HSDD 転生生徒のケイオスワールド2 卒業生のアザゼルカップ   作:グレン×グレン

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突然視界にとんでもない光景が出てきたらふつう驚くよね

 

 一方その頃、シルシ達も全力で動いていた。

 

 既に散発的かつ小規模だが、ブルーエリジウムでは戦闘が勃発している。

 

 挙句の果てに、兵夜がまたしても越智と激突する羽目になった。

 

 故に、ガモリーズセキュリティは準備をしていたこともあって行動を開始。

 

 表向きには代表取締役である兵夜の救出ということで動いており、人工島管理公社からもついでにブルーエリジウムにいる民間人の安全確保を依頼されている。

 

 どうやら、ブルーエリジウムのチケットは獅子王機関が裏で手を回していたらしい。

 

「後で文句を一つぐらい言っても罰は当たらないわね!!」

 

 シルシはまず真っ先にヴィヴィオ達と合流するべくコテージへと向かう。

 

 こういう時は身内は後回しにするというのが基本だが、しかし少しぐらい手心を加えてもいいだろう。

 

 それに、どう考えても緊急事態である今の状況下だ。浅葱の力を借りるのは理に適っている。

 

「……あ、シルシさん!!」

 

 と、そこにヴィヴィオとアインハルトが飛び出してきた。

 

「二人とも! ……ごめんなさい。またトラブルに巻き込んでしまって」

 

「それは大丈夫です! それより、古城さん達がいないんです」

 

「雪菜さんは監視役として動いているのだと思いますが、浅葱さんの姿も見えなくて」

 

「トマリさんは何やってるのよ! 報告・連絡・相談!!」

 

 二人の言葉に、シルシは即座に千里眼を起動させる。

 

 そして、次の瞬間とんでもないものが目に入ってきた。

 

 具体的には、噛み付き攻撃を実行しているトマリである。

 

「―本当に何やってるのよ!!」

 

 思わず全力で走り出した。

 

『あ、シルシさん? 今こっちは仕掛けてきた人達返り討ちに……というか、アップが久しぶりに「虐めていいのね!!」って感じなんだけど―』

 

「直ぐ切り上げなさい!! トマリさんが大変よ!!」

 

『……もう終わらせたわ!!』

 

 自分の趣味より幼馴染を大事にする当たり、アップは悪人に成り切れない人物だ。

 

 そしてすぐに急行してきてみれば、そこには割とボロボロというか血塗れのトマリがいた。

 

 全員が血の気を僅かながらにも引かせて駆け寄ろうとするが、トマリは苦笑を浮かべながらサムズアップした。

 

「……全員返り討ちだよっ! まあ、一人ちょっと遠慮できなかったけどね」

 

 そう言いながら少しだけ後ろに下がるのは後ろめたさか。

 

 子供が近くにいると分かっていて、殺しという手段を取ったことに対して気が引けているのだろう。

 

 だが、それに対して真っ先に駆け寄って肩を貸したのはヴィヴィオだった。

 

「大丈夫です」

 

「ヴィヴィオちゃん? あの、ちょっと血がついてるから―」

 

「大丈夫です。トマリさんは悪い人じゃないって、知ってますから」

 

 ……本当に人間ができていると、シルシは戦慄すら感じた。

 

 自分の周囲の親しい人物の中で最も人間ができているのが一番最年少だというのはどうかと思う。

 

「そういえば、古城さんはどちらに?」

 

「そ、そうね。噛みつき攻撃何て見たからそっちのことを忘れてたわ」

 

 と、すぐに千里眼を起動して探索を行う。

 

 ―今まさに腹を剣で貫かれている古城の姿をその目に移した。

 

「だからどうなってるのよ!!」

 

「トマリ! トマリ大丈夫!?」

 

「ちょっとトマリ!! あなた治る怪我で済んでるのよね!?」

 

 ツッコミに被せる形で、須澄を抱きかかえて飛行したアップがちょうど駆けつけてきた。

 

 ……ここからが、ややこしいことになりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、グランソードと雪侶は一仕事を終えて合流していた。

 

「ったく! とりあえずの避難誘導及び警護体制はきちんとできたけどよ!!」

 

「そろそろ(あにうえ)を優先させてもらいますのよ!!」

 

 普通に考えれば、宮白兵夜の眷属悪魔である二人は兵夜を優先するのが基本なのだ。

 

 そこを主命令とはいえど、先ず一般人の安全を優先したのだから、これ以上の我が儘は聞かない。

 

「っていうかよ雪侶。そもそも大将があんなに恨まれてる理由に心当たり本当にねえのか?」

 

「と、言われましても。一から本気で恨まれている可能性のある人物を調べたというのなら、兄上も流石に漏れはないと思いますの」

 

