HSDD 転生生徒のケイオスワールド2 卒業生のアザゼルカップ   作:グレン×グレン

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なんとかフォンフのサーヴァントは埋まりました。でも味方がまだです……(;・ω・)


アザゼル杯、初戦です!!

 

 そして、初戦がスタートすることになる。

 

 なるのだが―

 

「いくぞ! マッスル!!」

 

「「「「「「「「「「「「「「「マッスル!!」」」」」」」」」」」」」」」

 

 それは、筋肉だった。

 

 レスラーやら相撲取りやら、もう見ていて目が染みてきそうな筋肉の塊がやってきた。

 

 普通魔法使いタイプのはずの僧侶の担当すら、ごつかった。なんでも筋力強化魔法の使い手らしい。

 

「……話には聞いてたけれど、こうして直接見るとなんていうか目に沁みそうね」

 

 シルシが目頭をもむ気持ちも分からなくはない。

 

 何ていうか、見るからに暑苦しい。

 

「……全員動きにスキがないな。筋肉も魅せるタイプじゃない。あれは気が抜けないな」

 

「見て、見るだけでわかるものなの?」

 

「まあな。筋肉付けるのにも色々あるんだよ。慣れればすぐわかるぞ?」

 

 ノーヴェと須澄がそんな会話をしているが、しかし微妙に緊張感が入らない相手だ。

 

 今回の相手は名前からしてそのまんまのレッツマッスルチーム。

 

 筋肉に魅せられた者たちの集まりで、悪魔祓いから堕天使、さらには上級悪魔はおろかフリーランスの連中まで参加している驚愕のチームだ。

 

 ちなみに堕天使は筋肉フェチが高じて堕天したらしい。なんだそれは。

 

 これも和議の恩恵かと考えてみるが、ある意味で負の側面が見え隠れしないか、オイ。

 

「とはいえ油断はできんな。中には上級悪魔クラスも数名いる」

 

 何ていうか、濃い奴多いなこの業界。

 

「ねえ、ねえ! 歩兵の担当は八人いるけどつまり雑魚よね? ボコっていい? 蹂躙していい?」

 

「うん、アップちゃん落ち着いてっ」

 

 開幕速攻からアップはアップでテンションが上がってトマリになだめられているし、こっちもこっちで癖が強いメンバーが多かった。

 

「……アップ義姉様が申し訳ありませんの。この人これでも悪癖を自覚して抑える努力をしてるので、我慢してくださいまし」

 

「ん? ああ気にすんなよ。ヴィヴィオから話は聞いてるしそれぐらいならな」

 

 ノーヴェって、ヴィヴィオの師匠なだけあって人間出来てるよなぁ。

 

「極悪非道の悪党の側近やってたんだが、意外と平気なんだな」

 

「人に歴史ありっていうだろ? あたしもそういう意味じゃあ色々あるし、まあ気にすんな」

 

 本当にできた人だ。

 

 まあいい。今回は比較的わかりやすいルールだし、入門編にはもってこいか。

 

『さて! 今回のルールはダイス・フィギュアです!!』

 

 ダイス・フィギュアのルールは俺もよく知っている。

 

 普通の六面ダイスを双方の王が同時に投げ、出た目の合計数だけ駒価値を出すことができる。

 

 その駒価値の数までなら、何人でも出すことが可能。例えば双方ともに6が出れば合計十二。兵士八人に騎士1人とか、騎士と僧侶二人ずつとか、戦車二人に兵士二人とか、いろいろと編成の自由がある。

 

『ダイス・フィギュアといえば、宮白兵夜選手によって前代未聞の大激戦が行われたことを思い出しますね』

 

『ああ、宮白とサイラオーグの激戦は、中々派手だったな』

 

 すいません、恥ずかしいので司会も解説のアザゼルもちょっと黙っててくれない!?

