HSDD 転生生徒のケイオスワールド2 卒業生のアザゼルカップ 作:グレン×グレン
世界最強の魔獣、レヴィアタン。
そんなものがこの世界には存在するらしい。
レヴィアタンか。実に強そうだ。レヴィアタンだしな。リリカルマジカルと色々強引に解決しそう。
世界最強の夢魔、リリス。
そんなものもまた、この世界には存在するらしい。
なんか可愛らしい名前だが、実際のところかなり凶悪な能力らしい。
「まあ、まあ世界最強の吸血鬼がここにいるからね」
とばっさり須澄が答えられるのがあまりにも悲しい事実だったが。
おそらく世界最強の獣人や、世界最強の妖精や、世界最強の巨人なども存在してもおかしくないだろう。一人ぐらいは本当に居ていいはずだ。
それはともかく、どうにもこうにもこちら側が襲撃されたのが気にかかる。
結局、須澄もアップも襲撃されたらしい。そして当然返り討ちにした。
なんというか敵の戦力が足りてないと言ってもいい。にも関わらず襲撃する必要があったといった感じもする。
「……情報で危険因子には気づいていたが、戦力がどれほどまでについては半信半疑……といったところか」
問題は、誰が情報を提供していたのかだが、これはわからないのでいったん置いておく。
そして、視線をパソコンに移されている海底図に向ける。
「……範囲がでかすぎて場所がわからないんだが。もう少し拡大してくれないか、藍羽」
こんな数Km四方の海図を出されても、判別が難しい。
だが、返答は驚くべきものだった。
「いや、だからこれがレヴィアタンよ」
……ん?
「この図のここからここまでが眠っているレヴィアタン。流石は史上最強の魔獣ね、スケールが桁違いだわ」
そうか。この海底山脈みたいなのがレヴィアタンか。
「お、おっきいですね」
「これ本当に生き物かよ。ミドガルズオルムだってここまでじゃねえぞ」
ヴィヴィとグランソードがそれぞれインパクトに押されてる中、しかしそれはともかくとして俺達はどうしたものかと考える。
江口結瞳は最強の夢魔、リリスである。
夢魔そのものは夢を利用することで何とか干渉することができる程度の弱い存在が殆どだ。加えて、人間と交じりすぎていて純血種となると絶滅危惧種レベルでもある。
しかも、リリスは最強の夢魔なのだが、これが力を受け継ぐという形でなってしまうものらしい。
今代のリリスになってしまった江口結瞳は、その所為で両親からも迫害されたという。
そして、その彼女を保護したのがクスキエリゼだった。
「……クスキエリゼは、最初から知っていて利用してたのでしょうか?」
「それはないでしょうね。迫害されている魔族を保護するっていう慈善活動は色んな企業でやってるもの」
データを調べ上げながら、藍羽は不安なことを考えていたハイディの言葉を否定する。
「せいぜい、将来成長したら魔獣庭園のスタッフとして迎えようって程度でしょ。夢魔はそういうのに向いている魔族だからさ」
「それはそれでまともなことに聞こえるな」
「ちゃんと利益も得られる慈善活動。営利団体としては妥当な塩梅だろう。少なくともことさらに責めることではないな」
暁に俺も同意するが、しかしここからだ。
「だが厄介なことにクスキエリゼのトップは、魔獣保護を目的とするエコテロリストのスポンサーをやっている。十中八九今の結瞳ちゃんはまともなことに扱われていない」
それが問題だ。
いや、絶滅危惧種を利益の為に滅ぼす密漁などは、人間の傲慢故に阻止してしかるべきだ。
しかしこの手のテロリストは害獣となっている魔獣の駆除や、安全確保の為の柵の設置にすら抗議してくるから厄介なのだ。
あくまで魔獣保護は人間の都合も含めてのこと。人間や魔族の都合が優先されるものだ
そこをはき違えてはいけないと思うのだが、この手の輩にとってはそこらに腐るほどいる人間の方がよっぽど低く扱われるらしい。
「っていうか、魔獣を売り買いしているクスキエリゼがそんなところに出資するって矛盾してないか?」
「当人達はそんなこと気にしないわよ。自分達が正義だってところで思考停止してるんだから、小さな矛盾何て気にしないって」
「むしろ動物園経営者が動物愛護活動やってるノリなんだろ。当人としては魔獣と人間の共存の推進を担うものとして当然の行動……とか理論武装してるんじゃないのか?」
暁や藍羽の発言に、俺も俺なりの意見を言ってみる。
実際そういう風に考えれば、おかしくも何もないとは思うしな。
とはいえ、この流れで来る内容から考えれば、少々暴走しているといっても過言ではないが。
「おそらく久須木会長の目的は、リリスによるレヴィアタンの制御ですわね。……それで魔獣を排斥している国家に戦争でも吹っ掛けるつもりなのでは?」
「ああ、魔獣の独立戦争とかそういうノリ?」
雪侶の考えで大体当たりだろう。
いや、魔獣愛護精神が強いのは良いんだが、魔獣を精神操作して戦争するというのは如何なモノだろうか?
