HSDD 転生生徒のケイオスワールド2 卒業生のアザゼルカップ   作:グレン×グレン

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ちょっと書き溜めすぎたので一話更新!


……金持ちが奢ってくれると聞いたら、ついつい高いものを頼んじゃいたくなるのが人間という者

 

 

 

 そして、その試合もまた判定勝負となり、アルサムが辛勝した。

 

 マジですさまじい戦いだった。どっちが勝ってもおかしくない熾烈な争いだった。

 

 さて、とはいえ今回はまだ夜まで時間がある。

 

 ……ちょっと時間が空いたし、飯でも食うかと外に繰り出したら―

 

「お? 神喰いの神魔じゃねえか」

 

「これは奇遇だな」

 

 帝釈天と曹操が並んでこんなところに居やがった。

 

「……知り合いか、宮白?」

 

 暁がそう聞くが、まあ知り合いというかなんというか。

 

 そういえば、暁たちは開会式にもいなかったし、試合見てなかったな。

 

「古城さん。あの人、神様です」

 

「……え゛」

 

 ヴィヴィオが耳打ちして、暁が唖然となる。

 

 まあ、こんなところで出てくるとは思わないよなぁ。

 

「……紹介しよう。あちら、中国神話体系「須弥山」の長を務めている、インドラこと帝釈天だ。……俺も直接言葉を交わすのは初めてだが」

 

「HAHAHA!! 初めましてだな第四真祖!! お前さんとは一度会ってみたかったZE!」

 

 快活に笑う帝釈天を俺はスルーして、もう一人の方も紹介する。

 

「で、その隣にいるのは英雄症候群をこじらせた元テロリスト、禍の団(カオス・ブリゲード)の二代目首魁、英雄派の曹操だ」

 

「これは手厳しいな」

 

「事実だろうが」

 

 苦笑まじりの返答に、俺はため息交じりに肩をすくめる。

 

「……宮白。そういえば禍の団って国際テロリストだよな? いいのか?」

 

「これが意外なことに人気が出ていてな。異形社会はフリーダムすぎてついてけないときがある」

 

 暁にそう返答するが、しかしまあそりゃそうだろう。

 

 お前らもうちょっと自粛しろよ。グランソードの爪の垢を飲め。

 

 そう思うが、しかし運営が許可をしている以上これ以上は文句も言えない。

 

「まあ、俺としてもあっさりOKが出たことには驚きだ。異形の世界は人間とはずれているようだ」

 

「じゃあ略取監禁洗脳調教人体実験の処罰は人類に任せよう。よかったな。間違いなく正当な裁きとして極刑も出てくるぞ」

 

「おっとそりゃ困る。聖槍の坊主は今やうちの貴重な尖兵だぜ? 各勢力に話も通してんだし、今更そんなこと言われても困るんだがよ?」

 

 痛烈に嫌味を返したら、帝釈天が余計なことを言ってきた。

 

 とはいえ、それを決めるのは俺ではない。

 

「お言葉ですが、それに関して略取された関係者に話は通していないでしょう? 人間世界をあまりないがしろにしてしっぺ返しを食らっても、俺は関知するつもりはありませんので」

 

「HAHAHA。手厳しいぜ!!」

 

 この野郎……っ。

 

「ま、まあ確かに犯罪はよくないよな」

 

「そ、そうですね。辻試合とかはいけないですね」

 

 後ろで約二名がどもっているが、後でなんか奢ろう。

 

 とはいえ、別に俺は彼らと親密な関係というわけでもない。

 

 そろそろお暇しようと思ったんだが―

 

「ちょうどいい。昼飯まだだろ? 奢るぜ?」

 

 といって帝釈天が、隣にある飯屋を指さした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お姉さん。とりあえずビールと枝豆とから揚げとフライドポテトください」

 

 ビタミン、たんぱく質、炭水化物を全部コンプリートと。

 

「お前さん、容赦ねえな」

 

 やかましい。こうなったらやけなので目一杯食ってやる。

 

「まあいいぜ。なにせ須弥山のトップやってっから金は腐るほどあるしな。飯屋のメニュー程度で破産するほど貧乏じゃねえからどんどん喰いな」

 

「では俺も遠慮なく食べさせてもらいますよ」

 

 曹操もためらうことなく高いものを注文し始めた。

 

 さて、とりあえずメニューも注文したし、ビールも来たしだべるか。

 

 しかし何についてだべったらいいものか。できればここで交渉したいところなんだが……。

 

「……神様っていう割には、なんていうか神聖さがないんですね」

 

「聞こえてるぜぇちっこいの。ま、そいつは正論だがな」

 

 結瞳ちゃんの小声を耳ざとく聞きつけた帝釈天だが、しかしまったく気にしていないようだ。

 

「神様っつっても所詮は生き物だ。俗っぽい連中もいれば器の小さい奴だってゴロゴロいる。……ぶっちゃけ大半の神共は「和平とかマジむかつくぜ。他の神話体系とか滅べバーカ」って思ってるはずだしな」

