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「よし、これで荷物は揃ったな。」
ある程度荷物がまとめたのでそろそろホウエンに逃げることにした。とりあえず母さんに一言言ってこよう。
「母さん、しばらくの間ホウエンに隠れてくるよ。当然だけどこのことは他の人には言わないでね。」
「わかったわ。ほとぼりが冷める頃に帰って来なさい。」
「うん。行ってくる。」
そう言って玄関を出た。そこには嬉しそうなラティアスが居て、俺を見つけるとすぐに抱きついて来た。
「よーし、それじゃ行こっか!」
「おう、頼んだぜ。」
「早くホウエンでのんびりしたいからメガシンカ使うね〜。」
「メガシンカ?なんだそれ?初めて聞いたんだけど。」
メガシンカという言葉は授業でも聞いたことがないし、テレビでも観たことが無い。聞いた感じ進化のようだが、普通の進化ではなさそうだ。少し興味が湧いてきた。
「メガシンカっていうのはねー、トレーナーとの絆が強いポケモンが一時的に更に進化して強くなれるっていうものなんだよ。勿論、私とお兄ちゃんの愛は宇宙一だからメガシンカも勿論できるよ。」
「え、でもさ、俺お前捕まえてなくないか?トレーナーとの絆なんだろ?」
「さぁね、心の持ちようなんだと思うよ。それに私とお兄ちゃんはお兄ちゃんの体内に埋め込んだ私のこころのしずくで繋がってるんだから関係ないと思う。」
は?こころのしずく?
「え、なんだそのこころのしずくって?体内に埋め込んだ?」
「そう、2年前お兄ちゃんがシンオウに帰るって言ったその夜にこっそり体に埋め込んだんだ。」
「なんでそんなこと……」
「当たり前じゃん、私はお兄ちゃん無しではもう生きていけない体なんだよ?常にお兄ちゃんが見えて触れられる状態じゃないと気が狂ってしまいそうなんだもん。でも、帰るのを止めたらお兄ちゃんに迷惑かかるし、最悪嫌われる、嫌われて見捨てられたらもう私生きていけないよ。だからさ……これくらい良かったよね……?それにもう埋め込んだ私のこころのしずくは粒子状になってお兄ちゃんの身体中に散らばってるからわたしにもどうしようもないよ。あ、体に害は及ぼさないから安心してね。私がお兄ちゃんといろいろと共有してるってだけだから。」
俺は思わず絶句した。そうだ、そのはずだよな、俺という存在に依存しきってしまっているラティアスが俺が帰ることをそう簡単に許してくれるはずが無い、何かしら細工されててもおかしくない。……迂闊だったなぁ。
「ちなみにもうお兄ちゃんからは絶対に離れないからね。2年も離れてて私の頭の中はお兄ちゃんでいっぱいなんだ。こころのしずくを通して見るだけじゃもう我慢できない。お兄ちゃんと再会する前までずっと身体が疼きっぱなしなんだもん。憂さ晴らしに片っ端からポケモンを倒していっても効果無し、全然疼きが取れないんだ。……もうこれ以上耐えられないよ。」
「……ラティアス。」
「だからさ………、私をあなたの
ポケットを探ると一個だけ空のモンスターボールがあった。たまたまなのか仕込まれていたのかどうかはわからないがこれで彼女を捕まえることができる。ラティアスは切なそうな目で俺のことをずっと見つめていた。そして、俺は決意した。
「よし、わかった。ラティアス、お前は俺の物だ。」
そう言うと、ラティアスは先程のどこか寂しそうな表情から一転、まるで世界が救われたようなそんな希望に溢れた表情へと変わる。そして、俺はラティアスにモンスターボールを投げた。そのボールはラティアスの頭にあたり、ボールが開きラティアスは赤い光に包まれながらボールの中へ入っていく。ボールは揺れることも無く静かに落ちた。その直後、ボールが開き、ラティアスが俺を強く抱きしめてきた。
「お兄ちゃん!」
ラティアスの目は相変わらずハイライトはない、とてつもなく俺に対する重い愛を感じた。しかも、更に強くなってる気がした。ラティアスはパッと俺の手を離すと少し離れた。
「よぉーっし、それじゃあ私のメガシンカした姿見せちゃうね!本来ならラティアスナイトっていう石とキーストーンが必要らしいんだけどね、どうしてか私には無くてもできちゃったんだよね。やっぱり想いの強さかなぁ?」
そう言って少し笑った。
「そんじゃ行くよー!メガシンカ!!」
次の瞬間、ラティアスの体を虹色の光が包み込んだ。気のせいか知らないが虹色の光の中に黒が混じっているような気がした。光が晴れ、そこにいたのは先程まで白かった髪は少し灰色になっており、赤いワンピースは恐ろしいほどの黒に染まっており、所々に赤い線が入っていた。禍々しいオーラがでており、先程までとはラティアスの出していたオーラの強さが全く違う気がした。本人もこの姿に驚いているようだった。
「あれ?私が一人で来た時は紫だったのに……それに何かとてつもない力が湧いてくるよ………お兄ちゃん。」
「こ、これがメガシンカか……!」
「よーし!それじゃあ行くよー!つかまっててねお兄ちゃん!」
「おう。」
ラティアスは俺におんぶするように言ってきた。俺は無心になってラティアスの背中に覆い被さった。ラティアスからは女の子特有の甘い香りがしている。少し頭がクラクラしそうだった。そんな時だった。
むにゅ
「…んぁっ///」
「あっ、すまん!」
手を掛けると思わずラティアスのそこそこ豊満になった双丘に手が当たってしまった。ラティアスは思わず喘ぎ声をあげる。……てか、なんで喘ぐんだよ……!
