HSDD 転生生徒のケイオスワールド2 卒業生のアザゼルカップ   作:グレン×グレン

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雷光VS乳乳帝 最終ラウンド   ~清濁併せ呑んでこそ

 

 イッセーSide

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 くそ! ここまで強いとか思わなかった。

 

 これが、疑似的にとはいえ超能力者(レベル5)に到達した人の戦闘能力!! マジで強い!!

 

 すでにこっちはぼろぼろだ。左腕は外れてるし、あばらにもひびが入っている。

 

「イッセーさん!」

 

「イッセーくん!!」

 

 アーシアとイリナが叫ぶが、しかし二人とも想いを汲んで手を出さない。

 

 ああ、そうだ。

 

 これは青野さんと俺の一騎打ちだ。

 

 ここで数の暴力で押し切ったところで、そんなことじゃあ青野さんは俺たちのことを認めてくれないだろう。

 

 男として、一騎打ちで勝たなきゃ意味がない!!

 

「ファックが! いい加減にしろよこの変態が!!」

 

 青野さんは苛立たし気に連続攻撃を叩き込む。

 

 くそ! 気を抜いたら一撃でアウトになりそうな位置ばかり攻撃してくれ右から、かわすのが難しい!!

 

 しかも気圧も操作してるのか息が苦しい!! ああもう! これがチーム戦なら後退してインターバルを挟めるのに!!

 

 だけど、だけど、だけど!!

 

「負けられないさ、この一騎打ち!!」

 

「だから、お前らは不安なんだよ、兵藤眷属!!」

 

 さらにイライラしながら、青野さんはプラズマを生成する。

 

 まだだ、こんなところで負けられない。

 

 この一騎打ち、なんとしても俺が―

 

「……イッセーさま!! それは違いますわ!!」

 

 へ? レイヴェルなんて?

 

 あ、一瞬気を取られたからかわすのがまにあわ―

 

支配の聖剣(エクスカリバー・ルーラー)!!」

 

 その声とともに、プラズマが方向をそれて上に向かって飛んでく。

 

 ゼノヴィアの支配の聖剣の力だ。あいつ、結構使いこなせてるな。

 

 って違う!! そうじゃなくて!!

 

「待ってくれゼノヴィア!! これは俺が一人で勝たないといけない勝負で―」

 

「違うぞイッセー! 青野はそんなことなど望んでいない!!」

 

 え?

 

 いや、俺が朱乃さんを守れるかの戦いなんだから、一対一で勝たなきゃ認めてくれるわけがないじゃないか。

 

 だけど、ゼノヴィアは首を振った。

 

「青野は最初から兵藤眷属と呼び掛けている。……おそらく、最初から私たち全員を相手にするつもりなんだ」

 

 へ? いやいや、いくらなんでもそんなわけないだろ。

 

 さすがに全員で挑めば青野さんも確実倒せる。青野さんはゼノヴィアたちと同レベルの戦闘能力だから、数で挑めば勝てるだろう。

 

 だけど、そんな卑怯なやり方をしたって青野さんが認めてくれるわけがないじゃないか。

 

 だけど、こんどはレイヴェルが首を振った。

 

「お忘れですかイッセーさま。青野さんは元暗殺者ですわ」

 

 うん、それは知ってる。

 

 けど、なんで?

 

「青野さんは目的のためなら手段を選ばない戦い方を前提とする職業です。そして青野さんの目的は「兵藤一誠が姫島朱乃を守れるか」ですわ」

 

 そうだよ。だからこの戦いは俺が勝たなきゃいけな……い………。

 

 ん? 待てよ?

 

 もしかして―

 

「……守れるなら、手段は問わなくてOK?」

 

「気づくのが遅いぞファック。-50点」

 

 え、ええええええええええ!?

 

「あんたそれでいいの!? 男が女守るのに人の力借りていいの!?」

 

「いいに決まってんだろファックが。あのな? あたしは正々堂々朱乃を守れなんて言ってんじゃねーよ。朱乃を守れるかどうかが重要なんだよ」

 

 何言ってんだこの馬鹿はと顔で言ってる。

 

「何言ってんだこのファックは」

 

 ほとんど同じこと言ったよ!!