「まあ、とにかく阻止の方向で動いて獅子王機関に借りを作っておくか。……それで、どうする?」
「そのLYLってのをハッキングすればいいんじゃねえの? 藍羽の嬢ちゃんならできんだろ」
うん、それは簡単にできそうだ。
そして、フォンフがいるならいい加減それ位の警戒はしてくるはずだ。
「……グランソード。周辺警戒を厳重にしろ。俺は暁達と一緒に久須木を追いかける」
「あいよ。んじゃ、嬢ちゃん達も手伝ってくれや」
「は、はい!!」
「わかりました」
さて、それではさっさと行動を開始するか。
……と、その前に。
「あ、ヴィヴィ。そういえば忘れてたことがあった」
俺は指輪を転送すると、それをヴィヴィに手渡した。
「あれ? これ、七式ですよね? アインハルトさんと同じ奴では?」
「ああ、最近色々ときな臭いからな。護身用だ」
なにせ十歳児だからなぁ。
万が一試合中にテロでも起きた場合、色々と考慮しなければならない。
まあ、それにしても限度というものがあるので、色々と対策を組み込んでおいた。
「ただでさえ試作型なのを、フォンフ達の新型を考慮して研究開発した特注品だ。おそらくヴィヴィが一番相性良いはずだからな」
「そ、そんなものを貰っていいんですか!?」
驚愕してもらって悪いが、実際必要不可欠だからなぁ。
「今回みたいなことがいつ起こるかわからないからな。ハイディも、やばくなったらいつでも七式使っていいからな」
「あ、わかりました。……あ、でも―」
ああ、みなまで言わなくても分かってる。
ハイディの場合は剣がないとまずいもんな。その辺もきちんと考慮してる。
「……実は、偽聖剣に予備を作るプロジェクトがあった」
そう言いながら、俺は偽聖剣とそっくりなショートソードを取り出した。
「ただ、原材料の中でも最重要だったエクスカリバーの上澄みを用意できなかった為、莫大なコストで十分使えれば奇跡の使い捨てというコストパフォーマンス激悪のものになってとん挫したんだ。……だが、君の七式なら連続使用ができるはず」
念には念を入れておいて正解だった。
今回はバカンスの終わりにサプライズプレゼントで渡す予定だったんだが、しかしこうなってしまっては仕方がない。
「寝てる暁の友達や妹さんのこと、頼むぞ? ……こうなったらやけだ。追加メンバーを加えたうえで、エイエヌ事変を解決した俺たちがこの大規模魔獣事件を解決に導いてやろう!!」
さて、それじゃあそろそろ反撃開始と行きますか!!
そして移動中に暁と煌坂がいちゃついて姫柊ちゃんがヤンデレ入ったり、暴れ出している魔獣を何とかする為に暁が眷獣を使った所為で割と物理的被害が発生したりしたが、クスキエリゼの研究施設に到着した。
さて、それじゃあさっさと本体のコンピュータを壊すべきなんだが―
「―遅かったわね。ええ、本当に遅かったわね」
そこにいたのは、学生服を纏った女性が一人。
おそらく敵なのだろうが、しかし何故かものすごく敗北感を身に纏っている。
「……妃埼! そこを通してもらうぜ!!」
「ええ、どうぞ」
と、あっさりと返答が出てきた。
……んん?
「どういうつもりですか? 久須木会長と共にレヴィアタンを使うつもりなら、ここでLYLを破壊されることはそちらにとっても問題では?」
戦闘態勢を全く取ろうとしない妃埼に、姫柊ちゃんが怪訝な表情を向ける。
それに対して、妃埼は苦笑を浮かべた。
「厳密に言えば、私達は久須木会長をそそのかして必要な行動を全部させるつもりだったのよ。彼は魔獣保護活動の一環として戦争を吹っ掛けるつもりだったけれど、私達はそれを利用するだけ。……江口結瞳の場合は、その過程が終わった後で自分ごとリリスを封印するつもりだったようだけれど」
「それは何だよ? 絃神島でも破壊するつもりだったのか?」
この島の来歴を考えると、それも十分あり得たが。
「いい線ついてるわ。もっとも、それは目的の為に必要なことなだけだけれどね」
「……」
深くは聞かない方がいいだろう。それを聞くと、獅子王機関と揉める可能性が出てきそうだ。
少なくとも、今はまだその場合じゃない。
「もっとも、好都合な事態が起こって破壊するのはこのブルーエリジウムだけで良かったのだけれど」
「その為に久須木の野望を利用したってわけか」
「ええ。少しは哀れに思うけど、やろうとしていることを考えれば同情する必要はない……のだけれどね」
暁にそう答えながら、妃埼は苦笑いを浮かべる。
「……出し抜かれたのは完膚なきまでにこちらの方だったわ」
……凄い、嫌な予感がしてるんだが。
『……そこ☆から☆先は☆!! 俺が答えよう』
そんなアナウンスが聞こえて、俺はもう既に何が起こったのか理解した。
「今度はパラケか、フォンフ!!」
ええいそりゃそうか。
禍の団を支えた屋台骨の一つであるキャスター。
奴を呼び出さない理由なんてどこにもないよな、畜生!!
