HSDD 転生生徒のケイオスワールド2 卒業生のアザゼルカップ   作:グレン×グレン

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雷光VS乳乳帝! 第三ラウンド! 風神乱舞

イッセーSide

 

 何だって!?

 

 乳乳帝状態じゃないとはいえ、それでも全力の砲撃を叩き込んだはずだ。

 

 これを相殺できる余力は、バラキエルさんにはなかったはず。

 

 なのに、どうして―

 

 いや違う!!

 

 あの特徴的な口癖を忘れるわけがない。俺は彼女をよく知っている。

 

 そして、魔力の余波が流れ去っていく中、彼女は姿を現した。

 

「……待たせたな、イッセー」

 

 ボディスーツに身を包んだ青野さんが、バラキエルさんを庇ってそこに立っていた。

 

『お、お、おおおお!!! 兵藤一誠選手の一撃で決着がついたかと思われたその時、青野小雪選手が間一髪バラキエル選手を救い出したぁあああああ!!!』

 

 実況が状況を伝える中、青野さんはバラキエルさんに一つの物体を渡す。

 

 あ、あれは残っていたオブジェクト!! あの人探し出してたのか!!

 

 ま、まずい! あれを破壊されたら、問答無用で俺達の負けが―

 

「バラキエル。あとは、任せてくれ」

 

「……ああ、そうだったな」

 

 あれ? バラキエルさんも青野さんも、オブジェクトを破壊しようとしてないぞ?

 

 なんでだ? あれを破壊すればその時点で俺達を負かす事ができるはずなのに。

 

 この状況で勝ちたいのなら、他にやることは何もない。これは最後のチャンスのはずだ。

 

 それなのにしないということは、つまり答えはただ一つ。

 

 ……この試合を、青野さんは捨てている。

 

 そして、その理由も何となく想像がついた。

 

 青野さんは、朱乃さんのことが大好きだ。

 

 宮白にとっての俺ほどじゃないけど、それでもすごいレベルで青野さんは朱乃さんのことが大好きだ。

 

 宮白風に言うのなら心の柱。それが、青野さんにとっては朱乃さんやバラキエルさんなんだ。

 

 つまり、青野さんがしたいのは―

 

「―兵藤一誠眷属。あたしと勝負しろ」

 

 青野さんは、まっすぐに俺達を見つめてそう告げる。

 

 ああ、つまりそういうことだ。

 

 この人も、朱乃さんのことが心配で堪らないんだ。

 

「どういうこと青野さん! イッセーくんはこれ以上にないぐらいしっかりと答えを返したわよ!?」

 

 イリナがそう言ってオートクレールを突き付けるが、青野さんは静かに首を振る。

 

「足りねえな。覚悟があればいいってもんじゃねーよ。必要な能力もない覚悟何て、薄っぺらいもんに興味はねーな」

 

 青野さんはそういうと、静かに俺をまっすぐ見る。

 

「……イッセー。時空管理局やフォード連盟、そしてS×Bとの交流は、何のためのものか分かってるな」

 

 ……ああ、分かってる。

 

 エヴィー・エトルデ。乳神のいる異世界。

 

 善神と悪神の二つの勢力が争い合っている世界に、リゼヴィムは挑発行為を何度も繰り返したうえ、こっちの世界の行き方を教えたという。

 

 そして、彼らが来るまでの時間は三十年。

 

 もしかしたら、彼らと戦争になる可能性もある。

 

 その悪神の戦闘能力は、もしかしたらグレートレッドにも匹敵するかもしれない。少なくとも考えておいた方がいい相手だ。

 

 青野さんはこう言ってるんだ。

 

 ……お前に、そいつらから朱乃を守り通すことができるのか、と。

 

「守ります! ……だなんて言っても納得しないですよね」

 

「たりめーだ。説得力ってのは、実績があって初めて生まれるファックなもんだ」

 

 そういうと、青野さんは俺に向かって一歩一歩接近する。

 

「……少なくとも、あたし一人倒せねーなら意味はない。試させてもらうぜ、兵藤一誠眷属!!」

 

 その言葉と共に、青野さんは加速する。

 

 確か、指定したポイントから大気を噴出する能力!

