HSDD 転生生徒のケイオスワールド2 卒業生のアザゼルカップ   作:グレン×グレン

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あけましておめでとうございます!!

今年も、ケイオスワールドをお楽しみください!!










それはそれとして、不思議に思ったことはないでしょうか?

なぜ、覇剣ではなく覇剣「抜刀」なのか? ……と

その答えを、今回の話で教えさせていただきます


魔王剣VS乳乳帝!! 第四ラウンド!!!!

 イッセーSide

 

 

 

 

 

 

『―兵藤一誠さまの僧侶、一名戦闘不能』

 

 その言葉に、俺は一瞬だけ動きが乱れた。

 

 そして、その瞬間アルサムさんの反撃が始まった。

 

「待ちくたびれたぞ!!」

 

 真正面からの拳が、俺の顔面に突き立つ。

 

 魔力を大量に込めて放たれたその拳は、威力だけならサイラオーグさんのパンチにも匹敵する。

 

 轟音が鳴り響いて、その衝撃だけで俺は鼻血が出てきた。

 

 そして、そこから一気にアルサムさんは懐にもぐりこむと反撃を開始する。

 

 今までルレアベだけを使っていた戦法を変え、ルレアベを逆手にもって連続で拳をたたきつける。

 

 何この人? 戦闘スタイルが剣士だとばかり思ってたけど、徒手空拳もできるじゃねえか!!

 

 いや、意外と素人くさいところもあるけど、しかししっかり努力を重ねて作られているのがわかる。

 

 この人格闘技の才能まであるのかよ! ちょっとうらやましい!!

 

「アンタ殴り合いもできるのかよ!!」

 

「世界間交流の一環として、時空管理局の格闘技(ストライクアーツ)の心得がある程度だがな! しかし!」

 

 そこで素早くルレアベを準手に持ちかえると、一気に切りかかる。

 

 俺はそれを両手にオーラを収束させて受け止めるが、しかしその顔面にケリが叩き込まれた。

 

「……予備兵装としてはなかなかだろう?」

 

 確かに、結構効いたぜ!!

 

 だけど、何とか流れは持ち直した!!

 

 でも誰だ? まさかアーシア―

 

「戦闘不能になったのは、レイヴェル・フェニックスだ」

 

 アルサムさんはそう断言する。

 

 え? でもレイヴェルはフェニックスだ。ダメージをおっても、炎とともに再生する。単純な耐久力なら、俺に次ぐレベルだろう。

 

 防戦に徹していれば、アルサムさんの眷属で倒せるのなんて―

 

「時空管理局及びフォード連盟を、甘く見ない方がいい」

 

 ルレアベを乳乳帝の鎧が軋みを上げて受け止める中、アルサムさんは告げる。

 

「時空管理局やフォード連盟の魔導士はその戦闘技法に、魔力ダメージというものがある」

 

 ま、魔力ダメージ?

 

「魔力などの神秘的エネルギーそのものに干渉することにより、肉体的損傷を最小限に抑えながら相手を戦闘不能にする。これが、どういうことかわかるか?」

 

 な、なんだそりゃ!? 時空管理局ってそんな技術まであるのかよ!

 

 そんなのつまり不殺攻撃。マジですげえ!

 

 ……ん? まてよ? 「肉体的損傷を与えないで戦闘不能にできる」?

 

 それってつまり―

 

「フェニックスの不死を突破できるってことか!?」

 

「すでに、私の賛同者のフェニックス由来の者の協力で確定した。フェニックスの不死は魔力ダメージには対応できない」

 

 そういいながら、アルサムさんはにやりと笑う。

 

 マジかよ。時空管理局は不死封じを無自覚にやってのけてたのか。

 

 殺せないどころか殺さない。不殺攻撃ゆえに不死を突破できるのか!

 

 っていうか肉体的ダメージじゃないなら、アーシアの神器も無効化できるじゃねえか!!

 

 あ、ヤバイ。うちの僧侶二人完封されてるよ!!

 

「見ているか冥界の者たちよ!! フォード連盟及び時空管理局がもたらす新たな魔力運用方法は、近い将来レーティングゲームの未来すら変えるだろう!!」

 

 そういいながら、アルサムさんはルレアベと体術を織り交ぜた攻撃で俺と戦う。

 

 今までのルレアベだけに頼っていた時よりも、明らかに攻撃の頻度が上昇していた。

 

 うぉおおおお、マジでやばい!! 

 

 天才がたゆまぬ鍛錬をするとこうなるのかよ! さすがに努力はサイラオーグさんほどじゃないと思うけど、才能があるからかなりやばい!!

 

 しかも異世界関係は情報がまだまだだから、俺たちでも知らないことはたくさんある。いや、俺は知らないこといっぱいあるけどね?

 

「ゆえに、私はその未来をつかんで見せる!! そして、その恩恵を冥界にもたらす!!」

 

 そして、出力同士の拮抗に持ち込まれる。

 

 いや、これなら俺の乳乳帝の方が総合的に上回っている分勝ち目はあるけど―

 

「ゆえに負けんぞ私は勝つ!! なぜならば―」

 

 だけど、いつの間にか少しずつ押し込まれている。

 

 ……まずい、これは―

 

「ごく短時間しか使えない、転生悪魔の切り札に負けるようで、純血悪魔の代表を名乗れるわけがないのだから!!」

 

 ―時間切れ!?

