎて屋内じゃぁ―」

 

「じゃあ新技いくよっ」

 

 その言葉と共に、トマリの右腕に蛇の尾のようなものが絡みつく。

 

 そして、その蛇は頭部に剣を伸ばしていた。

 

「切り裂け、ザ・スラッシャー!!」

 

 その言葉と共に、眷獣が襲い掛かる。

 

 自由自在に動くザ・スラッシャーが、ビエカルに翼を用いた迎撃を必須とさせた。

 

「これは、トゥルー・アークの吸血鬼が持ってた眷獣! なんで持ってんの!?」

 

「被害を気にして戦うしかなかったからねっ! しっかり食べさせてもらいましたよ!!」

 

 吸血鬼には、同族食いという能力がある。

 

 文字通り同族を喰らうことによって、其の力を奪うものだ。

 

 相手も古き世代であったがゆえに難儀だったが、大火力重視の眷獣を使うトマリが周囲を考慮しながら旧き世代の吸血鬼を倒すには、あれが最も効果的だった。

 

 そして、其の力をもってして残りの戦力を殲滅。それがあの戦いの真実である。

 

 むろん、同族食いは言うほど簡単なものではない。

 

 相手の格も相応にあった為困難だったが、それだけの成果はきちんとあった。

 

「これで接近戦でもだいぶ役に立つよっ」

 

「それは―」

 

「―なにより!!」

 

 さらに左右からカバーするように須澄とアップが切りかかる。

 

 これでビエカルは動けない。

 

 ならば、優先するべきは動きを封じるように回り込んでいる量産型の魔獣であり―

 

「苦戦しているようだな、ビエカル」

 

 ―伏兵の登場に意識を切り替え直した。

 

「新手!!」

 

 振り返る視線の先に、一人いる。

 

 それは、監獄結界の囚人だった。

 

「そういえば、二人ほど逃げ切ったと聞きましたの」

 

「ああ、デイライト・オールドキャッスルというものだよ。短い付き合いになるだろうが、よろしく頼む」

 

 雪侶の言葉ににこやかに返し、デイライトと名乗った男は周りを見渡して―

 

「―本当に短い付き合いになるだろうが」

 

 一瞬で、徒手空拳の間合いにアップを捕らえた。

 

「!」

 

 とっさに、アップはグラムではなく魔力付加打撃で迎撃を試みる。

 

 当然といえば当然だ。既に素手の間合いに踏み込まれている以上、グラムでは迎撃が間に合わない。

 

 それを瞬時に判断する能力の高さは、彼女が弱い者虐めを行う為にこそ、より強い存在であろうとする向上心の表れであり、彼女がただ単に弱者を虐げて越に浸るだけの小物でないことの証明だった。

 

 だがしかし、相手の方が一歩先を行く。

 

「……双破!!」

 

 ほんの僅かにぶれたような衝撃音がした。

 

 そして、デイライトとアップの拳が同時に砕ける。

 

「……っ!!」

 

 激痛に悶えながらも、しかし初手を凌いだ時間で短距離加速を行い、アップは後退する。

 

 同時に、アップの負傷にどうしても隙を見せてしまった須澄とトマリからビエカルも距離を取った。

 

「……衝撃をほんのごく僅かにずらすことで一種の共鳴現象を起こして粉砕したのね」

 

「しかも自分は回復力高いのをいいことに、確実に相手の骨を砕ける技。……吸血鬼ならではね」

 

 妃埼と紗矢華が警戒心を強める中、二人は辺りを見渡すと納得したかのように頷いた。

 

「んじゃ撤収ー」

 

「だな」

 

「ちょっと待ちなさい!! ここまでしといて逃げる気!?」

 

 思わず渾身のツッコミがアップから飛ぶが、二人は平然としていた。

 

「いやー、俺達だけでこの数は無理っしょ? まだ奥の手も用意できてないしー? あと姫柊雪菜はレヴィアタンに入ったから帰っていいって言われたしー?」

 

「そういうわけでね。悪いが専用装備が手に入るまでは我慢してもらうよ」

 

 その言葉と共に、黒い霧が二人を包み込んだ。

 

「あれに巻き込まれてはダメですの!! 下手をすると敵の本拠地に飛ばされますのよ!!」

 

 敵がどれだけの人員を確保しているのかはわからないが、フォンフ・キャスターがパラケ・ラススを宿している以上、その技術力は脅威という他ない。

 

 うかつに巻き込まれれば、高確率で殺されるのが目に見えている。

 

「こりゃ、あとは兄さん達に任せるしかないみたいだね」

 

「そうだねっ。……アップちゃん大丈夫?」

 

「ちょっと手の骨が折れただけよ。相手いたぶって楽しむ私が、いたぶられた程度のことでへこたれるわけないでしょ?」

 

 消えていく霧を睨み付けながら、アップは視線を海の向こうへとむける。

 

「さて、それじゃあどうしたものかしらね……」

 




ストブラ世界側からもオリキャラを何人か出したいなーっと思っていたのでとりあえず一人。

なんだかんだで強い人が多いから監獄結界の囚人は役に立つ設定だぜ!!

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