HSDD 転生生徒のケイオスワールド2 卒業生のアザゼルカップ   作:グレン×グレン

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常識的に考えればこう思うだろう。………イッセーだけずるいって!!

 

 なんだ、これは―!

 

 一瞬とはいえ覇輝に次ぐレベルの強さを発揮しやがったぞ、あの野郎!

 

 このレベル、主神クラスでも苦戦する……っ!

 

「さて、俺が本気を出せば、人間なんてこんなもんだ」

 

 フォンフ・バーサーカーはそういうと、静かに近くにいたヴィヴィを見下ろした。

 

「や、やっぱり、強い……っ」

 

「まあな。そしてお前もいずれ強くなる。そういう目をしている」

 

 フォンフは拳を振り上げる。

 

 そして、その腕が炎に包まれた。

 

「だから今のうちに摘んでおこう。万が一にでも誰かの眷属悪魔になったら、厄介すぎる」

 

 やばい本気だ!

 

 くそ、この距離だと間に合わない。アルサムもシノビコームの方に抑え込まれてる。

 

 そして今の俺でもこのダメージ。他の奴らは生きているかどうかも―

 

「させるかぁ!!」

 

 その後ろに、ノーヴェが蹴りを放つ。

 

 むろんフォンフはそれをかわすが、しかしその攻撃に対して完璧なタイミングで砲撃と斬撃が放たれた。

 

「チッ! 連携が完璧すぎるだろこれが!!」

 

「そういう風に作られましたので!」

 

「陛下、ご無事ですか!?」

 

 すかさず双子がヴィヴィを連れて離れるが、しかし状況はこちらが不利。

 

 あの野郎、なんでか知らないが化け物じみた戦闘能力を発揮しやがった。

 

 おそらく宝具。となればその由来を探らなければ仕組みが分からない。

 

 宝具というのは伝承の具現化。時としてそれは、原理の域を超えて権能の如き権利へと姿を変える。

 

 もしその類だとすれば、場当たり的な対応以外に対抗策なんて存在しない!

 

 だが、いったいどんな由来があればあんな急激なパワーアップが―

 

「ええいさせるか!!」

 

 そこに、シノビコームの攻撃を無理やり無視してアルサムが切りかかる。

 

 フォンフ・バーサーカーもカウンターを叩き込むが、しかしアルサムはそれを意地で無視して攻撃を叩き込んだ。

 

 しかし浅い。もとよりフォンフシリーズの耐久力は獣鬼と同じ。個人戦力でどうにかするのは困難だ。

 

 ええい、このままだとこっちが削り殺される!

 

 ……ん? 待てよ。

 

 そういえば、なんでアルサムは攻撃を受けてぴんぴんしてるんだ?

 

 ついでに言えば、ノーヴェ達のダメージが軽いのはどういうことだ?

 

 そういえば、俺も思ったよりダメージが少ないような。

 

 あ、そうだ。

 

 ノーヴェ達は人工的に作られたサイボーグ。アルサムは純血悪魔。そんでもって俺も悪魔に神に龍が混ざり合ってるから人間度は低い。

 

 ってことは。もしかして!

 

「試す価値はありか!!」

 

 物的証拠を得る為に、俺は即座にフォンフに特攻する。

 

 発動するのは冥府へ誘う死の一撃(ハーイデース・ストライク)

 

 この威力なら、当然の如くフォンフも警戒するしかない。

 

 そんでもって、俺はさらに特殊兵器を切る。

 

「―禁手化(バランス・ブレイク)!!」

 

 ほらほらほらほら、こんなもん気にするしかないだろう。

 

 そして!

 

「阿呆が隙だらけだ!!」

 

 当然お前はカウンターを叩き込む。

 

 そのカウンターを俺は一切かわさずその身に喰らう。

 

 そしてその瞬間、フォンフは己の失敗を悟った。

 

「………なんだと!?」

 

「なるほど、そういうことか」

 

 おかげでダメージはでかいが、しかしよく理解できた。

 

 ……威力がさっきより落ちている。渾身の一撃であるのにも関わらずだ。

 

 そして、その理由をフォンフ・バーサーカーは既に理解している。

 

「お前、堕天使になりやがったのか!」

 

「正解だ!」

 

 馬鹿め、この俺がいつまでも弱点攻撃対策をしてこないと思っていたのか。

 

 悪魔に神にそのまた龍。どれも強大な存在だが、しかし特攻兵器も存在する諸刃の剣。

 

