悪夢の少女と   作:ヤマシロ=サン

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2020/10/16 一部文章訂正


第1話 悪夢

真っ暗な街並み、夜空を見上げるも月は形しかわからない。

つまり新月だということだ。この街並みは見覚えがあった。

 

 

「......ミオシティだよ...な?」

 

 

そう、ここは間違いなくミオシティの真ん中にある広場だった。今朝も友人と遊んだから余計記憶が鮮明に残っていた。

 

 

しかし、人は誰一人おらず、ポケモンセンターすら電気もついていない。

 

 

そして、この静寂が俺の恐怖を引き立てる。

 

 

『独り』

 

 

この感覚は前世から全く変わっておらずこれを意識した瞬間、体の震えが止まらなくなった。

 

 

「...まじかよ。寒いな。」

 

 

俺はこの震えは寒さのせいだと体に言い聞かせる。震えは止まらないが大分マシになっただろう。

 

 

俺は街を散策することにした。

 

 

 

 

 

まずはミオの図書館に行った。

 

「やっぱり誰もいないか...」

 

 

『ガチャ』

 

「ん、開いてるぞ?」

 

 

なぜかミオの図書館は鍵が開いていた。こんな夜中なのに変だな。と思いつつ足を踏み入れる。

 

「非常口マークすら電気がついてねぇじゃん...」

 

本当に真っ暗だった。

 

 

外の光が入ってきて通路は辛うじて見えるものの本の名前は全くと言っていいほど字が見えない。

 

「はぁ、取り敢えずポケモン図鑑のところに行ってみるか...」

 

 

 

 

 

 

 

 

普段よくきている場所なので何となく構造は頭に入っていたらしい。思いの外スムーズに進むことができ、気づけばいつも通っているポケモン図鑑のコーナーまで来ていた。

 

「んー、いつも読んでいるポケモン図鑑はどこだ?」

 

字が読みづらいが目を凝らして探してみる。本を読んで恐怖を紛らわす作戦だ。

 

「んーっと、あ、あったあった。」

 

 

俺は分厚い辞書のようなポケモン図鑑を引き抜く。

 

「字、見えるかな?何とか見えそうだ.........ッ!!?」

 

 

 

俺は驚いてそのポケモン図鑑を落として腰を抜かしてしまった。

 

 

なぜなら...

 

 

「は...!?何で真っ黒なんだよ...!!」

 

 

そう、表紙はポケモン図鑑と書かれている。

 

 

 

しかし、目次のページもどのページも墨で塗りつぶされたように真っ黒だったのだ。

 

 

俺は慌てて適当にそこの本棚から本を引き抜いて適当にページを開いていく。

 

 

「え、どうなってんだよ!!?」

 

 

そう、ポケモン図鑑と同じくどのページも真っ黒。

 

 

俺は資料のファイルを開き、適当に資料を引き抜いて見る。

 

 

「ッ!!」

 

 

どの資料も両面真っ黒だったのだ。

 

 

「は!?は!?何で...!?何でどの本も資料も真っ黒なんだよ!?」

 

 

 

 

そう、どの本もどのページも真っ黒だったのだ。

 

 

俺の冷や汗と身体の震えが止まらない。恐怖が体を支配する。

 

 

 

……カツン

 

 

「ひっ!?」

 

 

思わず声をあげた。

 

 

「...あしお...と?誰かいるのか...!?」

 

 

…カツン...カツン...カツン...

 

 

足音はだんだん遠くなっていく。俺は聴覚を研ぎ澄ませその足音だけに集中することにした。

 

 

カツン......ガチャ、キィィィ.........バタン......

 

 

足音が一瞬止まったかと思うと、ドアの開く音がした。そう、誰かは知らないが図書館を出て行ったのだ。

 

 

今現在、怖くて震えも止まらないくらい怖いが、そんなことを言っている暇はなかった。

 

 

「......追いかけよう。」

 

俺は震える足に喝を入れ、ふらふらと立ち上がる。

 

そして、ゆっくりと足を進めさっきの入り口まで戻った。

 

 

 

「ふぅ、取り敢えず表に出よう。」

 

ガチャ……

 

 

俺はミオシティ図書館を出た。

 

 

相変わらず外は真っ暗で街灯一つ付いていない。月の光も当たっておらず、星の光のみが唯一の光だった。

 

 

 

その後、俺は親父がいつも仕事で行っている港の事務所に行ったり、ポケモンジムに行ったりした。しかし、どこも開いていなかった。

 

 

「あとは.........」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はとある一軒の民家の前に立った。

 

 

そう、俺の家だ。

 

 

震える手でドアノブに手をかけて、ゆっくりとドアノブを捻り、ドアを後ろに引く。すると、恐ろしいほど素直にドアは開いた。

 

その瞬間、俺は悟った。

 

 

