HSDD 転生生徒のケイオスワールド2 卒業生のアザゼルカップ   作:グレン×グレン

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七式、槍式

 

 そんなこんなで激戦ぶっつづけなわけだが―

 

「あと、一時間……!」

 

「ここからが長そうね……」

 

 いい加減こっちもへばってきたな。

 

 元々融合による神格発動は、拒絶反応を無理矢理即時再生させながら戦闘を行うという無茶苦茶な方法を力技で実行する代物だ。

 

 そんなもんを数時間もぶっ続きでやるのは、流石にきつい……!

 

「様子見に徹していたかいがあったようねぇ。ついでにあんたらのクローンを作ったらいろんな方面で売れそうじゃない?」

 

「おう怖い怖い。相当キレてるな、おまえ」

 

 ここにきてバスラ―とロウ・キリシマも参戦かよ!!

 

 さすがに状況はこっちに不利だな。舎弟たちは限界だし、機械人形も九割は破壊されている。

 

 だが、それさえ乗り越えれば俺達の勝ちなんだが―

 

「……悪い、待たせた」

 

 その時、後ろから待ち侘びた声が届いた。

 

「暁か!!」

 

「暁古城! 大丈夫な……の……」

 

 ん? なんだどうした煌坂。

 

『兵夜さん。姫柊ちゃんとフォリりんの服が、少し乱れてるわ』

 

 ああ、なるほど。

 

「つまり眷獣が増えたと! やったぜ!!」

 

「そっちでいいのか!?」

 

 すいません、発情して血を吸ってた人に言われたくないんですが。

 

「あ、あ、暁古城! あんたまさか雪菜はもちろん王女の血まで!? な、な、なんてことを!!」

 

「仕方ねえだろ!! 姫柊の血だけじゃ眷獣の制御が利かなかったんだから!!」

 

 なるほど、つまり二人分で漸く抑えられるような強力な眷獣だと。

 

 これは、強い予感がするぞ!!

 

「面白い……! やはり生死の境を彷徨うような境地こそが人を伸ばすものだ!!」

 

「いや、心底めんどくさい。私は宮白兵夜を殺せればいいんだけど」

 

「それに関しては同意してあげるわ。あぁかったりぃ。残業手当つくのかしら」

 

「雇われ魔族は辛いねぇ」

 

 それぞれが好き勝手に愚痴を返す中、しかし莫大な雷光がそれを黙らせる。

 

「黙れよお前ら」

 

 ……うん、かなりキレてるな。だろうね。

 

「修練だの殺すだの、挙句の果てに切り刻んでクローンやら天使にするとか、本当にいい加減にしろよ」

 

 ああ、こいつは意外と大物になるな。

 

「叶瀬もラ・フォリアも普通の女の子だろうが。異世界からやってきてまで勝手な都合で振り回しやがって、本当に頭に来てんだよ。しかも宮白まで巻き込ませて申し訳ないってのに……っ」

 

 ああ、これはマジでキレてるな。

 

「模造天使だのアルディギア王家だの、本当に知ったことか!! こっから先は―」

 

「話が長い!!」

 

 遮るように、兄貴が斬撃を飛ばして暁を狙う。

 

 俺は割って入ろうとするが、それより先に斬撃が()()()()

 

「……む?」

 

 警戒心を強める兄貴の視線の先、暁は赤く染まった吸血鬼の目で、敵を纏めて睨みつける。

 

「俺の戦争(ケンカ)だ!!」

 

「だったら纏めて死にやがれ!!」

 

 バスラーが眷獣を振るうが、しかしそれは姫柊ちゃんがあっさりと弾き飛ばす。

 

「いいえ先輩。私達の聖戦(ケンカ)です!」

 

 さて、これから反撃タイムと始めるか!!

 

「宮白、叶瀬はこっちで何とかする!! お前は外野を頼む!!」

 

「OK任せた!! こっちも割と限界なんで早めに頼む!!」

 

 だったらやるしかねえよなぁ!!

 

「シルシ! 決着をつけるぞ気合を入れろ!!」

 

『ええ! 全力で行くわよ、シンクロして!!』

 

 ああ、やるべきことは決まっている。

 

 不死の象徴足る炎の鳥であるフェニックスの傍流たるシルシを使うのならば、最も相性がいいのはこの能力!!

 

「火の象徴が不死ならば、不死もすなわち火の象徴!!」

 

 全身全霊で灼熱を生み出し、俺は周囲の連中に一斉に放つ。

 

「冥途の土産をくれてやる! 生き残れたのなら誇るがいい!!」

 

『これが、不死鳥と神の協奏曲!!』

 

 全長数百メートルの炎の翼を生み出し、俺は一気に薙ぎ払う。

 

「ちょ、嘘……あぁああああ!!!」

 

 まず真正面にいた越智を弾き飛ばし、そして一気に他の連中にも襲い掛かる。

 

「なめるな、愚弟!!」

 

 真正面から兄貴はそれを受け止めるが、しかしそれが致命的な隙だった。

 

「獅子の舞女たる高神の舞威姫が讃え奉る。極光の焔紅、煌華の麒麟。祖は天楽と轟雷を統べ、噴焔を纏いて妖霊冥鬼を射貫く者なり!!」

 

 直後、奴の顔面にたたきつけられるのは鳴り鏑矢。

 

 そしてその音によって瞬時に詠唱された超高度の呪術が一気に全身を焼く。

 

「ぬぅうぉおおおおお!?」

 

 その一撃をもろに受け、兄貴は弾き飛ばされた。

 

 そして残るはメイガスクラフトの小間使い!!

