転生したらAUOの兄だった件について   作:けんさん&コハク

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 あくまで家族愛だ、断じてBLではない!
 あとギルくんって可愛いね。


魔猪討伐
魔猪の討伐【一】


魔猪(まちょ)の討伐………ですか?」

 

 ギルくんと出会って数週間が過ぎた。

 あの日からギルくんとの関係は良好で暇があれば基本的に合う様になっていた。

 まだ7歳なので話す内容はそんなに無いけど、皮肉な事に外で旅していた事がいい話のネタとなっている。

 そこは父に感謝している………使い古した雑巾に対するくらいの感謝だけどな。

 そんな父から朝ギルくんと話していたら呼び出しをくらった。

 呼ばれた時に(ギルくんとの楽しい時間を邪魔しやがって………マジで宝物庫の伝説級の武器で串刺しにした上で八つ裂きにしてやろうか?)とも思ったが、さすがに歴史を変えすぎるのはダメだと思うから血涙を飲んで我慢した。

 呼ばれた理由は先ほど述べた様に魔猪の討伐らしい。

 ここから北にずっと行くとニップルという町があって、そこの農作物が大男の5倍はデカイ魔猪に荒らされたらしい。

 幸い今の所死者は出ていない様だが、怪我人は出たらしい。

 魔猪が暴れた時に地面の石が高速で飛んできて腹にぶつかりあばらの骨が折れたらしい。

 それを重く見た王様は俺に魔猪の討伐を頼んできたというわけだ。

 こいつマジで何言ってんの?

 俺って体は子供精神は大人なだけの普通の7歳だぞ?

 といっても実際この国の中で一番強いのはこの俺だ。

 腕前で言ったら全然だが、宝物庫の武器を射出したら俺に勝てる奴は一人もいない。

 まぁ俺の財宝の中には英霊の宝具になる武器も入っているからそれを使えばかなりヤバイ。

 ちなみに俺は鍛錬もしている。

 Fate/stay nightという物語で、大人ギルガメッシュは英霊でない男に接近戦で負けたせいで敗北した。

 それを知っている俺は鍛錬をして近距離・中距離・遠距離全てを戦える様にしたいと思っているからな。

 まぁ簡単な話、魔猪は普通の兵士じゃ倒せないから行ってこいと言っているという事だ。

 

「分かりました。

 不肖このエルシュ、父上様のご期待に添えるよう誠心誠意努力いたします」

 

 本当は行きたくないが、これはチャンスでもある。

 自分の戦闘力を測るのと、言い方が少し嫌だけどニップルに恩を売れる。

 この前言ったように俺はギルくんが大人になった時にこの国を出ようと思っているのだが、その時に食料やら生活用品などをニップルで買い俺が来たことを黙っててもらうという事が出来るはずだ。

 その為にもこれは行っておいたほうがいい。

 

「そうか」

 

 お前のためじゃないけどな。

 

「ところで父上様、一つお願いがございます」

 

「なんだ?」

 

「ギルくん………じゃなくてギルガメッシュを今回の討伐に連れていってもよろしいでしょうか?」

 

「うむ?何故だ?」

 

「ギルガメッシュはまだこのウルク市街どころかこの城の中から出た事がありません。

 いずれ王になるギルガメッシュがただの数年間しか外を見ていないということは問題になると思いますし、このウルクに危機が訪れるかもしれません。

 この国の土地は直で見なければ分からない事もたくさんあります。

 もし直で見ずに野盗・自然災害・王に会ったことのない者達からの不信感による暴動など色々とあっては対処が出来ません。

 なので私はギルガメッシュを連れて行きたいと思っております」

 

 これは本心だ。

 俺はこの王に対する思いやりなどは一切無いが、ギルくんには全力の保護や後ろ盾になる。

 最初はギルガメッシュ叙事詩の中の主人公だとしか思っていなかったが、今では大切な弟だ。

 俺はもしこいつがギルくんに何か手を出そうとするなら俺は全力でこいつを殺す。

 それくらいの思いはある。

 

「分かった。

 ギルガメッシュを連れて行くことを許可する。

 しっかりと守れよ」

 

「はい、私の我儘を聞いていただきありがとうございます」

 

 うっしこれで良し。

 実はもう一つ、こいつのせいでギルくんに悪影響があったら遅いからな。

 その為にもギルくんを連れて行くのだ。

 

「しかし、いずれ王になる(・・・・・・・)…………か」

 

「何か?」

 

 今の含みのある言い方はなんだ?

