HSDD 転生生徒のケイオスワールド2 卒業生のアザゼルカップ   作:グレン×グレン

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久々に投稿します!


対ナツミ戦、準備中です!

 

 

 

 

 

「恨むぞ、宮白」

 

「勘弁してくれ。修羅場となった女に関わるとロクな事にならないのは万国万世界共通だ」

 

 俺は暁とそう話し合いを続けながら、トレーニングをしていた。

 

 紆余曲折あったが何とか暁と姫柊ちゃんを冥界(こっち)に連れてくることもできた。これで今回の試合には万全の体勢をとることができたといってもいい。

 

 なにせ、一体だけでも魔王クラスの眷獣を用意できたのだ。さらに魔力を無効化する雪霞狼の使い手である姫柊ちゃんも連れてこれた。

 

 前衛後衛共にアザゼル杯でも上位に位置する実力者。これで戦力は大きく増えたといっても過言ではないだろう。

 

「あの後、姫柊や浅葱にどれだけ詰め寄られたと思ってるんだよ。お前爆弾投下しすぎなんだって自覚あるか?」

 

「すまん。俺も疲れてたからあそこでさらに介入する度胸はかけらもなかった」

 

 うん、無理。

 

「なんか苦労してるんだな。まあ、愚痴ぐらいなら時々付き合ってやるよ」

 

「そりゃ助かる。えっと、ノーヴェさんだっけか?」

 

「ノーヴェでいいよ」

 

 ふむ、暁もノーヴェもいいやつだし、すぐに打ち解けそうだ。

 

「言っとくが口説くなよ?」

 

「口説かねえよ! 俺はナンパなんてしたことないからな!!」

 

 いや、ナンパはしたことないだろうけど、フラグはよく立ててるじゃねえか。

 

 お前からはイッセーと似た匂いがするからな。油断してるとこっちでも女を作りかねない。

 

「それと、これは別に文句を言ってるわけじゃないんだが……」

 

「「ん?」」

 

 俺とノーヴェは揃って首をかしげる。

 

 それを見ながら、暁は息を吸い込んで―

 

「なんで俺はミット打ちしてんだよ!!」

 

「先輩、あまり騒がない方がいいと思いますよ?」

 

 姫柊ちゃんがたしなめる中、暁は何かが奥歯に挟まっているような表情を浮かべた。

 

「なあ、俺は眷獣を見込まれてスカウトされたんだよな? アザゼル杯の優勝を目的として連れてこられたんだよな?」

 

「ああ。お前がいれば優勝はともかく本選出場は夢じゃない。しかもセットで姫柊ちゃんまでついてくるというお得仕様」

 

「私はファミレスのおもちゃか何かですか?」

 

 あ、ちょっと言い方が悪かったか。

 

「ついでに言えば、あの被害を出せない環境でお前が安全に戦闘できるようにするためのトレーニングにもなる。その謳い文句は誓って嘘じゃないぞ?」

 

「だったら普通、眷獣をぶっ放して制御するトレーニングをするんじゃないのか? ここならできるだろ?」

 

 そういって暁はこのトレーニング空間を見渡す。

 

 五の動乱での活躍と、上級悪魔の昇格が重なり俺は専用のトレーニング空間を持っている。

 

 魔王クラスが全力でトレーニングできる頑丈な空間だ。必然的に、魔王クラスの眷獣ならばトレーニングできる。

 

 だが、あえてそれを俺は今してない。

 

 その理由は俺ではなくノーヴェは言ってくれた。

 

「あのな、暁。お前はこれからトラブルに巻き込まれまくるって聞いたぞ?」

 

「それは宮白の推測なんだが。……ああ、でもフォンフが絃神島に目をつけてるみたいだし、あり得そうなんだよな」

 

 ああ。あの野郎はおそらく異形社会の技術を取り込むために、一生懸命動いているはずだ。

 

 暁や姫柊ちゃんのせいでエイエヌ事変は失敗した節があるからな。間違いなく目をつけてくるだろう。

 

「お前の眷獣は威力の加減ができないんだってな。しかもオーバーSランクの魔導士もびっくりするような火力らしいじゃんか」

 

「ああ。だからいい機会だし制御できるようになった方が言って勧められたんだが」

 

 まあ、俺も最初はそのつもりだったんだ。

 

 ただ、ノーヴェから指摘を受けてな。少し考えを変えてみた。

 