 

「……彼らは譲ってもらいます」

 

 そのまま突っ込むのはフォリりん!?

 

 あの、ちょっとお姫様ぁああああ!?

 

「おいおい王女様、突っ込んできたのなら人質にするまでだぜ?」

 

「都合がいいんだよこの腐れビッチ!! たかが呪式銃如きであたしらを倒せると―」

 

 うんうんそうだよねまずいよね。

 

 ……待てよ? この業界のお姫様ということは―

 

「我が身に宿れ、神々の娘」

 

 俺の推測は、見事に当たっていた。

 

 呪式銃に取り付けられた銃剣(バヨネット)

 

 それが、莫大な霊力とともに光を放つ。

 

「軍勢の守りて、剣の時代」

 

 そういえば、調べた最中に把握していたことがある。

 

 アルディギア王国にはヴェルンドシステムという技術がある。

 

 精霊炉を利用することで、所有する武装を疑似聖剣とする特殊装備。

 

 そして、フォリりんは霊媒体質。

 

「―まさか、自分に精霊を憑依させたのか!?」

 

「ええ。今は私が精霊炉です」

 

『オカルト業界のお姫様は、皆化け物揃いねぇ』

 

「お前も割とそっち側だがな」

 

 だが、これで決着はついた。

 

「ベアトリス・バスラ―。ロウ・キリシマ。騎士団のみならず非戦闘員すら手にかけた非道。我が一撃で裁かせていただきます!!」

 

 鎧袖一触。高位の精霊の力を借りた一撃が、小間使い二人を一気に殲滅する。

 

 よし! 後はフォンフと叶瀬夏音だけ!!

 

「……焔光の夜伯(カレイドブラッド)の血脈を継し者。暁古城が汝の枷を解き放つ! 来やがれ、第三の眷獣! 龍蛇の水銀(アル・メイサ・メルクーリ)!!」

 

 放たれるのは双頭の蛇。それは二人の霊媒を必要する以上、凶悪性も想定可能。

 

 その蛇は、一瞬で叶瀬の防御を突破した。

 

「……次元喰い(ディメンション・イーター)! 全ての次元ごと、空間を食ったのか!?」

 

 叶瀬賢生が目を見開いて驚愕するが、俺も流石にそれは凶悪だ。

 

 何それ。防御無効化とかいう次元じゃねえ!!

 

 しかし、人の周囲に展開している被膜だけを喰らうとは中々精密制御ができるようだ。これは意外と使いやすい部類か?

 

 そして、それだけでは模造天使は倒せない。

 

 模造天使は神気を放ち、暁を滅ぼそうと攻撃を叩き込む。

 

「おいどうする暁!! まだ七式はオーバーヒートしてるんだが―」

 

「それなら大丈夫だ。姫柊!!」

 

「はい、先輩!!」

 

 暁の言葉に堪えて、姫柊ちゃんが飛び上がる。

 

「獅子の神子たる高神の剣巫が願い奉る」

 

 そうだそうだそうだった。

 

「破魔の曙光、雪霞の神狼。鋼の神威をもちて我に悪神百鬼を討たせ給え!!」

 

 祝詞と共に放たれる神格振動波駆動術式が、今度こそ模造天使の術式を解呪する。

 

 同時に、瞬時に呪術で防壁を張り防御。これで再び過去に回帰して模造天使に再復活することもなくなった。

 

「……よし!」

 

「あとは残りを―」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

炎神の咆哮(アグニ・ガーンディーヴァ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのまさに同時、姫柊ちゃんの眼前に灼熱の矢が迫る。

 

 この乱戦時に、こんな精密な狙撃をぶちかましただと!?

 

 まずい、間にあわな―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 完全な不意打ちだった。

 

 激戦ゆえに未来視が間に合わなかったのもあるが、それ以上に模造天使の術式を解除した余波が目くらましになっていた。

 

 かわせない。それだけは確信できる。

 

 完膚なきまでに最高の一撃だ。これだけ優れた弓の攻撃など、獅子王機関ですら目にしたことがない。

 

 つまり、どうしようもないと、雪菜は理解した。

 

 理解したが、しかし納得などできるわけがない。

 

 ここで死んだら古城が悲しむ。ここで死んだら紗矢華が悲しむ。

 

 何よりこの状況下では夏音が巻き添えになる。

 

 それは、絶対にダメだ。

 

 しかし同時になすすべがないことも事実だった。

 

 一瞬の思考の隙を突いた不意打ち。それも完璧といってもいいタイミングで放たれた一射は、全員が反応できなかった。

 

 そして、もうこの時点で迎撃を行う余裕は欠片もない。

 

 つまりはやはり詰んでいる。

 

 唯一の勝機は雪菜が迎撃することだが、この一撃は雪菜の反応速度も動作速度も超えている。

 

 条件反射で雪霞狼を振るってはいるが、おそらく間に合わないだろう。

 

 つまりは、やはり詰んでいるということであり―

 

『………一つ聞こう。助けはいるか?』

 

 ―声が聞こえた。

 

『助けがいるなら今すぐ乞うといい。その時点で、俺は力を貸そう』

 

 それはいったい何故か。

 

『理由など単純だ。乞われたのなら応えることこそ俺の生き方。何より―』

 

 それは、圧倒的なまでの願望。

 

『このような形とはいえ、あの男とまた戦えるのは、少し高揚感というものを覚えている』

 




クロスオーバー二次創作の醍醐味とは、やはり組み合わせだと思うのですよ

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