HSDD 転生生徒のケイオスワールド2 卒業生のアザゼルカップ 作:グレン×グレン
そして、試合開始当日。
でかいスタジアムで、俺達は準備万端だった。
「よし! 全員水分補給とトイレはきちんと済ましておくこと」
俺はとりあえず先達としてその辺を説明する。
ちなみに、制限時間までに決着がつかなかった場合は引き分けになる。
「長いですね。普通、競技試合となると数時間ぐらいだと思いましたが」
「レーティングゲームではよくあるのよ。元々実戦訓練も兼ねていたところがあるから、数日かけて行うゲームもあるのよ」
レーティングゲームがよくわかってない姫柊ちゃんにシルシが説明するが、実際レーティングゲームは制限時間とかが幅あるからな。
まあ、アザゼル杯は二日や三日かかるようなものは出てこないんだが。
しかし、ここから聞こえてくるぐらい人が集まってるな。流石は俺こと神喰いの神魔といったところか。
そういうのに慣れてない暁は、微妙に嫌そうな顔をし始めてきた。
「っていうかこれ、すごい人数に見られるんだよな。今更だけど恥ずかしくなってきたぞ」
「大丈夫、大丈夫だよ。僕はもう慣れた」
「慣れれば癖になりますのよ?」
何度かやって慣れてきた須澄と雪侶がフォローを入れるし、実際慣れる。
「ま、こういうのは実戦慣れとはまた別のそれだからな。ヴィヴィオたちもDSAAじゃはしゃぎすぎたりしてたからなぁ」
「そうなのかノーヴェ? それはちょっと見てみたい気もしたな」
ヴィヴィオ達は結構普通に対応しそうな感じだったんだが、まだまだ子供ってことか。
さて、暁達はどんなことになることやら。
『さぁて始まりました!! 本日のアザゼル杯!! 今回は色々と興味深い対決になっており、観客の興味も集まってきてますよ!!』
そんな実況の声と共に、俺達はついに入場する。
『まず登場してきたのは、皆様ご存知冥界の英雄!
わぁああああああ!! と歓声が上がり、俺達は入場する。
もちろん、もっとも注目されるのは暁と姫柊ちゃんだ。
「せ、先輩。緊張して恥ずかしいことしないでくださいにぇ!」
「噛んでるぞ、姫柊」
ツッコミ入れてる暁も結構がちがちだ。ああ、こんな注目されたら仕方がないだろう。
だが俺は冷静に手を挙げて対応するのだ。慣れたからな!!
そして、相手方もついに登場する。
『続いて登場するのは、宮白兵夜選手にとって色々と縁深い方々が集まっている、斬撃猫一番チーム!!』
ナツミ達が会場に入ってくるが、こちらは比較的歓声は控えめだった。
ふむ、ナツミも結構大活躍してるんだが、やはりD×Dの中では知名度は低めということか。
『宮白兵夜選手の使い魔であるナツミ選手はもちろんのこと、所属メンバーの大半が宮白兵夜選手の父親が社長を務める正姫工業の保安部で固められているこのチーム。なんとお姉さんもいることで、中々興味深いカードとなっております!!』
ああ、俺も姉貴とレーティングゲームで戦うことになるなんて思わなかったよ。
「まったくもって色々ツッコミどころが多いカードよね、これ」
「まったくだ」
俺と姉貴はお互いに苦笑すると肩をすくめる。
そして、ナツミと視線を交わし合った。
「負けないよ、ご主人」
「勝たせてもらうぜ、ナツミ」
ああ、言葉はいらない。すべては試合で語るべきだ。
『さて、今回のルールは事前報告型の『スカウティング・ビット』! 戦闘能力が勝利に直結しないゲームになりますが、どうなると思いますか、解説のサーゼクス様』
って今回サーゼクス様が解説かい!!
