HSDD 転生生徒のケイオスワールド2 卒業生のアザゼルカップ   作:グレン×グレン

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錬金術師の遺産編も今回で解決。


兵夜「いつか当たるとは思ってたが今あたるかぁ……」

 その後、事態はとんとん拍子に収まった。

 

 ヴァーリによって蹂躙された”賢者”(ワイズマン)が収まった宝玉は、後でしっかり暁が眷獣を使って消滅させた。

 

 何百年と続いた錬金術師の大いなる失態は、ここに完全に終結したのだ。

 

 そして俺達が何をしているのかというと―

 

「………それで、申し開きはありますか、皆さん?」

 

「俺は暁に報酬を後払いで確定させたうえで同意したので、文句は全部暁にお願いします。一応苦言は呈しましたし」

 

「宮白お前!? 全部俺に押し付ける気かよ!?」

 

「先輩は黙っていてください」

 

 見ての通り、全力で姫柊ちゃんに説教されていました。

 

 当然天塚の事を黙っていた事について説教ですとも。うん、これはかなりきつい。

 

 ちなみにヴァーリとアルサムは安全圏で茶をすすっていた。

 

 ヴァーリはともかくアルサムは共犯でいいと思うのだが、解せぬ。

 

「まったくもう。先輩は目を離すと自分からトラブルに巻き込まれに行くんですね。これは監視役として今後片時も離れられません」

 

「いや、お前今は監視役休んでるんだよな?」

 

「………なにか言いましたか?」

 

「暁。今は何も反論しない方がいい」

 

 俺は一応警告したよな?

 

 まあ、暁の気持ちも分かるから協力したが、一応言ったからな?

 

 どうせ姫柊ちゃんは常に暁の事考えて心配してるだろうしなぁ。

 

 まあ、休暇中だったんだからあえて巻き込まないというのもましな選択肢ではあるんだが。

 

「その辺りにしておくといい。年下、それも義務教育の中学生が命がけの仕事をしているなどと知れば、まともな感性なら気にもするだろう。せっかくの休暇をゆっくりと楽しんで欲しいと言う事そのものは間違ってはないはずだ」

 

 と、アルサムが遂に助け船を出してくれた。

 

「その意志に感じ入るものがあったからこそ、宮白兵夜も協力したのだ。結果的に裏目に出た節はあるが、少しぐらいは汲んでやるべき」

 

「そ、それはそうですが……」

 

 よし、アルサムの意見なら流石に聞いてくれるようだ。第三者ポジションに収まってやがったのが功を奏した。

 

「そ、そう―」

 

「お前は逆効果だから黙ってろ」

 

 暁が何か言いそうになるが、それに関しては俺が取り押さえて黙らせる。

 

「それはそれとして、依代を復旧させた南宮那月から連絡があった」

 

 と、更にアルサムは話まで変えてくれる。

 

 第三者ポジションにさらりと逃げ込んだ時は少し恨んだが、ここは素直に感謝しておくことにしよう。

 

「……こちら側を援護した女についてだ。どうやら非合法で賞金稼ぎをしている身元不明の女だそうだ」

 

「非合法の賞金稼ぎ?」

 

 暁が首を傾げるが、しかしそういうことはあるだろう。

 

「そう珍しい話ではないだろう。こういう実力者がゴロゴロいるのなら、賞金がかけられている者もいるだろう。そういう手合いを生きたまま半殺しにとどめて突き出すことで生計を立てていたようだが、なぜか名を上げる前までの来歴が不明で、その筋では有名だったらしい」

 

「なかなか面白そうなものと関わっているようだね。俺もぜひ目にしたかった」

 

 ヴァーリが実に残念そうにしているが、問題点はそこじゃない。

 

「……だが、あいつは聖魔剣を使ってたぞ? 俺達の世界の物体で、それも最近できたものをなんで奴が持ってるんだ?」

 

「そこまでは不明だ。調査のための人員を派遣する必要もあるだろう」

 

 なんか訳ありっぽいな。

 

 それに、他に気になることもある。

 

「奴の言っていたビエカルとかいうのは―」

 

「それについても既に調べがついている。コカビエルについて離反した堕天使の1人で、エイエヌ事変で戦死が確認された」

 

 ……そうか。

 

 コカビエルに与したということは戦争推進派だったのだろう。結果的には好都合ということか。

 

 しかし、あの女はそのビエカルというやつのことが相当お気に召さなかったらしいな。無理して追撃したぐらいなんだし。

 

 それに、他にも気になることがある。

 

 越智のことだ。どうもそのビエカルとかいうのが関わっているらしい。

 

 さらにあの女が越智のことを知っているっぽかったことから考えても、何かしらのつながりはあると思うんだが……。

 

 そこまで考えて、俺はある事に気が付いた。

 

「そういえばアルサム、その女の名前……知ってるか?」

 

 そういえば、全然聞いていなかった。

 

 アルサムも言われて気が付いたのか、はたと手を打つと資料を取り出して確認する。

 

「……マコト、だそうだ。偽名の可能性が大きいがな」

 

 マコト……か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく。ヴァーリの所為で姫柊雪菜の強化に失敗してしまった。あの男、禍の団の時から余計な事しかしてないんじゃないか?」

 

 フォンフ・アーチャーは舌打ちし、そして視線を前へと向ける。

 

 そこには、いくらかの負傷を見せながらも力強くこちらを睨み付けるマコトの姿があった。

 

 結果的に振り回すだけに終わった責任を取って迎撃を命じられたが、しかしこの女は面倒だ。

 

 正体と知識はどうでもいい。それがある意味で役に立たないのは知っている。それは()から教えられている。

 