「もっ、もう!お兄ちゃんやめてよぉ!お兄ちゃんの匂いだけで私、クラクラして身体が熱くておかしくなりそうなのにぃ、そんな時に触られたら感じちゃうじゃん……///」
ラティアスは顔を真っ赤にして体をもじもじとくねらせた。
「悪かったって!ほら、早くホウエン行こうぜ。」
「う、うん。そうだねそれじゃあ出発しんこーーー!!!」
「ッ!!!???」
「ちょ………!ぐっ…………!は………やッ………ィ………!」
急に周りの風景が変わり、とてつもない突風が俺を襲った。耐えきれなくなった俺は自然と意識が落ちた。
「……んん?」
目がさめると俺はベッドの中で眠っていた。2年前に使っていたオレの下宿していたアパートのようだ。昔と全く変わっていないようだった。外を見ると暗い。夜のようだ。
「………!…………!」
「…!?………!!………!」
「………!」
ドアの向こうの方から騒がしい声が聞こえる。
「あっ!お兄ちゃん!!」
「マスター!」
「お父さん!」
リビングに行くとラティアスとメア、ヤヨイが一斉に振り向き、こちらの方へ駆けてきた。その光景はなかなか阿鼻叫喚だった。
「よがっだぁぁぁ!!まずだーが死んだらわだじぃぃ…!」
メアが泣きついてきたり、
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
ラティアスは虚ろな目で震えながらひたすら謝罪してたり、
「この女………よくもお父さんを……!殺す………ッ!」
ヤヨイは怒りをラティアスにぶつけようとしたりしていた。
「ちょ、とりあえずお前ら落ち着け!」
「落ち着けるわけないよ!だって、こいつ……!こいつのせいでお父さんの心臓一回止まってたんだよ!?殺そうとしてるのは明らかじゃん!!……だから、お父さんが殺される前にこの女を殺してやる!!!」
ヤヨイは涙目でラティアスに怒りをぶつけようとしていた。比較的温厚な性格のヤヨイがここまでキレていて今にも手を出そうとしているのを見る限り本当に俺の身体は大変なことになっていたことがわかる。また、よくよく考えたらヤヨイが強くなろうとするのも俺のためで、こうして、ラティアスに手を出そうとしているのも俺を護ろうとしているためである。あらゆる行動原理に必ずと言っていいほど俺が関わっているのを見る限り、これはヤヨイの一種の俺に対する依存ととってもおかしくないと感じた。結局は普通そうに見えてもラティアスと同じで俺に依存している一種のヤンデレととってもいいのだろう。
「ひっ…!ご、ごめんなさいぃ!!本当にわだじはっ……お兄ちゃんを殺すつもりなんでぇ……なくっ……でぇ……ッ!!」
「えっ、一回心臓止まってたの?」
「ぐすっ、はい……。マスターの体があのスピードに耐えきれず意識が落ちると同時に止まってたそうです。なんとかその…
なんでメアはこんなに顔を赤らめてるんだ?'
