HSDD 転生生徒のケイオスワールド2 卒業生のアザゼルカップ   作:グレン×グレン

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休息は過ぎゆき波乱は生まれ

 

「それで? イッセーはここ最近どうなんだよ」

 

 俺は久しぶりにイッセーとこうしてだべる機会に恵まれたので、近況を聞いてみる。

 

 なにせ、俺は冥界での業務が多いので中々会えない。

 

 イッセーもおっぱいドラゴンが大人気で、あらゆるところにイベントで引っ張りだこだ。

 

 こりゃ、将来的にイッセーが多忙すぎて中々会えなくなるだろうと予測している。

 

 ま、それに関しては仕方がない。

 

 もとよりガキの頃の友達なんてそんなもんだ。社会人になったら直接顔を合わせる機会なんてごっそり減るもんだ。無二の親友が十年周期の同窓会でしか会わなくなるなんてこともある。

 

 それもまた成長だろう。それは仕方がない。

 

 だからこそ、こうしてゆっくりだべる機会は逃すわけにはいかないからな。

 

「ま、俺は大学生活を満喫してるよ。人間相手には全然モテないけど」

 

 トホホといわんばかりのがっくり具合だが、それは仕方がないだろう。

 

「当然だ。一般的な日本人は覗きの常習犯を毛嫌いするもんだからな」

 

「ひでえ!」

 

 心底ショックを受けるイッセーだが、それは自業自得だ。

 

 いい加減それを理解しろ。いや、真面目な話してください。

 

「人間世界との交流が進めば、覗きの常習犯であるお前に対するバッシングは広まる。それが原因で異形と人間との間で紛争が起きたらどうするんだ、ああ?」

 

「そ、そんなことまで警戒しなけりゃいけないのかよ!?」

 

 いや、俺もまさかそこまででかいことが起こるとは思ってないけどな?

 

 それでもデモの一つや二つは起きるだろう。それが原因で武装隊との衝突が起きて死者が出たら目も当てられん。

 

「別にいいじゃない。そりゃぁ褒められたことじゃないかもしれないけど、そこまで警戒すること?」

 

「異形の常識、人間の非常識。異文化交流は慎重に行なった方がいいでしょう、姫様」

 

 姫様がそうやって甘やかすから、イッセーがいつまで経っても性犯罪をやめられないんですよ。

 

 いや、俺も矯正はできなかったけど。

 

 でも、今は状況違うだろう。イッセーお前、女に不自由してないだろう。姫様含めて十人以上にフラグ立ててるじゃねえか。

 

 その気になれば大奥もびっくりの人数嫁にできるだろうに、何でいまだに覗きをやめれないのか。

 

「……お前の覗き癖は人間側から絶対受けが悪いんだから、いい加減矯正しろ。いいな、九大罪王候補様?」

 

 割と本気でそうしてもらいたい。

 

 なにせ、イッセーは次期九大罪王候補なのだ。それも、現四大魔王や神話体系のトップ陣からは最有力候補として認定されている。

 

 つまり、人類との交流に関してはイッセーが矢面に立つ可能性もあるのだ。

 

 そんな奴が性犯罪の常習犯などと知られれば、間違いなく揉める。絶対に揉める。

 

 政治的権力はあくまで魔術師組合の長としてのつもりの俺ならともかく、魔王がそれなのは流石にまずい。

 

 せめて、過去にそういうことを繰り返していたという範囲内で納めてくれないと余計なもめ事を産みかねないのだ。

 

「俺、魔王の後継なんてなれる自信がないんだけどなぁ」

 

 イッセーはそういうが、しかし周りが乗り気なのがまずい。

 

「確かに、お義姉様すらそうしたいと思っていることが厄介だわ。……冥界の民の多くもイッセーが九大罪王の候補だとわかれば大半がもろ手を挙げて歓迎するでしょうし」

 

 姫様も、流石に思うところがあるようだ。少しだけ表情が曇っている。

 

 まったく。異形社会はフリーダムな連中が多すぎる。

 

 人間世界との交流で、それが余計な火種とならないかが非常に不安だ。

 

「まあいいじゃない。どうせ、もめ事が起きないなんてことはないでしょう?」

 

 と、苦笑を浮かべてシルシが話を勧めた。

 

「人間は、いまだ肌の色での差別すら治せてないのよ? いきなり悪魔や妖怪の存在を知らしめられても、先ずは心理的抵抗が先に来るはずだわ」

 

「さらに不安になるだけなんだけど、それ」

 

 イッセーがツッコミを入れるが、しかし冷静に考えるとそれはそうだ。

 

 しかも天使は悪魔や堕天使と和平を結ぶどころか、他の神話体系の神と交流を結んでいる。

 

 一神教としてそれどうよというツッコミが来るだろうし、これ、前途多難すぎるだろう。

 

 E×Eが来る前に最低限の足並みだけは揃えておきたいんだが、大丈夫なのか?