 

『特に、神喰いの神魔チームは、平行世界からの神滅具流出や、異世界の大規模連盟組織である時空管理局からの参戦ということもあって注目のチーム。その実力を見るには中々好都合な試合ではないでしょうか』

 

『ああ、俺もエイエヌ事件で会ったことがあるが、どいつもこいつもなかなかできる奴だ。個人的にはその時の子供の師匠やってるノーヴェってやつに興味があるな』

 

「……そんなこと言われてるが」

 

「……いや、時々面倒見てるだけだし、DSAAに参加する以上名義貸しだけってわけにもいかねぇだけだし」

 

 顔が髪並みに真っ赤だな。

 

『なお、今回宮白兵夜選手は駒価値4での参戦です。最上級に届いた悪魔としては低いと言ってもいいですが……』

 

『散々無茶したツケが出たようなもんだ。あいつ5の動乱まで改造しまくりの強化しまくりだったからなぁ。そのうえこれで最後と無茶苦茶な投薬までしてやがったし』

 

 うるせえよアザゼル! それでなおギリギリだったんだから仕方がねえだろ。

 

「兄さん、どんだけ無茶したのさ」

 

「だってフィフスの奴、エイエヌと一対一でやり合えるほど強化してんだから仕方ないだろ。遠坂の系譜としてアインツベルンの暴走は見過ごせなかったし……」

 

 うう、これでも結構気を使った上なんだぞ?

 

「流石はあたしが出れる大会。割と緩いんだなその辺」

 

「まあ、義手や義腕は認められますもの。サイボーグもギリギリOKでしょう」

 

 うんうんと、半ば呆れながらノーヴェと雪侶が納得する。

 

 ああ、意外とルールが緩いところあるよな、レーティングゲーム。流石は三大勢力の一大イベントといったところか。

 

 さて、そんなことをしている間についにゲームはスタートだ。

 

 とりあえず俺と相手の王が同時にダイスを振って、出た目は両方ともに4

 

 つまりは合計8。

 

 となると……

 

「はい! はいはいはい! 私でる!! 蹂躙する!!」

 

 ……こうなるよなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Other Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その場に登場したメンバーを見て、会場の人々は少しどよめいた。

 

 レッツマッスルチームは歩兵を全員投入。それに対して神喰いの神魔チームも同様の歩兵を三人とも投入した。

 

 投入したのだが、なぜか会場のモニターの神喰いの神魔チーム側には、メンバーが一人しか登場しない。

 

『ああ、因みにこれはバグでも何でもない』

 

 ゆえに、事情を知っているアザゼルがにやりと笑って解説する。

 

『近平須澄の禁手は、死者の魂を取り込んで、サーヴァントのように使役できるって能力だ。あいつらは三人で出てるんじゃなくて、一人で出てるようなもんなんだよ』

 

『なるほど、悪魔の駒も死者を蘇生させて眷属として運用することもありますし、そういうこともあるのでしょう』

 

 司会がすぐにそうまとめたことで、反発的な意見はあまり出てこなかった。

 

 ある意味で死者を利用するようなことを言っているが、しかし言われてみれば悪魔も似たようなことをやっている。

 

 こと宮白兵夜も死亡してから転生した転生悪魔だ。そういうこともあるといわれては反論できないだろう。

 

『ですが、それはそれとしてレーティングゲームのルール上問題になりませんか? これでは人数制限が意味をなさないというか、使い魔の運用と同様のレベルになるのでは?』

 

『いや、今回のところは「複数体を同時運用する独立具現型神器」と同様の判断だ。そもそも聖槍の亜種禁手としてはすでに何件も出ている類でなぁ、あれ』

 

 そういうと、アザゼルは過去を懐かしむように目を細める。

 

『昔、十字軍の旅団とやり合った時に部隊を壊滅させた時に覚醒されてな。こっちも疲弊していたところに倒した連中全員復活した所為で、俺らもだいぶ数を減らしたもんだ』

 

『あの、やっぱりそんなことができるとレーティングゲーム上反則なのでは?』

 

 旅団といえば数千人で構成されている部隊だ。それらを殆ど纏めて守護霊にできるとした場合、レーティングゲームとしては反則以外の何物でもない。

 

 だが、アザゼルはカラカラ笑うと片手を振る。

 

『今のところはあれでフルメンバーだから勘弁してやれよ。これから更に増えるなら話は変わるが、あの人数なら帝釈天の容赦ないメンツに比べればかわいいもんさ。それも含めて駒価値8なんだからよ』

 

「うん、その心配はいらないからね」

 

 須澄はそういうと、むすっとした顔でアップとトマリを抱き寄せる。

 

「他の誰もいらないもん。二人だけでいいんだもん」

 

『須澄!? お前23歳の男がもんはないと思うぞ!?』

 

 兵夜のツッコミが即座に飛ぶが、しかし試合は待ってくれない。

 

『そういうことなら仕方がない! それでは第一試合スタートです!!』

 

 それと同時に、誰よりも早く動いたのはアップだった。

 

「全員まとめて、喰らいなさい!!」

 

 いうが早いか、大量の魔力弾が一斉に放たれる。

 