 

 だが、青野さんの能力は知っている。

 

 通常時はあれしか使えないし、禁手を使ったとしても能力は一種類ずつしか使えない!!

 

 なら、真正面からカウンターで―

 

「甘いぜイッセー!!」

 

 その途端、俺の全身を竜巻が包み込んだ。

 

 うぉおおおおお!? 動きずらい!?

 

 そして、その隙に青野さんは俺の腕に組み付くと、一瞬で俺の関節を外した。

 

 な、なんて早業!! そして痛い!!

 

 クソッ! 関節の戻し方なんて流石にまだやってねえぞ!! しかも外されてるからアーシアの癒しの力でも治せるかどうか分からないし、何より一対一だから手が出せない!!

 

「……ファック」

 

 青野さんはなぜか不機嫌そうにそういうと、さらに攻撃を開始する。

 

 大気を圧縮した槍が一斉に放たれる中、さらにいくつも竜巻が現れて俺の動きを封じてくる。

 

 最初から竜巻が来るとわかっていれば強引に動いて対応できるけど、それでも躱しずらくて攻撃が何発か当たる。

 

 こっちもドラゴンショットで反撃するけど、直撃コースのはずなのに攻撃があたらない!!

 

 な、なんでだ!? っていうかそもそも、なんで青野さんは複数の能力を使いこなせるんだ!?

 

「何を寝ぼけたこと考えてる? お前の三宝も乳乳帝も、本来のレーティングゲームならアウトのルールだ」

 

 う! 確かに、三宝や乳乳帝は正式なレーティングゲームだと制限されそうなものだけど……。

 

 ってまてよ? ってことはつまり青野さんも!?

 

「それに比べりゃ―な、禁手を変化させるなんて何の問題もねーとは思わねーか!!」

 

 首の付け根を狙って抜き手が襲い掛かる。

 

 あぶねえ!! これ、殺すつもりでやってないか!?

 

「これがあたしの新たな禁手(バランス・ブレイカー)只人と風神の契約(レベルアネモイ・エアロマスター)だ!!」

 

 連続攻撃を捌きながら、俺はどういうことかを考える。

 

 普通に禁手になった時は、能力を契約で変化させる形で使用してた。

 

 禁手ってことは出力そのものは変わってないはず。それなのに同時に複数の能力を展開するってことは―

 

「堕天使の体の方に干渉してるのか!!」

 

「ああ。今のあたしはただの人間だ」

 

 確かに、飛行する時も能力を使ったジェット推進で飛行してる辺り徹底している。

 

 今の青野さんは正真正銘人間だ。堕天使の特性を何一つ使えない。

 

 だけど、今までよりも強敵だ!!

 

「覚悟しな、赤龍帝! 今のあたしは一軍匹敵(レベル5)だ」

 

 うぉおおおお! 力比べでも渡り合ってる!!

 

 あ、俺の目の前にプラズマが。

 

「一人で勝てるとかなめたこと言ってんじゃねーぞ!!」

 

 うぉおおおおお!!! 大ピンチだぁあああああ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side Out 

 

 これは、思った以上にすごい展開になってきたな。

 

『青野小雪選手! おっぱいドラゴン相手に大激戦!! 様々な風の能力を駆使して、徹底的に追い込んでいますぅうううう!!!!』

 

 実況が大興奮する中、小雪とイッセーの激戦は白熱している。

 

 特に最初の戦闘で関節を外されたのが痛い。

 

 接近戦を挑む限り、イッセーは片腕で対応しなければならない。

 

 確かにイッセーも体術を得意としているが、しかし積み重ねが決定的に少ない。

 

 反面小雪は暗殺用だが、しっかりと体術を仕込まれている。

 

 これは、イッセーが不利だな。

 

「っていうか、眷獣クラスの攻撃が発生していることに驚きなのですが」

 

「闘うことになったら姫柊ちゃんは気をつけろよ? あれは科学的な力だから、多分雪霞狼じゃ無効化できない」

 

