HSDD 転生生徒のケイオスワールド2 卒業生のアザゼルカップ   作:グレン×グレン

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聖剣新生 そして聖槍の影三度

 まったく。人の女をボコるとはなんて奴だ。

 

 どうやら死なずに監獄結界に送り込まれたようだが、その程度で済んでよかったと思え。

 

「……悪い、砲撃のセットに時間がかかった」

 

「かまわないわよ。無意識に手に力が入るぐらい心配してくれたみたいだしね」

 

 と、シルシはからかうような笑顔を見せてくる。

 

 あれ、そう? それはまた恥ずかしいな。

 

 とはいえ、これで大体の連中は片付いたか。

 

「グランソード、そっちはどうだ?」

 

『カッカッカ! こっちも大体片付いたぜ。エドワードンの量産型も撃破したし、これであらかた終わっただろ』

 

 だといいがな。

 

 とはいえ調べた限りでは戻った監獄結界の囚人は15人。

 

 ぱっと見20はなかったし、そろそろ山場は終わったと判断していいだろう。

 

 とりあえず、そろそろ仙都木阿夜に注力してもいいころだろうな。

 

「そういえば、暁くんたちは大丈夫なの?」

 

「ああ、藍羽は迎えが来たからそっちに行った。暁は今頃姫柊たちと合流しているはずだ」

 

 とはいえ、肝心の仙都木阿夜が起こしている魔力無効化現象が厄介だ。

 

 あれが俺たちにも影響するのだとすれば、俺たちですら対応できないということになる。

 

 さて、どうやって対応したらいいものか―

 

 と、そんなことを考えているうちにスマホがなった。

 

 雪侶からだな。いったいどうした?

 

「どうした? お前にはキーストーンゲートに待機するように言ってたはずだが」

 

『それが、藍羽さんから緊急連絡ですの!!』

 

 なんだ? いったいこんどは何が起こったというんだ。

 

『今、監獄結界のある所に向かって、百キロ先から謎の未確認飛行物体が接近中ですの! それも、おそらく戦艦クラスはありますのよ!!』

 

 どうやら、俺たちの相手は決まったようだ。

 

「シルシ、悪いがもう少しひと頑張りしてもらうことになりそうだ。……グランソードも、悪いが舎弟と一緒に頑張ってくれ」

 

 俺は心底ため息をつきたくなった。

 

 おそらくフォンフ関係だろう。あいつ次元航行艦艇の技術も持ってたし、それに禍の団は魔法世界関係でその手の技術を流用していたはずだ。

 

 そこまでしてまで監獄結界を破壊したいか、あの野郎。

 

 ……いや、それにしては少し様子がおかしい。

 

 それならもっと近くに転移すれば俺たちが対応できないはずだ。あいつならそれぐらいできるはずだ。

 

『大将。たぶんあいつら、俺たちを使って何かの実験かテストをする気なんじゃねえか?』

 

 グランソード。お前やっぱり同僚だっただけあって思考読めるな。

 

 そういえば、あいつ襲撃のついでにテストの一つや二つは良くしてるな。新兵器良く投入していたし。

 

 と、いうことはこっから先が本番か。

 

 とはいえ、監獄結界を破壊されたら元も子もないし、これはやるしかないか。

 

 ええい、マジで面倒くさい!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで何とか間に合った!

 

 現在、絃神島から距離40kmの海上。

 

 その上空で、俺はその航空戦艦と対峙する。

 

『それで、兵夜さん? どうするのかしら?』

 

「決まってる。奴を撃破する!!」

 

 万が一にでも堅気の方々に迷惑をかけるわけにはいかない。

 

 第一、いまは大規模な祭りの真っ最中で人口が一時的に上昇している。そんなときにこんなものが暴れれば、損被害はシャレにならない。

 

 その元凶がうちの世界の関係者だなんてバレたら、将来的な交流すら不可能になる。

 

 あらゆる意味で、こいつを止めなくてはいけない。

 

「行くぜシルシ! この場でこいつを撃沈する!!」

 

『ええ。暁くんたちにこれ以上負担をかけるわけにも行けないしね!!』

 

 いうが早いか、俺は即座に魔力魔法魔術光力のフルバーストを一斉射撃。

 

 戦艦は素早く対空砲火を放って迎撃し、さらに頑丈な装甲でそれを防いだ。

 

 なるほど、どうやら装甲強度は明らかに最上級にケンカ売れるレベルだ。

 

 これは、さすがに強敵か!!