 

 そして、勢い良く弾き飛ばされると、アルサムさんは一気に反撃の体勢を取る。

 

「冥界の、悪魔の未来を切り開く! その担い手の中に真なる悪魔がおらずして、どうしてそれを誇れようか!! 転生悪魔に頼るだけで、悪魔の未来が切り開かれたなど言えるわけがない!!」

 

 やられた! 最初から、アルサムさんの狙いは持久戦による時間切れだったんだ。

 

 乳乳帝をしのいでから、そのあと一気に押しかかる。

 

 乳乳帝はインターバルさえあれば何度もできるけど、しかしそのインターバル中に倒せるのなら十分に狙える。

 

 そして、アルサムさんはそれができる。それだけの実力者だ。

 

「だから見てくれ転生悪魔よ! 純血悪魔は、お前たちを支配するに足る存在なのだと、私が証明して見せる!!」

 

 そして、其のまま押し切ろうとして―

 

「―そして、それは純血悪魔が一方的に転生悪魔を搾取するということではないことも証明しよう!!」

 

 いったん、アルサムさんは俺から距離を取った。

 

 なんだ? この好機を逃してまで、いったい何をするつもりなんだ?

 

「―兵藤一誠。乳技の封印とともに奥の手の一つをこちらも封印するという話をしたことを覚えているか?」

 

「え、あ、はい」

 

 俺の返答に、アルサムさんはうなづいた。

 

「無論我が切り札とは覇剣だ。だが、私は覇剣は使わせてもらうと言っただろう?」

 

 そういえばそうだな?

 

 でも、切り札をいくつも持っている奴って別に珍しくないような―

 

 その瞬間、ルレアベから莫大なオーラが放たれた。

 

「その理由を、ここでお教えしよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 会場にいる者、映像を見る者。彼らはみな一様に、その姿を目の当たりにした。

 

「地獄にて目覚めよ、魔の王よ。冥府の大地を照らすのだ」

 

 莫大な魔力がルレアベから放たれ、しかしそれはアルサムを強化しない。

 

 そして、同時にフィールドの一か所で現象が巻き起こる。

 

「……来たぞ、アルサム様が遂にあれを開帳なさる!!」

 

「ここが勝負どころだ!! 一気に決めろ!!」

 

 右腕四天王が吠え、そしてシェンが微笑んだ。

 

「アルサム様。今こそ、その御恩を我らにお与えください!!」

 

 そして、変化は訪れる。

 

「我ら《●》こそ大罪を担いし魔の軍勢。天すら侵すその兵《●》団《●》、その威をここに見せつけよう」

 

 その言葉とともに、フィールド中のルレアベが光り輝く。

 

 その輝きに照らされる者たちは、一斉に勝機をつかんだ者たちの目をしていた。

 

 そして、それは本来あり得ないこと。

 

 ルレアベは確かに分裂能力を持つが、それは誰もが使える代わりに特殊能力も莫大なオーラもない。

 

 刀身は砕けたら再生しないし、莫大な斬撃を放つこともない。新たにそれから分裂することはないし、魔力を供給することもない。

 

 そう、ただの性能の高い剣でしかないのだ。

 

 だが、今目の前でその認識は覆る。

 

 まがい物のルレアベたちは光り輝き、そしてその輝きに照らされた持ち主たちもまた、力を増す。

 

 そして、その輝きはまさしく見たことがある者たちならこういうだろう。

 

「これは……っ」

 

 この場にいる者の中で唯一、旧魔王派との決戦で兵藤一誠とともにいたゼノヴィアが、その現象を理解する。

 

 あり得ない。そんな馬鹿な。どういうことだ?

 

 そんな疑念に支配される中、しかしゼノヴィアはその現象の名を口にした。

 

「覇を……なぜ、これだけの者たちが使うことができる!?」

 

 狼狽のあまり悲鳴じみた声すら上げるゼノヴィアの視線の先、その力はあふれていく。

 

「我ら《●》に宿れ王の威光。今こそその威を見せつけよ!!」

 

 そのアルサムの号令とともに、最後の言葉を全員が告げた。

 

「「「「「「「「「「「「「「「覇剣贈刀(フルスロットル・ブレイド・センチネル)!!」」」」」」」」」」」」」」」

 

 その瞬間、戦闘の趨勢は一瞬で決した。

 




理由「バリエーションがあるから」

細かい説明に関しては次の話でアルサム自身に語ってもらうとして、今回の戦闘の補足を。



リリカルなのはシリーズを知っている皆様ならご存知ですし兵夜も運用しましたが、時空管理局の魔導士技術は魔力ダメージという運用方法が可能です。

これももちろん完ぺきというわけではありませんが、しかし不殺攻撃が可能。肉体的なダメージを主眼といていないので当然ですが。

なら、肉体的なダメージを回復する類の能力をほぼ無効化できるのではないか……というのがアルサムのアプローチです。そしてそれは成功しました。

逆に言えば、時空管理局は実戦においてもレーティングゲームにおいてもフェニックス相手にアドバンテージを保有しているということです。技術的にはちかいフォード連盟もまたしかり。

ぶっちゃけ初手から贈刀を使っていればもっと早く決着がつきましたが、これを注目度の高いこの試合で知らしめることも考慮してあえて待っていました。

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