『そうだね。将来の
サーゼクス様はにこやかに解説を行う。
『そうですか? 神喰いの神魔チームもシルシ選手の千里眼がありますし、こういう探索系は有利かと思われますが?』
流石実況。観客の疑問をしっかりと代弁してくれる。
だが、実際このルールだと厄介なんだよなぁ、ムラマサは。
『斬撃猫一番チームの
『なるほど、スカウティング・ビットでは見通しの悪い地形がありますし、人員が多いのは視力が良いよりも遥かに有利ですね』
そう、それこそがムラマサの厄介なところ。
個人で人海戦術ができるってのが実に厄介だ。
さて、どうやって切り抜けたらいいものか……。
そして最悪なことに、試合のフィールドは森林だった。
「うへぇ」
「はいはい。そんなに嫌そうな顔をしないの」
シルシに嗜められるが、しかしこれは厄介だろう。
見通しが悪いから単純に数が多い方が有利になるわかりやすい展開だ。人数で差のあるこっちの方が不利だと言わざるを得ない。
「これは、これはもう頑張るしかないね。アップ、我慢してね」
「はいはい。今回は無双しないでサーチャーに専念するわよ。その分きちんと護衛してね?」
ああ、今回は須澄とトマリはアップの護衛につけるべきだろう。
サーチャーでビットを発見できるかが勝利のカギだ。
「さて、それじゃあ俺達は足止めするぞ!!」
そして残りは発見するまでの間足止めに専念する。
発見し次第、アップはソニックムーブで一気に取りに行く。これが今回の作戦だ。
そういうわけで、俺達は巡航速度で相手がいるであろう地帯に向かって走り出す。
おそらくムラマサ達は数に物を言わせて拡散しているはずだ。
ならば、最も数を展開するムラマサを叩き潰す!!
そうすれば時間稼ぎは何とかなるはずだ。
「兵夜さん! 来るわよ!!」
「そう来ると思った」
だから、ムラマサに敵を近づけさせないのが最優先だろう。シルシが言うまでもなく覚悟は決めていた。
問題は、出てきた連中の姿だった。
「見つけたわよ、兵夜!!」
「……はぁ!?」
そこに出てきたのは、人型の小型ロボット。
間違いない。アザゼルや小雪が技術提供し、流出した学園都市技術まで組み込んで作ったパワードスーツだ。
それが、なんでここに!?
「おい! あれは流石に反則なんじゃねえか!?」
「戦闘用のパワードスーツ!? まさかここまで技術発展しているだなんて!!」
暁と姫柊ちゃんが驚く中、パワードスーツの向こう側で姉貴がにやりと笑う。
「ふふふ。これが正姫工業の最新工業用パワードスーツ。その装甲強化仕様よ!! お値段は要相談だから、異形社会の非力な方々はぜひご相談を!!」
「ふざけんなぁあああああ!!! 日本は兵器輸出禁止だぞ!!」
俺は極めて常識的なことを叫んだが、それに答えたのは親父だった。
『それは違う。これはいわゆるテクニカルとして運用される可能性を考慮した技術試験機だ。いっそのこと本格的な軍事運用をされるのならどういう部隊構成かを調べるために、十数機ほど生産しているだけでな』
「そういうこと。このデータをもとに軍事転用されにくいのを開発するのが真の目的よ」
どんな屁理屈だ!!
さてはこの日のためにあえて兵器としてのパワードスーツを開発してやがったな!
そしてその技術をアピールし、来るべき異形社会の公表に先んじて商売をする腹か!
おのれ親父! おのれ姉貴! おのれ正姫工業!! 流石は俺の肉親が運営する会社だ、黒い!!
『因みに、今回は武器扱いということで合法と見なされておりますので、ご了承ください』
実況も把握済みだったか。フェアなのかこれは……いや、ありか。
「納得できるか! おい、宮白あれはありなのか!?」
「残念だが、武器の類は査定が緩い。そうじゃないと俺を含めてアウトになる輩が多いからな」
エクスカリバーとかデュランダルとか、調達できるのならOKの方針だからな。
つまりは手に入れられない奴が悪い。手に入れるのも実力の内という方針だ。
まあ、それでもやられる時はやられるからなぁ。仕方がないといえば仕方がないか。
「そういうわけで覚悟しなさい兵夜! 人類最先端の科学がどこまで異形に対抗できるか、試させてもらうわ!!」
「なめるな姉貴! 俺はこれでも最上級に手が届いた男。倒すつもりなら一個大隊で挑んで来い!!」
上等だこのアマ!! 返り討ちにしてくれるわぁああああああああ!!!
はい、それはもうちゃんとそれ相応の準備は整えております。
学園都市技術がばらまかれたのはご存知の通り。もちろん工学系の技術も急激に発展しております。
そしてこのゲームはうかつに大破壊ができない厄介なルール。実際古城は結構苦戦する類ですね。むろんイッセー達パワータイプの本領を発揮しにくいでしょう。
反面分身などの探索に有効な能力を持つものならば有利になりやすい特殊ルールです。