なるほど大体読めてきた。
「またお前か! また姫柊ちゃんのかませか!!」
『YES!! 今度はレヴィアタンをカマセにする為にこっそり潜入してたZE♪』
ええい、つまり―
「久須木にいったい何をした!!」
『君もよく知っているランサーを宿させたのさ!!』
……っ!!
「兄上がよく知るランサー?」
「それって、禍の団が運用したサーヴァントのことよね? 弱いって聞いたけど」
奴のやばさをよく知らない雪侶とシルシが首をかしげるが、これはもうそんなレベルではない。
最悪だ。寄りにもよってあのランサーを久須木が宿しただと!?
それは、つまり―
「コンピュータで制御することなく、直接江口結瞳を制御化に置くということか!!」
「ど、どういうことだ!? そのランサーはどんな能力持ってるんだよ!!」
暁が状況を飲み込み始める。
だが、おそらく真の意味での危険度はまだ理解できてないはずだ。
「……ランサーのサーヴァントの戦闘能力自体は大したことはない。奴は現代の吸血鬼と呼ばれた程度のただの魔術師上がりの殺人鬼で、ぶっちゃけ弱い。だが―」
そう、戦闘能力では奴は弱いのだ。
陣営として所属していた英雄派の幹部連中の中でも最弱候補。そういう意味ではサーヴァントとして最低だ。
だがしかし、問題は奴の能力。
「奴は、噛み付いて吸血した相手を自分の思い通りに動かすことができる!!」
「それって、兄上がベル義姉さまを殺し掛けたときの―っ!!」
雪侶がすぐに気づいてくれて助かった。
まずい、まずすぎる。
完膚なきまでに上下関係を成立させるそれを受けてしまえば、もはや江口結瞳が自力でどうにかするなど不可能だ。
コンピュータによる精神制御など無意味だ。それ位の強制力があってこその宝具である。
……んの野郎!! 何てことしてくれやがった!!
『ちなみにレヴィアタンは時速5ノットで移動中。最初はこの日本で大暴れする予定だぜい!!』
フォンフ・キャスターがパラケを思い出させる口調でノリノリで答える。
あまりに遅いその速度。しかしその理由は良く分かる。
今回の目的は色々あるだろうが、そのうちの一つは間違いなく姫柊ちゃんに対するカマセ犬の用意だ。
おそらくは、犬の名前は久須木だろう。
……魔改造した久須木をカマセ犬にして、俺達を暴れさせるつもりだ!!
『そういうわけで、邪魔者は間引くとしようかな? さあ、先生お願いします!!』
「あーいさー。其れじゃあ俺っちも仕事するかねっと」
その言葉と共に現れるのは、黒い翼を生やした一人の青年。
そして、俺はそいつに見覚えがあった。
あ、あ、あ、あいつは!!
「あ、兄貴の彼女を寝取ったチーマー!!」
「やっほーい! 初めまして宮白兵夜くん。俺っちはビエカルっていうよーん!!」
こいつがビエカルだとぉおおおおおお!?
フォンフ・キャスターはパラケです。大体こいつがいればたいていの不可能はどうにでもできるから便利です。我ながらいいキャラ出したもんだぜ。
そしてお久しぶりねの旧幻想兵装。ランサー出しましたぜ。
これにより結瞳を完全制御下に置いた久須木を今回のカマセ犬にするのがフォンフシリーズの今回の目的。まあ、厳密に言えばフォンフ・アーチャーを納得させるための目的なのでほかにもたくらんでいることはあるのですが。
そしてにおわせていたビエカル登場。まあ、死んでいるはずの奴が出てきたのには裏があります。
そして余計な因縁及び謎が出現。
なぜ天騎は自分の彼女を寝取った男とともにフォンフと組んでいるのか……? とりあえず兵夜たちを見ていればもしかしたら気が付く可能性が微レ存。