 ダブルアタックする聖槍やアスカロンなどを喰らえば、致命傷になりかねない。

 

 ゆえに、対策はきちんと立ててきた。

 

天使の鎧(エンジェル・アームズ)の亜種禁手、完全足る堕天使への覚醒(フォーリン・エンジェル・プロモーション)!! 俺は三十分だけ純粋堕天使へと肉体を変質化させれる!!」

 

「嘘つけ! お前の禁手は別物だろうが!! いくらなんでも変化させすぎだろう!!」

 

 シノビコームの方から指摘が入るが、しかし甘く見てもらっては困るな。

 

「阿呆が! イッセーだって禁手に覚醒してから三宝に目覚めただろうが! 具体的には悪魔の駒をいじってな!」

 

「バカな! あれは痴漢を生み出してたからではないのか!!」

 

「あれに関してイッセーの悪意は欠片もない!!」

 

「痴漢こそが人類の幸福だとでもいうつもりかこれが!!」

 

「そうじゃねえ!!」

 

 ええい軌道がずれすぎた。修正するぞ。

 

「とにかく! 悪魔の駒のリミッター解除による神器の拡張ができると分かっていて、自己改造上等の俺がしないと思ったか、馬鹿め!!」

 

 来るべきE×Eや、そもそもお前らとの戦いの為に戦力向上は必要なんだ。

 

 実戦優先でレーティングゲームのレギュレーション中の兵器用意しまくりの俺が、イッセーがやったことをまねしないと思ったか!!

 

 その応用で、神器の拡張発展は当然のごとく研究していた。

 

 そして、俺は素体が弱っちいくせしてどんどん弱点増やし続けている所為で、曹操より酷い事になってたからな。

 

 反省はしているのに、想定外のミスでどんどん増えている。正直ちょっと泣きたくなってきた。

 

 だから作ったのさ! それを何とかする為の方法を!!

 

「スペックは落ちるし蒼穹剣も使えないが、神龍悪魔特攻装備持ち相手なら、場合によってはマイナスを取り除く方がプラス得るよりいい時もあるからな!!」

 

 うっかり癖の持ち主である俺は、ただでさえ足元掬われやすい。

 

 それに何より―

 

「俺は本来バランスタイプだ! 穴のない構成こそ俺の基本形!」

 

「器用貧乏も言いようだな!!」

 

 拳と拳がぶつかり合う中、しかし俺はそれだけで勝とうとは思っていない。

 

 というより、このままだと勝ち目が薄い。

 

 何故ならば―

 

「お前の能力は対人特化ということでいいだろう!」

 

「どういうことだ? 個人戦どころか集団相手に圧倒しているはずだが!!」

 

 シノビコームの猛攻を捌きながら、アルサムが疑問を口にする。

 

 ああ、ちょっと言い方を間違えた。

 

「厳密に言うなら対人間特化だ。おそらく人間相手に問答無用で有利になれるという宝具だろうな」

 

 だから、完全に堕天使となっている今の俺ならば対抗できるというわけだ。

 

「そんな、ことが、可能、なのか!!」

 

「半英雄なら、殺人鬼とか、できるかも、な!!」

 

 攻撃が苛烈になってきたが、しかし情報共有はちゃんと行う。

 

「純血悪魔のお前は言うに及ばす、サイボーグのノーヴェ達や色々混ざって人間度減ってる俺もダメージは比較的薄かった! おそらくそういうことで間違いない!!」

 

「なら、やはり私が相手をするべきで―」

 

「させると思うかぁ!!」

 

 流石にフォンフ達も遠慮はしないようだ。

 

 第一、蒼穹剣を発動させている俺はシノビコーム相手に特攻が入る。

 

 この相手が変わった状態は、フォンフにとっても維持したい状況だ。

 

「でもどうする! あたしたちもさすがに雑魚で手一杯だ!!」

 

 だよね! ヴィヴィたち戦闘不能だもんね!!

 

 どうしたもんかと思う中、アルサムが叫ぶ。

 

「おい宮白兵夜! フェニックスの涙は!」

 

「………あ、溜め込んでたの忘れてた」

 

「その失念癖を何とかしろ!!」

 

 ごめんなさい!!

 

「させると思うか! 援護になど行かせるかよ!!」

 

 フォンフ・バーサーカーは遠慮なく攻撃を連発する。

 

 ええい、これでは渡せてせいぜい一回だけ!

 

 誰に、誰に使う?