 

 い、いっそのことE×Eが解決してから存在を公表するというプランに変えるのもありな気がしてきた。

 

「別に、悪い意味で言ってるんじゃないわよ、兵藤さん」

 

 しかし、シルシの言うことはどこか違った。

 

「そうじゃなくて、そんな有様なのに繁栄している人間のバイタリティはすごいなって話よ。手放しで褒めれることでもないけれど、ある意味評価できることじゃないかしら?」

 

 ………な、なるほど。

 

 そういう取り方もあるのか。少し意外だった。

 

「私は人間との交流は賛成だわ。人間の技術を利用すれば、私もより強くなれるかもしれないもの」

 

 そういいながら、シルシはストローをくるくる回すと虚空に突き出す。

 

「剣術だって人間が生み出した物でしょ? なかなか舐めたものじゃないじゃない」

 

「確かに、弱いがゆえに人間の発想力は参考になるところがあるわね」

 

 姫様もそういうと、俺とイッセーに視線を送る。

 

「二人とも人間ベースの転生悪魔なんだから、もうちょっと人間のことを評価した方がいいと思うわよ?」

 

「「は、はい!」」

 

 おぉっと。流石の俺も異形側に思考が傾いていたようだ。反省反省。

 

 確かに、人間がすごいからこそ異形技術の流入が危険視されているんだし、もっと人間のことは評価した方がいいな。

 

 ……最も、それが良いことかどうかはまた違うことなんだが、な。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、作戦はスタートした。

 

 最も、俺達はいざという時の用心棒とアドバイザーであり、仕事をするのは他の者達だ。

 

 今回は日本を仕事場としている三大勢力の者達を中心に動いている。むろん、妖怪や五大宗家からも参加者はいるが、こういう時は陣営を統一した方が足並みが揃うということでメインどころは三大勢力だ。

 

 既に作戦開始から三十分が経過。掃討作戦は順調だ。

 

「来てなんだが、これは俺達必要なかったか?」

 

 いや、奥の手である俺達が仕事しないで済むのはあらゆる意味で良い事なんだが、しかし俺達もスケジュールを苦労して開けてきているわけだ。

 

 イッセーはおっぱいドラゴンのイベントがいくつもあるし、俺もメーデイアの修復作業や警備強化などの労働が多い。ぶっちゃけ多忙だ。

 

 だから、やることがないのに出向くのはそれはそれで嫌な気分になってしまう。

 

「ま、いいじゃねえか。俺達がやることないぐらい順調に進むのなら、それは良いことだろ?」

 

「そうね。彼等だけで解決できるようになったのなら、それは冥界が成長しているということだわ」

 

 イッセーも姫様もそういうが、あんたらはまだキャンパスライフを満喫できるぐらいの余裕があるからいいですよねぇ。

 

 俺は割と忙しい時は忙しいんですよ。特にここ最近はフォンフの所為でさらに忙しいし。

 

 そろそろ一回暁の様子見をする必要があるし、さてどうしたもんか。

 

「まあ、何が起こるかわからないし、そういう意味だと余剰戦力を用意するのは当然なんだが」

 

「俺達もそんな扱いされるようになってきたんだなぁ」

 

 俺のボヤキに、イッセーは感慨深くそういう。

 

 確かに、なんだかんだで俺達はトラブルに巻き込まれて強制的に前線で戦闘することが多かったからなぁ。

 

 こういう、参加するけど最初は待機とかいうパターンはあまりなかった気がする。教会の悪魔祓いとの大規模模擬戦とかぐらいか。これもまた組織の成長か何かかねぇ。

 

 ……ちょっと感慨深いが、将来的にどんどんそうなっていくんだろうな。

 

 なにせ、俺達は冥界でも有数の戦力だ。あくまで若手だったあの頃とは別の意味で温存しておくべき存在だし、こういう仕事はもっと下の連中がすることになるんだろう。

 

 俺はもっとアクティブに動くのが性に合っているが、ここまで偉くなってしまったのなら仕方がないということか。

 

 なら、その練習と考えるべきだろう。今回の作戦では待機という言葉を本格的に覚えるとする―

 

『作戦司令部! 緊急連絡です!!』

 

 その瞬間、緊張感に包まれ悲鳴交じりの声が響いた。

 

「どうした! 何があった?」

 

『襲撃です! 敵が攻めてきました!!』

 

 敵? どういうことだ? 今戦っているだろうに。

 

 疑問符が浮かぶ中、通信機からたくさんの悲鳴が聞こえてくる。

 

『何だこいつは!? 硬い上に早い!!』

 

『何だこいつは、く、来るなっ!?』

 

「どうした!? 敵襲とは何だ、報告しろ!!」

 

 ええい、なんだ? 何があった!?

