HSDD 転生生徒のケイオスワールド2 卒業生のアザゼルカップ   作:グレン×グレン

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押してもだめなら引いてみます!!

 

 試合終了し、そして何とか女性陣の体を守ることはできた。

 

「では、女性陣が無事だったことを祝して乾杯!!」

 

「「じゃねえ!!」」

 

 後ろから松田と元浜に飛び蹴りを叩き込まれた。

 

 そしてそのまま吹っ飛ぶが、すぐに桜花がキャッチしてくれる。

 

「わーいー! 兵夜くんゲットー!!」

 

「そのまましめ落してください。こいつもうちょっとボコられるべきだ」

 

「試合に勝つより俺達に女子触れさせない方が重要ってどういうこった、あぁん?」

 

 目を血走らせて詰め寄る松田と元浜だが、しかしそれは当然だ。

 

「当たり前だこの野郎が。俺にはホストとしての義務があるんだよ、コラ」

 

「くそ! 同類のはずのイッセーなんてリアス先輩を始めとしたバリエーション豊かな女の子達に囲まれてるのに!! なんで俺はこうなんだ!!」

 

「なんでだ! 俺達とイッセーと何が違う!?」

 

 絶望すら漂わせて二人は落ち込むが、しかしそれに関しては―

 

「潜ってきた修羅場だな」

 

 ―即答できる。

 

「だよねー」

 

 久遠が思わず苦笑するほどだ。

 

 だって冷静に考えてみろよ。

 

 レイナーレはまだ中級堕天使だからいい。ライザーもレーティングゲームだからいい。

 

 だが、そっから先がどう考えてもインフレ激しい。

 

 堕天使幹部に魔王末裔に最強の神滅具保有者に悪魔の超越者と滅ぼされたはずの邪龍軍団。……伝説に名を残す規格外だらけだ。

 

 それが一年足らずの間につるべ打ち。なんで生きてるんだとドンビキされるレベルだろう。

 

 それだけの修羅場を潜り抜けたのだ。そりゃ相応のがあってしかるべきだろう。

 

「……そ、それは流石に躊躇するな」

 

「ああ、俺達死んでる自信がある」

 

 松田も元浜も話に聞いたそれを思い出したのか、がくがくブルブルと震えている。

 

 うん、だよなぁ。

 

「それに、イッセーは悩み事に寄り添ったりぶつかったり、まっすぐに向かっていったからな。……ど変態という欠点以外は、割といい物件だ」

 

 それは客観視して理解できている。

 

 欠点が致命的なのはどうしようもないが、逆に言えばそれ位しか美徳と言えないところはないんだ。

 

 さらにトラブルの頻発でその長所が目立つ時が多かった。これも大きな幸運だろう。

 

「ま、お前らも頑張って成果を上げてれば、女の一人ぐらいできるって。イッセーほどじゃないだろうがな」

 

「な、なんでだよ!?」

 

 松田に掴み掛られそうになるが、今の俺は久遠に抱き抱えられているからカバーされている。

 

 ああ、これが絶対安全圏か。癖になるな。

 

「………やっほー! 久遠ちゃんに兵夜くん♪ 近くに来たから遊びに来たわよん♪」

 

 と、その声に振り向いてみれば、そこにいたのはセラフォルー様。

 

「あ、セラさまー。お久しぶりですー」

 

「おひさー♪ 今日の試合はすっごく楽しめたわ!」

 

 そう言ってハイタッチする久遠とセラフォルー様。

 

 そして、視線が一気に集まった。

 

「せ、セラフォルー様だ!」

 

「ご、ご尊顔を拝謁できてありがたく思います!!」

 

 慌てて傅く悪魔達を見て、暁達が怪訝な表情をした。

 

 当然といえば当然だろう。

 

 今のセラフォルー様は、いつもの魔法少女ファッションだった。

 

「……なあ、宮白。この子、そんなにすごい奴なのか?」

 

 と、暁が首を傾げながら聞いてくる。

 

 ………ああ、まあそうだろうな。放送だと映像は俺達には見えなかったから分からないだろうし。

 

「紹介しよう。彼女は今代の魔王レヴィアタンを拝命する、セラフォルー・レヴィアタンだ」

 

 その言葉に、暁は一回ゆっくりと首を動かしてセラフォルー様を見る。

 

 そして一回俺に視線を向けてから、勢いよくもう一回セラフォルー様を見た。

 

「魔王!? あれがか!?」

 

 ああ、そうなんだ。

 

「気持ちは分かる。俺も時々どうかと思うが、あれで中々人気が莫大なんだ」

 

「どう考えても特殊な趣味だろうがっ」

 

 流石に大声でいうのはまずいと思い、俺の耳元に顔を寄せて小声でツッコミを入れた。

 

 うん。確かに色々と思うところは俺もある。

 

 俺もあるが、真実だ。

 

「生粋の魔法少女ファンでな。オフの時は基本的にあの格好なんだ。しかも魔法少女特撮を自分を主役に創ってるが、非常に人気が高いというすごいことなんだ」

 

「………お前も大変だな」

 

 心底同情されたよ。まあそうだろうけど。

 

「まあそう言うな。確かに相当ルナティックではあるが、民衆からの支持は現四大魔王は全員かなり高い。リベラルすぎるのは難点だが……それでも良い王なのは間違いないさ」

 

 ああ、その辺に関しては間違いなく断言できるからな。

 

「兵夜くんに言われると照れるわね。でも、それもそんなに長くは続かないだろうけど」

 

 ん? なんで?