 

「……そういうの、こういうところでいうのやめてくれません?」

 

 問題発言をこんなところでぶちかますな、このクソ神。

 

 とはいえ、確かに和平に不満を内心で持っている奴がいまだ多いのは想定の範囲内だが。

 

「そんな状態だってのに国際大会って、大丈夫なのか?」

 

「逆だ、第四真祖。そんな状況だからこそ、堂々と殴り合いができるこの機会が生きるのさ。全力で殴り合ってガス抜きすりゃぁ、少しはストレスも発散して馬鹿なこと考えねえだろうとか、アザ坊は考えてたんだろ」

 

 暁にそう答えながら、帝釈天はため息をつく。

 

「……こっちとしちゃぁあきれ半分だが、鼻っ柱へし折れたそいつらは、当分はおとなしくしてるだろうしな」

 

 ……あきれ半分、か。

 

 まあ、どういうことかは俺も推測し始めている。

 

「……お言葉ですが帝釈天様。神クラスは現時点でも勝率は高い方だと思いますが?」

 

「そうですね。全部知っているわけではありませんが、神が在籍しているチームの多くはランキングも上位だと伺ってますが」

 

 姫柊ちゃんとハイディが首をかしげるのも当然だろう。

 

 神クラスは、どこのチームも基本的には高い勝率とレートを持っている。腐っても神々は異形でも上位存在だからな。

 

 だが―

 

「そう、高い勝率を持っている連中が大半だ。……だが、トップ陣営ってわけじゃねえ」

 

 そう、そうなんだ。

 

「このレーティングゲームで全勝してる連中なんてのは、神クラスでもそうはねえ。むしろお前さんたちや神喰いの主のような若手の悪魔とかが多いってわかってるか?」

 

 帝釈天はそういうとビールを飲んで一息つく。

 

 そして、盛大にため息をついた。

 

「マッチングの運ってのもあるんだろうがな。若手の化け物共に負けてる神クラスも割と多い。それで鼻っ柱が折れてんのさ、木っ端の神々はな」

 

「……意外と根性ねえんだな」

 

 グランソードが微妙にあきれるが、しかし帝釈天はむしろ当然といった表情だった。

 

「まあ、大半の神チームはこう思ってたんだろうよ。「神である俺たちが胸を貸してやろう」とか、「身の程知らずの下等種族共に神の力を見せつけてやろう」って感じでよ」

 

 そう言いながら、帝釈天は店に備え付けのテレビに視線を向ける。

 

 そこには、かつての雷光チームとイッセーたちの戦いの映像が映っている。

 

 ちょうど、乳乳帝を発動させてフィールドを吹きとばしている光景だ。

 

「ところがどっこい。神喰いのダチの赤龍帝の坊主やら白龍皇たち若手が大暴れ。さらには異世界出身の第四真祖《おたく》や、ヴァトなんとかが神クラスでもそうはできねえような破壊を巻き起こしてやがる」

 

 さらにテレビの映像は、ほかのチームの戦闘も見せている。

 

 その中には、剣と小銃をもった人間の男が、フィールドをぽんぽん吹っ飛ばしている。

 

「挙句、曹操みてえな有名人ならともかく、今映ってるガキみてえな無名がさらに大暴れだ。俺は大笑いしてるが、笑えなくなってる馬鹿どもも多いのさ」

 

 そういう帝釈天は、思ってなかった展開にぽかんとしている暁たちに視線を向ける。

 

「実際のところ、神っつっても戦闘系ばかりじゃねえからな。今回の大会に意気揚々と名乗りを上げたのは、芸能関係とかの非戦闘系が多いの。戦闘系の大御所は、今回運営をやってる連中も多いからな」

 

「それでも勝率はまだ悪くない。……だが、望んだ結果でないものも事実といったところなのさ、神々は」

 

 曹操がそういうと、ため息をついた。

 

「俺と天帝の予測では、おそらく神クラスを含めて何割かのチームがこのアザゼル杯から降りるはずだ」

 

「雑魚神と同様に、根性のねえ糞雑魚のチームもそろそろ逃げ腰になるはずだZE? 優勝賞品に目がくらんで、身の程わきまえてなかっただけの奴らがな」

 

 その推測はおそらくあたりだろう。

 

 まあ、まさにスケールがシャレにならんからな。ビビッてリタイアするチームはそこそこ出るとは思っていた。

 

「まあ、イッセーにぃの本気の攻撃とか喰らいたがる手合いはそうはいないでしょうし、仕方がないことかもしれませんけれども」

 

「参加することに意義があるとか、強者に胸を借りるとかいう発想じゃねえってわけか」

 

 雪侶とグランソードがそう漏らすが、まあ確かにな。

 

 その視線に苦笑を浮かべながら、帝釈天はこっちを見渡した。

 