 

「なんでも無い」

 

「は、はぁ」

 

 何なんだ?まあいいか。

 

「では行ってきます」

 

「あぁ」

 

 部屋を出て行きギルくんの部屋へと急ぐ。

 驚くだろうけどまぁいいだろう。

 初めての………家族のお出かけだ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 〜ギルくんの部屋〜

 

「ぼ、僕がニップルまで行くの!?

 僕はいいけど王様は許可を出したの!?」

 

 ………驚くとは思ったが此処までとは。

 

「おう、王様は許可したよ。

 しかしそんなに驚くことか?

 今まで城の中からすら出た事がないと聞いたけど……」

 

 うん、これ聞いた時はマジで殺しに行こうかと思ったよ。

 

「本当にいいんだ、ありがとうお兄ちゃん!

 外………外か………。

 しかもお兄ちゃんと一緒に………やった!」

 

 そんなに笑顔になるとはな。

 外に連れて行きたいと行ってよかったよ。

 ギルガメッシュをしっかりと守れよ………か。

 お前に言われなくても、この可愛い弟は俺が絶対に守ってやるよ。

 

「あくまで魔猪の討伐だからな。

 それじゃ、明日の朝に迎えに来るからそれまでに準備しておけよ。

 つっても王の財宝(ゲートオブバビロン)があるからあんまりする事はないと思うけどな」

 

 つまりは明日まで待てという意味だ。

 

「うん、ねえお兄ちゃん」

 

「どうした、何か問題でもあったか?」

 

「僕のお兄ちゃんがお兄ちゃんで良かったよ。

 ありがとうね、お兄ちゃん!」

 

 そう言いながら本当に嬉しそうな笑みを浮かべているギルくん。

 ギルくんの兄が俺で良かった……か。

 俺も同じことを思っているよ。

 俺の弟がギルくん、お前で良かったよ。

 

「嬉しいこと言ってくれるじゃねえか!」

 

「ちょ、お兄ちゃん!?」

 

 ギルくんの頭を痛くならない程度の力で乱暴に撫でる。

 驚いたような声を出すが顔は少し喜んでいる。

 こういうところが可愛いなこの野郎が。

 …………俺は弟に恋愛的な感情は持ってないからな?

 あくまで持っているのは家族愛だけだからな?

 

「ふぁ〜。

 お兄ちゃん、僕はそろそろ寝るよ。

 お兄ちゃんはどうする?」

 

 おっと、そういえば今は夜だったか。

 そうだな………俺はどうしようか?

 ………明日は早いしさっさと寝るか。

 

「俺もさっさと寝るよ。

 お前も明日に影響が出ないようにさっさと寝ろよ」

 

 扉を開けながらそう言う。

 後ろを振り向けば早くも寝巻きに着替えたギルくんがいた。

 

「は〜い。

 それじゃあおやすみなさいお兄ちゃん」

 

「おう」

 

 さて、俺もさっさと寝ようかな。

 おやすみ、ギルくん。

 

 バタン

 

「本当にありがとうね………お兄ちゃん」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 〜次の日〜

 

 さて、本日はギルくんと一緒に城の外へと出て行く。

 さっき王に行ってきますとは言ってきたのであとはギルくんを迎えに行くだけだ。

 ギルくんが居ないことに少し嫌な顔をされたがザマァみやがれってんだよ。

 よし、ギルくんの部屋の前に来た。

 

「ギルくん、そろそろ行くぞ?」

 

『ちょ、ちょっと待ってて!』

 

 ガチャン!ゴロン!ガラガラ!

 

 ………なんの音?

 

 ガチャリ

 

 おお、ギルくんが出て来た………ちょっとボロボロで。

 

「ギルくん?大丈夫か?なんかあったのか?」

 

「う、うん。

 宝物庫の片付けをしていたら宝物が崩れて来て少し敷かれたんだよ。

 まぁ気にしないで、大丈夫だから」

 

「そ、そうか」

 

 よくその程度で済んだな………ギルくんの宝物庫の中には武器も大量にあるだろ?