「だったら、眷獣を慣らすのと同じぐらい、いや、それ以上にやってみる選択肢がある」

 

「それが、ミット打ちか?」

 

 正直よくわかってない感じの暁だったが、逆に姫柊ちゃんは得心したようだ。

 

「なるほど。そもそも眷獣を使わずに問題が解決できれば、少なくとも眷獣が暴走することは抑制できますね」

 

「そういうことだよ。わざわざ破壊力の高い眷獣ってのに頼るよりも、そっちの方が安全だろ?」

 

 ああ、俺もそれを言われて目から鱗だった。

 

 確かにバカでかい破壊力を持つ兵器を町中で手加減して運用するより、そっちの方が遥かに効率的で安全だ。

 

「せっかくただの人間より高い身体能力があるんだ。そっちの方がよっぽど安全に戦える」

 

「そっか。いろいろ考えてくれてんだな、アンタ」

 

 暁もすぐに納得してくれたのか、少し真剣度が向上している。

 

「ノーヴェはヴィヴィやハイディのコーチだからな。人に格闘技教えるのは得意なんだよ」

 

「そうか。そりゃすごく強くなれそうだ」

 

 ああ、其の辺りはやっぱり共通認識か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そういうわけで、ほかのメンバーの訓練風景も確認してみる。

 

「近平さんは、やっぱり槍に頼りすぎですね」

 

「う……っ」

 

 同じくマンツーマンで指導されている須澄が、姫柊ちゃんに指摘されていた。

 

「近平さんは戦闘訓練を受けているわけではありませんから、やはり技量が低いのが問題ですね」

 

「槍だよりで、槍に頼りすぎてごめんなさい……」

 

 外見年齢では大差ないが、実際のところ十歳近い差がある男が中学生に指摘されているのはいろいろと来るものがあるな。

 

「むしろ技量無しでそこまで戦えさせるだけの能力を持っている、黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)の性能が驚愕です。聖書の神とはそれほどまでに強大な存在なんですね」

 

「流石は神すら殺す神滅具最強の逸品だな」

 

 素直に感心するほかない。

 

 とはいえ、さすがにそれだけで勝てるほどアザゼル杯は甘くない。それほどまでに技量と性能を両立させている者たちが何人もいるのがこの大会だ。

 

 ましてや、この大会にはその聖槍の担い手である曹操がいる。

 

 聖槍の引き出しレベルならばその時点でも須澄以上。加えてあいつは技量という点において、間違いなくずば抜けている規格外の実力者だ。

 

 今後を考えるのなら、須澄は間違いなく技量を磨く必要がある。

 

 そして、そういう意味で一番有望なのは……。

 

「姫柊ちゃん。須澄のこと、頼むな」

 

「はい。チームメンバーですからある程度は」

 

「よろしく、よろしくお願いします」

 

 うん。まあこれぐらいでいいだろう。

 

「それと、七式との霊的癒着の検査があるから、一時間後に担当医師と面談な。……シルシをつけるから大丈夫だと思うが、医師が暴走したら容赦なくボコっていいから」

 

「あ、はい。お手数おかけします」

 

「いや、それに関しては俺の方が謝るところだし」

 

 まさか七式がこういう反応を示すとは。

 

 よほど相性が良かったのか、それともサーヴァントが積極的に協力しすぎているのか。七式が霊的に姫柊ちゃんと癒着して、はがれないという非常事態が勃発した。

 

 幸いなのは、サーヴァントが従順というか自己主張が少ないのか、人格が侵食されていないことだ。

 

 ここまで密接にサーヴァントと霊的に繋がっていると、下手したら人格の汚染が起こりかねないからな。

 

「しかし、インド神話の大英雄カルナか。……すごいの引いたね、姫柊ちゃん」

 

「はい。ですがフォンフの方も並び立つ英雄ですので、これで勝てるというわけでもないのですが」

 

 ……本当にすごいのが出てきたよ。

 

 問題は、フォンフの方が対をなす英雄であるアルジュナを取り込んでいる可能性があるということだ。

 

 実際ガーンディーヴァはアルジュナが持っていた弓だし、ほぼ確定と考えていいだろう。

 

 この調子だと、ほかにもすごいのを引き当てている可能性もある。

 

 ああ、七式の完成を急がないとな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういうわけで、最終ミーティングを行う」

 