 

「いいか? 物事には優先順位ってのがある。あたしがお前に求めてるのは、朱乃をなんとしても守り通すこと一点。綺麗にできるならそれでいいし、あんまり外道なことして朱乃の心を守らねーなんて論外だが、手段選びすぎて守れねーようなら落第点だ」

 

 ………そうだった。

 

 青野さんは、俺より宮白を選ぶタイプだった。

 

 そんな青野さんが、手段のいい悪いを深く考えるわけがない。

 

「第一、テメーは(キング)だろうが。王は人を使う職業だぞ? それなのに部下も動かさずに一人で全部やろうとか馬鹿じゃねえのか? 疲労困憊の相手を狙ってくる外道なんてのは、袋にすりゃいいんだよファックが」

 

 ひ、ひどい!! そこまで言わなくていいじゃないか!!

 

 し、しかし確かに何よりリアスや朱乃さんたちを守るのが俺の目的。一対一にこだわって青野さん(刺客)に翻弄されてるようじゃ言われた通りだ。

 

「いいか? あたしが知りたいのは朱乃を幸せにするだなんて決意じゃねえ。朱乃を守ることができるかどうかだ。……王《リーダー》の資質は、部下も含めて考えるもんだろーが」

 

 ………。

 

 な、なるほど。

 

 つまり―

 

「―バカやって失敗するような奴に、用はないってことですね」

 

「いざという時それができる奴じゃなきゃ、朱乃は任せられねーな。バカ騒ぎは自分で責任が取れる範囲内でするもんだ」

 

 そう、か。

 

 そういえば、青野さんはこのゲームで全然動きを見せなかった。

 

 これはつまり、相手が疲労するところを狙ってくる卑怯者との戦いを前提にしてるんだ。

 

 まったく。さすがは宮白の彼女の1人だよ。

 

 あなたも十分黒いです。

 

「………アーシア。悪いけど、回復してくれない?」

 

「あ、はい。わかりました!!」

 

 ハラハラしていたアーシアが、ほっとした顔で俺を回復する。

 

 ああ、ごめんなアーシア。心配かけちまった。

 

「ゼノヴィア、イリナ、ボーヴァ。……悪いけど、俺が回復するまで青野さんの相手を頼む」

 

「ああ!」

 

「もちろん!」

 

「承知いたしました、我が主!!」

 

 三人が、俺をかばうように青野さんの前に立つ。

 

 その光景をみて、ようやく青野さんは表情を変えた。

 

「……合格だ。あとは実際にできるかどうかだな、ファックども」

 

 心から、この戦いを楽しんでないとできない笑顔だった。

 

 ああ、これは宮白惚れるわ。マジで綺麗だ。

 

 ああ、そして戦う姿もマジですごい。

 

 ゼノヴィアもイリナもすごい奴だ。そして、短い付き合いだけどボーヴァも並の上級悪魔じゃ太刀打ちできない戦闘能力を持っている。

 

 にもかかわらず、青野さんは一人でそれを相手していた。

 

 そう簡単には負けられない。この程度も潜り抜けられない程度のことで、朱乃を守るだなんてほざくんじゃない。

 

 ああ、わかったよ青野さん!!

 

「俺は、兵藤一誠は!! 姫島朱乃を幸せにして見せる!! いや、リアスも朱乃さんも、みんな幸せにするハーレム王になってやる!!」

 

 だから、勝つぜ青野さん!!

 

 あんたを超えて、一軍匹敵(レベル5)を超えて、俺が朱乃さんを守るに足る強さを持っているって証明して見せる!!

 

「兵藤一誠眷属とその配下を舐めんじゃねえぞ!! 軍隊の一つや二つ返り討ちにしてやらぁ!!」

 

「よく言った!! ならまがい物のレベル5ぐらい超えてみやがれ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『試合終了ぅうううううううう!! 激闘の末青野小雪を下した赤龍の乳乳帝チームに対して、バラキエル氏が投了(リザイン)を宣言!! 決着がつきましたぁあああああ!!!』

 

 実況が大歓声をあげるなか、俺は涙が止まらなかった。

 

「うぅ……っ。イッセーも小雪も立派になって……っ!」

 

「兄上、父親か何かですの?」

 

 黙っていろ雪侶。俺は猛烈に感動している。

 

「はいはい。まずは鼻をかみましょうね」

 

 あ、シルシありがとう。

 

