HSDD 転生生徒のケイオスワールド2 卒業生のアザゼルカップ   作:グレン×グレン

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金魚鉢での攻防戦

 

「はあ!? 宮白の、兄貴!?」

 

 ああ、暁マジですまん。

 

 なんで兄貴がフォンフ……と思われる連中の味方になって出てきてるんだ。

 

「あのさあ、マジでやめてくれない? お前の雇い主ってフォンフだよな? 正気かこの馬鹿」

 

「百も承知。しかし、平穏を望み死線を生み出すことを忌避する者達に属していれば、真の武の境地に到達することなど不可能だろう」

 

 このストイックブレードマスターが。マジで勘弁してくれ。

 

「剣以外に能のない男はこれだから。そんなだから彼女チーマーに寝取られるんだ」

 

「ふしだらな酒池肉林に興じる男に言われたくはない。器用貧乏が」

 

「あ、自分が不器用だからってそういうこと言う? 一点特化といえば聞こえがいいが、できることしかやらないだけだろう?」

 

「何でもできる男が何をやっても同じことだな。技を極めることができない男は哀れでならん」

 

 ………

 

「殺すぞ」

 

「やってみろ」

 

 本気で殺してやろうかこの馬鹿兄貴。

 

「いやいやいやちょっと待て! 兄貴ってどういうことだ!?」

 

 すまん暁。本当にすまん。

 

「紹介しよう。俺の糞兄貴の宮白天騎だ。数年前から武者修行の旅に出ていたんだが、まさかフォンフに与するとは……」

 

「己の力を飛躍させるには、極限状態に身を置くのが基礎にして絶対。俺にはこれしかできんのでな、極限を求めるのは当然だ」

 

 さいですか。だったら仕方がないな。

 

「なら神の試練を乗り越えるといい。シルシ、やるぞ」

 

「ええ、わかってるわ」

 

 容赦をする気は欠片もない。速攻で神格フルバーストで叩き潰してくれるわ!!

 

 そして俺は基本水属性でここは海。爆笑できるぐらいに相性が抜群だということを知るがいい。

 

「日本神話のバリエーションの広さを舐めるなよ!! 海の神オール発動!! そのまま津波にさらわれるといい!!」

 

 俺は遠慮を欠片もせず数万リットルの海水を動かした。

 

 下手をすれば溺れ死ぬどころか圧死するが、しかし遠慮をしてやる義理はない。

 

 俺達の業界で極みを目指すというのならば、これぐらいは突破してくれなければマジで話にならないしな!!

 

「なるほど、小手調べとして充分だ!!」

 

 言うが早いか、兄貴は刀を構えると呼吸を整える。

 

 そして次の瞬間。

 

「……極・雷光剣」

 

 雷撃を纏った一閃が津波を両断する。

 

 なるほど、神鳴流を習得していたか。確かにあれは剣技であるがゆえに、ある程度までは誰でも習得の余地がある。

 

 とはいえ、火力だけなら既に久遠以上とは恐れ入る……!

 

『兵夜さん、右!!』

 

 っと!

 

「悪いけど、すぐ死んでくれない? それもできるだけ早く」

 

「……悪い、顔が思い出せないんだが誰だアンタ?」

 

 逆恨みとはいえ人から恨まれることが多いから、結構前から人の顔は忘れないようにしたんだけどな。

 

 それにしても思い出せん。いつの昔の逆恨みだ?

 

『逆恨みって断言できる辺り、兵夜さんって大概よねぇ。そこは治さない?』

 

「いや、俺は基本堅気には手を出さないんだが」

 

 正当な恨みは受けないように努力してるつもりだぞ? うん。

 

 しかし初期の頃はまだ習熟してないしな。それが理由の可能性は非常に大きい。

 

 後で調べ直しておくとして―

 

「越智。手間をかけている余裕はない。あれを始めろ」

 

「はいはい。……あまり気乗りしないけど仕方ないわね」

 

 越智というのか。これは実に助かる内容だ。

 

 これで後で調べるのが楽になる!!

 

 だがそれよりも越智が何かしてくるということだ。

 

 やらせると思うか!

 

「させると思うか?」

 

 その時、俺の目の前に兄貴が現れる。

 

 瞬動術まで習得しているか!