 訓練終了後、明日の試合のためのミーティングを行うこととなる。

 

「ここにきて、どうやら問題点が一つ発生したことを伝えておこう」

 

「問題点ですか? 渡された資料にミスでもありましたか」

 

 姫柊ちゃんの疑問はもっともだが、それ以上に厄介なことが発覚したのだ。

 

「聖姫工業が海外の落ち目のPMCを買収しているとが発覚した。おそらく、今後発生するであろう日本でのテロに対抗することを目的しているんだろう」

 

「……兵夜さん。確か日本って、PMCとかが活動しにくい国じゃなかったかしら?」

 

 シルシの意見ももっともだ。俺も、まさかそんなことをするとは思わなかった。

 

 正姫工業は海外進出するつもりでもあるのだろうか?

 

 だが、警戒はするべきだろう。

 

「PMCだってフィクションほど活動できるわけではないが、これでトレーニングに幅ができた可能性がある。おそらく脅威度は更に高くした方がよさそうだ」

 

 ああ、これは確かに警戒するべき状況だろう。

 

「それと、今回幸か不幸か、事前に報告されるタイプのルールで出てきてくれた」

 

 ああ、色々と根回しをした結果、アザゼル杯は二種類のパターンでルールの適用が行われる。

 

 一つは、エンターテイメント性を重視して、当日の試合開始直前にルールを決めるというもの。

 

 もう一つは、タクティクスを考慮して事前にルールを発表するというものだ。

 

 今回は後者だった。

 

「そして、今回のルールは『スカウティング・ビット』だ」

 

 スカウティング・ビットはレーティングゲームの特殊ルールの一つ。

 

 フィールドの中を移動する特殊なビットを確保するゲームだ。

 

 問題点は、このレーティングゲームでは撃破(テイク)されたものは一定時間で再度参戦できること。

 

 つまり、撃破が決定打にならないという点である。

 

 そして、ビットを破壊してしまった場合。破壊したチームの敗北が決定するということだ。

 

「呼んどいてなんだが、暁使いづらいな。龍王クラスの火力だと間違いなくビットが壊れる」

 

「本当になんだな! じゃあ俺はどうすればいいんだよ!!」

 

 ああ、なんかごめん。

 

「とはいえ暁さんは身体能力も高いですの。それなら十分一人ぐらいは足止めできませんの?」

 

「確かにそうですけど、相手は捕縛術などを習得しているんですよね。そうなると膂力任せになる先輩では不利ですね」

 

 雪侶の提案だが姫柊ちゃんの言う通りでもある。

 

 ああ、マジで面倒なことにそうなんだよなぁ。

 

 つまり、使いどころがかなり制限されるわけだ。

 

 もとよりこのルールでは暁の眷獣は威力が高すぎて制限される。

 

 一生懸命頑張って根回しして使い魔関連も緩くした。更に特殊能力や神器との境界線が曖昧なことも説明した。それでも使えるとすれば一体が限界。

 

 まあ、どれを出しても威力がでかすぎるので使うとするならば―

 

「―私がビットを発見してから、巻き込まないように注意しつつってことね」

 

 シルシのまとめが全てを示しているだろう。

 

「まあいいわ。今回のルール。逆に言えば無双し放題ってことでしょう?」

 

「うんうん。都合いい所見つけてアップちゃん興奮してるねっ」

 

 アップは良いよな。思う存分蹂躙出来て。

 

 でもトマリ。お前やっぱり止める気ないだろ。

 

 まあ、その辺は考慮するとして、しかし警戒するべきはシルシ対策だな。

 

「間違いなく、間違いなくシルシさん狙われるよね。一番重要だもん」

 

「失礼ね。私だってサーチャー使えるわよ?」

 

 アップが文句を言うが、しかしそれ初耳だからな。

 

 次元世界の魔法技術はまだあまり知られていないし、これは逆に逆手にとれるか?

 

「まあ、そういうわけで作戦を煮詰めていくぞ」

 

 ………待ってろよ、ナツミ。

 

 俺はお前の男として、情けない負け方だけは決してしない。

 

 いや、勝ってみせるからな!!

 




アザゼル杯のルール発表を一部変更したのは、古城が使い悪すぎるからです。

……ぶっちゃけ、眷獣中心のストブラの吸血鬼って、レーティングゲームのルールだとどこまでできるのかわかりずらい。

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