 二人としてはそこが気になる。

 

 確かに敵を確実に作るような生き方をしている男だが、それにしてもあそこまで恨まれることはそうはないだろう。

 

 間違いなく、大抵の相手に関してはそんな気も起きないような目に遭わせていると確信している。

 

 しかしどうも禍の団の関係者というわけでもないようだ。

 

 しかも、かなり個人的に因縁がある輩をセレクトしていると思わしき発言もあった。

 

 なら、兵夜なら気づいてもおかしくないはずなのだ。

 

「つってもフォンフの話が正しけりゃ、間違いなく関係あるだろ? 例の如くうっかりしてるとしか思えねえんだが?」

 

 グランソードの懸念ももっともである。

 

 主を信用しているし信頼できるところもあるが、しかしうっかりがある。

 

 何か失態があるとしか思えない。

 

「ふむ、ではやっぱり事情をしっかり聞き出すしかありませんの。兄上に正しく責があるのなら、一定の賠償は当然の義務ですし」

 

「だな」

 

「ですの」

 

 と、言うことで結論は出た。

 

 故にそうする。

 

「「ハイそこまで!!」」

 

「なっ!?」

 

「あ、お前ら!!」

 

 駆けつけると同時にダブルキックを越智に向かって放つ。

 

 そしてそれをもろに喰らってもんどりうって倒れる越智から庇うように、雪侶とグランソードは兵夜をカバーする体制に入った。

 

「事情も説明せずにこれ以上の狼藉!! 流石に眷属としても妹としても見過ごせませんの!!」

 

「説明できないってこたぁ、一般人から見て納得できない理由ってことなんだろ? そんなもんでうちの大将やらせるわけにはいかねえなぁ!!」

 

「……いや、ありがたいんだけどね? お前ら民間人の保護どうした?」

 

「「手回しは万全!!」」

 

 微妙に漫才に成り掛けていたが、しかし越智は冷静だった。

 

「流石に三対一は無理があるわね。……今日のところは引くわ」

 

 いうが早いか、素早く反転すると、わき目も降らずに逃走を開始する。

 

 むろん逃がさんとばかりに攻撃を放つが、狙いをずらす為にランダムに左右にずれており、さらに外骨格で一発や二発を無視している為対処ができなかった。

 

「いい加減、因縁を清算したかったんだがな」

 

 追撃は困難と判断して、兵夜は首を振ってため息をつく。

 

 それについては同感なので、グランソードも雪侶もため息をついた。

 

「どうすんだよ大将。理由説明しないってことは、向こうも八つ当たりの自覚はあるんじゃねえの?」

 

「兄上的にはガンスルー展開ですのね。今度は包囲戦術で突破できないようにするべきですわね」

 

 だよなぁ。と、兵夜も頷いた。

 

 これに関してはもう看過できない領域に到達しかけている。

 

 近年地球ですらきな臭い動きが増えている以上、よそでも面倒に巻き込まれるのは正直避けたい。

 

 それが、フォンフ絡みなら確実にだ。

 

 ……次は、本当に殺す気で行く他ない。

 

 そう、兵夜は判断した。

 

『おい、兵夜。聞こえるか?』

 

 と、そこに本来合流予定だったノーヴェからの通信が届く。

 

「ノーヴェ。そっちは大丈夫か?」

 

『武装した種族問わずの連中に襲われたけど、返り討ちにしたよ。一応これでも戦闘用だからな』

 

「……なんか、マジすまん」

 

 観光目的で誘ってみれば、まさか襲撃されるとは思わなかった。

 

 ゲストまで思いっきり巻き込んでいることも考えると、本気で土下座案件だろう。賠償金で当分遊んで過ごせるぐらいの金を動かすべきか。

 

『いや、そっちも知らなかったんだから気にしなくていいって。其れよりすぐ戻れるか?』

 

 と、ノーヴェの口調には苦いものがあった。

 

『今回の件の情報が掴めた。煌坂って人が見つかったんだよ』

 

 ……どうやら、ここからが本格的に動くべきところらしい。

 




喰ったらその分強くなる。ストブラ世界の吸血鬼ってある意味便利です。パワーアップさせやすい。

そしてそろそろ遠慮がなくなっている兵夜。

いつまでたってもなんで恨んでいるのか放してないのが原因です。兵夜は割と律儀なので、正当性のある恨み言ならきちんと賠償ぐらいはします。

そう何度も言っているのに説明しないので、八つ当たり同然の逆恨みの類だと判断してきています。すなわちかつてのハーデスと同様の行為を働いていると。









…………この二人の最終決戦。派手なことになるでしょう。

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