HSDD 転生生徒のケイオスワールド2 卒業生のアザゼルカップ   作:グレン×グレン

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祝勝会、始めます!

 

「初戦圧勝を祝して、乾杯!!」

 

「「「「「「「乾杯!!」」」」」」

 

 冥界のレストランで、俺達は祝杯を挙げた。

 

 ああ、まさかここまでスムーズに勝てるとは思わなかった。

 

 上級悪魔や堕天使がいる状況で、ここまで簡単にできるとは驚きだろう。

 

「掴みは完璧でしたの! これは完璧に近いスタートではありますのよ!! アップ義姉様もさあ祝杯を!」

 

「まったくね。ああ、蹂躙……最高っ!」

 

 雪侶におだてられたこともあって、蹂躙の喜びにアップが割と本気で正体をなくしかけている。

 

 どんだけ我慢してたんだ、オイ。

 

「須澄、トマリ。お前らホント首輪つけとけよな? 抑えられてないぞ、あれ」

 

「あ、あはははは……」

 

「気を付けるから安心してっ」

 

 自信満々にいうトマリの方が信用できない……。

 

 頑張れ、須澄!!

 

「それはそれとして、ノーヴェだっけ? すごかったね、アレ」

 

 須澄が言うのは二番目の戦闘の時の大暴れだろう。

 

「ま、まあな。格闘型戦闘機人としちゃぁ、あれぐらいできないとドクターにも悪いし、この映像家族も見てるし……」

 

「兄上は実にいい戦力をゲットしましたの! 流石は時空管理局の代表ですの!!」

 

 ああ、現状では時空管理局の管理世界唯一の参加者だからな。

 

 ああ、そもそもそれが目的だとは言え、これはいい拾い物だ。

 

 流石はヴィヴィとハイディの師匠。マジすごい。

 

「あらあら。これは無様な試合はいろんな意味でできないわね。……無様な負け方したら時空管理局が舐められるわ」

 

「それは大丈夫だろう。上級相手にまともに渡り合える奴がいるという時点で、なめてかかることなどできるものか」

 

 茶化すシルシを嗜める様に俺は断言する。

 

 ああ、このスペックは非常に優秀だろう。流石はヴィヴィやハイディの師匠。

 

「いや、別にそんな大したことじゃないって。……おとーさん達も見てるし、あんまり無様な試合はできないっていうか」

 

「それでも十分すごいさ。この大会に出てくるような連中なんて、少なく見積もってもどこの業界でも中堅以上だろうしな」

 

 ああ、若手四王(ルーキーズ・フォー)も既にプロで通用するほどの実力を持っている逸材揃い。それ以外の俺の知り合いが所属しているチームも、全員初戦は勝利している。

 

 神クラスと当たっていないとはいえど中々すごい。流石は対クリフォト組織D×Dのメンバーといったところか。

 

「だけど、中堅から上は流石に厳しいだろうな」

 

「うわぁ、ノーヴェさん水差さないでほしいですの」

 

 いや、ノーヴェの言うことももっともだ。

 

「確かに、フルメンバーならまだしも今の戦力だと苦戦しそうだな」

 

 なにせ優勝候補の帝釈天やらテュポーンは無茶苦茶すぎる。須澄くんのような反則一歩手前の化け物を何人も用意してるんだからな。っていうか誰かツッコめよ。

 

 あれに対抗するには、やはり暁の力が必要不可欠だろう。それ位ないと勝ち目がない。

 

「なあ、そのグランソードって人の舎弟? そいつら呼べないのかよ」

 

「全員揃って辞退された。ああ、あいつら真面目というかなんというか」

 

 ああ、あいつらの爪の垢を煎じてヴァーリや曹操にのませたい。認める運営も運営だが、もう少し……ねえ?

 

「ま、人に歴史ありっていうしな。時空管理局も反省してたら結構処罰は軽いし、かくいうあたしもそのクチだし」

 

「え、まじで?」

 

 喧嘩ぐらいしかしそうにないんだけど、サイボーグだっていうのとなんか関係あるのだろうか?