 

 っていうか、使ったとこで人間だらけのこの状況下、誰に渡しても大して効果は見込めないし―

 

「……アルサムさん!」

 

 と、そこで突撃する影が一人。

 

 ハイディ!?

 

「チッ! 数が多すぎて浅いのがいたか!」

 

 フォンフ・バーサーカーが仕損じたか!

 

 そしてハイディの狙いはフォンフ・シノビコーム。

 

 だが、いくらハイディでもあいつの相手を一人でできるわけがない。

 

 どうする?

 

 どうする?

 

 どうする!?

 

「下がれアインハルト! 今のお前ではこいつの相手は荷が重い!!」

 

「出来ません!」

 

 ダメージだって相当に入っているだろうに、しかしハイディは諦めない。

 

「貴方は私の思い違いを正してくれました。宮白さんは私のことを気遣ってくれました。それにヴィヴィオさん達は私の大切なお友達です」

 

 だから―

 

「―ここで、助けるの当たり前です!!」

 

 ハイディ。本当にいい子だよなもう。

 

 だったら、やるしかないか。

 

「ハイディ! 使え!!」

 

 俺は、即座に二回ハイディに向かって投げつける。

 

 それを見て、フォンフは即座に裏拳でフェニックスの涙を破壊した。

 

「ぬるいなこれが! その程度で」

 

「かかったな!」

 

 馬鹿め! 俺が何を装備しているか忘れたか。

 

 フォンフの間合いが離れたところで、俺は透明の聖剣を解除して、ハイディの視界に指輪を見せる。

 

 そして、ハイディはそれを受け取った。

 

「使えハイディ! 癖は強いが今なら効果は莫大だ!!」

 

「……はい!」

 

 この状況下で、フォンフにハイディが指輪をつけるのを妨害する余裕はないし流石にさせない。

 

 そして、その指輪は特注品だ。

 

「しまった!」

 

「それは、サーヴァントを宿す―」

 

「そう、七式だ!!」

 

 これが逆転の切り札。

 

 霊的癒着の可能性があるのが問題だが、この際仕方がない。

 

 使えハイディ。今ならそれでも十分使える!

 

「……汝は剣の担い手、斬撃の意志」

 

 起動のパスコードをハイディが認識する。

 

 ぶっちゃけ、この英霊はそんなに強くない。普通の聖杯戦争なら確実に負ける。

 

「剣士の意志を宿す者達。その結晶を今ここに」

 

 だが、今は結構使える環境だ!!

 

「―覇王の力は拳だけにあらず!!」

 

 なにせ俺とアルサムがいるからな!!

 

「七式起動、モデル剣式!!」

 

 次の瞬間、しかし変化は一切訪れない。

 

 そして、フォンフたちはその英霊の存在を理解した。

 

 なにせ、元々あいつら側の英霊なんだからな。

 

「……剣士だと!?」

 

「アホか? 格闘家に奴を憑依させても真価は発揮できないだろう!?」

 

 フォンフ達は怪訝な表情になるが、しかし甘い。

 

「仕方がないだろう。元々それはD×D(俺達)との連携用だ」

 

 なにせ、こっちにはシャレにならない剣が多い。

 

 グラムに始まる北欧の魔剣勢揃い。アスカロンに始まり、エクスカリバーにオートクレールにデュランダルという聖剣オンパレード。ヴァーリチームを含めれば、そこに聖王剣コールブランドまで追加される。

 

 それをもう一本増やせるというのは、どう考えても超有利。連携ようとして考えれば規格外だろう。

 

 むろん、木場達はここにはいない。

 

 そしてハイディは格闘家だ。フォンフ達の言う通り、剣士の英霊とは相性が悪い……と思ったか?

 

「フォンフ、俺を見ろ」

 

「あ? 今更どうし……た………」

 

 俺を見て、フォンフは大事なことに気が付いた。

 

 そう、偽聖剣(これ)は鎧として使うことを前提に開発されてるけど、剣です。

 

「真名開放―」

 

「あ、やべ」

 

 バーサーカーの方が思わず漏らすがもう遅い。

 

剣の英霊(ザ・セイバー)!!」

 

 その瞬間、ここに偽聖剣がもう一つ追加された。

 




兵夜が神器の拡張というすでに前例のある手段を取らないわけないと思いませんか?

そして、アインハルトに七式使用。

本来はD×Dメンバーとの連携を主眼として設計された七式です。だって考えてもみてくださいよ。あいつはD×Dで呼び出された方が本領を発揮できる英霊だと思いませんか?

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