「.........俺の家に......誰か....いる.......!!」

 

その事実を知った時、図書館の時の、いや、それ以上の恐怖が体全体をよぎる。そして、今まで以上に鳥肌が立ち、冷や汗がブワッと出てくる。

 

 

俺はおそるおそる靴を脱ぎ、まずは一階を散策することにした。

 

 

「まずは...リビングだな。」

 

 

音を立てないようにゆっくりとドアを開けてリビングに入る。

 

 

いつも母さんが読んでいる週刊誌がテーブルの上に乱雑に置いてあった。しかし、

 

 

「これもかよ......」

 

 

そう、どのページも真っ黒だった。そして、リビングの本棚にある母さんがよく使う料理本も真っ黒だった。

 

 

特に何もないと判断した俺は母さんの部屋に行くことにした。今の時間帯なら母さんは寝ているはず...しかし、いや予想通りというべきだろうか...。

 

 

「...っ、やっぱりいないか。」

 

そう、布団が敷いてあるものの母さんの姿は無かった。

 

 

 

 

俺はそのあとキッチンや風呂場や親父の部屋を回ってみた。しかし、あるのは真っ黒になった書物と特に何も変哲のない洗剤やシャンプーなどだった。

 

 

 

 

 

そして俺は階段の前に立った。

 

 

 

どくん...どくん...どくん...

 

 

俺の心臓が激しく鳴っている。

 

 

緊張感が一気に増して、足がガクガクと再び震えだした。

そして、自然と呼吸も荒く鳴った。

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はあ...」

 

 

俺は一度大きく深呼吸をした。

 

 

「ふぅ、行くか。」

 

 

俺は一歩ずつ、キシキシと音を立てながら階段を登って行く。

 

 

 

そして、たどり着いたのは。

 

 

「ここだな。」

 

 

『ハルトのへや』

 

 

そう、俺の部屋だ。

 

ここにさっきのやつはいる。そう踏んだ。

 

 

 

数秒間、動けなかった。しかし、俺は覚悟を決めることにした。

 

 

俺はドアノブに手を掛けドアをゆっくりと開けた。

 

 

キィィィ......

 

 

「っ!!」

 

 

部屋を覗くと、俺のベッドの上に誰かがいた。

 

 

「うぅ......ひっく...ひっぐ...」

 

 

 

泣いているのか......?

 

 

声を聞く限り女の子のようだ。よく見えないが俺のベッドの上で体操座りでうずくまるようにして泣いていた。

 

 

「っ!!」

 

 

少女は俺に気づいたのかゆっくりと顔を上げた。その瞬間我に帰りまた恐怖が体を支配する。動かない。恐怖で体がうまく動いてくれない。

 

 

その少女の目は.........

 

 

 

 

 

青かった。

 

 

 

青い、宝石のような綺麗な青い目、だが、若干黒ずんでいるように見える。

 

 

そして、ゆっくりと少女の口は開く。

 

 

 

 

 

 

「ぐっ...ぁ...!?」

 

 

少女が何かを言おうとした瞬間、とてつもない頭痛に襲われる。頭が割れそうな痛みだ。たまらず地面に倒れこんだ。頭を抑えてうずくまった。

 

 

「ぐぁ...!?なんなん...だ......?」

 

 

意識が朦朧としてくる。段々体の感覚が無くなってきた。そして、意識が途切れる寸前、ふと、顔を上げるとその女の子は立って見下ろしていた。

 

 

その女の子の目には何か雫のようなものが見える。

 

 

そして少女の口は開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ま......た......たす.........ぇ...!』

 

 

 

 

 

 

 

 

「な.........に.........?」

 

 

 

 

何かを言ったようだがこの瞬間俺の意識は落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!!!」

 

俺は目が覚めた。朝の日差しが差していた。

 

 

「はぁ...はぁ...なんだ......夢か......」

 

 

あれは夢だったらしい。しかし、俺の寝巻きは汗でびっしょりだった。よほど、うなされていたらしい。

 

 

夢の中にいたあの女の子......

 

 

 

 

 

『ま......た......たす.........ぇ...!』

 

 

 

 

その言葉が脳裏に焼き付いていた。そう、何か助けを求めているような、今にも消えてしまいそうな、そんなか細い声だった。

 

 

 

しかも、あの女の子を見た時、恐怖だけじゃなくもう一つの感情も浮かんできていた。

 

 

 

 

 

 

懐かしい

 

 

 

 

 

初めて見たはずなのに、何故か知っているような......どこかで見たような...そんな気がした。

 

 

 

 

 

 

 

「ハルトーー!!ご飯よー!!」

 

 

しかし、母さんの声で我に帰った。

 

 

「はーい、今行くよー!!」

 

 

俺は急ぎ足で部屋を出て下のリビングへ降りて行った。

 

 

 

 

 

 


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