HSDD 転生生徒のケイオスワールド2 卒業生のアザゼルカップ   作:グレン×グレン

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そういうわけで、DSAA関係の前に一線始まります。


イッセーたちに相対するのは、雷光チーム! そしてその中には小雪の姿も……。

果たして、イッセー達は小雪をどうかいくぐるのか!



雷光VS乳乳帝! 第一ラウンド!!

「……そんなことがあってなぁ。しかも、後始末で結局酒すら飲めなかった」

 

 俺は、そうまとめるとため息をついた。

 

 シルシも雪侶も暁も姫柊ちゃんも一斉に落ち込んでる。

 

 ああ、本当にトラブルに巻き込まれすぎだろう。

 

「災難、それ本当に災難だね」

 

 須澄がひきつった表情を浮かべるほど大変だった。

 

 ああ、祭りの日にトラブルに巻き込まれ続けるとか大変だろう。マジで迷惑だ。

 

「うっわぁっ! 何がどうしたらそんなことになるのかって展開だねっ!」

 

「まったくだな。……いや、ホント頑張れ」

 

「なんか……ごめん」

 

 上から順にトマリ、ノーヴェ、アップの感想だ。

 

 とはいえ、だからといってアザゼル杯が待ってくれるわけでもないわけで、俺達もこの後試合である。

 

 とはいえ、それは午後になってから。これからはイッセーの試合が始まるわけだ。

 

 敵は雷光(ライトニング)チーム。堕天使バラキエルが所属し、小雪がメンバーを務めているチームだ。

 

 うん、どっちを応援したらいいか結構迷った。

 

「それで兄上? どんな塩梅で応援してますの?」

 

「イッセー6、小雪4」

 

 俺は一週間ぐらい悩んで決めた応援比率を告げる。

 

 もしこの比率を破る時が来るとしたら、それは俺が俺で無くなる時だろう。その頃には小雪にも愛想をつかされているはずだ。

 

「まあ妥当な塩梅でしょう。小雪義姉様も結局は同類ですので、イッセーにいより応援されてたらと知ったら複雑な感情になるでしょうし」

 

「難儀な性格してるんだな」

 

 雪侶の俺達のこと分かり過ぎている評価に、ノーヴェがなんか呆れたような眼を俺に向けてくる。

 

 まあいい。狂人であることに疑いはないし、いい加減少しは自覚も足りてきている。

 

 それはもう、人生の味として楽しむしかないな。

 

「にしてもよぉ。本当にどんだけ火力があるんだよ暁は」

 

 そう言いながらノーヴェが見るのは、トレーニング施設の跡。

 

 破壊力を正確に測るため、レーティングゲームのシステムを利用してちょっとした都市の一角を再現してみた特別製だ。

 

 ……はい、見事に廃墟になっております。

 

「これが制御できないってんだから、確かに大変だよな。海上の人工都市出身だと、練習する場所にすら事欠くし」

 

「ああ。だからノーヴェの教えてくれたストライクアーツは助かった。本当に役に立ったぜ」

 

 監獄結界の囚人相手に効果を発揮したわけで、確かに成果はしっかりとあった。

 

 それに、今回のテストで少しは獅子の黄金《レグルス・アウルム》の制御も楽になった筈だ。

 

 まあ、ある程度制御できるようになったところでこの破壊力を町中で使えるわけがないんだが。

 

「LCOの連中には恨まれてるだろうし、自力であいつらから逃れる技量は必要だな。……と、いうことでノーヴェコーチ、暁任せる」

 

「ああ、ま、とりあえず形にしておいてやるよ」

 

「頼む。ジリオラを殴り飛ばして、本気でやる気になった」

 

 と、いうわけで我流が多い俺も含めて、ノーヴェコーチによる格闘戦講座をやっている中、他のメンバーも思い思いにトレーニングをやっている。

 

「一万回やったら……アップちゃんがメイドコス……! 二万回やったら……須澄くんが執事コス……っ!!」

 

「はいはい頑張って腕立て一万回やりなさい。あなた暁がいると役に立たないんだから頑張りなさい」

 

 魔法構成のプログラムの再構成を試みるアップを上に載せて、トマリは大絶賛腕立て伏せだ。

 

 一度死んで郷愁に取り込まれたことで、トマリは英霊の力を失っている。

 

 まあ、それでも氏族クラスの吸血鬼なわけで戦闘能力は破格なんだが、しかし暁の眷獣の方が強力なので、できればそちらを使う方向で持っていきたい。

 

 となるとトマリには別の形で役に立ってもらう必要があるわけで、其のため筋トレから始めているわけだ。

 

 そんでもって須澄と姫柊ちゃんは槍の鍛練。

 

 聖槍頼りで我流という割とあれなところがある須澄だが、俺の弟なだけあってやる気になったときの集中力は手放しでほめれる。

 