 ちなみに顔が真っ赤なのは性癖を満たせそうなことによる興奮か、それとも突発的な須澄の暴走に巻き込まれたことによる羞恥かは判別しない。

 

「なめるな小娘! その程度の魔力弾で我々の筋肉は屈しない!!」

 

「その通りだ!」

 

「むぅん! うなれ筋肉!!」

 

 マッスル達は一斉に受け止めるが、しかしそれこそが狙い。

 

「ええ、それは倒すためのものじゃないもの」

 

 そうにやりと笑うアップの狙い通り、魔力弾は男達を()()した。

 

「な、拘束具に!?」

 

 一瞬で拘束具へと変貌した魔力弾に、男たちは驚愕する。

 

『なんとぉー! 初手の様子見と思われたアップ選手の攻撃ですが、実は捕縛が目的だったとは! てっきりじわじわ削っていくものかと!!』

 

『あれが魔導士の魔法ってやつだ。バインド系ってやつで体系化されてんだとよ』

 

「そういうこと。そして……」

 

 相手の動きが止まったことを確認して、アップはその口元を吊り上げた。

 

 既に彼女の攻撃は本命へと移行している。

 

 気づけば、無数の魔力弾がアップの上空に展開されている。

 

「スフィアバレット、ジェノサイドシフト……」

 

 嗜虐の笑みを浮かべながら、アップはその攻撃を解き放つ。

 

「シュート!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 開幕速攻から瞬殺した戦いにおいて、続いて行われるのは駒価値10

 

 レッツマッスルチームは趨勢を盛り返すべく、戦車二人を同時に投入。

 

 それに対して、今回兵夜が投入したのは騎士二人だった。

 

『来ました来ました来ましたよ!! 時空管理局の管理世界から出向の、ノーヴェ・ナカジマ選手! そしてタッグを組むのは宮白兵夜選手との婚約が発表された、シルシ・ポイニクス選手!!』

 

 美少女二人に観客も沸き立つ中、司会はしかし冷静にコメントをアザゼルに求める。

 

『なんでも、桜花久遠選手をはじめとする女性陣から推薦されたとのことですが……』

 

『ベタ惚れしてくれている貴族の娘。政略結婚の相手としちゃあ上出来すぎるからな。いやぁ、理解のある女に恵まれてよかったなぁ宮白』

 

『うるせえよ!!』

 

 顔を赤くした兵夜の大声が飛ぶ中、試合は即座開始される。

 

「ここで取り戻すぞ!」

 

「相撲取りは機動性も高いということを知るがいい!!」

 

 レッツ・マッスルチームの騎士は双方ともに相撲取り。

 

 デブと侮るなかれ。相撲取りは何気に瞬発力にも優れた優駿な技量の持ち主。

 

 加えて、異形の技術でもまれている彼らの能力は間違いなくチームの中でも上位に位置していた。

 

 ノーヴェとシルシは素早くかわすが、しかし今回の会場であった遺跡風の柱が一発で粉砕される。

 

『おお! 中級悪魔クラスなら数発は必要な障害物が一発で粉砕! これは直撃したら大ダメージだぁあああ!!!』

 

 司会の的確に興奮させる実況が響く中、シルシはエストックを抜くと一歩前に出る。

 

「フェニックスの系譜である私は不死の力を持つわ。ある程度手札を出させるから、ノーヴェさんは様子をして―」

 

「いらねーよ」

 

 シルシの言葉を遮って、ノーヴェは一歩前に出る。

 

「こっちは雇われてるようなもんなんだ。その嫁さんに無茶はさせれないって」

 

 そう言いながら、ノーヴェは再突撃してくる騎士を迎え撃つ。

 

「動かず倒すなどと、なめるなよ小娘!!」

 

 騎士の一人が一気に踏み込んで一撃で撃破しようと突撃する。

 

 順当にいけば細見ともいえるノーヴェが耐えられるとも思えないのだが―

 

「あまりなめんなオッサン。あたしはこれでも―」

 

 ノーヴェの足が一瞬で閃き、騎士の側面に蹴りが入る。

 

 そしてその一撃が騎士の軌道を逸らして防御にすらなった。

 

「―強いんだからな!」

 

「ならばこれはどうだ!!」

 

 いうが早いか、もう片方が即座に組み付いた。

 

 相撲取りは組み合って戦う格闘技。必然的にここから先は彼の土俵。

 

 しかし、その瞬間騎士の体が浮き上がる。

 