 それなのに怪我がほとんどないってすっげえな。

 

「さて気を取り直して、さっさと行くぞ?

 準備はいいんだろ?」

 

「う、うん大丈夫だよ。

 移動手段は?」

 

「馬車です」

 

「馬車ですか」

 

 いやー、この時代から馬車があったとは驚きだ。

 黒い馬に引かれてゆっくりと行く………なかなか良いな。

 

「行こうかギルくん」

 

「うん」

 

 ギルくんの手を引いて城の外へと歩いて行く。

 門まで歩いて行くとギルくんの表情が明るくなってくる。

 そんなに楽しみなのか、外に行くのが。

 門をそのまま越えてウルク市街へと行く。

 

「新入荷したよ〜!

 そこのお兄さん、寄ってらっしゃいな!!」

 

「新発売した魚の日干しだよ!

 酒の肴にもってこい、さあ〜今がお買い得だよ!!」

 

「ウルクの名技師が作り上げたこの木彫り!

 今だけ特価で販売するよ〜!!」

 

 ウルク市街は活気付いており、これを初めて見たギルくんは驚きのあまり目を見開いている。

 

「……………すごい」

 

「だろ?これがウルク市街だ。

 ここは他の町と比べても賑わいがすごいからな。

 驚くのは無理もないだろ」

 

 驚くなか2人で手を繋いで歩いて行く。

 興味津々のギルくんには申し訳ないけど、帰って来た時に色々とやるとしよう。

 

「ギルくん、俺たちは王様に10日間の猶予をもらった。

 魔猪を討伐して観光をしながら帰って来たとしてもこの市街で1日くらいはゆっくりできるから帰って来た時に一緒に回ろうぜ?」

 

 そう言うとギルくんは喜んだような顔をする。

 うん、可愛い。

 

 そのまま市街の青い門を超えて馬車に乗り込む。

 馬車はゆっくりと発進してニップルへと向かう。

 ガタンガタンと揺れる中、ギルくんは興味深そうに外を見つめる。

 

「そういえばお兄ちゃん?

 猪討伐にどうしてお兄ちゃんが行かされるの?

 猪相手なら普通の兵隊でもなんとかなりそうな感じがするけど」

 

 ふむ、そういえばギルくんは魔猪のことをよく知らないのか。

 魔猪といえば名だたる英雄を殺したりした恐ろしいものなんだけど………。

 まぁ俺からすればただの猪とそう変わらないけどな。

 

「魔猪は普通の人間じゃあとてもじゃないが勝てないような奴だからだよ。

 大男の5倍もあるらしいから相当強いんじゃないか?

 まっ俺なら遠距離から武器を当てられるからそう簡単にやられることもなければ手こずることもないだろう」

 

「なるほど、さすがだねお兄ちゃん!」

 

 うむ、また尊敬の眼差しだ。

 この頃ギルくんからの尊敬度数が天元突破しているような気がする。

 まぁ嫌な気がする訳じゃないから全然大丈夫だけど………流石に少しプレッシャーだなぁ。

 失敗したらダメだし。

 

「さて、ギルくん?

 これから約2日間は片道移動だ。

 それまで何をする?」

 

「う〜ん………流石にやることが少ないよね。

 お話を聞くにしてももうほとんどお兄ちゃんのは聞いちゃったし」

 

 確かに、流石に数週間も話していたらネタ切れにもなる。

 だがそれはあくまで転生した後の話だ。

 生前に仕入れた話は大量にあるから、まだ退屈させることはないな。

 

「なら、ギルくんにだけ特別な話をしようか」

 

「特別な話?」

 

「そう、ただの作り話だけど面白い話。

 10日間くらいならなんとかなると思うけど………どうする?」

 

 そう言うとギルくんはキラキラした目でこちらを見ている。

 どうやら興味があるようだ。

 

「お兄ちゃん、そのお話を聞かせて!」

 

「いいぜ?ならなんの話をしようかな?

 そうだな………なら人間と仲良くしたい赤い鬼とその赤い鬼の友達の青い鬼のおにしようかな?

 とあるところに人間と友達になりたい1人の赤鬼がいましたーーーーー

 

 これでなんとか時間が稼げそうだ。

 ギルくん、話が下手かもしれないけど楽しんでいってね。


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