 そして、姫柊ちゃんは英才教育を受けた戦士。ある程度は物を教えることもできるだろう。

 

 とりあえず、トレーニングに関してはこれでいいだろうな。

 

「トレーニングしながら聞いてくれ。今から二時間後ぐらいに、雷光(ライトニング)チームと赤龍の乳乳帝チームのレーティングゲームが開かれる」

 

 俺はノーヴェに位置からフォームの調整をされながら、そう告げる。

 

 そう、アザゼル杯の中でも、割と注目の組み合わせ。

 

 堕天使代表ともいえるチームが、悪魔の英雄が率いるチームと戦う。それもこの調子でいけば義理の親子になるチームがだ。

 

 割と注目の試合だが、俺としてはイッセーの試合は全部見るぐらいの勢いなのでVIP席を取ってある。

 

 相当注目の試合だったので確保は難しかったが、姫様と合同で取ることで、何とかなった形だ。

 

「ついでに姫様に皆のことも紹介したいから、晩飯は観戦しながら食べるってことでどうだ?」

 

「私はいいぜ。他の人達の試合も見ないと、対策とか立て辛いしな」

 

 そうか、断られたらどうしようかと思ったから嬉しいぜノーヴェ。……あとすいません、首筋が見えてちょっと集中力が落ちてます俺。

 

「俺も別に構わないぞ。姫柊は?」

 

「もちろんついて行きます。私は先輩の監視役ですから」

 

 よし、暁と姫柊ちゃんもOKが出た。

 

 さて、須澄達はどうなるかな?

 

「あ、ゴメン。僕ちょっとパス」

 

 おや、意外な返事。

 

「ごめんねっ! 実は、三大勢力の方から、ちょうどその時間帯に呼び出されてるの」

 

「なんか、フォード連盟のレジスタンスから、数百人ぐらい呼ばれてるのよ」

 

 トマリとアップも当然不参加か。

 

 しかし、いったいなんだ?

 

 サーゼクスさまがイッセーの試合を観戦するより優先するとは、何を考えてる?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんてことが気になるが、さてどう思います姫様?」

 

「そうねぇ。お兄様は職務自体はちゃんと取り組んでるから、観戦しながら話をしてるんじゃないかしら? ねえ朱乃」

 

「ごめんなさい、リアス。私は試合の展開が気になってとてもとても。……祐斗くんはどう思います?」

 

「今のところ、三大勢力はフォード連盟に加盟する方針ですし、それゆえに関係者を集めているのでは? あ、暁くんはなにか聞いてるかな?」

 

「いや、俺は何も。あ、そこの醤油取ってくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すごいな、世間話しながら料理の準備を整えてる」

 

「先輩、料理できたんですね」

 

 ノーヴェと姫柊ちゃんが感心する中、俺はその途中で作っておいた付きだしを渡しておく。

 

「姫様も朱乃さんも料理はプロ級だからな。お嬢様だからって何もできないのがいやだってさ」

 

 しかし俺から見てもすごい腕だ。あと暁も割と本気で上手だな。

 

「でも、実際どういう理由で人を集めているのかしら? 会議にしては、今の政府からは距離を取っている須澄くんまで入れるのはどうかとも思うし」

 

 シルシはその辺りが疑問のようだ。

 

 確かに、アップがエイエヌの直属だったこともあり、須澄達は今のフォード連盟の政治にはあまり関心を向けてない。

 

 そんなことより、今までばらばらだった時間を取り戻す。そんな日常を謳歌することを重視している気がする。

 

 つまり、アザゼル杯に参加して大暴れすることも日常の一つ。いや、俺と一緒に過ごすことが日常の一つと認識されてるわけか。ちょっと照れるな。

 

「……四大魔王様は、職務自体はきちんとこなされますけど、それ以外はフリーダムです。……フォード連盟の気持ちを盛り上げるために、ヒーロー番組を企画したいとかそんなことじゃないでしょうか」

 

 小猫ちゃん。それ当たりかも。

 

 確かに、今のフォード連盟にはそういった人の心を明るくする話題が足りない。

 

 なるほど、それらの大切さをよく知っているサーゼクス様達はそれを企画しているのか。

 

 ってことはつまり―

 

「主役は須澄か。あの人達ならそうなるな」

 

「おっぱいドラゴンみたいな形になるんでしょうか?」

 

 ギャスパーが久々に段ボール箱に籠りながらそう考える。

 

 うん、多分そうなるな。

 

 冷静に考えれば、因縁のある悪の親玉を打ち倒して、愛する者を取り戻した……なんていうヒーローその物みたいな活躍をしているのが須澄だ。

 

 何ていうか、王道物になりそうな感じがしてきたぞ?