 

 いや、まあそれは聞かない方がいいだろうから聞かないでおくが、しかしさてこれからどうするか。

 

「まあ、リザーブ枠のことは後で考えるとして、だ」

 

「リザーブ、あくまでリザーブなんだ」

 

 そりゃ強い方が本命だろう。あの火力は間違いなく本選出場者最上位に届くからな、須澄よ。

 

 まあ、今は素直に祝杯を挙げるとしようか。

 

「あら、中々甘いことを言っているみたいじゃない」

 

 と、俺達にそんな声が届けられた。

 

 ああ、こんなところで聞くとは、これも和平のおかげかねえ。

 

「……なんなら奢るぜ、姉貴」

 

 俺は振り返らずにそう返す。

 

「失礼ね。弟に奢られるほど、私は困窮してないわよ?」

 

 姉貴もあっさりそう返した。

 

 今俺の後ろにいるのは宮白陽城。俺の実の姉だ。

 

 ……なぜか、ナツミとチームを組んで参戦している。

 

「なんで、アザゼル杯に参戦なんてしているのかって顔してるわね」

 

「いや当たり前だろ!! 正姫工業は表の人間世界の会社だろうが!!」

 

 なんでその警備員が続々と参加してるんだよ!! しかも姉貴と!!

 

 心からのツッコミを俺は入れるが、しかし姉貴はため息をつくと肩をすくめた。

 

「私が参戦してる理由は簡単。……全部フィフスが悪いわ」

 

「アイツは俺の姉に何をしたぁああああ!!!」

 

 またか! またあいつか!!

 

「姉君? 一体何されましたの?」

 

 あ、そうだね雪侶! まずはそれを聞かないとね!!

 

「それが能力者に覚醒しちゃって……」

 

 おぃいいいいい!!! 俺の家族はどいつもこいつも超人になってるじゃねえか!!

 

 あの野郎の所為で元浜も能力者に覚醒していたが、まさか姉貴まで覚醒するとは!!

 

 ええい! どんな能力に覚醒したかはわからないが、でもなんで?

 

「そんなこんなで犯罪発生率も上がってるでしょう? 正姫工業もそれに備えて、自社専門の対テロ部隊を作ろうって話になったのよ。それでまずは先発として、正姫工業の所属で集めて鍛える方向で―」

 

「いいや、いやいくらなんでも過激な方向に出てない、それ?」

 

 須澄がドンビキするのも当然だろう。

 

 何を考えてるんだ、あいつらは。

 

「まあ、半分お遊びみたいなものなのよ。ちょうどその時ナツミちゃんから相談受けてね。私も義理の妹の頼みだし、数合わせも兼ねて出てきたのよ」

 

「あの、姉貴? 俺がハーレム作ってる件についてのツッコミは?」

 

 うん、そういうのが起きてもいいと思ったんだけど、俺?

 

「別にいいんじゃないの? 悪魔はそういうの合法なんだから。……私も人に言えないフェチ属性あるし」

 

「それを言ったら終わりじゃね?」

 

 あるだけで問題だって。

 

「あらあら、義姉さんも割と面白い方なのね」

 

 シルシはくすくす笑うが、それに対して姉貴も苦笑を返した。

 

「まあね。まあ、だからこそいいリーダーが見つかったっていうか……」

 

「そういうことや。余りもんさかい頭数だけは入れへんとな」

 

 言葉を繋げたのは、実はあまり馴染みの無い人物。

 

 俺はその新たな人物に視線を向ける。

 

「よお、ムラマサ。姉貴が世話になるな」

 

「ああ、かまへんかまへん。元テロリストをメンバーに加えてくれる輩はあまりおらへんからな」

 

 そういってからからと笑うのはムラマサだ。

 

 なんでも、駒価値の計測上余ったので自発的にチームから降りたらしい。先輩として後輩を立てているとか。

 

 そして、そんなメンバーの一員がもう一人。

 

「やっほー兵夜ぁ!」

 

 そういって抱き着いてきたのはナツミだった。

 

「ああ、ナツミの抱き心地を久しぶりに実感できる……」

 

「うんうん一杯堪能してね! あ、シルシも元気してた?」

 

「ええ! ナツミさんも元気みたいね」

 

 ああ、最近ナツミを抱きしめてなかったからなんかほっこりする。

 

 うわぁ癒される。

 

「……冥界って、進んでるんだな」

 

「……ノーコメント、ノーコメントでお願い」

 

 ノーヴェと須澄が何か言っているが、合法なので俺は開き直る。

 