 

 それで一瞬動きが止まり、そしてその瞬間越智が動く。

 

「……さて、第二ラウンドよ」

 

 その瞬間、模造天使が再び目を覚ました。

 

「……な!?」

 

 なんだと!? 術式は既に解除したはず。

 

 あいつの宝具が術式を無効化していないはずがない。つまり、これは再起動ではなく―

 

「時間逆行!?」

 

「近いわね。私のキーワードは過去よ」

 

 つまり超能力者(エスパー)か!

 

「まずい! 既に七式はオーバーヒートしてる……っ!」

 

「嘘だろ!?」

 

 近距離でやばいことになっている暁が絶叫するが、勘弁してくれ。

 

「まだ未完成なのを土壇場で仕上げたんだ! 他の七式は全部未完成で―」

 

 俺は手元の残り六つを見せるが、しかしその宝石に輝きは灯らない。

 

 まだ憑依させる英霊を取り込めてないのだ。このあたり、フォンフと俺の技量の差もろに出ている。

 

「よそ見をするとは余裕ね!!」

 

「うぉ!?」

 

 あ、ヤベ、一つ落とした!!

 

「何をやっているんですか宮白さん!!」

 

 おお、姫柊ちゃん回収ありがとう!!

 

「っていうかどうするの!? あなたがあれ使えないと、模造天使の防御を突破しても助けられないんだけど!?」

 

 うん、そうなんだよね煌坂!! どうしよう!!

 

「オーバーヒートが回復するまでにかかる時間は約二時間といったところだ。それまで何とかしのいでくれ!!」

 

『とはいえこの数はさすがに大変よねぇ』

 

 ああ、俺も神格フル発動がそこまで持つかわからんしな。

 

「KLilllllllllllllll!!!」

 

 模造天使と化した叶瀬夏音までもが更に攻撃を放ってくる。

 

 おい、これ流石にまずいんだけど!?

 

「夏音……っ!」

 

 まずい、抱きかかえていた都合上、フォリりんが割とやばい位置に!?

 

「だれかフォリりんをカバーしろ!! こっちは二人掛かりで手一杯だ!!」

 

 つってもこれは流石に……っ

 

「ラ・フォリア!!」

 

 あと少しで命中するところだった攻撃を、しかし暁が割って入って受け止める。

 

 あのバカ、心臓潰されたぐらいじゃ死なないからって根性あるな!!

 

 でもあいつ死にかけてるぞ? これカバーする相手が増えただけじゃね?

 

「困っているようだが安心しろ。身内の情けだ一撃で首をはねる!!」

 

「死になさい! すぐ死になさい!! 今すぐ死になさい!!」

 

 あ、ヤバイコレ!!

 

 こんなことならグランソードも連れてくるんだった!! ちょっと冗談抜きで状況がヤバイ!!

 

 更に後ろから機械人形《オートマタ》の部隊までやってきやがった。

 

 くそ! あいつらグランソードの舎弟だから戦闘能力高いんだぞ!? それが、やられただと!?

 

 まずいまずいマズイこのままだとマジマズイ!!

 

 そして機械人形は一斉に銃火器を放ち―

 

「む!?」

 

 そのまま兄貴達に銃弾が殺到する。

 

 なんだ? バクったのか?

 

「兵夜さん!!」

 

 と、そこには戦闘中だったグランソードの舎弟達が駆けつけてきた。

 

「どういう状況だ?」

 

「藍羽さんがやってくれました! 今、他の残りの機械人形もハッキングしている真っ最中です!!」

 

 藍羽スゲー!!

 

『ねえ、真剣に眷属悪魔としてスカウトしたら? 冗談抜きでそれだけの価値があるわよね』

 

「俺もすごい同感」

 

 真剣に買収を考慮するときが来たようだ。俺の財力でどこまでの待遇を引き出せるかがカギだな。

 

 だが、今はこれ以上考えている余裕がない。

 

「姫柊ちゃん! こっちで時間を稼ぐから、取り合えず暁とフォリりんを連れていったん下がれ!!」

 

「は、はい!!」

 

 さて、それでは後はどうしたものか。

 

「煌坂。悪いが付き合ってくれ。三時間凌げばもう一度七式が使える」

 

「それにかけるしかないってことね。いいわ、雪菜の為に乗ってあげる」

 

「こちらにも攻撃が来るのはどうにかしてほしいが、しかしいい状況だ」

 

「私は洗脳とかできないから我慢して。それに、数が減ったのは好都合ね」

 

 俺達は睨み合いながら、そして戦闘を再開した。

 


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