 

 だがこれだけの兵器ならコストも莫大。少なくともアメリカ合衆国でも一年間に何隻も作れるような代物ではないはずだ。

 

 そんなものをこんなところで使い捨てにする必要が、いったいどこにあるってんだ?

 

『兵夜さん! 右から不可視攻撃! ミサイルよ!』

 

「チッ! 考えさせる時間は与えないってか!!」

 

 素早くイーヴィルバレトで迎撃して破壊するが、しかしこれはさすがに厄介だ。

 

 やはり現代の兵器の主力はミサイルか! しかも人間サイズの物体を正確に攻撃するような、超ハイテク武装!!

 

 ましてや、反物質でも仕込んでいるのか破壊力もシャレにならん。上級悪魔でもノーガードで喰らえば致命傷になりかねないな。

 

 そして、さらに戦艦は砲塔を稼働させると砲撃を放つ。

 

 拡散ビームが俺を狙うが、しかし一瞬先を見れるのなら安全地帯は発見しやすい。

 

 だが、ミサイルと機銃による対空網は容易には接近を許さない。

 

 そして、フォンフがどこにいるかもわからない以上、代行の赤龍帝も使えない。

 

 ……仕方がない。まだ調整がすんでないが、こうなったら切り札を切ろう。

 

「シルシ! 奥の手行くぞ!!」

 

『了解!!』

 

 いうが早いか、俺はすぐに一振りのショートソードを引き抜く。

 

 ……神々には、様々な属性がある。

 

 日本の神はことさら特異性においてシャレにならない。バリエーションの豊富さにおいてはギリシャすら上回るだろう。

 

 その中には、鍛冶の神の存在もある。むしろ、その手の類は神話の中でも比較的多い部類だろう。

 

 そう、鍛冶とは刀剣も含まれる。

 

 一年間だ。一年間の間、コツコツと一生懸命練習しては試してを繰り返した。

 

 神代の魔術すら使えるといっても、使い手が俺ではそれだけじゃ足りない。

 

 だから、一生懸命頑張って、それ以外の何かで補強した。

 

 ようやくだ。ようやく、ようやく俺はこいつを取り戻した。

 

 ああ、相棒。お前の作ってくれた俺の切り札は、今でも俺の切り札だ!!。

 

「抜刀! 偽・外装の聖剣(フェイク・エクスカリバー・パワードスーツ)!! 発動!!」

 

 俺は新たなる偽聖剣を纏うと、一気に接近する。

 

 一斉に分身を生み出すことで攻撃の狙いを分散させ、その隙に全く違う場所に天閃で移動して接近する。

 

 狙いはエンジン部分。そこをついて一気に決める。

 

 戦艦も全速力で接近している以上、これ以上進ませるわけにはいかない。

 

「砕け散れ! 冥府へ誘う死の一撃(ハーイデース・ストライク)!!」

 

 俺は、エンジン部分を必殺の一撃でぶち壊す。

 

 さすがにエンジン部分は特に頑丈に設計しているようだが、しかしこれは主神クラスの一撃だ。

 

 想定どうり、一気にぶち抜かれて戦艦は航行を停止する。

 

 よし! あとはじっくり時間を変えて料理して―

 

 その瞬間、戦艦が霧に包まれる。

 

 俺はその色が黒であることを確認して、一気に距離を取った。

 

 馬鹿な、これは絶霧!?

 

『たぶん、量産型を転移に特化して組み込んでたのよ。……転移先はこの地球のアメリカ大陸ね』

 

 チッ! テストなだけあって回収する準備も万端か!!

 

 仕方がない。とりあえず、これで攻撃を防げただけでもよしとするか。

 

 転移した戦艦に関しては、獅子王機関に協力を仰ぐとしよう。今の俺たちでは、あまり広範囲の活動は不可能だからな。

 

『それと、いいお知らせがあるわ』

 

 ん? なんだシルシ。

 

『暁くんと姫柊ちゃん。勝ったみたいよ』

 

 ……そうか。それは良いお知らせだ。

 

 見れば、すでに朝日がさしている。

 

 ああ、これで、とりあえずは解決か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、これでよかったのかい?」

 

「かまわないよ。宮白兵夜が偽聖剣を復活させたことも分かった」

 

 沖合に浮かぶオシアナス・グレイブ2の主賓室で、フォンフ・ランサーはヴァトラーの質問にそう答える。

 

 あの戦艦は確かに高性能だが、しかし最上級悪魔クラスを相手にすれば勝ち目がないのは明白だった。

 