 

「なんだ? 敵の新兵器か何かか!?」

 

「ちょっと待ちなさい。すぐに見るわ!!」

 

 すぐにでも飛び出そうとするイッセーを制して、シルシが千里眼で様子を確認する。

 

 そして、一瞬だけ呆けた?

 

「どうしたの? 何があったの?」

 

 その肩に姫様が手を置いて、シルシははっと我に返る。

 

 そして、ちらりと視線を向けると、微妙な表情を浮かべた。

 

「デフォルメされた蠍のような物体が、犯罪組織と私達の部隊を同時に襲ってるわ」

 

 ………。

 

「なにそれ」

 

 デフォルメってなんだよデフォルメって。

 

「私だって見ただけなんだからわからないわよ」

 

「まあ、そうだよなぁ」

 

 な、なんかシュールな光景が繰り広げられていることだけは理解できた。

 

 し、しかし一体どういうことだ?

 

 そんな疑問を浮かべかけたが、しかしすぐにイッセーが大声を上げた。

 

「んなこと言ってる場合かよ!? とにかくすぐに助けに行かないと!!」

 

 それもそうだな。流石はイッセーぶれない。

 

 まったく。これはすぐにでも行かないとな!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おらぁ!!」

 

 赤龍帝の鎧を展開したイッセーが、サソリ擬きをぶん殴る。

 

 一撃で装甲がひしゃげるが、しかし当たり所がよかったのか、すぐに体勢を整えると腕を振り上げる。

 

 しかし、その腕が振り下ろされるより先に消滅の魔力がひしゃげた装甲から内部を蹂躙した。

 

「イッセーの拳ですら、当たり所次第じゃ耐えるだなんて!」

 

「しかも早い! リアス、気を付けてくれ!!」

 

 イッセーと姫様が背中を合わせながら戦闘を行う中、俺たちもすぐに動く。

 

 確かに、ゴキブリの如く俊敏に動くこの軌道は厄介だ。

 

 しかも屋内だから魔力攻撃はできる限り避けないといけない。これも向こうに好都合。

 

 そのくせ、このデカブツの能力なのかこいつ天井すら移動する。まるで蜘蛛やらトカゲのように垂直に登ったりするのは厄介だ。

 

 しかし、俺()には通用しない。

 

『兵夜さん、右!!』

 

「ああ、お前のおかげで見えている!!」

 

 シルシと融合した俺は、即座に未来視でその軌道を見切る。

 

 そして、堅実にぶちのめす!!

 

 確かに硬いが、しかしセンサー部分などを狙えば一撃でぶち抜ける。

 

 しかもこちらは怪力の神を使用中。力比べでも負ける余地はない。

 

「悪いが、こちらもD×Dのメンバー何でな!」

 

 そういうわけで確実に一体一体倒していく。

 

 しかし、中々に性能が高いな。

 

 量産型の邪龍に匹敵する性能だ。空中戦闘能力がない分、装甲強度と膂力では上か。

 

 しかも、数もそこそこある。

 

 禍の団の残党がこれだけの兵器を大量生産する能力があるとは思えない。とはいえフォンフ達にしてはあっさりと発見されるとも思えない。

 

 まさか、コイツは今回の犯罪組織とは別口か!!

 

「シルシ! こいつらがどこから来てるか確認してくれ!!」

 

『わかったわ! ……これは!』

 

 どうした、何があった?

 

『武装船を係留しているドッグの海面から出てきてるわ! やっぱりこいつらは別口よ!!』

 

 ちぃ! やはり第三勢力か!!

 

「第三勢力? この情勢下でどこの勢力がそんなことを―」

 

 姫様が怪訝な表情を浮かべるが、しかしそんなことをしている場合でもない。

 

 とにかく、今はこいつらを切り抜けるのが先決だろう。さっさとケリをつけないと―

 

『全員、上よ!!』

 

 シルシの声で、俺は我に返る。

 

 そして、俺達全員がすぐに飛び退った。

 

 直後、隕石の墜落を思わせる衝撃が響き渡った。

 


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