 

「それはないでしょう。皇帝の告発もあって、うるさい旧家の発言力はだいぶ低下している。言っては何ですけどこれからの方がそっちにとっては楽では?」

 

 むしろ、勢い余ってリベラルに傾きすぎないか心配なぐらいなんだが。

 

 悪魔は血統による能力差が大きいから、血統主義はある程度残らないとまずいんだが。

 

 だが、セラフォルー様は首を振った。

 

「これはそろそろ言うからもう言っちゃうけど、現四大魔王はE×Eが接触するより先に引退する予定なのよん。ほら、理由は何であれ王の駒の不正使用を黙認してたもの」

 

 その言葉に、その場にいた者達が唖然となった。

 

 おいおい、それマジかよ。

 

 アレに関しては、むしろよく頑張った方だと思うのだが。

 

「これを機に、魔王制度も大幅に変える予定なのよ。七つの大罪に倣って、いっそのこと七大魔王制度に変えようとかという話もあるの? たぶんサーゼクスちゃんから兵夜くんに話があると思うわ」

 

 いや、俺に話通す必要あるのか? そこ。

 

 いや待て。この様子だと―

 

「―まさかイッセーを七大魔王に据えるなんて言うんじゃないでしょうね」

 

「何言ってるのん? ……反対派の方が少ないわよ」

 

 マジかぁああああああああ!!!

 

 いかん、大王派の発言力が低下した所為で、今度は別の意味で厄介なことになってる!!

 

「おお! 乳乳帝が魔王様になるのか!!」

 

「そりゃあいい。冥界の未来は明るいな!!」

 

 いかん! 久遠の弟子達もそっち側だ!!

 

 いや、確かにイッセーは有用物件ですけどね?

 

 あいつまだ十代だぞ!!

 

「でもイッセーくんは今の魔王のポジションに向いてなくてねぇん。……いっそのことサーゼクスちゃんは八大魔王にしてしまおうかとか言ってるのよ」

 

 そこまでするレベルか!! そこまでして魔王にしたいか!!

 

 いかん、思った以上に展開が早すぎる。七大魔王制度はこちらも知ってはいたが、まさか魔王の座をイッセーを据えるためだけに増やすとか想定外だ!!

 

 流石にそれはリベラルすぎだろう! ええい、だが悪魔全体がそっち側に傾いている以上このままでは……!

 

 ……は! そうだ良い事を思いついた。

 

「待った! だったらいい提案があります!!」

 

 こうなれば、流れに乗った上でより状況を変える!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「元々、七つの大罪は八つだったという話はご存知ですか?」

 

 俺は、次の日四大魔王を読んで会談を開いた。

 

「ああ、元々は嫉妬の罪がなく、虚飾と憂鬱が存在していたということだろう?」

 

 サーゼクス様が即座に反応する。

 

 そう、元々七つの大罪に嫉妬はなかった。

 

 そして、傲慢の罪に吸収される形になったが虚飾があり、怠惰の罪に吸収される形で憂鬱があった。

 

 そう、つまり―

 

「大罪は本当は九つあるという考え方もあります。そうでしょう?」

 

「……なるほど、七大魔王ならぬ九大罪王か。面白い提案をするね」

 

 よし、食いついた!!

 

「面白い。世論が自分の反対するイッセーくんの魔王を望むのならば、いっそのことさらに増やしてしまおうということか」

 

「そういうことですアジュカ様。……転生悪魔を魔王に据えることは、個人的に反対です」

 

 いうなれば、帰化したとはいえ外国人を政治の要職に就けるようなものだ。

 

 正直言ってリベラルすぎる。ついて行けるものも少ないだろう。

 

「それに、今後を考えるのならばイッセーを悪魔のトップに据えるのは大きな問題があることは分かっていますか?」

 

「そんなになの? イッセーくん良い子じゃない」

 

 セラフォルー様はそう言うが、しかしイッセーはあまりに問題だ。

 

「あのですねセラフォルー様? イッセーは確かに良いやつですが覗きの常習犯ですよ? 人間世界で、どれだけの著名人が性犯罪を起こしたことで社会的に失墜したかご存知ですか?」

 

 売春、痴漢、セクシャルハラスメント。現代社会において、性的なスキャンダルはあまりに致命的だ。

 

 変な性癖があると知られるだけで、社会的な地位が剥奪されることも珍しくない。

 

 そんな人間世界に存在を公表するというのに、覗き魔をトップに据えていると知られればどうなるか。

 

 ……かけてもいい。足並みが乱れる。

 

 だが、残念なことに多くの異形達はイッセーを称賛している。

 

 あいつを魔王に据えたい者は、もはや悪魔だけに留まらない。

 

 天使も、妖怪も、神々すらも。兵藤一誠という男を英雄として見て、魔王となるに相応しいと見ている。

 

 この認識のずれは致命的だ。いつか必ず大きなもめ事を産んでしまう。

 

 それをどうにかする方法はあるか。……一つ、ある。

 

 イッセーがサマエルの毒に対抗したのと同様の方法だ。

 

 ……絶対数を増やして薄めればいい。

 

「……実は、ぜひ将来的に魔王の座に加えたい人物がいるのですよ」

 

 すまん、お前をある意味で売るぞ、アルサム!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが、ある意味で既に手遅れだということを俺が知るのは、もっと後になってからだった。

 

 

 

 

 




原作最新刊における、イッセーの魔王推しにさすがに苦笑しました。……早いよ君ら。

そんなわけで、本来予定しているよりもさらに一ひねり加えることにしました。詳しくは次回で。

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