「うんうん。でも当分はシルシを大事にしなきゃだめだよ? ほら、ちゃんと抱きしめる!」

 

「え、ええ?」

 

 シルシが思わぬ展開に顔を赤らめるが、しかしナツミさんや。

 

「お前はそれでいいのか?」

 

「え? だって二年ぐらいあどばんてーじあるもん。少しぐらい埋め合わせしようって四人で決めたもん」

 

 ああ、最近忙しいからってあってくれないのはそういうのもあるのか。

 

「ボクはもっと一緒にいたいけど、シルシは兵夜のお嫁さんだもんね。ゆうせんじゅんいってものがあるでしょ?」

 

「それを言うならお前は俺の使い魔じゃないか。主人命令だからなー」

 

 そういうわけだから逃がさんぞ。

 

 ああ、可愛い女の子は癒されるなぁ。最近は仕事も忙しかったから癒しがほしいぜぇ。

 

「はっはっは。あんたの弟さんは色々と疲れとるみたいやなぁ」

 

「これが、中身の年齢も含めると年上とか嘘でしょう……」

 

 そこ、ため息つくな姉貴!

 

「天騎は天騎で武者修行の旅に出たら音沙汰無しで、兵夜は基本冥界に篭りっきり。雪侶は雪侶でイッセーくんのところに行ったり来たり。……あなた達、少しは父さんに顔見せしなさい」

 

「「……はい」」

 

 痛いところ突かれた。

 

 だが、そういえば兄貴の奴は一体どこに行った?

 

 この非常時の緊急事態の群れなら、いったん帰って報告をしてくれても別におかしくないだろうに。

 

 あの野郎、元々俺とはそりが合わなかったが、しかし何を考えてるんだか。

 

「仲が悪いのか?」

 

 ノーヴェ。心配してくれるのは嬉しいんだが、それは実に俺として応え難い。

 

「いや、なんていうか俺が何となく距離を置いているというか置かれてるというか……」

 

「私はともかく、父さんに関しては勝手に距離を置いているだけでしょう? まあ、天騎は別だけど」

 

「兄者と兄上に関しては当たりですの。性質が違う所為で反りが合わないですのよ」

 

 姉貴も雪侶もため息つくな。

 

「そう、そうなの? 割と誰とでも一定の仲は築けそうだよね、兄さん?」

 

 須澄、俺にも苦手なことぐらいはある。

 

「向こうから突っかかってくることもあるからなぁ。「何でもかんでも中途半端に手を出しすぎだな」とか言ってくるし、あの野郎は一点集中しすぎなんだよ」

 

 まったく、一点特化型なのは良いことだが、それで万能系を馬鹿にするのはやめてもらえないだろうか? 実に面倒なんだが。

 

「私からしたらあれよ。隣の芝生は青く見えるってやつ? 天騎は天騎で一つのことにしか才能ないのがコンプレックスみたいだしねぇ」

 

 そういう姉貴の顔は、まさにできの悪い弟を見る其れだったりする。

 

 ええい! なんか恥ずかしくなってきた! っていうか俺総計でいえば年上なのに何でいまだに年下扱い!

 

「うんうんっ。お義兄さんが思ってることはよくわかるよっ!」

 

 ………トマリ。

 

「有難う、おかげでどういうことかよくわかった」

 

「酷いよっ!?」

 

 取り合えず飲もう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで祝勝会も終わり、俺達は再びアザゼル杯を行っていた。

 

 第二試合も順当に勝ち進んだが、しかしそのままというわけにもいかない。

 

 なぜなら、次の次の試合が割と難関だったからだ。

 

 敵対チームは斬撃猫一番チーム。

 

 ふざけた名前だが油断はできん。なぜなら、それは姉貴やムラマサ、そしてナツミのチームだからだ。

 

『それで? これが試合の様子みたいだけど、やるなあいつら』

 

 ああ、ノーヴェの言う通り俺も驚いている。

 

 異能にロクに関わってこなかったはずのただの人間のはずなのに、その戦績は一勝一敗。

 

 ナツミとムラマサに引っ張られているところはあるが、しかし最低限の役割はきちんと果たせている。それどころか一戦一戦で着実に成長しているのが見て取れた。

 

 しかも、このチーム未だに姉貴を出し惜しみしている。これは実に厄介だぞ、オイ。

 

