HSDD 転生生徒のケイオスワールド2 卒業生のアザゼルカップ   作:グレン×グレン

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とりあえず、ちょっとだけある書き溜めを全部出すことにします。


神が神を利用して神を見定めるというのがないようだけどややこしい

 

 その言葉に、帝釈天と曹操は目の色を僅かに変える。

 

 現状、須弥山はある程度の警戒を受けていると言ってもいい。

 

 曹操を秘匿していた帝釈天も、そもそも禍の団の二代目首魁である曹操も、現政権側からすれば警戒の対象だ。

 

 更に英雄派に苦しめられた兵夜からすれば、その警戒度合いは更に高まるはず。

 

 そこに、思わぬ商談が舞い込んだ。

 

 これは興味が惹かれる。

 

「ほぅ。具体的には?」

 

「いや? 既に禁手の拡張に関してはイッセーと俺とでデータは出てるからな。ついでに木場のパターンもいい参考資料になった」

 

 そういうと、兵夜はしかしわざとらしく肩をすくめる。

 

「だが残念な事に、この拡張の臨床データが不足していて、実際に他の神器保有者で試そうにもまずは試験が必要だ。神器保有者は人間もしくはそれに連なるものだから、軽々しく実験するわけにもいかない」

 

 そういうと、更に兵夜はそっぽを向いて棒読みを始める。

 

「あー。どこかに実験体にしても心が痛まないテロリストみたいな連中とかいないかなー」

 

「HAHAHA! 腹の探り合いはやめようぜ? ……どうせお前さんのことだ、すでにある程度の安全は確保できてんだろう? でなけりゃお前さんは自分の体で試さねえよ」

 

 棒読みを遮る帝釈天の言葉に、兵夜はにやりと笑った。

 

「対価は簡単。……輪廻転生に大きく関わるインド神話と仏教の技術を借りたい。あと聖槍の力も借りたい」

 

 その言葉に、曹操は少し疑念の色をのぞかせた。

 

「聖槍ならあるだろう。そこに平行世界のが」

 

「ヴァレリーのことを考えれば、聖遺物はいくつあっても足りないだろう?」

 

 兵夜の返答に、曹操はどういうことかをすぐに察した。

 

「……聖杯を何に使う気だ?」

 

 聖遺物に連なる神滅具、幽世の聖杯は精神を汚染する。

 

 それを抑制するのに聖遺物が有効である事は既に分かっている。

 

 だがそれでも聖杯は危険度が高く、このアザゼル杯でもその真価は一切発揮されていない。

 

 確かに、そんなものを使うのならば制御の為の聖遺物はいくつあっても足りないだろう。

 

「ちょっと困った事があってな。生命の理に干渉する聖杯や、輪廻転生の技術を流用する事でアプローチをかけたい。アザゼル杯の優勝商品でどうにかする余地もあるが」

 

「言うじゃねえか。そのためなら、シヴァとやり合う予定の俺の戦力の曹操を強化するってか? アザ坊から何か言われるんじゃねえか?」

 

 帝釈天の言葉は当然だろう。

 

 三大勢力は基本的に帝釈天を警戒している。

 

 かつての四大魔王が全員でかからなければ渡り合えない、神クラスの中でも最高峰の武闘派。しかも曹操を隠しており、シヴァとの決着を目論んでいる節がある。

 

 今の情勢において危険因子なのは間違いない。

 

 しかし、兵夜は肩をすくめた。

 

「……単刀直入に言おう。俺はシヴァ神をそこまで信用してない」

 

 はっきりと、兵夜は言い切った。

 

「シヴァ神はそもそも世界を破壊することが役目の存在だ。アザゼルはトライヘキサに対するカウンターとして協力を取り付けていたようだが、アジュカ様はそれを利用して異世界に破壊をもたらしに行くのではないかという懸念を抱いていた。……ああいう目的や掴みどころがわかりきってない相手は、全面的には信用できないだろう?」

 

 つまり、兵夜はこう言いたいのだ。

 

 目的が分かっている帝釈天の方が、まだ交渉相手として安心できる。

 

 その意図を明確に理解して、帝釈天は笑みを深くした。

 

「HAHAHAHAHA!!! お前さん、頭のねじぶっ飛んでんじゃねえか? じゃあ何か? 俺が条件として「お前の優勝賞品でシヴァとやらせろ」って言ったらくれんのかよ」

 