 明らかに重量のある体格である相手の騎士を、ノーヴェはその膂力で持ち上げたのだ。

 

「な、俺の体重は190キロは!!」

 

「それ位なら問題ねえ!!」

 

 そして、同時にノーヴェの装備であるジェットエッジが駆動する。

 

 ローラースケート型の装備であるジェットエッジは、地面を高速走行するデバイスだ。

 

 それは大質量を抱えている状態でも劣らない。

 

 相手の失敗は体格差に油断して相手の膂力を見誤ったこと。

 

 その混乱が、手を放して仕切りなおすという判断をとるのに時間をかけてしまい―

 

「ぐぉぉ!?」

 

 そのまま急反転したノーヴェの楯とされ、壁に激突した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 試合結果はノーヴェとシルシの勝利。というより、シルシはほとんど何もできなかったといってもいい。

 

『これはすごい! ノーヴェ選手! ある意味時空管理局の代表なだけあり大活躍!! 騎士の駒価値とは思えない実力だぁああああ!!!』

 

 わぁあああああ!!! と大歓声が上がる中、しかし試合は続いていく。

 

 レーティングゲームの中では初心者向けといってもいいルールであることもあり、慣れていないメンバーも特に労せずに試合を進めていく。

 

 その試合は全戦全勝。そして最後には王の対決へとなっていた。

 

「……まさか、我々の筋肉がこうも無残に砕けるとは」

 

「気にするな。この業界、体格が意外と関係ないこと多いからな」

 

 相手の王を慰めながら、兵夜は身内の筋力担当である小猫の体格を思い出す。

 

 最近だいぶ成長してきたが、しかしいまだ白音モードをしない限りロリ体形なのはいかがなものか。

 

 小猫に気を使っているのか、イッセーは未だ童貞だ。

 

 ああ、頑張れイッセー。そんな感慨を兵夜は抱きながら、前に出る。

 

「悪いが一矢報いさせてもらう! 我が筋力、そのような細腕でどうにかできると思うなよ!!」

 

「いいだろう。なら、こちらもその流儀に合わせてもらう」

 

 組み合おうとする王に対して、兵夜はあえて組合を受け入れる。

 

 どう考えても悪手だろう。

 

 宮白兵夜はテクニック・サポート・ウィザードタイプを網羅するが、パワータイプだけは専門外だ。

 

 策と武装と技量をもって戦局を変えるタイプであり、奥の手である義足があるとはいえ、単純なパワーではグレモリー眷属でも低い部類だ。

 

 しかし、その下馬評は一瞬で覆る。

 

 明らかに圧倒的な筋力を持っているだろう敵の王に対し、兵夜は見事に力比べを成し遂げていた。

 

 その光景に観客たちが沸き立つ中、王は目を見開いて驚愕していた。

 

「なんと! 細腕に見合わぬ剛力! いったい何を!!」

 

「何を言う! この俺が、どういう存在が忘れたとは言わせない!!」

 

 そう、宮白兵夜の特色の一つは多重神格。

 

 こと様々な神の多い日本の国津神の類。その様々な神々から力を与えられて神格となった宮白兵夜は必然的に様々な属性の神格である。

 

 そして、その中にはもちろん―

 

「力を司る神々も含まれる!!」

 

「まさか、あえて力の神を使って挑もうというのか!?」

 当然といわんばかりに、兵夜は全身に力を籠める。

 

「相手に対して少しは敬意を見せるさ! 何より―」

 

 そして力比べの趨勢は傾いていき―

 

「―これはゲームだ、燃える展開の方がいいだろうが!!」

 

 兵夜は王を投げ飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 開幕序盤のアザゼル杯。その初期の試合において、神喰いの神魔チームはストレート勝ちという好成績を収める。

 

 異世界からの実力者。そして平行世界から来たもう一つの聖槍などに注目が集まる中、彼らはこの大会の本選出場候補の一つとして、間違いなく名を集めていた。

 

 なにせ、彼らはまだフルメンバーには遠いのだ。それが中堅レベルとはいえフルメンバーのチーム相手に圧勝したとなれば、その注目度は計り知れない。

 

 そして、それゆえに時空管理局に対する注目は飛躍的に高まっていった。

 




初戦はとりあえず圧勝! まあ、割と化け物集団ですので当然といえば当然ですが、ルールがシンプルなので変な引っ掛かりがないのも大きかったですね。

ですが、今回の相手はしょせんモブ。こっから先が大変だぜ兵夜!

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