「学園都市式の能力者は、割と能力に幅があるからな。果たしてどれぐらい強力なのかわからないのが痛い」

 

 下手したら神器以上に個性的な奴もあるからな。おかげで調べるのが実に大変なんだ。

 

 とはいえそれで一回負けていたら元も子もない。おそらく俺達との戦いでは出してくるはずだな。

 

『どう、どうするの兄さん? こっちも戦力確保した方がよさそうだけど……』

 

『ああ、暁には悪いが、そろそろ参戦してもらおう』

 

 圧倒的な火力で押し潰す選択肢が出てくるのはそれだけで戦術が楽になるからな。そろそろ一回出てもらうか。

 

「そうね、じゃあ、私が先に連絡しておくわ」

 

 そう言ってシルシがすぐに連絡に行く中、俺達は作戦を立て始める。

 

「とりあえず、警備員の多くは気の運用をメインに行っている。これはつまり身体能力の延長線上での戦闘がメインになる」

 

 考えてみれば当然といえば当然だ。

 

 警備員は警察官とは違うので、必然的に様々な制限がある。

 

 いかに正姫工業が荒事専門の役職を用意していると言っても、それはきちんと守らないといけない。

 

 其の為、彼らの多くは格闘技が中心だった。

 

 まれに電撃を出してくる輩もいるが、それはおそらく学園都市式の能力者に覚醒したものだろう。

 

 ゆえに基本的な戦闘方法は取り押さえを中心とした格闘技。そしてそのエキスパートが揃っている。

 

『単純な体術の腕だけならすごいのが揃ってるじゃねーか。これ、本当に会社の警備員?』

 

「雪侶が以前誘拐されて殺されそうになったことがありまして、それ以来父上は徹底的に警備員の戦闘能力を強化する方針になりましたの。格闘技経験者を呼んだり、PMCから教育担当を雇ったり等々。従業員の家族の問題にも介入させる気満々ですの」

 

 雪侶もそれ以来戦闘能力重視で鍛えられることになったもんな。おかげで助かってます。

 

 まあ今はそれが脅威になっているわけだが。

 

 アップ辺りは微妙に嫌そうな顔をしている。うん、これも当然。

 

『つまり全員格闘技でプロ級ってこと? 結構しぶとそうね』

 

『流石に魔剣持ちに勝てるほどじゃないよっ。だからきっと無双できるって!』

 

 そうそうトマリの言う通りだ。

 

 気の運用が可能とはいえ、所詮一般人の業界レベルだ。アップクラスなら十分無双できるって。

 

 そう、問題は―

 

「問題はムラマサとナツミだな」

 

 ああ、この二強が一番問題だ。

 

 間違いなく主力はこの二人。実際どの試合でも点取り屋はこの二人だった。

 

 そしてムラマサはルールの都合上もあったが、まだ禁手を出してない。

 

 更に言えば、超能力も本領を出してない。

 

 勝った試合はそもそも警備員達だけでも十分戦えていたし、次の試合は格闘技の団体戦みたいなルールだったので出す必要がなかった。

 

 そして、あの二人は間違いなく今回のアザゼル杯でも最上位に位置する戦力だ。

 

 逆に言えばこの二人さえどうにかできれば、難易度は比較的下の部類ともいえる。

 

「つまり、抑え込む役が必要不可欠なわけだ。……二人揃って技量もスペックも高い化け物だから、須澄だと技ではめられるし俺だとパワーで押し切られる」

 

 つまり、二人掛かりで抑え込むのが最適解。

 

「だから須澄達は三人で片方を抑えてくれ。もう片方は暁を入れれば何とかなるだろう」

 

『その間に残りをあたし達で潰せって? 結構人使いが荒い旦那だな』

 

 そういうノーヴェは、しかし割と乗り気だった。

 

『いいぜ。それなら何とかなりそうだ』

 

「そうしてくれると助かる。あとは暁が来てくれればいいだけだが……」

 

 そんなとき、ドタバタとした音が響いた。

 

「兵夜さん! 暁くんと姫柊ちゃん、またトラブルに巻き込まれたみたいよ!?」

 

 ……おのれトラブルめ!!!

 




ここでアザゼル杯はいったん中断。

ストライク・ザ・ブラッドの天使炎上編へと突入します。

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