 前提条件が大きく異なっているこの世界では、彼女の知識はあまりにも役に立たない。そして、当人も積極的に公開するつもりはないのだろう。

 

 だが、()には恩がある以上、ここで彼女と殺し合わせるわけにはいかなかった。

 

 今後の展開にかなりの影響を与えてくれた彼に対する恩義は返しておくべきだろう。利害も一致している以上、ある程度の便宜は図る。

 

「さっさとアイツを出しなさい!! なんで、なんであの人を巻き込んだの!!」

 

「それは彼の発案だ。分かっているだろうに、越智は当て馬としてこの上なく宮白兵夜の相手にしやすい」

 

 さらりと返答すれば、マコトの表情は怒りに燃え上がる。

 

 顔も分かり易く真っ赤になるほど怒っている。これほど分かり易い怒り方もそうはない。

 

 それが事実としてそうだとわかっているがゆえに、マコトの怒りはより強く燃え上がっている。

 

 だが、それでもマコトは冷静だった。

 

 その冷静さは父親似とでも言えばいいのか、マコトはこれ以上の追撃を良しとしなかった。

 

「覚えてなさい!! 絶対こんな事した落とし前はつけてもらうんだから!!」

 

 その言葉と共に、彼女は飛び退ると撤退を開始する。

 

 聖魔剣の能力で幻影と透明化を同時に行いながらの離脱に、フォンフ・アーチャーは追撃を行わなかった。

 

 ……技術提供を行っている国の都市の方に逃亡を行っているからだ。

 

 今ここで攻撃を行なえば、ついうっかり街に被害を出しかねない。

 

 せっかく苦労して手に入れたスポンサーの機嫌を、こんなところで失うわけにはいかなかった。

 

「……裏で行動している方が楽ではあるが、こういう時は縛られるな」

 

 そう言いながら弓を卸し、フォンフ・アーチャーはため息をつく。

 

 彼からこの可能性については聞いていたが、まさか本当に起きてしまうとは困った事だ。

 

 しかも、今回の件で時空間移動技術についての辺りを与えてしまった可能性が高い。

 

 ……今後の作戦をある程度変更する必要に迫られ、フォンフ・アーチャーは舌打ちを返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は舌打ちをする他なかった。

 

 暁はものの見事に授業をサボった為補習が確定。

 

 そして次の試合も確定した。

 

 よりにもよって今回の相手は明星の白龍皇チーム。……ヴァーリと試合をする羽目になった。

 

 間違いなく最強クラスのチームの1人。少なくとも、若年層のチームならば総合力で最強だろう。

 

 西遊記に登場する孫悟空・沙悟浄・猪八戒の末裔。元SSランクのはぐれ悪魔。アーサー王の血を引く末裔二人。更に神喰いの魔獣フェンリルやら古の古代兵器という超絶集団。そしてそれを率いるは歴代最強の白龍皇ヴァーリ・ルシファー。

 

 そして今回発表された戦闘ルールはライトニング・ファスト。バージョンノンリミット。

 

 制限時間一時間で、どれだけ倒せるか、もしくは王を倒せるかで決着がつく非常に分かり易いルールだ。

 

 ……一言言おう、相性が最悪だ。

 

 幸い今回は使い魔のルール制限などが解除される特別仕様な為、暁が眷獣をフル仕様すれば勝ち目はあった。

 

 あったのに補習で潰れた。

 

 こうなれば、俺も遠慮はしない。

 

「……ヴァトラー!! レーティングゲームに参加してもらうぞ!!」

 

「あれ? 今回は模擬戦って話じゃなかったっけ?」

 

「あれは無しだ!! それより周囲の被害を比較的無視できるレーティングゲームの方がいいだろう?」

 

 俺は速攻で商談を進めていく。

 

 なにせ、今回のレーティングゲームでは切り札の一つともいえる暁が使えない。

 

 となれば、別の形でそれを補填する必要がある。

 

 そして、ヴァトラーは真祖に最も近い吸血鬼と呼ばれている。

 

 この条件が揃っている状態で、この選択肢しかないだろう。

 

 俺も、できることなら避けておきたかった。

 

 まず間違いなく危険人物であるヴァトラーは、かなり警戒するべき相手なのだ。っていうか警戒する以外の選択肢が存在しない。

 

 しかし、だからこそメリットもある。

 

 それは単純にヴァトラーの戦闘能力が知れるという事。

 

 実はヴァトラーの眷獣、合体眷獣を抜きにしても、一体詳細が知られていないものが存在する。

 

 もし、それを知ることができれば今後の戦闘能力の把握において非常に有効になるだろう。

 

 そういう意味ではヴァーリチームは当て馬にもってこいだった。

 

 なにせ、元がテロリストだから少しぐらい痛い目を見ても心が痛まない。いや、まったくもって痛まないなうん。

 

 ちなみに、日程は既に調べておいてある程度融通が利く時期である事は既に調べがついている。

 

 ………さて、ヴァトラーはどう出る?

 

「………一つ聞くけど、そのレーティングゲームでどう動けばいいのかな?」

 

「二強のうちどちらかを全力で叩き潰せ。それ以外の些末事は全部こちらで引き受ける」

 

 その言葉にヴァトラーは少しだけ考えるそぶりをし―

 

「―いいネ。それなら暇潰し位にはなりそうだ」

 

 ―その口角を、釣り上げた。

 




超強い戦闘狂と超強い戦闘狂が交差するとき、物語という名の激戦は始まる。








それはともかくとして、名前と姿が出てきたキャラの補足情報という名の謎を深めるキーワード。

まあ、マコトの正体に関してはこの名前だけで察することは不可能ではありません。訓練されたD×Dファンにとっては既出ネタですしね(^^♪






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