「そ、そうか。ありがとなメア。」
掛けてある時計を確認すると夜の8時を回っていた。
「お前ら腹へってるか?俺はあまりへってないからお前らもへってないなら風呂入って寝ようかと思うんだけど。」
「私はあまりへってないです。」
「私もちょっと疲れたから(精神的に)早く寝たいかな。」
「上に同じー」
みんなお腹は減ってないらしい。
「そうか、そんじゃ風呂入って寝るか。お前ら入るなら先に入れよ?」
「え、何で?一緒に入ろうよー!私お兄ちゃんと一緒に入りたいよー!」
「俺の精神が削られるからやめてくれ。」
メアとヤヨイも同じことを考えていたらしい。もう少し自分のプロポーションの良さを自覚してほしいものだ。
「ほら、とっとと入った入った!俺も早く寝たいんだから!」
「それじゃ、わたしから入りますねー……。」
メアがとぼとぼと風呂場に歩いて行った。てか、どれだけ落ち込んでるんだよこいつら。
***
「あがったよお兄ちゃん。」
「よし、それじゃあ俺入るから。よかったら先に寝ててもいいぞ。あ、ちなみに布団ないからボールの中だからな?」
「「「はーい!」」」
***
「ふー、この風呂に入るのも久しぶりだなぁ。」
少し小さめの浴槽が当時の俺にぴったりでかなり気に入っていた。少し大きくなって浴槽が少し狭く感じるがそれでも快適さは変わらなかった。
「そうだね〜、2年前はよくお兄ちゃんと一緒に入ってたよね〜。」
「あぁ、そうだn………ってラティアス!?」
いつのまにか前には生まれたままの姿のラティアスがいた。2年前に一緒に入ってた時はまだ幼い体をしていたからよかったものの今の彼女は少なくとも中学生、下手したら高校生くらいの体をしていると思う。胸も2年前に比べたら遥かに大きくなっていると思うし、腰回りも明らかに違っていた。つまり、目のやり場に困るということだ。しかし、彼女はそれに気づいていない、というよりかは自覚していないのか俺が顔を赤らめているのに対して首を傾げていた。
「むぅ〜、なんでお兄ちゃん目を合わせてくれないの?」
ラティアスが頬を膨らませて少し不機嫌そうな顔になっている。次の瞬間、彼女の顔色が変わった。
「も、もしかして……私のこと嫌いになっちゃったの?さっきのことまだ根に持ってるの?」
ラティアスのハイライトの無い目からは大粒の涙がぽろぽろと溢れ、声は震えていた。するとラティアスは一気に間合いを詰めて来て、俺に抱きついて来た。その力はとてつもなく強く振りほどくどころか、全く身動きがとれない。また、顔を俺の胸にうずめており、表情は読み取れなかった。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……!お兄ちゃん……ッ!わ、わたしッ……なんでもするからぁ……ッ!だからぁ……」
ラティアスを顔を上げ、
「ひとりにしないでよぅ………!」
「ッ……!」
こんな状態になる前……ラティオスが生きていたときから、ラティアスはいつも兄と一緒にいた。そんな兄が急にいなくなり心が壊れてしまい、今の状態になってしまっている。そう、ラティアスは誰よりも孤独を恐れているのだ。
「なーにいってんだ。そんなことするわけないだろ?俺たちは兄弟でお前はただひとりの大切な『妹』なんだからさ。」
そう言って優しく撫でてあげた。『兄』として優しく受け止めてあげることにした。
「お兄ちゃん………!!うぇぇん……!」
「………よしよし」
***
「落ち着いたか?てか、いい加減上がらないとのぼせそうなんだけど……。」
「うん……えへへ。……私だけのお兄ちゃん……///」
嬉しそうな笑みを浮かべ、俺から離れた。
そして、ガチでふらふらしてきたので急いで俺も風呂から上がった………のは正しかったのかどうかはいまだにわからない。ラティアスを後に上がらせるべきだと思った(察しろ)。
***
「あっ、マスター!」
「お父さん!」
風呂から上がった俺を見て、バタバタと俺のそばにやってきたのはメアとヤヨイだった。
「マスター!一緒に寝ましょう!いつも一緒に寝てたじゃないですか!」
「お父さん身体大丈夫だった?………あの女と一緒にいたみたいだけど。」
「……あぁ、何もされてないよ。」
「じゃあなんでアイツはあんなに嬉しそうなの?」
「むふふ〜♪」
「……さぁな。」
「お前!!マスターと一緒に入浴するなんて羨まけしからんですよーー!!私もどうしようか迷ったのにぃ!!」
「そんなのあなたの行動力が無かっただけでしょー!」