「流石にそれは客観的に見て等価じゃないでしょう? もっとも、須弥山が俺の暁絡みの損失及び、現時点の予定に必要なピースを全部用意してくれるっていうなら……俺の取り分ぐらいはOKですがね」

 

 ヴィヴィオたちの分を引いた上でではあるが、と兵夜は告げるが正気とは思えない。

 

 しかし、あまり迷いなく返されれば、帝釈天としても感心する他ない。

 

 間違いない。この男、頭のねじが十本は吹っ飛んでいる。

 

「まあ、目的達成の過程において神滅具級の人造神器が手に入るでしょう。シヴァ神を相手に実戦テストしてくれるってのはありですねぇ」

 

 周りのチームメンバーを微妙にドン引きさせる中、兵夜はにやりと笑う。

 

 そして、帝釈天と曹操はにやりと笑う。

 

「赤龍帝も驚かせてくれるが、お前さんもまた驚かせてくれるな」

 

 帝釈天は、今目の前にいる男を更に認めた。

 

「赤龍帝の奴は普段も本気もB級だが、肝心なところでSSSを叩き出すようなイレギュラーだ。だが、てめえはある意味もっととんでもねえ」

 

 そう、この男はある意味もっととんでもない。

 

「根っこはC級なのに無理やりA級まで押し上げて、挙句の果てに必要な時はあの手この手でSSSまで引き上げやがる。赤龍帝も常識外れだが、お前さんもぶっ飛んでるZE!」

 

「それはどうも。頭のねじが外れてるのは自覚済みです」

 

「外れ方の自覚は足りないだろうけどね。あったらこんなところで話したりはしないだろう」

 

 サラリと帝釈天の言葉に笑みを深める兵夜に曹操は微妙に引いていた。

 

 少なくとも小学生前後の年齢の子供が四人もいるところでいう話ではない。

 

「別にばれたらばれたでやりようはあるからな。アザゼル杯の公式ルールの範囲内だし、第一、アザゼル杯の優勝賞品は世界に混乱を生まない程度の願いしか叶えられないんだから、シヴァ神と帝釈天の戦いが世界の混乱を生まないと判断されるのなら問題ない。……ついでに言えば―」

 

 一旦言葉を切り、兵夜はにやりと笑った。

 

信用しきれない相手(シヴァ神)の手の内が見れるなら、それはそれで俺にとっても得だしな」

 

 その言葉に、ほぼ全員が更にちょっと引いた。

 

 つまりこの男はこう言っているのだ。

 

 帝釈天を利用して、シヴァ神の底を図るのも一興だと。

 

 そんなことを堂々とこんなところでいう神経もシャレにならないが、一神話体系のトップを餌に一神話体系最強の神を丸裸にしようという精神もまたぶっ飛んでいる。

 

「一周回って感心したんだけど」

 

「同感だノーヴェ。俺達、とんでもないのと仲良くなったんじゃねえか?」

 

 ノーヴェと古城の感想が切っ掛けとなったのか、帝釈天は豪快に大笑いした。

 

「ははははははははははっ!!! 俺を目の前で俺をダシにする言い切るとか、お前さんちょっと面白すぎるZE!!」

 

 目に涙すら浮かべて大笑いをしてから、帝釈天は早々に視線を向ける。

 

「どうすんだ? 俺は許可だすぜ、お前さんの強化によぉ?」

 

「貴方のお許しが出たというのなら、俺としては断る理由はありませんね」

 

 曹操もまた、表情を笑みへと変える。

 

「人間がどこまで超常の存在に立ち向かえるかを試すのが英雄派の理念。人間の力である神器を高める研究は、俺にとっても望むところだ」

 

 その言葉に、兵夜は満足げな表情で頷いた。

 

「商談成立! んじゃぁ、これからすぐにでも始めるか? ……どうやら身をもってその成果を楽しめそうだからな」

 

 その言葉とともに、兵夜は視線をテレビへと向けた。

 

 見ればテレビは次の試合のマッチングを現していた。

 

 そして、今まさに次の試合のマッチングが出ていた。

 

 神喰いの神魔チームVS天帝の槍チーム

 

 黄昏の聖槍同士の戦いという、本来あり得ない戦いの狼煙が上がろうとしていた。

 




シヴァ神を信用しきれない兵夜。割とわかりやすい帝釈天を使い、そこを見定めるのも一興と考えてます。頭のねじがぶっ飛んでますね。




……それと、交渉次第で古城がぶっ壊した分の修繕費を立て替えてもらえるかもしれないという算段もあります。相変わらず黒い。

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