「そういう意味じゃぁ、俺はお前さんたちには期待してるんだぜ?」

 

「……それは、光栄に思うべきなんですかねぇ」

 

 俺はそっけなく返すが、帝釈天はまったく気にしない。

 

「HAHAHA! 何言ってんだ神喰いの神魔《フローズヴィトニル・ダビデ》!! ロキとハーデスをあの手この手でボコボコにした奴が、本戦出場もしねえとは思ってねえよ」

 

 確かに、そういわれると困るところもあるが。

 

 とはいえ、こちらも優勝を目指しているが。

 

「まあ優勝はしたいな。……そろそろ出費が許容値を超えかけている」

 

「……なんか、悪い」

 

 うん、暁よ。優勝賞品のお前の取り分は損失補填にあてさせてもらうからな。

 

「HAHAHA! 天下の出世頭の神喰いの神魔が、まさか金を願うとはな!! そんなに金かかってんのかよ、第四真祖は?」

 

「トラブルが頻発で被害も頻発で、損失補填がそろそろ日本円にして千億の大台に届きそうで……」

 

 ちょっと世界を救った英雄を助けてくれませんかと、魔王様に頭下げることも考えた方がいいだろうか?

 

「……なるほど、金は確かに大事だ。確保できるときに確保した方がいいな」

 

「……英雄英雄言ってるお前が金にこだわるとはな。そんなに賠償金苦労してるのか」

 

 曹操さんや。おたくそんなに金にこだわるイメージなかったんだがな。

 

「いや、金の力というものは英雄派を組織する前からよく知っている。特に、貧乏暮らしの者にとって金の魔力はすべてを狂わせるに足るものだからな。あまりなめてかからない方がいい」

 

 なんか、すごく実感籠った言い方してるな。

 

「何だよお前。金に困って内臓でも売り飛ばした知り合いでもいるの?」

 

「金に惑わされて子供を怪しい施設に預けようとした者たちなら知っている」

 

 曹操はそういうと、俺達に視線を向けた。

 

「金の力と金の使い方はよく知っておいた方がいい。金で人生を翻弄しているものからの忠告だ」

 

 俺はその言葉に、帝釈天に視線を向けた。

 

「曹操の存在を秘匿していたのはアザゼルから聞いてましたけど、金で買収してたんですか?」

 

「いやいや違うZE? 金で解決しようとしたのは別の連中だ」

 

 ふむ、まあ深入りするのはやめておくか。

 

「とはいえ、あれだけの強者と平和的に戦う機会などこれまでにないだろうに、もったいない連中が多いのがアレだな」

 

「あ、確かにそうですね。無差別級であんなすごい人たちと競い合える機会なんて、そうないですし」

 

「ヴィヴィオさんの言う通りです。宮白さんと仲のいい桜花さんみたいに、お強い方が何人も参加しているこの大会に参戦できるのは、すごい名誉なことだと思います」

 

 曹操のボヤきに、ヴィヴィオとアインハルトがそう答える。

 

 その純粋な言葉に、曹操は思いっきり苦笑した。

 

「……その通りだ。まあ、俺としてはさっきとは別の意味で肩透かしを食らってはいるのだが」

 

「そんなに? そんなに弱い人とばかりあたってるの?」

 

「マッチングの運が悪いんだねっ」

 

 須澄とトマリがそう聞くが、そういう意味じゃない。

 

「……代わってほしいわね」

 

 そういう意味じゃないからアップはうらやましそうな表情を浮かべるな。

 

「……いや、強者と戦うためにテロまで起こしたのに、起こしてから一年たたずに堂々と参加できる機会に恵まれると、我ながら不条理に近いものを感じてな」

 

「散々テロっておきながら参加できることを感謝しろや」

 

 グランソード。もっと言ってやれ。自嘲しろと。

 

「第一、てめえら所詮禁手どまりじゃねえか。案外予選落ちするんじゃねえの? 禁手を昇華させてる赤龍帝や、覇を昇華させてる白龍皇には届かねえだろ」

 

「言ってくれるじゃないか。こちらもドーピングとはいえ、神器そのものを強化したことがあるんだけどね」

 

「いやいや。赤龍帝を参考に禁手を拡張させた大将ほどじゃねえよ。第一ドーピングなら俺がいるから大将もできるしな」

 

「はっはっは。その禁手の拡張も悪魔の駒だよりだろう? 俺たちは人間だからな」

 

 曹操とグランソードで言い合いが始まり火花が散るが、君たち飯がまずくなるからケンカしない。

 

 まあ、それはともかく―

 

「その禁手の拡張だが、一枚かまないか?」

 

 俺はそう告げた。

 

 さて、そろそろ商談と行こうか。

 




味方もごっそり残っているけど、敵もごっそり出てきそうなのでてこ入れ中。

こと神器の拡張を兵夜が実行したので、神器保有者だらけの英雄派はてこ入れしやすいです!!

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