「ッ!テメェ……ッ!!」
メアとラティアスの間でまたバチバチと火花が飛び散っている(ような気がする)ようだった。
「おいおい!お前ら喧嘩すんなよ!あとメア、口調崩れてんぞ!」
「はーい!お兄ちゃんの言うことなら何でも聞くよ〜。」
「……マスターがそう言うなら……仕方ないですけど。」
ラティアスは快く、メアは若干不貞腐れながらも渋々と受け入れた。
「あと俺は一人で寝るぞ?ベッド一つしかないし、ソファで寝るのはごめんだからな。」
「「「え?添い寝じゃないの?(んですか?)」」」
珍しく3人の声が揃って聞こえた。
「んなわけねーだろ。そもそも前の家よりもベッド小さいんだから無理に決まってんだろ。はい、決まり決まり。お前らみんなボールに戻れ〜。」
そう言って強制的に3人をボールの中に戻した。
「ふぁーあ……、もう寝るか……。」
そして、俺は電気を消し、眠りについた。
「……ん」
……俺はふと夜中に目が覚めた。布団に違和感を感じたからだ。俺の上に何かが乗っているのだ。おかげで身動きを取ることができない。月明かりに照らされて少し明るくなると透き通るような水色の瞳があった。その瞬間、上に乗っていた何かの正体がわかった。
「……メアか。」
「はい。」
正体はメアだった。よく見えないが俺の上に乗っている彼女はとても穏やかそうな微笑みを浮かべている。
「なんで俺の上に乗っているんだ?」
するとメアは何も言わず急に俺の手を掴んだ。
「んっ…///」
そして、その手をメアの胸に当ててきたのだ。メアの胸の柔らかい感触が俺の理性を刺激する。
「ひゃうッ……///」
思わず少し手が動いてしまった。すると、メアの身体が跳ね上がるように振動した。
「あっ、すまん…!」
少し息を荒げながらもメアは言った。
「やっぱりマスターはおっぱいの大きい子が好きなんですか?」
「………は?」
「私のが小さいからマスターは私に構ってくれなくなったんですか?ラティアスとかいうぽっと出の野郎に構うのもやっぱり大きいからなんですか?」
「い、いやそんなことはないぞ。それに俺はお前にもちゃんと構ってやってると思うが……」
「私はマスターのことが好きです。マスターのことが愛おしくて愛おしくてたまらないです。マスターが構ってくれなくなって………正確にはラティアスがやってきてから、私はマスターのことばかり考えてました。そして、気づいたんです。私にはマスターしかいないって、マスターさえいれば他のものは何もいらないって。正直、ラティアスもヤヨイもその場で殺してやりたいほど憎いです。私の……私だけのマスターに触れようとしているんですから。自分でもおかしいことはわかってます。……それでも頭の中はいつもマスターのことでいっぱいなんです。もうこれ以上耐えられないんです。」
メアは窓の外を見つめ、言った。
「ヤヨイやラティアスが来てからずっと思ってたんです。なんで……、なんでポケモンとして生まれてきたんだろうって。ポケモンじゃなくて人、人間だったらマスターと同じで立場でいられたのに……。ヤヨイやラティアスよりも圧倒的に違う……上の立場……マスターの隣にただひとりいられたのに。マスターの隣にいられるならこんな力、いらないんですよ。この力のせいで私はヒトの形をしていても、人じゃないんだなって実感させられるんです。そう考えると悲しくて仕方ないんですよ……どうしようもないってわかってるのに……!」
「……まあ、唯一よかったって思えるところはマスターを力で強引に抑えられるところですかね♪」
そう言ってメアは俺の布団の中に入ってきた。
「ちょ」
しかも手を掴む力が強くて全く振りほどけない。布団に入ってきたメアは俺の胸に顔を埋めてきた。
「はぁぁ〜///ましゅたぁの匂いぃ……///」
「メア、別に人じゃなくても俺はお前のことを愛してるからな?そのへんわかっとけよ?」
「はい、マスターのことは全て知ってるのでそう言うと思いました。………それじゃあ、
「……えっ?」
「もう私の本能がうずうずして我慢できないんです。なので、いただきます♪」
「おい……ちょ、ま……」
俺の意識はここで途切れている。最後に見たのはハイライトのない濁った水色の目をして微笑んでいたメアの姿だった。
艦これの冬イベが近く、資材の備蓄に力を入れているのでまた期間が空くと思います。その辺ご了承願いたいです。
それじゃ……また。
ps.作者はポケモンブラック2ホワイト2までしかしたことないので、メガシンカなどの知識はほぼ0です。