HSDD 転生生徒のケイオスワールド2 卒業生のアザゼルカップ 作:グレン×グレン
偽聖剣。それは、俺がアーチャーとアザゼルに創ってもらった超高性能の装備。
サーヴァントとの接近戦を単独でこなすことを目的とするという、むちゃくちゃなオーダーを可能とした代物。
ぶっちゃけむちゃくちゃ問題がある。
エクスカリバーの残骸を中心とする、希少性の高すぎる材料。
アザゼルとアーチャーという一流の技術者による超職人芸。アーチャー亡き今、修復には鍛冶の神の力が必要だった。
悪魔の駒のベースマテリアルを中心とする、レーティングゲームでは本来使えない違法技術の数々。
そして俺自身も偽聖剣を使うための改造を何度も行った、人剣一体の特注品。
当然量産など現状不可能の代物だ。少なくとも、俺が使わなければ性能を発揮することなどできない。
だが、ここに例外が存在する。
あらゆる剣の性能を引き出すことこそが能力である英霊剣士なら、その能力を発動させることが可能。
この土壇場において、それにすべてをかける!!
「覇王―」
そして一気にハイディはフォンフの懐にもぐりこむ。
ああ、才能なら俺より上なんだから、使いこなせれば俺より強くなることも十分あり得るさ。
「―断空拳!!」
その拳が、フォンフ・シノビコームにめり込んだ。
「クソが!」
もろに喰らいながら、フォンフ・シノビコームはそれに耐える。
ええい、これでも押し切れんか!
「それでいい。アインハルト、一分ほど時間を稼いでくれ」
だが、アルサムには別のものが見えていた。
正眼にルレアベを構えると、アルサムは呼吸を整えて魔力を込める。
「地獄にて目覚めよ、魔の王よ。冥府の大地を照らすのだ」
その瞬間、ルレアベから魔力が増大化されて放出される。
「我こそは大罪を担いし終末の獣の後継。天すら汚すその猛威、今こそここに見せつけよう」
その魔力はアルサムにまとわりつき、そしてアルサム自身を強化する。
「我が手に宿れ軍勢の主。今こそその威を見せつけよ!」
それは、あえて言うのならば―
「
「馬鹿な!? そんな機能はルレアベにあるはずが―」
「抜かせ! 私はルレアベの新たなる担い手だぞ?」
一瞬の動揺を振り切りながら放たれるシノビコームの一撃を、アルサムは今までではありえないような速度でかわし―
「―先代を超えることこそ後代の務めと知れ!!」
一振りで、その腕をぶった切った。
速い! この戦闘能力の上昇率、ヴァーリの極覇龍にすら匹敵するぞ!
マジでこれは覇の領域だ。あの野郎、こんな奥の手を編み出していたのか!
「この出力、マジで覇の領域に―」
「遅い!」
そして体勢を整えさせる隙を一切与えず、アルサムはシノビコームを滅多切りにした。
「バカな、俺は、
「罪もなき民草を傷つけた報い、魂魄にまで刻むがいい!!」
断末魔の叫びすら言わせることなく、アルサムはフォンフ・シノビコームの首を跳ね飛ばした。
「……我らだけならばまだしも、時空管理局にまで牙をむいた罪、その程度ですまされたことを光栄に思うがいい」
言い放つと同時、シノビコームは跡形も残さず爆発する。
その爆風にあおられて、アルサムは壁にたたきつけられた。
あ、さすがに消耗が激しいらしい。
「少し休む。それまで何とかしのいでくれ」
「……ああ、任せろ!!」
アルサム、お前はよくやってくれた。
俺も格好位付けないとな!
「させるか! ここで貴様だけでも殺しておいて―」
「いや、ここまでだよ」
すでに対抗策は思いついた。
今の戦闘の最中も、頭を回転させてもらった。
ああ、考えてみれば簡単なことだ。
……人間に特攻なら、人間でなくなればいい。
「ハイディ、五秒かせげ!! それで終わらせる!!」
「わかりました!!」
「そんな短時間で何ができる!!」
フォンフ・バーサーカーはそう言い放ちながら攻撃を行うが、しかしハイディはしっかり五秒持ちこたえる。
いかに人間特攻とはいえど、今のハイディは英霊の力を宿している。
数秒ぐらいなら確実に持ちこたえる。
しかし、フォンフ・バーサーカーは殺人鬼の英霊を宿すもの。
人間を殺す存在である以上、相手が人間ならば圧倒的に有利。
ましてや、まだハイディは七式に慣れていない。
ゆえに、五秒を過ぎたあたりでフォンフはその一撃をハイディに届かせ―
「え?」
「は?」
条件反射レベルで放たれたカウンターの拳をもろに喰らった。
フォンフが驚くのも無理はない。
人間特攻であるフォンフの攻撃は、純粋な人間であるハイディには一撃が致命傷。一撃クリーンヒットを当てればそれで勝負はつく。
にもかかわらず、ハイディは反撃を余裕で行える程度のダメージしか入っていない。これは普通に考えておかしい。
では、なぜか。
その答えに、フォンフはすぐに思い至った。
「宮白兵夜、お前神器のドーピングを―」
「―したともさ!」
注射器を投げ捨てながら、俺は即座に反撃を開始する。
俺の新たなる禁手は、己を堕天使へと変化させること。
では、それを強化拡張するドーピングをおこなえばどうなるか。
それはすなわち―
「アインハルト・ストラトスを堕天使化させたのか!」
「一時的だがな!!」
これで状況はひっくり返る。
人間特攻であるフォンフ・バーサーカーは人間以外にはその利点を生かしきれない。
すなわち、この状況は大きく不利なのだ。
そして、この五秒はそれだけでは済まない。
俺も指摘されるまですっかり忘れていたが、フェニックスの涙の備蓄を用意してきていた。
なにせ前回それで失敗したからな。金に物を言わせてたくさん集めたとも。
それはすなわちどういうことかというと。
「……体が力強すぎるのは問題ですが、おかげで何とかなりそうですわね」
「あ、やべ」
真っ先に回復したヴィクトーリアを筆頭に、お礼参りといわんばかりに連続で攻撃がフォンフに叩き込まれる。
そして、とどめはもちろん俺の決め技。
「砕け散れ。
どてっぱらに、遠慮なく殺すつもりで大技を叩き込んだ。
徹頭徹尾量産できる条件をそぎ落とした装備、偽聖剣。文字通りのオンリーワンな装備である。
ですが中二バトル作品恒例、例外! 剣士の英霊はその特性上、このオンリーワンな特性をガン無視できるのです!
これが本来の聖杯戦争なら、こいつは間違いなく三流サーヴァントで勝利は困難。ですがこの世界なら話は別です。
そして覇剣抜刀。アルサムの新技です。
新たなる使い手として先代を超えたアルサム。ついに覇の領域を独自に編み出しました。これにはフォンフも唖然。