 大艦巨砲主義は航空機の発達で時代遅れになった。大型兵器は機動力の高い小型兵器に手玉に取られるのが世の習いである。

 

 そもそもあれは、ほかの次元世界に売りつけるための設計品だ。最上級悪魔に届く兵夜に奥の手を切らせるほどの難易度なら、十分すぎるだろう。

 

 そして、こちらは手札をほとんど切ることなく偽聖剣の復活を知ることができた。これは僥倖だ。

 

 偽聖剣は、禍の団との戦いにおける宮白兵夜の主兵装。下級悪魔が英霊と真正面から戦えるようにすることを設計思想として開発された、間違いなく規格外の装備である。

 

 それの復活を知れただけでも値千金。むしろ善戦できただけましというものだ。

 

「喜ぶといい、ヴァトラー。あいつはなんだかんだで人がいいから、お前が趣味で暁古城を殺そうとすれば、全力で牙を向くぞ」

 

「それはいいネ。ああいうタイプは僕としても嫌いじゃない」

 

 ヴァトラーは、ただ強いだけの者と戦いのではない。

 

 勝つために文字通りすべてを使って挑む相手こそ、彼の望む相手だ。

 

 そういう意味ではブルートは残念だった。

 

 彼は、強大な力に溺れて知恵を失った。龍を殺した英雄たちが、ただの人間によって殺される負の運命をなぞったのだ。

 

 十分楽しめた相手だったが、しかし彼が知恵を絞ればもっと楽しめたはずだとも思う。

 

「弱っちぃ人間でも、知恵を絞ることで下位の吸血鬼ぐらいなら倒せるようになった。D×Dは僕を楽しませてくれるのかな?」

 

「安心しろ。弱っちいただの人間であることを認め、そのために知恵を振り絞って化け物を殺す手段を求めた男が一人いる。奴や宮白兵夜は、きっとお前の好みに値するだろう」

 

 あの聖槍の担い手を思い出して、フォンフ・ランサーは口元に喜悦の表情を浮かべる。

 

 そう、聖槍の担い手たちはヴァトラーの好みだろう。

 

 人間という弱い存在の中から、化け物を殺しうる英雄を目指した曹操。

 

 弱っちい人間のそのまた弱い存在であることを理解し、それゆえに強大な禁手を得た近平須澄。

 

 果たして、彼らはヴァトラーのお眼鏡にかなう戦士へと成れただろうか。そして―

 

「ああ、一人ぐらいは私も相手をしたいものだ。……私こそが、最強の聖遺物使いだと証明したいという気持ちはあるからね」

 

 そういいながら、フォンフ・ランサーは一振りの槍を呼び出す。

 

 そう。それこそが彼をランサーたらしめる宝具。

 

 そして、神が人に与えた神殺しの究極。

 

 それを見て、ヴァトラーは興味深そうにその槍を眺める。

 

「それが、最強の神滅具(ロンギヌス)かい?」

 

「ああ、これが神滅具、黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)さ」

 

 正真正銘本物の聖槍を掲げ、フォンフ・ランサーは自慢げに笑顔を浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「姫柊雪菜が生きてますように姫柊雪菜が生きてますように生きてますように!!」

 

「フォンフ。お前が神頼みをするならインドで祈れ」

 

 そのころ、暴走するから待機とフォンフ会議満場一致で言われていたフォンフ・アーチャーは、アメリカ大陸で戦艦を回収しながら神頼みしていた。

 

 天騎はとりあえずツッコミを入れるしかできなかった。

 




フォンフ・ランサーの真名が想定するのが困難な理由がお分かりいただけたでしょうか?

以前の九尾さんの「ケイオスワールドクロス原作のキャラを英霊で出したら」というアイディアを発展させて、「ケイオスワールドの歴史上の人物を英霊として出したら」というアイディアをひらめきました。

これなら出したいけど出しずらい「神滅具のオリ禁手」を乱発できるというメリットもあります。

フォンフ・ランサーをランサーたらしめるのはこの黄昏の聖槍です。……こいつ本当に何度も何度もテロリスト側で出てきやがるな、書いててなんだがちょっとゴメンねっ








あと、監獄結界偏が終わったらDSAA編に移る予定でしたが、その前に一試合アザゼル杯を挟ませてもらいます。

激突するのは乳乳帝チームVS雷光チーム。

大まかには原作通りの展開を兵夜視点で観戦しますが、最後に小雪が介入します。

超能力者VS兵藤一誠眷属。果たしてその戦いの行方は……!

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