失言てあるだろ?
ほら。こう、ついポロッとさ?
これがさ、振り返ってヤバイと思っちゃうような言葉だったらいいよ?
例えば、「お若く見えますね」とかさ。ほら、一見褒めてるように見えるけど、裏を返せば実年齢は……。って暗に言ってるとも取れるし。
まぁこういうのはいいんだよ。しゃーない。言った自分が迂闊だったと思えるさ。
でもさ? これってどうなのよ。こんなの失言だと思わないじゃん?
皆にもさ、判断して欲しいのよ。
「俺ってさ、猫より犬派なんだよね」
この一言で宴の空気が凍ったよ。パリッと、音が聞こえるほどに凍ったね。
男の言葉を聞きある者は項垂れ、またある者は黄色い声を上げた。
「犬、ですか……。それはもう、私のことでしょうね。えぇ」
「普段、狼だと憚っている姿は何処へ行ったのですか。それよりも、天狗という文字には狗と入っていますね。これはもう、私も犬だと名乗りあげても過言ではないのでは?」
「……狗は狗でも、
「おーし、犬コロ。表に出なさい。どちらが上か思い出させてあげましょう!」
「犬じゃないし! 狼だし!」
「わ、私も犬といっちゃ犬よね(ソワソワ)」
「影狼ちゃん。抜け駆けはナシだよ?」
「え、でも……」
「ナシだよ?」
「は、はい……(姫が怖い……)」
「忠義、従順さ。そして悪魔の犬と呼ばれる私こそ真の犬と言っても過言ではないのでは?」
「……バター犬(ボソッ)」
「ちょっと誰よ今バター犬とかほざいたのは!? 明日の献立にしてあげるから出てきなさい!」
「ほほーう。まさかの。彼奴が犬好きだったとはの。どれ、ここは一つ儂が一肌脱いでやるとするかの」
「全く。随分と遠回しな告白をするヤツだ。……あぁ、橙! そんな絶望顔をするな。ちゃんとアイツは連れて帰るし、少しぐらいなら貸してやるから、な?」
「なんじゃ。勘違いキツネが出しゃばって。恥をかく前にすっこんどれ」
「ハ! 私ほどの男心の機微に敏い女を前に、中身まで古ぼけたかタヌキ風情が」
「……尻軽!」
「行き遅れ!」
「おねーちゃん。私犬欲しいー」
「こいしったら。もうお屋敷には新しいペットを買う余裕なんて……(チラッ)」
「フニャッ!? どうしてそこでアタイを見るんですか!? 止めてください! 更に傷を抉るような真似は止めて下さい!」
「大丈夫だよお燐。アナタのことは忘れないからー」
「説得力が皆無なんですけど!?」
ワーワー! ギャーギャー!
折角の宴会が、俺の一言で阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。
俺か? 俺が悪いのか?
頭を抱える俺の前にふと、人の気配がして顔を上げる。
返り血を浴び傷だらけで、それでいてギラギラと瞳を輝かせる少女達がいた。
「「「「「責任を取ってよね○○!?」」」」」