「しっかし、なんかすごかったよな、あいつら」

 

 試合の様子に飲まれたのか、ちょっとぼんやりした感じで暁がぽつんとつぶやく。

 

 ああ、この試合、これまでの大会でもいろいろな意味で高水準だろう。

 

 激突の激しさでも、選手の質の高さでも、アザゼル杯予選の試合ではかなり上位に来る試合になることは間違いなしだ。

 

『しかし、兵藤一誠選手は姫島朱乃さんに告白をしたようなものですが、リアス様を差し置いての展開になりますけどよろしいのでしょうか、グレモリー卿』

 

 おい、そこ余計なこと言うな。

 

 今度はジオティクス様とイッセーとの間で激闘が始まることに―

 

『ぅう。我が義息子がこれほどまでに器の大きさを見せるとは。グレモリー家の将来は明るい……っ』

 

 そんなことはなかった。

 

 うん、確かにイッセーは姫様には告白してるから問題ないか。

 

「とはいえこれは、イッセーもさらにモテるでしょうねぇ、姫様?」

 

「仕方がないわ。イッセーは素晴らしい男なんだから」

 

 あら、さらりと流された。

 

 姫様も成長したということか。正妻の貫禄が出てきたもんだ。

 

「リアス様は余裕ですね。もしかして、もう子供も出来たりしてるのですか?」

 

「それは違いますのシルシ義姉様。まだイッセーにぃは童貞ですのよ」

 

 雪侶、シルシに余計なことを言わなくてよろしい。

 

 とはいえ、いつになったら童貞卒業するのかは確かに気になる。

 

 姫様たちは基本処女なんだし、童貞と処女のエロスって失敗する確率がひどそうだよなぁ。

 

「いっそのこと経験豊富なお姉さんでも落とした方がいいんじゃないか、あいつ?」

 

「宮白さん! あまりいやらしいことを言わないでください」

 

 ゴメンゴメン姫柊ちゃん。割と本気で言ったけど勘弁してくれ。

 

 あと姫様たちは殺意を向けないでください。消滅の魔星の準備はやめてお願い。

 

 今は試合の様子がダイジェストで放送される中、しかしノーヴェも暁も姫柊ちゃんも、結構その様子を食い入るように見つめていた。

 

「どっちの地球もすごいな。火力だけならSSSランク以上あるんじゃねえか」

 

「流石にあのレベルはそうはいませんけどね。イッセーくんはパワータイプの筆頭ですから」

 

 ノーヴェに木場がそういうが、しかしそういう問題でもないと思うぞ?

 

「それにしたって、軍艦でも出せないような火力をポンと出せるってすごいことじゃん。この世界はそんなのが何人もいるんだろ?」

 

「僕たちとしては、主神クラスの火力を用意できる時空管理局の船の方が脅威ですよ。アルカンシェルとかいうのは恐ろしいですから」

 

 と、ノーヴェは木場と会話を弾ませる。

 

 しかしまあ、確かにあの火力は驚きだ。

 

 アザゼル杯に向けて隠し玉の一つぐらいは用意すると思っていたが、ついにどでかくぶちかましやがった。

 

 半端に酷評されてたから、このインパクトはかなりすごい。

 

 これ、次から試合する連中は大半がビビるぞぉ。

 

「だけど、すごいなアイツ」

 

 と、暁の言葉が耳に入った。

 

「ああ、すごいだろ?」

 

「確かに、先輩が目じゃないぐらいいやらしい人ですけど、女性が集まる理由がわかる気がします」

 

 姫柊ちゃんも、好印象というわけではないが評価は高い。

 

 ああ、確かにあいつはいやらしい。

 

 覗きの常習犯とかその時点で女の敵。そこに関して否定はしない。

 

 性欲を発散するようになれば落ち着くと思って女を紹介しても、「愛がないからいらん!」とか言い出すし。無理だろオイ。

 

 とはいえ、今でもどさくさに紛れて敵を裸にしたがる癖は治らないんだが。

 

 ……そういえばアザゼル杯って洋服崩壊使用禁止になってたよな? あとで確認しておかないと作戦の組み立てに支障が出る。

 

 まあ、それはともかく、あいつはダメな奴だがいい奴でもあるわけだ。

 

()を見せてたろ? もてる奴はもてるだけの理由があるが、あいつはそれだけのものを持ってるんだよ」

 