 

「あの、それでこの試合、どちらが勝つか予想できますか?」

 

 と、試合の様子を見ながら、姫柊ちゃんが訪ねる。

 

 今回の試合は「オブジェクト・ブレイク」

 ゲームフィールドに用意されたオブジェクトを、制限時間内に多く破壊した方がいいというルールだ。

 

 オブジェクト配置はランダムで、しかも動かせるかどうかが試合ごとに変更される。ついでに言うと形状やサイズもまちまちだ。

 

「持ち運びができるっていうが、それってなんか意味あるのか? その間に相手に破壊されたらいやなだけだと思うんだが」

 

「そうでもないわよ。壊さず集めて、相手が最初に壊したすきにまとめて壊すことで相手を精神的に削るという戦法もとれるし、オブジェクトを破壊したエリアに敵の王は侵入できないから、これを利用して戦略的に戦闘をおこなうことも可能だもの」

 

 古城の質問にシルシが答えるが、まさにそれだ。

 

 どのタイミングでオブジェクトを壊すかも戦術的駆け引きの一つ。たったそれだけで精神的に相手を苦しめることができるのだから。

 

 場合によっては無視して王を倒して勝利ってのもいけるが、それを速攻でやれば勝っても人気は地に落ちる。

 

「単純な戦闘能力でいえば、最強は間違いなくイッセーくんですね。今の彼に総合的な性能で勝てる者は、おそらく堕天使陣営にはいないはずです」

 

 木場が参加しているメンバーを確認しながら告げる。

 

 ああ、乳乳帝にはなれないとはいえ、イッセーの戦闘能力は間違いなく凶悪の部類だ。

 

 既にあいつは性能だけなら冥界でもトップ争いをするレベルだろう。堕天使バラキエルといえど正面勝負では勝ち目が薄いはずだ。

 

「とはいえ次点は堕天使バラキエルで、三番目は堕天使アルマロスといったところ。二対一なら充分勝算はあるな」

 

 そう、今回戦闘能力が大体把握できるメンバーで次点を取るのはその二人だろう。

 

 なにせ聖書にしるされし堕天使の幹部だ。その戦闘能力は折り紙付き。むしろ一番強くないってのが問題なんだ。

 

「……小雪義姉様は兵士の駒で参戦しておりますのね。割と自由に動ける駒ですわね」

 

 雪侶が、俺が一番気になることを行ってくれる。

 

 そう、小雪は今回兵士の担当だ。

 

 駒価値は4。本来のレーティングゲームより駒価値の上限が上がっていることを考えれば、このレベルはかなり高いというべきだろう。

 

 小雪自身技量も高いし、立ち位置的には準エースといった具合だな。

 

「なあ、その青野さんって人、どれぐらい強いんだ?」

 

「かなり強いよ。堕天使そのものとしての性能は低い方だけど、大気操作系の特殊能力を持っているし、ある事情で十年近く暗殺者をやっていたから、不意打ちに持ち込めればかなり危険なはずだよ」

 

「確かにそうだな。動きが私たち戦闘用の動きじゃない。相手を叩きのめすことより、一瞬の隙をついて倒すタイプだ」

 

 暁や木場やノーヴェが議論を交わす中、俺は俺でチームメンバーの顔写真を見て首をかしげる。

 

「姫様、このビナー・レスザンって人に心当たりは?」

 

「……ないわ」

 

 そう、この戦いのダークホースとなりうる彼女の情報は全くなかった。

 

 戦闘能力はスペックだけ見ても乳乳帝チームでも最強格。三宝を使ってない状態なら、イッセーすら倒せるだろう。そして技量に関しては、立ち振る舞いから見る限りではチーム一番だろう。

 

 しかも、まだ底を見せてないどころか本気すら見せてない。

 

 確かにイッセーのこれまでの試合は中堅どころ以下で、ちゃんとルールを理解していれば今のイッセー達なら負けはない戦いだった。

 

 だが、膨大なレーティングゲームのルールをすべて把握するのは困難だ。実際イッセーは何度かミスをしてる。

 

 しかし、ビナー・レスザンだけは何のミスもなくゲームを進めていた。

 

 これは俺の推測だが、赤龍の乳乳帝チームの総当たり戦をした場合、一番勝率が高いのはイッセーではなく彼女ではないだろうか?

 

 そういう、なんていうか俺達若手では出せないような強さが彼女にはあった。

 

「あれほどの実力者が今まで無名ってのが驚きだな。……本当に情報はないんですね、姫様?」

 

「ええ。おそらく偽名でしょう」

 

 ふむ、この試合、もしかしたらキーマンとなるのはビナー・レスザンかもしれん。

 

 っていうか彼女、いったい何が目的なんだ?

 

 いや、乳語翻訳を持つイッセーを騙すだなんて、できるわけがないと思うが……。

 

「あ、試合が動き出しましたの!!」

 

 お、そろそろ本領発揮するか!!

 




一応ビナーさんはこの作品でも参戦。

その辺全く考えてなかったので、少しひねった理由にしております。

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