 姫柊ちゃんにそう言いながら、俺はその戦闘を観察する。

 

 竜巻、大気圧縮によるプラズマ、超高速の気流。

 

 さっきから攻撃がずれているのは、大気に干渉してレンズを作って光を屈折させているんだろう。おそらくレンズを作っての熱攻撃もできるはずだ。

 

 あ、イッセーの攻撃ががくんと方向を変えた。

 

「あれは何だよ? 攻撃が当たったみたいには見えなかったけど」

 

「何かしら? 青野さんが他に神器を持っているなんて話は聞いてなかったけれど」

 

「おそらくですけど、攻撃時に気流の噴射点を設定していたのでは? 任意のタイミングで発動させることで、攻撃をそらすことができますし」

 

 ノーヴェや姫様が首をかしげる中、木場がそう推測する。

 

 なるほど、あいつ能力を完全に使いこなしてやがるな。

 

「これは、雷光チームと当たった時は面倒なことになるな」

 

「まったくだ。っていうか、あれ本当に貴族の眷獣クラスはあるぞ」

 

 暁が俺に応えながら、もう半ば呆れる感じでそうため息をつく。

 

 ああ、あれだけの能力を自由に発動させるとなると、あいつ相当鍛えてやがったな。

 

「たしか深淵面(アビスサイド)……だったか? その領域にまで神器を進化させてるな」

 

 禁手を後天的に変化させるというのは、ごくまれだが聞いている。

 

 同じ神の子を見張るもの陣営でいうならば、幾瀬とか言ったやつがそうだったらしいな。

 

 これは、これまで戦ってきた禁手の使い手も新たな力を手にする可能性があると言っていいだろう。

 

 しかし、それにしてもイッセーは不甲斐ない。

 

「まったく。これに関しては小雪の側に立たせてもらう。イッセーの奴何も分かってない」

 

 ああ、これは小雪の奴も怒っているだろうなぁ。

 

 あいつ、機転は利くけどわりとお馬鹿だからなぁ。

 

「何も分かってないって? いや、想いを汲んで一対一で正々堂々と挑んでいるじゃないか」

 

 木場はそう反論するが、そういう意味じゃないんだよ。

 

 そりゃぁ、生粋の騎士であるお前からすればそうなんだろうがな?

 

「小雪は、何かあった時に朱乃さんを絶対に守り切れるという確証……とまではいかなくても、こいつになら任せられるという安心が欲しいんだよ」

 

 そう、それが小雪が挑んでいる理由だ。

 

 ようは、自分が対応できないことにすら対応できる奴でなければ、朱乃を任せられないということだろう。

 

 普通は父親の役目だと思うが、割と面倒見がいいからなぁ、あいつ。

 

 そして、その本質にイッセーは多分気づいていない。

 

「アイツは騎士でも武人でもなく、暗殺者で魔術師だ。あいつは男の心意気とかそんなものを見たいんじゃない。……そもそもそれはバラキエルとの戦いで見せたしな」

 

 そう。それに関してはバラキエルとの戦いですべて見切っただろう。

 

 そこに関しては、もはや納得しているはずだ。そもそもイッセーならそう答えると分かるぐらいには付き合いもあるしな。

 

 だから、問題はそこじゃない。

 

 そう、これは果たし合いなんかじゃないんだよ、イッセー。

 

「それが分からなきゃ、例え勝っても小雪は認めてくれないぜ。……なんだかんだで頭は良いんだから、さっさと気付け」

 

 出なけりゃいつまで経っても意味ないぜ?

 

 俺達が戦っているのは、高潔な騎士様でも何でもないんだからよ。

 




小雪は小雪でパワーアップしているのです。

小雪のパワーアップ方法は禁手のアップデート。原作でも何人か禁手をアップデートしているので、問題ないと判断しました。

この状態は小雪は人間に固定化されるため本体のスペックが低下するという欠点がありますが、もとより小雪は肉体スペックではなく能力やスキルで勝負するタイプなので問題なし。むしろ攻撃の汎用性が上昇したことで、より戦闘能力は高くなっております。

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