 ああ、スケベなのはどうしようもない欠点だが、それさえ除けば人格者といって過言じゃない。

 

 だからこそ、姫様たちもアイツを愛しているのさ。

 

「名前の通り誠実なんだよ。だからスケベに寛容な奴はあいつのことを愛するのさ。それにエロ以外は常識人なんだぜ?」

 

「そうですか。……平行世界の赤龍帝さんも悪いと思ったらすぐに謝りましたし、いやらしいけどいい人なんですね」

 

「当然だ。俺が善玉側についてる最大の理由だからな!」

 

「いや、そこは偉そうに言うなよ」

 

 そんな風にだべりながら、俺はふらふらしながらも会場を後にする小雪を見る。

 

 ……まだ会わない。それは、向こうから言ったことだ。

 

 会うとするなら、仕事でたまたまブッキングした時か、俺たちの試合が終了した時だ。

 

 だけど、これだけは思ってる。

 

 ……愛してるぜ、小雪。

 

「……そう言えば、朱乃義姉様は黙ったままですわね」

 

 と、雪侶がそんなことを言いながら朱乃さんの方に視線を向けるが……。

 

「……もぅ、イッセーも小雪も父様も、バカなんだから………っ」

 

 感動のあまりすごい号泣してた。

 

 うわぁ、これ、明日からイッセーすごいことになりそうだな、オイ。

 

「どうします、姫様。これ、明日からの地獄のイッセー争奪戦がすごいことになりますぜ?」

 

「だ、大丈夫よ! だってイッセーの一番は私だもの! 違うにしてもアーシアだもの!!」

 

 その割には焦ってませんか、姫様?

 

「ええ、決めましたわ」

 

 と、朱乃さんは立ち上がる。

 

「私はイッセーの子を一番に孕むわ! いえ、そうなるという確信があるの!!」

 

「な、なにをいやらしいことをいきなり言っているんですか!!」

 

 姫柊ちゃんが顔を真っ赤にしてたしなめるが、しかし朱乃さんは止まらない。

 

「あらあら。子供を産みたいというのは女の子なら当然の欲求ですわ。雪菜ちゃんも、暁くんと」

 

「な……っ」

 

 いかん! いきなりドSモードに入っているぞ! からかい半分本気半分だ!

 

「な、ないないない!! 姫柊はあくまで監視役だから!!」

 

「暁死ねよお前」

 

 お前、いつか本当に刺されるぞ!!

 

「……そうですか、ただの監視役ですか」

 

「ひ、姫柊?」

 

 あ~もう姫柊ちゃん機嫌が悪くなったし。

 

 ノーヴェがなだめに入ってる間、オカルト研究部の視線が集まり、一つの感情を形成する。

 

 ああ、イッセーと同じタイプだ。

 

 ……うん、そうだね。

 

 しかも恋愛関係におけるトラウマがないことを考えると、むしろもっとひどいともいえる。

 

 まあ、心臓を刺されただけならこいつ死なないし、適度にフォローしながらゆっくり見守っていくか。

 

 それはともかく、何はともあれ。

 

 かっこよかったぜ、二人とも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 因みに、次の試合に遅刻しかけるというミスがあったが何とか試合そのものに勝ったよ?

 




試合終了。小雪の試験も何とか突破しました。

小雪がイッセーに求めたのは、きれいすぎる生き方をしないこと。其れよりも朱乃を優先してくれるかどうかということ。

なんだかんだでイッセーは、ここぞというところでは一騎打ちを選ぶ男です。それが悪いとは言いませんが、数に任せて叩き潰せばもっと楽に勝てるときも何度もありました。其れどころか、一対一では負ける可能性の方が大きい相手にそれを挑んだこともしばしば。

小雪はそれが心配でした。このバカ朱乃泣かせてでも一騎打ち狙うんじゃねえの? と。

別に、卑怯卑劣な手段は手の込んだ策略まで城とは言いません。それは小雪や兵夜(自分たち)の領域です。

ですが、何を優先するべきか。それだけははっきりさせてほしい。そして、それは大切な人たちであってほしい。

少なくとも、人でなしを相手に己の身を犠牲にしてまで一騎打ちにこだわらないでほしい。

小雪はその程度の清濁ぐらいは併せ呑んでほしかったのです。

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